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魔石職人の冒険記  作者: 川島 つとむ
第一章  凸凹コンビ
4/54

切り札

登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) ジャド=ジャド(台詞表記) ニイナ=ニナ(台詞表記) ミリアナ=ミア(台詞表記)

 町に帰って来た僕達は、報酬を分配して別れた、三人は一緒にご飯でも食べるのかもしれない。

 僕はというと、やっぱりパーティーを組むとしたら、魔法の威力向上の問題を何とかしないと、彼女達にも申し訳ないので、とりあえず魔道具でいいものができないものか考えることにした。

 僕は昔学校で習った魔術の授業を思い出し、基本から考え直してみる。

 そもそも魔法の威力を左右しているのは、イメージの力だと確か先生が言っていた。

 自分の魔法は強いと思い込んでいる程強くなる、確かそんな感じだったか。それで行くと、僕は自分が弱いと思っているので、威力も低いはずだと思う。

 表面を取り繕っても、意味がないんだよね・・・・・・どうしたものか・・・・・・

 自分にはトラウマがあるのかただ単に自信が持てないだけなのか、普通にやっていては駄目そうなので、この発想は一度捨てる。

 魔石による爆発なら、相手を吹き飛ばす程の威力が確認できたので、そっちの方向で考えてみよう。

 一度僕の魔法を魔石に送り、それを魔石から敵へと攻撃を放つ。魔石を中継させることによって、威力を増幅させてみる方法はどうだろうか?

 切り札には、二つの魔石が必要だったので、爆発させる方の魔石に僕の魔法を送り込み、もう一つの魔石で、敵に向かって魔法を発射させてみる。

 とりあえずは、試して見るのがいいだろうと思い、指輪にその機能を搭載させた魔道具を作ってみた。家で爆発が起こると怖いので、ジャドを呼んで町の外へと行ってみよう。


 ロプ 「おーい、ジャドいるか~」

 ジャド「うん? お前の方から来るのは珍しいな。何かあったのか?」


 よかった、どうやら家に帰って来ていたな。


 ロプ 「魔法の威力を上げる研究をしていたんだけれど、ちょっとテストをしたいから、着いて来てくれるか?」

 ジャド「お! そういうことなら任せろよ。直ぐ準備する」


 僕らは連れ立って、町の外へと向かった。


 ロプ 「まずはどうなるのかさっぱりだから、目標は無しで魔法を使ってみるぞ?」

 ジャド「ああ、何かあったらサポートだな?」

 ロプ 「おう。最悪は暴発だからな。その時はよろしく頼む。じゃあ少し離れていてくれよ」

 ジャド「暴発か、そいつは予想していなかったが、迅速な対応だな。わかった」

 ロプ 「よし、始める」


 自分で言っておいてなんだが、暴発は怖いな・・・・・・深呼吸して気合を入れ直し、僕は呪文を唱えることにした。


 ロプ 「焼き尽くせ、ファイアアロー」


 適当な地面に向って、火の玉が飛んで行って弾けたのが確認できた。

 魔法としては火の矢が飛ぶものだったのだけれど、魔法の形態が変化しているな。これは魔法全般の検証の必要性が出て来たな。


 ロプ 「とりあえず発動自体の構造は問題なかったみたいだ。標的が無いから威力がわからないが、まずはありがとう」

 ジャド「どういたしまして。ってことは、何か軽く戦ってみるか?」

 ロプ 「これをいきなり依頼で使うのはきついな、使って見て魔法全般での検証が必要なのがわかったしね」

 ジャド「じゃあ、まず最大の課題だった威力の確認からって事になるな」

 ロプ 「そうなるな。手頃な目標って、直ぐに見付かるか?」

 ジャド「マギーなら、そこまで時間もかけないでいけるだろう。とりあえず移動しながらかな、誘導するので移動しよう」

 ロプ 「わかった」


 僕達はマギーに乗り込んで、早速ジャドの指示した場所に向った。


 ジャド「あれなんて、手頃だと思ったんだがどうだ?」


 目の前には、モンスターではなく野生動物の猪がいた。


 ロプ 「手頃の大きさだし、良さそうだな。倒しきれなくてこっちに向って来たら、フォローを頼むな」

 ジャド「そっちは任せておけ、いつでもいいぞ」

 ロプ 「それじゃあ早速。焼き尽くせ、ファイアアロー」


 猪に向った誘導された火の玉が、逃げ出そうとした猪に命中したのを確認した。誘導性には問題がなさそうだな。威力も一撃で倒せている。ただ、切り札程の威力ではなかったみたいだな。


 ジャド「今までの素の状態と比べれば、確かに威力が上がっているな。これは成功でいいのか?」

 ロプ 「暴発も不発もしていないから、一応の成功とはいえるな。切り札程の力はなかったけれどね」

 ジャド「あー、あの威力が目標だったのか。ありゃ魔石を二つ使い潰しているからあの威力なんじゃないか?」

 ロプ 「確かに、多分そうだな」

 ジャド「ふむ、もう少し研究の必要が出て来たか?」

 ロプ 「研究は続けていきたいけれど、即席のブースト魔法具としては、こいつは成功の部類でよさそうだ」

 ジャド「だな、そいつは間違いなさそうだ」

 ロプ 「威力としては、ワンランク上の魔法の威力になる感じだろうな。まあ予想だけれど」

 ジャド「どうする、魔法全部試し撃ちして行くか?」


 せっかく倒した猪の肉などを捌いて確保しながらそう言って来た。


 ロプ 「いや、そっちは依頼の間に使うようにして、検証して行ってみるよ」

 ジャド「そうだな、じゃあ明日からしばらくは依頼に同行するか?」

 ロプ 「そうだな、研究資金集めもしたいし素材集めにもなりそうか。それで頼めるか?」

 ジャド「ついでにあいつらとの連携の訓練にもなるしな。不意の強敵との遭遇戦も、切り札が出来たんだったら、なんとかなりそうだし。いろいろ幅が広がった感じがするぜ!」

 ロプ 「確かに、できることが増えた気がするな。マギーで移動範囲も広がったことだしな」

 ジャド「お! そいつもあったな。考慮して考えてみる」

 ロプ 「じゃあ今日は引き上げて、明日からしばらくはよろしく頼むよ」

 ジャド「オーケー。じゃあこっちは依頼を選んでおくよ」

 ロプ 「任せた」


 僕達は町に戻って、明日からの冒険の準備を進めた。

 翌日、威力向上を考えて三つ目の魔石を組み込んだ指輪を付けて、冒険者ギルドへと向った。多分、昨日よりさらに威力は増しているはずだ。そんな事を考えながら、待ち合わせの場所まで行くと、三人が揃っていた。


 ロプ 「待たせた、わるい」

 ジャド「来たか、じゃあサインしてくれ」

 ロプ 「おう」


 依頼表が何枚かあり、それにサインをして行く。


 ジャド「じゃあ行って来るから、少し待っていろよ」

 ロプ 「ああ、任せるよ」


 そう言うと、ジャドは素早く受付に向った。


 ロプ 「二人とも、待たせてすまんな」

 ミア 「いえ、大丈夫ですよ」

 ニナ 「そうそう、学校でも寝坊する奴は一杯いたしね」

 ロプ 「面目ない」


 確かに起きるのが遅れたのは確かだな。そう思って謝っておいた。


 ジャド「受けて来た、早速移動しよう」

 ロプ 「ああ、こっちだ」


 僕は前にマギーを停めていた場所に案内して、早速移動することにした。

 いくつか依頼もあるので、現地に着くと早速行動を開始することになった。

 サクサクと森の中へ移動して指示を出して来る。


 ジャド「まずは手始めに、雑魚狩りだ。ゴブリンの集落を落とすから数が多い、ジャンジャンやってくれ。ミリアナとロップソンは、まだ依頼があるから魔法は抑え気味でやってくれ。支援程度でいいかもな」

 ミア 「わかりました」

 ロプ 「了解だ」


 ジャドはそう言うと、発見したゴブリンの集落に向って正面から突っ込んで行った。ニイナが慌てて着いて行く。相変わらず豪快だな。まあゴブリン相手ならそんなものかもしれないけれど。


 ロプ 「焼き尽くせ、ファイアアロー」


 とりあえずは魔道具の改良の成果を確認しておかないと、どういう結果が出るかわからないので、二人から離れたゴブリンに向って一撃入れておくことにした。

 下手に近くに撃ち込んだら、周りに被害が出るタイプだったとか、嫌過ぎる。

 そしてその予想は当たっていて、目標と、周りのゴブリンが衝撃に弾け飛んでいたよ・・・・・・周りのやつは、爆風に飛ばされただけっぽいのだけれど、支援向きではないな。

 そう思って、僕は追加された魔石の改良の構想を頭の中で考える。


 ロプ 「魔道具を改良したい、少しだけ周りに気を付けていてくれ」

 ミア 「え、わ、わかりました!」


 僕はその場で改良する為に、ミリアナにそう声をかけておいた。ちょっとびっくりして、気合を入れているのを見て苦笑いする。ジャドなら任せろって言っていただろうな~

 僕は一分程で改良を終えて、ミリアナに声をかけた。


 ロプ 「ありがとう、もういいよ」

 ミア 「あ、はい!」


 どこかホッとした様子でいるミリアナに、もう一度お礼を言って戦況を確認する。まあ、普通に余裕そうだった。


 ロプ 「流水よ荒ぶれ、アクアブリッド」


 余裕そうだったのだけれど、実験と検証の為に、魔法を叩き込むことにした。

 今回の検証は、三つ目の魔石の力を温存する機能の確認と、火以外の属性の効果確認だった。

 目標になったゴブリンは、水のワンランク上になった巨大な水の球に包まれて窒息した。周りにも被害は出ていないのと、威力の向上も確認できた。

 実験としてはいい結果だな。


 ミア 「神罰」


 ミリアナは、程々がどれくらいかわからなかったようで、手を出していなかったみたいだけれど、僕が何回か魔法を使うのを見て、攻撃に参加していた。


 ロプ  「お疲れさん」


 ゴブリンの集落を殲滅した二人を、僕とミリアナが出迎える。


 ミア 「お、お疲れ様でした」

 ニナ 「何か、そっちは楽そうでいいわよね」


 ニイナがそんな事を言って来ていたけれどね。聞かなかったことにしておこう。


 ジャド「じゃあ次に移動するぞ、こっちだ」


 普通に流し討伐部位を回収してそう言うと、早々に移動を始める。

 しばらく森の中を歩いていると、前方が明るくなって来た辺りでジャドが一度止まって言って来た。


 ジャド「この先にクリムゾンビーがいるらしい。寄って来た敵は俺とニイナで、ミリアナは治療待機。ロップソンはメインで戦ってもらうぞ」

 ロプ 「了解だ」

 ニナ 「わかったわ」

 ミア 「はい」


 それぞれに返事をして、移動を開始した。


 ロプ 「荒れ狂う風よここに、ウィンドカッター」


 空中を飛び回る蜂に、僕は丁度風の属性は試していなかったと、三つ目の魔石も使った魔法を発動させた。今回は敵の数が十五匹もいるので、魔法の数も増やしての発動を試してみる。


 ジャド「おおー、なんじゃこりゃ~」


 身の危険を感じたのか、三人が姿勢を低くして上空を見上げているのだが、使った僕もはっきり言ってびっくりだった。

 風の刃をまとった嵐が荒れ狂っているかのようにこの花畑の上空を荒らし回っている。

 誘導性があるようで、味方に被害を出さず、そして逃げようとする蜂に追いすがるように荒れ狂った風が無くなると、そこにいた蜂の集団は一匹も生き残ることが出来なかったようだった。

 はっきり言おう、討伐部位の回収の方が、大変でしたよ・・・・・・


 ロプ 「すまん、やり過ぎたみたいだ」

 ジャド「あれは俺の方も予想外だったし、まあ仕方ないさ。討伐部位の回収は、少なかったのだが一応依頼料は出ると思うぞ」

 ミア 「凄い魔法でした!」

 ニナ 「あんたもやればできるんじゃない。どこが才能は無いよ・・・・・・」


 この間の会話でも思い出したのか、そんな事を言っていた。


 ロプ 「あー、ニイナ。一応言っておくが、魔道具が無ければ、俺にあんなことはできなかったぞ。あの後、自分でも才能が無いのが悔しくてな、がんばって魔道具を完成させられたから今日はうまく行っただけだ」

 ニナ 「でも、魔道具を作るのも才能じゃない」

 ロプ 「まあ、今までは生かせてなかったって事で、許してくれよ」

 ニナ 「ふーん」


 まだ納得していない感じながら、とりあえずは拗ねるのはやめてくれたみたいだ。


 ジャド「まあ、ロップソンが戦力になりそうだってのがわかっただけ、俺達のパーティーの生存率はぐんっと上がるんだ、これは喜ぶところだぞ」

 ニナ 「それもそうね」

 ミア 「確かにそうですね!」


 ジャドがフォローを入れてくれた。ほんとに気遣いの出来るいいやつだよお前は。


 ジャド「お前の戦力が魔道具で上げられたってことは、みんなの戦力も上げられそうだよな?」

 ロプ 「うーん、どうなんだろうな。僕は自分の修正箇所を自分で見付けられたから何とかなったんだけれど、お前達に同じ方法は使えないしな。普通にミリアナに支援を受けた方が強くならないか?」

 ジャド「あー、確かに神官には、補助の魔法が使えたんだったな」

 ミア 「えっと、私はまだそこまでの力はないので、申し訳ありません」

 ロプ 「まあ、今は無理でも、がんばって強くなっていければ、そのうち使えるだろう」


 ミリアナはちょっと気が弱い感じの子だな、元気付ける為に声をかけておいた。


 ジャド「だな、焦ることはないぞ、ミリアナ。誰にでも俺達にも始めての時はあったんだ、いきなり強くなれとは言わんから、とりあえずはがんばれ!」


 ジャドもフォローを入れていた。


 ロプ 「あー、俺なんか初めての頃は、ほんとに役立たずだったな。まさか魔法を何度も撃っているのに、平気で動いている敵がいた時なんか絶望しそうだったよ」

 ジャド「あー あの時のゴブリンか、あれは怒りで痛みを忘れていただけじゃないのか?」

 ニナ 「え、ゴブリン相手に、魔法を何発も撃ち込んで倒せなかったの?」


 思わず言ったニイナの言葉にグサッと来たよ・・・・・・


 ロプ 「だから俺は落ちこぼれだと、言っただろうが・・・ こんな魔法使いが、どの面さげて僕はちゃんと戦える魔法使いですなんて、言えると思う?」

 ニナ 「うっ」


 あ、絶句した。こっちも言っていて絶句だよ!


 ロプ 「まあそんな訳で、僕は冒険者としての才能が無いのは、自分がよく理解しているんだ。わかっておけ」

 ニナ 「うん、ごめん」


 やっと納得してくれたようだ。


 ジャド「そういう訳だ、ミリアナ。俺らだってこんな感じで、挫折もありながらも冒険者をやっている。下を向くより上を目指せ、いつかは強くなれるって思っていなけりゃ、冒険者なんて続けられないぞ」

 ミア 「はい、わかりました」


 あー、微妙に傷ついた僕をほったらかしにして、こいつら青春始めてしまったよ・・・・・・まあいいけどな。


 ジャド「さて、次で今日の依頼は最後だ、相手はビックベアなんだが、今度はみんな温存しないでいいぞ。臨機応変で対応してくれ」


 そう言って、目標を探す為に移動を始めた。

 しばらく進むと周りの木が倒れていたり、木が傷付けられている場所が見えて来た。どうやらビックベア縄張りに入ったようだ。

 全員が慎重に進み、やがてジャドが止まるように指示を出して来る。そして少し様子を窺った後に行くぞって合図を送ってきた。


 ロプ 「大地よ弾けろ、アースブリッド」


 僕は次の属性として土を選び、ついでに目くらましになればと思って先制攻撃を仕掛けた。


 グォォオオォオ


 土の礫に叩かれて、ビックベアが苦痛に悲鳴を上げる。そこに駆け込んだジャドとニイナが接近戦に入った。


 ミア 「神罰」


 ミリアナもそこに追撃を与える。僕はこれ以上の攻撃の必要はなさそうだと判断して、周囲への警戒をすることにした。

 その後ミリアナも神の力を使い、ニイナは背後に回って戦った為に危なげなく討伐は終了する。


 ロプ 「お疲れさん~」

 ジャド「お疲れ~」


 僕らは討伐部位を回収しながらそうみんなに声をかけた。


 ミア 「お疲れ様でした」

 ニナ 「やっと終わった~」


 まだ帰り道が残っているものの、みんなちゃんと戦えていたので、おそらくは大丈夫だろう。


 ジャド「よーし、では撤収だ~」


 ジャドの号令で、僕らは街へと帰還する為に移動を開始する。一応警戒は怠らないで森を進み、マギーを停めた場所に向った。

 案の定途中でゴブリンを見付けて、戦闘になったのだけれど撃退するのに不安は無かった。

 僕らはそのまま無事に街まで帰り着き、ギルドで報酬をもらって分配すると、そのままお疲れ会として飲み食いしてから家に帰って来た。

 テストは上々、これで今後の冒険では足手まといになることもなくついて行けそうだったので、とても満足できる冒険になったよ。


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