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魔石職人の冒険記  作者: 川島 つとむ
第五章  リンデグルー自治国記念祭
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祭り本番

登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) ジャド=ジャド(台詞表記) ニイナ=ニナ(台詞表記) ミリアナ=ミア(台詞表記) レイセモルス=レイ(台詞表記) 小林幸=幸(台詞表記) ミーリス=ミリ(台詞表記)

 翌日から盾の作製を始めようと思ったのだけれど、デザインを削り出して行くには手間と時間がかかり過ぎる為、実際のデザインをイメージした盾を魔道具で作り出し、型をとって一部鋳造する事にした。これにより、多少は手間を省けると思う。

 鋳造されたパーツをさらに細かく削って磨き上げ、パーツを重ね合わせて固定していく。完成した形に整ったらさらに全体的に仕上げていき、大体一日半くらいかけて鍛冶工程を終了させた。仕上げに魔石を組み込んで魔法を構築して完成だ。

 うーん、デザイン無しの盾なら一日あれば作れると思ったけれど、こっちはやる事が多くて結構時間を食ってしまったな。空いた時間は結構中途半端で、微妙にやる気が出て来ない感じだけれど、頼まれた日本刀は全部で四本だったかな? うだうだしていると中々完成しないからできるところまでがんばってやってみることにしよう。

 適当に幸が様子を窺いに来るので、そこで休憩がてらやる気を貰ってまずはジャドの日本刀の下地になる工程を、できるところまでやる事にした。


 一日がかりで金属を何度も折り返し叩いて、捏ねた金属をジャドに合わせた刀の形へと整えていく。翌日から刃の部分をまず大まかに削り出して徐々に集中して磨き上げていく。こちらは削り過ぎても削り足りなくても切れ味に関わって来るので、結構時間がかかる上に集中力がいる作業になる。大体一日から二日くらい見ておかないとうまく行かないかな。

 まあそんな感じなので、ジャドの装備だけで休みがほとんど潰れてしまう事になる。それと生産ばかりではなく、幸もいるので祭りを見て回る予定でそちらにも時間用意しておかなければいけない。

 もくもくと作業を続け、それなりに納得の行くできになる頃には辺りがすっかり暗くなっていた。集中できた事もあって何とか今日だけで完成までこぎ付けたみたいだ。結局臨時の冒険は無かったな~ 明日はニイナ用の日本刀の下地を作って明後日は祭りって感じかな?

 幸が呼びに来たので晩御飯を食べながら今後の予定なんかも話していく。


 幸  「どこでどんな事をするとか、パンフレットみたいなものとか無いの?」

 ロプ 「ああ、向こうではそういう事もやっていたな。こっちはそこまで印刷技術が発達していないんだ。何かするにも全部一つ一つ手書きになるから本とかはかなり高額なものになる。日本みたいに気軽にばら撒けるような紙も無いしね」

 幸  「そっか。確かにこっちだと羊皮紙だったね」

 ロプ 「確かブレンダ女王が魔王軍と戦っていた時に紙を使ったやり取りをした事があったみたいだけれど、紙を作ってくれる国との行き来に使っていた転送魔道具が使えなくなって、また羊皮紙に戻ったって話だったかな。僕にもその転送の魔道具が作れたら、また取引とかできたかもしれないけれどな~」

 幸  「まあ仕方ないね」

 ロプ 「転送の魔法が使えるのは魔導師と言われる魔法使いの上位者の中でも、ごく一部のエリートって話だからね。多分僕にはそんな高度な魔道具は作れないかな」

 幸  「そんな高度な魔道具だったんだ・・・・・・昔の人は凄かったんだね~」

 ロプ 「だな。発明王なら作れたんじゃないかなって思ったりもするけど、さすがにあれは発掘品だろうな~」

 幸  「今度機会があったら聞いてみるよ!」

 ロプ 「もし作れるなら、魔導師との共同開発か、一人で作れるなら発明王はエリート魔導師としての力まであるって事だな。そうなると相当凄い人になるな~」

 幸  「王様より凄い人?」

 ロプ 「うーん、どっちが凄いかになると難しいな。多分能力なら断然王様より凄いだろうけれど、権力はどうなんだろうな。まあでもそれ程の魔道具を作り出せるならどの国でも優遇されるから、王様より凄いかもしれないな」

 幸  「へー、あの子まだ子供みたいだったけれど、優秀なんだね」

 ロプ 「そういえば、ドラゴンが作っているって言ってたか・・・・・・ほんとにあのドラゴンが魔道具を作っていたのか?」

 幸  「作っている所は見た事がないよ。でも、レイシアさんがそう言っていたし周りにいるパペットとか言っている人形とか、レイシアさんの知り合いの人達はみんなバグ君の事を特別な感じで見てたりしたけれど」

 ロプ 「まあ普通ドラゴンって言ったら、特別な存在だしね」

 幸  「そういう特別って感じじゃなくて、なんていうのかな? レイシアさんじゃなくてそのバグ君の方がご主人様だって感じで敬っている感じかな?」

 ロプ 「まあ人間とドラゴンなら、そうなって当たり前だと思うけれど?」


 なんとなくお互いに感じ取り方がずれているって気がするものの、どうずれているのかがわからない。ドラゴンテイマーは、確かに人間が優れた能力を持っていて称賛されているけれど、結局ドラゴンの方から歩み寄られているだけって事の方が多い。確か弟子のテイマーがドラゴンを使役したって話もあったから、相性というかテイマーとしての実力よりはドラゴンの気まぐれとでもいった方がいい部分もあったはず。

 そんな感じで、結局のところドラゴン程の強者を使役して凄いな! ではなく、ドラゴンが凄いっていうのが人間の感覚で言えば納得しやすい。そしてほんとに少数ではあるが、ドラゴンと交流できる人間がいる為に、人間はドラゴンを単純なモンスターとは見ずに、誇り高い最強の種族として見る傾向があった。

 そう考えるとレイシアさんの仲間達がドラゴンをレイシアさんより上に見ていても、何の不思議もないっていうのが僕の意見だ。これのどこが違うのかがわからない・・・・・・

 ウンウン唸って、幸の方でもどう言えば伝わるかって悩んでいたけれど、やがて何か思いついたように言って来た。


 幸  「一回だけこんな感じの場面を見たんだけれど、何か問題か何か起こったのかな? バグ君がレイシアさんと周りに指示を出してそれに従って行動していたから、バグ君の方がレイシアさんより上位者だと思われているって感じ?」

 ロプ 「まあそりゃあドラゴンだからな。レイシアさんより上位者だろう」


 やはり何か違っている気がする。

 その後も二人であれこれと話して何がすれ違っているのか確かめてみる。


 幸  「だからバグ君がレイシアさんを見守っているというか、加護を与えている存在といえばいいか・・・・・・」

 ロプ 「ドラゴンから加護を貰っているのか。テイマーというかドラゴンプリーストみたいだな」

 幸  「えっとレイシアさんはテイマーじゃなくて・・・・・・」

 ロプ 「テイマーじゃない?」

 幸  「うん、レイシアさんの職業は魂術師だって言ってたけど」

 ロプ 「それも知らないな。でも並の戦士より強い戦士と、テイマーだと思っていたんだけれど・・・・・・」

 幸  「複数の職業じゃなくて純粋な召喚術師だって話だよ」

 ロプ 「召喚術師だったのか・・・・・・でもそっちでもドラゴンは呼び出せるなー」

 幸  「バグ君は誰にも支配されていないって言ってたけれどね」


 ようやく何が間違っているのかがわかった。僕らがレイシアさんの姿を見て、勝手にテイマーだろうと決め付けていたってお粗末な話だった。前提から間違っていたのでは話がかみ合わなくて当然だったな~


 ロプ 「何か、二人の出会いにはいろいろありそうだな」

 幸  「ドラマチックな話がありそうだね。今度聞けたら聞いてみよう」


 結局レイシアさんとドラゴンの関係は推測するしかないけれど、少なくともどちらかが上とかそういう関係ではないみたい。一番近いところでいけば親友みたいな関係なんじゃないかという話で落ち着いた。

 翌日は予定していた通りニイナ用の日本刀の形を作って、刃の部分の削り出しまで終わらせてから寝ることにした。ジャドの日本刀作りで少しコツを掴んだからか、少しだけ作業効率が良くなったかも。

 さらに翌日祭り本番になり、僕達はパーティーで集まって回ることになったので、僕の家に集まってもらってから早速出かける事にした。まあ祭りといってもそこまで目玉になるような催しはないので、せいぜいいろいろな露店を回って食べて騒ぐ感じだろうけれどね。


 ロプ 「ジャドは対戦とか挑戦しないのか?」

 ジャド「あれは疲れるからもうしない。参加料取られた上に、何も得る物がないからな~。そりゃあ優勝できればいろいろもらえるだろうが、対人専門のやつらが参加するんじゃあ、勝ち目は無いな」

 幸  「ニンゲンヨリモンスターノホウガ、ヤッカイデハ?」

 ジャド「モンスター専門の方が一見強く見えるかもしれないが、結局そのモンスターも殆どの場合は人間に倒されている。結局しっかりした準備をして戦略を使って戦う人間の方が、厄介だってことだな」

 ニナ 「だね。参加する人はこの大会の為に、一か月くらい前から準備しているからね~」

 幸  「ソンナニマエカラ。スゴイチカラノイレヨウデスネ」

 レイ 「優勝すると、国からお声がかかる事があるしな。実際に何回は、騎士に取りたてられた者がいたはずだ」

 ニナ 「実力があっても駄目な人もいるけどね~」

 ミリ 「王宮で働くのだ。粗暴では駄目だろう」

 ジャド「まあ俺が優勝して、声をかけられても国で働こうとは思わんけどな~」

 ロプ 「冒険者の方が気楽で僕らには合っているよな」

 ミア 「そうですね。でもいつかは引退しますし、冒険者以外の何かがある方がいいでしょうね」

 ロプ 「その点なら僕は職人になればいいな」

 ニナ 「ずるい!」

 ロプ 「ずるくはない。その代わり僕には冒険者の才能がないからな。交換できるならニイナの才能と交換しようか?」

 ニナ 「それは嫌!」

 ミア 「私は交換したいかも」

 ジャド「何だ、ミリアナは生産に興味があるのか?」

 ミア 「そうですね。少しだけなら興味があります。ただロップソンさんみたいにいろいろ作れるのが羨ましいなって思っただけですよ」

 レイ 「確かに、自分もそういう才能が欲しいなと思うことはありますね」

 ロプ 「駄目元でやってみるか?」

 ミア 「ちょっとやってみたいかも・・・・・・」

 レイ 「私はそこまで器用ではないので、やめておきます」

 ジャド「じゃあそろそろ回ろうぜ」

 ロプ 「だな、どこから回る?」

 幸  「アノ、ソレナラマダチョウショクモマダデスシ、ナニカタベナガラマワリマセンカ?」

 ジャド「そうだな、ちょっと小腹も減っているし、まずは露店を回ろう」


 露店ならばとみんなを案内するように、商業ギルド前に移動することにした。商業ギルド前はそこそこ広い通りが続いているので、そこにギルド所属の腕自慢達が露店を開いて腕を競っている。

 大抵の者は店を構えて商売している為、ここで顔と名前を売っておけばその後の商売にも良い影響が出る。お祭りである程度無礼講とはなっているものの、露店では結構シビアな生存競争がおこなわれる為、ここに来ればリンデグルー自治国で一番美味しいといえるお店を見付ける事ができると思って、まず間違いはないだろう。


 ジャド「どこもうまいな!」

 ミア 「美味しいです。さすが商業ギルドですね」

 レイ 「素材本来の味を引き出しているこの揚げ物は絶品です。食べ歩きにも丁度良い一口サイズなところも中々良い」

 ジャド「肉だ肉。この串焼きもうまいぞ」

 ニナ 「これだからお祭りは最高だよね!」

 ミリ 「あそこの店だけ、客が多いな」

 ロプ 「あそこは確か、外国からやって来ていた人のお店だったと思うけれど・・・・・・詳しくは忘れたな」

 幸  「ナラブト、マチジカンスゴソウダネ」

 ニナ 「でも、あそこまで並んでいると、余程美味しいのかなって気になって来るよね」

 レイ 「確かに、それはありますね」

 ミリ 「交替で並ぶか?」

 ジャド「まあそこまでしなくてもいいんじゃないか? 時間が勿体無い気もするしな」

 ロプ 「だな。露店だけじゃなく、店を出すならそっちで食べられるだろうしな」

 ニナ 「そっか。なら他を回ろう~」


 露店での買い食いで、それぞれ腹を満たした僕らは、冒険者ギルド主催のトーナメントを見に行く事にした。その途中、露店の一角で騒ぎが起こっているようなので覗いてみると、隣国からの旅行者らしき男が露店の料理に文句を言っているようだった。ぱっと聞いたところによると、こんなまずい料理で金を取ろうなんて詐欺まがいだとか、そんな感じのいちゃもんだね。

 どうやらその旅行者は、ナルフィクト国から来ているみたいだと周りの野次馬の会話が聞こえて来て、おおよその事情みたいなものを理解した。あの国は初代勇者に縁がある国で、僕達の国の王族がかつて騙し討ちのような事をしたことを恨んでいるらしい。これは他国から伝わってきた薄い本に書かれた創作物らしいんだけれど、妙に符合する部分があるとかではっきりこの国の過去の物語だとは書いていないものの、信憑性が高いと歴史に興味がある学者達がその本の内容を調べたりしているのだそうだ。

 まあ今のところ、その本に書かれている事がほんとであるという事実は何一つ出て来てはいないけれどね。でも、たまにナルフィクト国やブグルイート国の国民達は、その本の中身を信じてこちらに嫌がらせをする事があるので、今騒いでいた男もその一人なのだと思う。


 ロプ 「そんなに気に入らないのなら、来なければいいのにな」

 ニナ 「ほんと、自分の国に引っ込んでろって言いたいよ」

 ジャド「なんだかんだ文句を言って、ただ食いしたいだけじゃないか?」

 レイ 「それは性質が悪いですね」

 ミア 「でもあの本の内容って、本当なんでしょうか? もしそうだとしたら私達の国が行った事は、とても許されるようなことではないですよね?」

 ジャド「まあほんとだとして、もう何百年も昔の話しだし、しかも王族が勝手にやったことだからな~。俺達がどうこうっていうのもおかしな話だよ。実際何も関係がないし、ただこの国で暮らしているだけの人間だしな」

 ロプ 「そうだな。何かしら償えと言われても、逆に困るって言いたい。それにもし誰かが何かしら償ったとしたら、リンデグルー自治国に住んでいる国民みんなに、償う義務が発生するだろうしな」

 ニナ 「え、そうなの?」

 ミリ 「確かに、それはありえそうだな」

 ミア 「国民の一人だけが償うと言うのもおかしな話ですし、確かにそうなってしまいますね」

 ロプ 「そうなると下手したら属国になるとか、誰かが奴隷として扱われる可能性も出て来るからな。下手に罪の意識とかは持たない方がいいだろうな~。まあ、結局王族は魔王軍に殺されたって話しだし、罰は受けているんだろう」

 ジャド「だな。悪い事はできないって事だ。さあ嫌な事は忘れて、祭りを楽しもう!」

 ニナ 「おー」


 冒険者ギルドに着いた僕達は、普段は入れない地下へと降りて行った。地下には冒険者適正を見る為に軽く戦える場所などがあって、そこでトーナメントをやっていて、この時期だけ開放されている。


 ジャド「今回は結構参加している人がいるみたいだな」

 ロプ 「今は予選か?」

 ジャド「みたいだな。どうするもう少し後で見に来るか?」

 幸  「ナンデ、モウスコシアトニ?」

 ニナ 「それは、予選はまだまだ実力を出して戦わない試合ばかりだからだよ」

 レイ 「白熱するのは、本戦のトーナメントが始まってからですからね」

 ロプ 「とりあえずどんな人が出ているのかだけ、見ておこう」

 ミア 「そうですね。どんな人達の戦いが見られるのかは、結構大事です」

 ジャド「だな。サチさんには退屈かもしれんが付き合ってくれ」

 幸  「ワカリマシタ」

 ロプ 「やっぱり対人専門の人が多いな。何でも屋が少し混じっているが」

 ジャド「まあ、そこは仕方ないんじゃないか? こんなガチバトルの中に混じって、俺達みたいなのが付いていけるとは思えんしな~」

 幸  「ソモソモ、ソノタイジンセンモンッテ、ナニヲシテイルヒトデスカ?」

 ロプ 「ああそうか、冒険者って言っても、それぞれに得意分野があるんだ。僕らは何でも屋って感じで、何かに特化している訳じゃない代わりに、それなりのものなら何でもこなすって感じかな。で、対人専門っていうのは賞金をかけられた人間をターゲットに戦う賞金稼ぎになる。彼らはそれ専門だからモンスターとは戦わないな。まあ対人専門があるならモンスター専門もいるんだ。こっちは護衛の仕事とか、ダンジョン探索みたいな仕事はしないで、危険なモンスターの情報を集めて、それだけを討伐している。後は、ダンジョン専門のトレジャーハンターと護衛専門の職業冒険者だな」

 ニナ 「護衛専門は新人がやる事も多いよね~」

 ミア 「初めは護衛が一番ですよね。他の護衛の人と組めるので、冒険者としての経験もつめますし」

 幸  「イロイロアルンデスネ~」

 レイ 「サチさんはいきなり初心者の過程を飛ばして実践をこなしていたので、相当優秀な冒険者ですよね」

 ジャド「だな。殆どの初心者は、大体初めては緊張してミスをするもんだが、サチさんはそんな事もなかったしな」

 幸  「ハヤクミナサンニオイツキタカッタカラ」

 ミア 「サチさん、頑張り屋さんですね」


 雑談しながらも、それぞれに見たいと思う人の参加状況をチェックしていた僕達は、先に他を回る為に一度冒険者ギルドを後にした。


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