まだまだ準備中
登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) ジャド=ジャド(台詞表記) ニイナ=ニナ(台詞表記) ミリアナ=ミア(台詞表記) レイセモルス=レイ(台詞表記) 小林幸=幸(台詞表記) ミーリス=ミリ(台詞表記)
翌日もギルドに集まると再び素材集めへと出かける。今回も僕と幸が別行動で、みんなは以前相手したヒュドラとツインヘッドスネークの討伐へ向う事になっている。とりあえず、ヒュドラとツインヘッドスネークがいるとされる洞窟へみんなを送った後、僕らは自分達の担当の獲物がいる所へと向った。
まずは平原で、目の前に見えているコカトリスを倒す事から始める。といっても、前回と違い今度は僕が幸の護衛として周囲の警戒をして、コカトリスの相手は幸に丸投げって感じなのだけれどね。
見晴らしのいい場所で遠距離からの狙撃の為、まるっきり危険な事もなくサクサクと倒せている。
ロプ 「ここまで来ると、逆につまらないって感じがするな」
幸 「これって弓とかでも同じ事ができるんじゃないの?」
ロプ 「いや、弓だとまずこの距離は届かないし、当たっても一撃で倒せたりしないからこんな感じにはならないよ。そうだな、当たったら剣を抜いて接近戦が始まるって感じかな」
幸 「へー、結構大変なの?」
ロプ 「そりゃ嘴が当たった物は、剣でも鎧でも石化するからね。下手すれば弓で飛ばした矢すら、嘴で弾かれる事もあるそうだ。コカトリスは初心者には強敵っていえる相手だな」
幸 「銃って、世界バランスを崩しているのね」
ロプ 「幸の場合は、ほぼ確実に一撃でしとめる技術が凄過ぎるんだけれど。ひょっとしてそれもスキルか何かか?」
幸 「パッシブスキルとか言っていたかな。向こうでは銃なんか触った事もなかったんだけれど、元々適正があったんじゃないかって言っていたわ」
ロプ 「やっぱスキルか・・・・・・凄いスキルを手に入れたんだな~。それも異世界に来たチート能力とかいうものなのかな?」
幸 「こちらに来たばかりの時には持っていなかったって話だけれどね。私が扱いやすそうな武器として銃を作ってくれて、訓練していたらスキルを覚えたって言っていたよ」
ロプ 「なあひょっとして、レイシアさんって人の素質みたいなものがわかる人なのか?」
幸 「うん。ステータスって言うのがわかるらしいよ」
ロプ 「まじか! ただの噂かと思っていたけれど・・・・・・そういえば発明王の知り合いだったんだよな。それくらいはできるって事か・・・・・・」
幸 「ちょっと前のステータスになるんだけれど、一応ステータスカードって言うのをもらっているよ」
名前 小林幸 種族 異世界人 職業 ガンナー
LV 35 HP 237 SP 61
力 26 耐久力 19 敏捷 43
器用度 60 知力 112 精神 29
属性 無 空間
スキル 敵感知 射撃 料理 収納 弾丸作製 銃器知識
ロプ 「おー、これが幸のステータスか・・・・・・弾丸作製? ひょっとして向こうの銃器みたいに、弾の入れ替えとかしていたのか? 見た事なかったけれど・・・・・・」
幸 「あっちみたいに何発か撃ったら撃てなくなるみたいな感じじゃないんだけれどね。それでも百発とかは撃てないの。せいぜい四十発くらいかな? 後は弾の種類があってね。試した事とかはないんだけれど、属性を乗せた攻撃ができるそうだよ。こっちだと幽霊も相手にしないといけないから、そういう時に弾を変えて撃てって言われたわ」
ロプ 「あー、確かに幽霊系統は、通常武器が効かないからな。そっちにも対策がされていたのか・・・・・・さすが発明王の作った兵器だな。この収納って何だ? 整理整頓が上手になるスキル?」
幸 「これはあまり周りに見せるなって言われていたんだけれど・・・・・・こういうやつ」
そう言うと、幸はどこからともなく掌サイズの小さな四角い箱を取り出した。手品のように出て来たそれに一瞬どこから出したんだ? って思ったのだが、そこで理解した。収納・・・・・・つまりアイテムをどこかから出し入れするスキルだ。
ロプ 「凄いスキルだと思うけれど、何で見せるのが駄目なんだ?」
幸 「便利だから下手に知れ渡ると、周りの人に狙われるかもしれないって言っていたかな」
よくよく考えてみれば、武器の類を一切持っていないと油断させて、どんな武器でも持ち込めるとなれば、最強の暗殺者になれる・・・・・・確かに下手な組織なんかに目を付けられれば、洗脳されたり何なりと余計な危険を背負い込む事になるかもしれないな。つくづく何が危険に繋がるのかわからないものだ。そして発明王はそういう危険に対して余程慎重とみえる。
ロプ 「そのステータスカード、落としたら危険じゃないか?」
何かしら対策がされているのかもしれないが、一応聞いてみた。
幸 「このカードは許可なく見る事ができないらしいから平気よ」
やっぱり、しっかりと対策がなされているようだ。僕が発明王に追い付くのは無理そうだと軽く凹む。いつまでも落ち込んでいられないと、さっさとコカトリスを回収して、次の目標に向かって移動する事にした。
次の目標はアラクネの糸である。撒き散らされた糸は質が悪くなっている為、アラクネを一定数倒して回収した糸が望ましい。アラクネが根城にしている岩場の場所までやって来ると、幸が恐々と聞いて来た。
幸 「ねえ、ひょっとしてこれから倒す敵って、蜘蛛とか?」
ロプ 「蜘蛛に人間を模した上半身をくっ付けた様なやつかな。幸は蜘蛛が苦手だったのか?」
幸 「うん・・・・・・ちょっと駄目かも」
ロプ 「そうか、じゃあ幸はここで待っていてくれてもいいよ。多分僕だけでも行けると思う」
幸 「ごめんね」
ロプ 「仕方ないさ、誰にでも苦手なものはある。周辺の警戒だけは忘れないようにな」
幸 「うん」
蜘蛛は駄目か・・・・・・正直一人だときつい可能性もあるが、まあ油断しないように行けば何とかできるかな? 幸だけでなく、こちらも周辺の警戒をしっかりして、不意打ちだけはされないように気を付けて行かないと下手したらやられるからな。慎重に行こう。
アラクネの探知は結構厄介である。ここが岩場である事で多少はわかりやすいのだが、ここが洞窟や家の中などだったら振動による感知が意味をなさなくなる。そして熱感知も待ち構えている場合は反応が薄くなる。仮死状態とでも言えばいいのか、あまり熱を出さない為に見逃しがちになるのだ。そして生命感知は一番有効ではあるのだが、残念ながら周りにいる虫なども反応してしまう為に、反応がアラクネなのかどうかがわからない。アラクネを捜す時は複数の探知魔法を使い、目視によって気を付けて行かなければいけないのだ。
ロプ 「燃え盛れ炎よ、ファイアランス」
わずかな反応を見逃す事無く、アラクネがいると判断できた場所へと魔法を仕掛けて行く。それと同時に別の所でもまた、アラクネがいると思われる場所が複数わかる。おそらくはこちらが魔法を撃った事で、思わず反応してしまったのだろう。
ロプ 「燃え盛れ炎よ、ファイアランス」
せっかく見付けたのだから、きっちり魔法の数を拡大して撃ち込んでおいた。複数の場所から断末魔の呻き声が聞こえて来る。なんとなく、魔法に集中しつつも、他の事に意識をまわせている事に驚きを感じていた。昔ケイト教頭先生に教えられた感覚に似ている気がするのだが、なんだったか・・・・・・
落ちこぼれの自分には縁がないと思って聞き流していた気がするのだが、はっきりと思い出せない。そう思いつつも、また別の場所でアラクネが動いた事を探知できる。
ロプ 「燃え盛れ炎よ、ファイアランス」
すかさず魔法を撃ち込んだ時、背後で急にアラクネの反応が確認できて心臓が跳ね上がったのが自分でもわかった。しまった、余計な事を考えていて反応を見逃していたかもしれない!
ロプ 「飛沫よ凍れ、フリーズブリッド」
そう思いつつ振り替えると、こちらへと槍を構えて突撃して来るアラクネを見て、反射的に口が呪文を唱えていた。
二つの魔法がわずかな差でもって撃ち出されて行くのが嘘の様に見える。どちらのアラクネも魔法に直撃されて沈黙したんだけれど、僕は別の事に驚きが隠せなかった。
上級魔法使いになれば、魔法を複数同時に扱う事ができるという話をケイト教頭から聞いた事を思い出した。だが当時落ちこぼれと言われ、担当教師からは見込み無しとまで言われた僕には、到底上級魔法使いにはなれないものだと思い込んでいた。だから魔法の二重詠唱については、そういうものがあるとだけ記憶して聞き流していたのを思い出す。
つまり、僕は上級魔法使いになったという事なのか? 確かめてみようと考えた。
アラクネの位置を探り、さらに反応を三つ確認できたので試しに異なる呪文を唱えた。
ロプ 「燃え盛れ炎よ、ファイアランス。飛沫よ凍れ、フリーズブリッド」
属性で言えば対極に位置して、イメージを切り替えるのが難しいと思える呪文二つは無事に発動して、炎の槍が二本と、氷の礫がそれぞれ目標となるアラクネに向って飛んで行った。二重詠唱をしながら、魔法の数の拡大も問題なく使いこなす事ができた。
探査の反応を見るに一撃でしとめる事もできており、二重詠唱の影響で威力が減少したりとか狙いが甘くなったとかも無い完全な形だった。
どこか、感慨深いものを覚える。
ケイト教頭先生がいつの日か言っていたのだが、例え落ちこぼれだと人から言われたとしても、諦める事無くがんばれば人は確実に成長するものだ、だからがむしゃらに突き進めと教えられた。
ほんとに二重詠唱が使えるようになったんだな・・・・・・
その後夢ではないと思いたくてひたすらアラクネを発見しては、わざわざ二重詠唱を使っては攻撃を繰り返していった。つい調子に乗って使いまくったおかげで、アラクネの死体が四十体を越えたところでようやく疲れを感じて我に帰ると、討伐部位と糸を回収する作業に移る事にする。
夢中になると直ぐに目的を忘れてしまうな・・・・・・幸が待っているだろうから急いで回収して合流しないといけない。
戻って来るとアラクネの死体が一つだけ残っていて、幸がどこにも見当たらずに焦ってしまったのだけれど、マギーの裏にいる事を発見して安心した。
ロプ 「遅くなってごめん」
幸 「ううっ、遅いよロップソン」
ロプ 「とりあえず移動しよう」
またアラクネが出て来るといけないのでさっさと場所を変える意味も兼ねて、次の素材が手に入る場所へ移動する。運転中幸をなだめていると徐々に安心したのか、落ち着いてもらえて許しを得られた。
ついつい嬉しくて熱中して申し訳ない事をしたな。そう思いつつも次の敵について説明をして行く。
ロプ 「次の相手はバジリスクだ。見た目は大き目の蜥蜴って感じだけれど、こっちは問題なさそう?」
幸 「うん、大丈夫だと思う」
ロプ 「一応注意点としては相手に睨まれたら石化されるから、攻撃範囲には近付かないっていう事と、できるだけ正面には回らないって感じかな」
幸 「石化して来る範囲ってわかっているの?」
ロプ 「個体差があるから正確じゃないかもしれないけれど、大体三十メートルだと思う」
幸 「こっちの射程よりは短いね。先に発見できれば問題ないと思うよ」
ロプ 「ああ、気付かれないように近寄られるのだけ気を付けよう」
幸 「うん」
バジリスクに関しては、特に問題となる事は何もなかった。遠くから発見したバジリスクをしとめていくだけで、危険とは無縁だったのだ。
幸がしとめたバジリスクを処理して荷台に積み込んで僕らのノルマ最後のロック鳥のところへと向う。ロック鳥は切り立った崖の上に巣を構える事が多いので、移動がとても大変だったりする。それとロック鳥そのものもかなりでかくて厄介な相手だった。おまけに空を飛び回るしね。
こいつらに剣はあまり意味をなさない為、僕と幸の二人に任されたともいえる。欲を言えばミーリスにも手伝ってもらいたいのだけれど、そうするとヒュドラの方の戦力が不足するからな~
幸の銃器なら大丈夫だと思いたいな。
幸はこういう崖登りなどした事がなくて、移動が大変そうだったから、ウッドマンの背中に乗せて移動する事にした。念の為、ウッドマンから落ちないようにロープを使って固定してひたすら崖登りをして行く。まあ、崖登りといっても、垂直の崖をロッククライミングする訳ではなく、ごつごつとした道なき道を足元に気を付けて登っているのだけれどね。
それでもハイキングのような山と違い、斜面はかなりきつく岩にへばり付いての移動になるので、楽しむ要素などは皆無だった。
そんな移動を二時間は続け、やっとロック鳥の巣がある場所へと登って来る事ができた。その巣には卵もロック鳥自体もいなかったのだが、とりあえずはここで待っていれば帰って来ると思われる。
卵があれば、特別報酬ももらえたかもしれないんだけれどな~。ちょっと残念だ。
一応周辺を見て回ったのだけれど、やはり他に巣は存在していないようだし、この巣が放棄された物だとは思えない。帰って来るのかどうかわからない状態で、どれくらいそこにいたのか、直ぐ動けるように簡単な休憩をしていたところ、鳥の鳴き声が聞こえて来たので周囲を見渡してみると、巣に真っ直ぐ向って来るロック鳥を確認する事ができた。
ロプ 「幸、ロック鳥が来たから準備よろしく」
幸 「えっと、撃てたら撃っちゃった方がいいのかな? そうするとどこかに落ちちゃう気がするんだけれど」
ロプ 「構わない。落として止めをさす」
幸 「わかったわ」
ロック鳥の大きさのせいで、距離感がわかりにくくなっていたのだけれど、ある程度まで近付いて来たロック鳥が突然バランスを崩したように落下し始めた。幸の狙撃が当たった様だね。
ロプ 「ウッドマンに捕まってくれ。みんなで一気に降下する」
幸 「え! わかった!」
こちらの指示に従って、ウッドマンの背中に乗ってしがみついて目を閉じる幸を、ロープで手早く固定して魔法を唱える。
ロプ 「我自然の理を歪め地上に降り立つ、フォーリングコントロール」
呪文が完成する前に、ウッドマンを走らせ空へとダイブさせた。僕もウッドマンに捕まって、これでしばらくの間は空中散歩の時間が始まる。ロック鳥の墜落した方向へと進みながら、落下速度をコントロールしつつ移動していると、やがて慣れたのか幸は周囲を見回す余裕が出て来たようだ。
まあ、まだ若干引きつっている感じだけれどね。
ロプ 「いた、まだ生きているみたいだな。幸わかるか?」
幸 「うん、わかった。狙撃するの?」
ロプ 「できるか?」
幸 「足場が不安定だからちょっとわからない」
幸が安心して狙いを付けられるように、僕も幸を抱きしめて固定する。しばらく深呼吸して息を整えた幸が、落下の衝撃でもがいているロック鳥に狙いを定めて二回攻撃したようだった。なるべく怖がらせないようにとゆっくりと降下して行く中、狙撃の結果を見てみるとうまくいったようで、今度こそしっかりとしとめられていた。
ロプ 「お見事!」
幸 「うーん、そうでもないかな。一発外しちゃったみたい」
ロプ 「ありゃ。まあでもしっかり結果が出たんだし、そう気にする事もないと思うけれど」
幸 「うん。でももう少し環境に影響されないように、がんばらないと!」
ロプ 「無理はしなくていいからな」
真面目だな~。そう思いつつ、十分くらい落下し続けた空中遊泳は終わり地面に降り立つと、ロック鳥の死体がある場所へと再び崖登りを始めた。
フォーリングコントロールは、空を飛行する魔法ではない為、落下位置を選ぶ事はできないのだ。ちなみに、僕に飛行魔法のフライはまだ使えない。あれは上級魔法使いのさらに上の魔導師が使う魔法なのだ。がんばっていれば、いつか僕も魔導師とかになれるのだろうか?
ロック鳥の死体を確保して、血抜きなどの処理をした後アイスの魔法で鮮度を保ちつつマギーのところまで帰って来た。おそらくジャド達も既に討伐を終えてお茶会でもして待っている頃だろうと、マギーを走らせながら合流する為に洞窟前に急ぐ事にする。




