トレント討伐
登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) ジャド=ジャド(台詞表記) ニイナ=ニナ(台詞表記) ミリアナ=ミア(台詞表記) レイセモルス=レイ(台詞表記) 小林幸=幸(台詞表記) ミーリス=ミリ(台詞表記)
翌日ギルドに集まった僕達は、本日の目標であるトレントの討伐の為に森の中へと移動していた。一応トレントが目的ではあるのだが、マンドレイクやアルラウネもこの森には生息しているらしく、何とかそちらも討伐できればと考えられている。どこかに生息しているのはわかっているのだけれど、見付けられるかどうかは運次第なのだ。まあ、そうはいっても大体の生息地域は絞り込めているようなので、いくつか回れれば見付ける事はできると思う。
昔はマンドレイクを引き抜くと悲鳴で死ぬとか言われていたが、実際には悲鳴を上げられても麻痺するくらいで死にはしない。おそらくビックリして心臓麻痺でも起したのだろう。
ちなみに悲鳴を上げられないように回収する手段もわかっている。花と根っこを切り離したら悲鳴を上げられる事無く回収可能だ。ただし、切り離した瞬間から鮮度が落ちるのでお勧めはしない。ではどうするかといえば、周りの土ごと持って行くのである。この時の注意点は、土になるべく振動を与えない、そして根を傷付けないという事だ。
マンドレイクとアルラウネを探しつつ森を進み、トレントが生息する森の最深部を目指した。
ジャド「マンドレイクは見付からないな。トレントが終わってからじっくりと探した方がいいかもしれない」
ニナ 「魔法で探せないの?」
ミリ 「魔法はそこまで万能ではないからな。申し訳ないが無理だ」
ミア 「こればかりは仕方がないですよ。焦らないでじっくりやりましょう」
ジャド「そうだぞ~ 別に行きに発見できなくても、帰りはもっと広範囲に調べて行けば問題ないだろう」
ロプ 「トレントが終われば、別れて行動してもいいからな~ 行きよりは見付けやすくなるだろう」
レイ 「ですね」
ジャド「そろそろトレントの生息する場所だな。最低一体だから二体は倒すぞ」
ミア 「はい!」
ニナ 「やるぞー」
トレントは木のモンスターだけあって、めったに動かない。火事などでない限りは大体同じ所にいるので、探しやすい相手だった。だからまずはトレントを倒して、帰りにマンドレイクを探す予定になっていた。まあ運ぶのはかなり大変だろうが、その為にウッドマンを連れて来ている。二体同時に運ぶのはさすがに無理だろうけれどね・・・・・・
結局マンドレイクは発見する事ができずトレントのいる所まで来てしまった。普段のトレントは周りの木と殆ど変わる事無く見分けできないので、気付かずに近づいてしまうと一瞬で襲われ養分にされてしまう結構厄介な相手である。
見分ける方法としては、魔法による熱感知くらいだろうか? 周りの木と違い動ける木なので少しだけ熱を持っている。微妙な差なので注意深く見なければわからないのだけれどね。
でもって前方にトレントが密集しているのがわかるのはいいのだが、さすがにあれだけの数を相手にするのはきついので、どうしたらいいのか対策を立てなければいけない・・・・・・
ロプ 「なあ、トレントって一体に攻撃すると一斉に襲い掛かって来るか?」
ジャド「結局動かなかったら、トレントの攻撃範囲に入る事になるしな。わざわざこっちにまで歩いて来てくれないのなら、こっちから行く事になるし一斉に襲って来るんじゃないか?」
ロプ 「だよな~」
ニナ 「魔法で燃やしちゃえば?」
ジャド「素材を採りに来て燃やしたら何をしに来たんだって話になるな」
ニナ 「あー、そっか」
ミア 「それでは攻撃そのものが駄目なのでは?」
ジャド「なるべく同じところに攻撃して、体力を削るしかないだろうな」
ロプ 「あっちもこっちもって攻撃を仕掛けると、使える部分が減るからな。なるべく影響が出ないところを攻撃する方がいいだろうね」
ニナ 「根っことか?」
ミリ 「トレントの根っこは、攻撃する為に動いて来たはず。確かに全ての根っこを倒せれば状態のいい素材が取れるだろうが、肝心の根が土の中では一部の飛び出して来た根っこしか攻撃もできないだろうな」
ロプ 「ああ、アースボムで地中の根っこを攻撃したら、こっちに動いて来るんじゃないか?」
ミリ 「ふむ。動かないのなら根を全部吹き飛ばせるという事か・・・・・・動いて来たのなら孤立させて倒せると?」
レイ 「いい作戦だと思う」
幸 「ウゴカナカッタラ、カイシュウハドウスルノ」
ロプ 「なるべく外に向って倒れてもらって、倒れたらこっちに引っ張ればいけないかな?」
ジャド「引っ張っている間、他のトレントの根っこはみんなで斬り落とす感じか・・・・・・行けるんじゃないか? ウッドマンで引っ張れるのか?」
ロプ 「どうだろうな。トレントの枝の状態にもよると思うが、試して見るしかないかもな」
ジャド「一応念の為に言っておくが、トレントは折れた枝も価値があるそうだ。持って行けそうな物は全部回収して行くからそのつもりでいてくれ。じゃあ、ロップソン、ミーリスやってくれ」
ロプ 「大地の怒りをここに、アースボム」
ミリ 「大地の怒りをここに、アースボム」
一回二回と魔法を叩き込んで行ったのだが、トレントに変化は現れなかった。こっちの方まで振動が伝わって来ているので、魔法が発動しているのは確かなはずなんだけれどな・・・・・・
ニナ 「あれってほんとにトレントなの?」
ロプ 「多分、そうだと思うんだけれど・・・・・・」
ミリ 「私の探査でもトレントと判断できた。二人が同じ結果を出しているのなら間違ってはいないだろう」
ジャド「じゃあこのまま倒せるんじゃないか? すまんがしばらく続けてくれ」
ミリ 「了解した」
ロプ 「あいよ。大地の怒りをここに、アースボム」
続けるのはいいとしてここまで反応がないと、ただの木に魔法をぶつけていい気になっているやつみたいでなんか釈然としない気分にさせられる。それとも、こちらの魔法など大して痛くも痒くもないって言いたいのだろうか?
一方的に魔法をぶつけ続けてそろそろ二十分程経とうという頃、やっと状況に変化が現れたようで、今までまったく反応を見せなかったトレントがこちらに向かって移動して来た。
ジャド「やっと動いたか、他のトレントから引き離して一斉攻撃を開始する。攻撃位置はなるべく足元を狙うように!」
ミア 「わかりました」
ニナ 「暴れまわるぞ~」
ミリ 「やっとロングソードの試し斬りに適した相手が出て来たのだ。存分に戦わせてもらおう」
ロプ 「あー、ワニ程度じゃあ役不足だったのか。トレントは固いらしいから確かに丁度よさそうな相手だな」
ミリ 「ああ、すまんが魔法は温存で戦わせてもらうぞ」
ロプ 「剣の魔法増幅効果はどうだった?」
ミリ 「ああ、そっちはかなり威力が高くなっていた。それだけでもかなりありがたかった。礼を言う」
ロプ 「いやいや、不具合などありそうなら言ってくれ」
ミリ 「その時は頼む」
こっちで話している間にトレントが十分に離れたようで、ジャドから合図があった。
ジャド「こいつに正面はない、全員気を付けて戦えよ。かかれ!」
こういう全員で戦う場合、特に全員で一体の敵と戦う時などは結構周囲への警戒が疎かになりがちである。その為、今まで魔法攻撃で誘き寄せなどしていた僕が指輪の探査で周囲の警戒する事にする。別に初めから決まっていた訳ではないのだけれど、こういうのは気が付いた人がやればいいかと考える。
まあいざとなれば、ジャド達も直ぐ気が付くだろうけれど、最悪間に合わない事もあるかもしれないからね~
ロプ 「幸、五時の方向ゴブリン六体。こっちを優先してくれ」
幸 「はい」
探査に引っかかったゴブリンの集団に気が付いたので、幸に迎撃をお願いした。何か今、僕の指示より先に反応して見せたような気がしたのだが、あっという間にゴブリン集団を迎撃してくれる。
ロプ 「ありがとう、ちょっと討伐部位の回収をして来るよ。一応周りには気を付けておいて」
幸 「うん、わかった」
断りを入れてゴブリンのところへと向い、討伐部位の回収をする。相変わらず一体に一発でしとめている。
そういえば幸が攻撃を外したところを見た事がないな・・・・・・ひょっとして撃ち出された弾が誘導されているのかな? もしそうなら恐ろしい兵器を作ったものだ・・・・・・
回収を終えて戻ると、まだ戦闘は続いていたので、こちらも魔法攻撃で参加して行く。
トレントの攻撃方法は、根っこを地中から槍のように突き出す攻撃と枝による締め付け、葉っぱを鋭い刃物のように飛ばして来る遠距離攻撃、後は多少の精霊魔法がある。締め付け攻撃は多少の猶予があるものの、どの攻撃もまともに食らえば致命傷になりかねないきついものだった。
ロプ 「あ、こいつ自分の実を使って回復してやがる! 幸、枝についている果実を撃ち落とせるか?」
幸 「やってみる」
偶然だったのだが、枝に成っていた果実がしぼんだようにしわくちゃになるのを目撃して、トレントの実には回復効果がある事に思い至った。トレントの実はさまざまな薬に使われるので、錬金術だけではなく調合の素材としても結構人気がある。
ロプ 「ニイナ! 幸が撃ち落したトレントの実を回収してくれないか!」
撃ち落せるのはいいのだが、落ちた実を拾って回復しようとしているのに気が付いて、ニイナに指示を出す。
ニナ 「任せて!」
ひょっとして根っこを魔法で攻撃していても平然としていられたのは、この果実で回復していたからかもしれないな。となるともう残っている果実は殆どないと思われる。なんとも勿体無い事をしてしまったものだ・・・・・・でもだからといって、他の手段も思い付かなかった事なので、もう一体引っ張り出す時にはまた別の手段を検討しなければいけないな・・・・・・
結局殆どの果実が回復に使われてしまって回収できなかったものの、七つの果実を手に入れる事に成功した。トレントは回復手段を失い、四十分程の戦闘により倒す事に成功したのだけれど、さすがに強敵だって感じだね。戦闘が終わるとみんなして座り込んでいた。
いつ足元から攻撃が出て来るかわかったものではない為、常に動き回っていた訳だから仕方ないだろうけれど、さすがに体力を一杯使ったようだった。
ロプ 「幸は疲れたりとかしなかったか?」
幸 「みんな程走り回っていなかったから大丈夫だよ。それに指輪の効果なのかな? 今日はそんなに疲れていないわ」
ロプ 「そうか、ならよかったよ」
ミリアナがお茶の準備をしていたので、みんなで休憩する事にして二体目の対策なども休憩の間に決める事にした。
ジャド「まさか自分の実で回復しているなんて、気が付かなかったな。もう一体は倒したいのだがちょっときついかな?」
ロプ 「実自体は幸に撃ち落してもらえばある程度大丈夫だろうが、拾って回復しようとしていたからな。あらかじめこっちで回収できる方法があれば何とかなると思うのだが・・・・・・」
ミア 「でも果実を拾いに近付くと、普通に攻撃されるから」
レイ 「魔法で何かないのか?」
ミリ 「風で果実を転がすとかか?」
ジャド「それ、できるか?」
ミリ 「おそらく引っかかってうまく行かないと思う。それにそんな風にした果実はボロボロになって使い物にならなくなるから、それなら初めから幸殿に撃ち抜いてもらって、使えなくした方が手っ取り早いかと」
ロプ 「確かにそうだな」
ニナ 「私が走り込む?」
ジャド「それは止めておけ。さすがにあの集団の中に行ったら一瞬で捕獲されてやられるぞ」
幸 「トリトカヲ、ショウカンデキナイノデスカ?」
ロプ 「僕は使えないな。鳥が出せれば撃ち落した果実をキャッチして運んでもらえるか・・・・・・」
ミリ 「残念ながら召喚魔法は蝙蝠くらいだ。果実を運ばせるには少々心もとないかと」
ジャド「諦めるしかないかな~」
レイ 「風で転がすのが無理なら、水で流すのはどうかな?」
ロプ 「水路みたいな物を作れば行けるか? だが結局周りにぶつかれば痛むのは変わらないと思うが・・・・・・」
ミリ 「いや、本来なら足止めに使う植物操作の魔法で、果実を包んでしまえば傷付けずに済むのではないか」
ジャド「なら魔法で水路を作って根元に水を溜めてもらい、サチさんに果実を撃ち落してもらった後植物操作で果実を包み、水で押し流すってやり方で果実を回収してみるか。あらかた果実の回収が終わったらアースボムで根を破壊してもらってこちらに誘導して、さっきと同じ要領で倒す。こんな感じかな?」
ミリ 「やれるだけやってみよう」
ロプ 「だな、駄目元で一度試してみるか」
ジャド「よし、休憩が終わったら行ってみよう」
ニナ 「おー」
何とか行けそうな感じでよかったよ・・・・・・お茶を飲んでほっと一息付く。
ロプ 「そういえば、ミーリス。剣の方どうだった?」
ミリ 「素晴らしかったぞ。今までの剣なら少し傷を付けられればいいところといった感じだったが、ロップソン殿に作っていただいた剣は多少硬いとは思ったものの、しっかりと斬れていた。申し分ない武器だった」
ニナ 「私も剣欲しい!」
ミア 「ニイナはもう作ってもらったじゃない」
ニナ 「そうだけどそうじゃなくて、日本刀のやつが欲しい」
レイ 「それならば、私も欲しいです」
ジャド「おーおー、大人気だな~」
ロプ 「さすがにあれは直ぐには作れないぞ。時間がかかってもいいならいずれって感じかな~」
ニナ 「それでもいいよ、作って!」
ロプ 「あいよ~」
ミア 「やはり、いくら仲間だからとはいえ、お金を払った方がいいんじゃないかしら」
ジャド「装備が整えば、全員の生存率も上がるんだから、気にしなくていいと思うのだが・・・・・・それに日本刀のお金を払うとかになると、金貨百枚とか普通にかかるだろう。ニイナ、そんなにお金持っているのか?」
ニナ 「ある訳ないじゃん!」
ミア 「そんなに高い物なんですか! じゃあ、この鞭もそれくらい?」
ジャド「そっちはどうなんだろうな? さすがにもう少し安くなるとは思うが、そっちはそっちで魔道具だからな。百枚とはいかないまでも、五十枚は越えるだろうな」
ロプ 「ジャド、お金の話はそこら辺りにしておこう。さっきジャドも言っていたが、みんなが強くなればそれだけ僕としても守ってもらえるからな。こっちにとっても金額云々より価値がある話だ。お金で護衛を雇うのと違って、仲間なら僕自身も冒険して強くなれるからな。だからそこまで気にしなくていいと思う。
まあいつか言ったとは思うが、その代わり冒険しながら作っているから、いつ出来上がるのかはわからないのは覚悟しておいて欲しいな」
ミア 「あまり無理しないでくださいね。ちゃんと休まないと倒れちゃいますよ」
幸 「ダイジョウブデス。ソコハチャントミテオキマスカラ」
ロプ 「まあ朝遅刻しない代わりに、眠い時もあるけれどな~」
幸 「ヨルオソクナラナイヨウニ、キヲツケマス」
そんな感じで雑談しながらお茶を飲みクッキーを食べてのんびりとした後、行動を開始する。
ロプ 「大地に穴を穿て、アースディグ」
まずは目標となるトレントの足元に池を作る為の受け皿を製作する。こういう作業は普段生産をしている僕の得意とするところなので、早速イメージを構築して魔法を発動させていく。大体膝下くらいの深さで、果実が落ちても傷付かないようにできるだけ広めの池になるように土を掘ってみた。足元が掘られたけれど、今のところトレントに動きは無さそうだな。それを確認すると安心して次の水路を作る作業に移る。
ロプ 「大地に穴を穿て、アースディグ」
なるべく早く果実が転がるように傾斜を作って水路を作製する。終点になる部分には水が溜まるようにもしておいた。果実の状態次第だけれど、傷んでないようならこちらも商業ギルドの方へと持ち込む予定だからね。
こちらの用意はこれで終わりになったので、水流操作をミーリスに任せる。
ミリ 「流水よ渦巻け、アクアストリーム」
水の範囲攻撃になる魔法なのだけれど、ただの水を出すだけだと果実がうまく流れない可能性を考えて上級の水魔法を使う事になった。そしてミーリスの魔法と同時に幸の狙撃が始まり、次々と果実が下に落ちて行く。
ロプ 「新緑の命ここに我が意思に従え、コントロールプラント」
次々と撃ち落されていく果実に対象の数を拡大させて魔法を施していく。植物に絡み付かれた果実は、ミーリスの操る水流に乗って僕らの後方の水溜りの中へとどんどん流れて行った。後ろからニイナの楽しそうな声が聞こえているので、ドンドン集まる果実を回収して袋にでも詰めて行っているのがわかる。
ちょっと雑に扱って痛まないか心配になったりもしたが、まあミリアナも一緒にいるだろうからそこは任せてもいいかな? それよりも魔法に集中しよう。結構数があったようで、幸もドンドン打ち落として行っている。
トレントは実を守ろうとしているのか、枝を伸ばして果実を庇おうとしている様だが、銃器で撃ち抜かれるだけで全然防御できていないようだった。それより問題なのは撃ち抜かれて落ちて来る枝が水路を詰まらせないかという事だろう。幸いにして水流の勢いが強い為、水路を詰まらせる暇がなく杞憂に終わったようだった。
幸 「ワカルハンイデウチオトシテミタノデスガ、ドウデショウカ?」
ジャド「いいんじゃないかな」
レイ 「奥にもう一つありそうだな」
幸 「ドコデスカ?」
レイ 「あそこだわかるか?」
一生懸命指差して幸に教える。それで何とかわかったのか、撃ち落された果実を魔法で保護する。
ジャド「ニイナ、ミリアナ。そっちはどうだ~」
ニナ 「ばっちり!」
ミア 「魔法の草って、後で消えたりしますか? 草が巻き付いたままの方がいいかと思って、そのまま袋に詰めましたが」
ロプ 「消えはしないが、そのうちに枯れるかな。トレントを討伐したらきちんと包装しよう」
ミア 「わかりました」
ジャド「じゃあ予定通りトレントをこっちに誘い出してくれ」
ロプ 「了解! 大地の怒りをここに、アースボム」
今回ミーリスは戦士としてトレントに斬りかかるようで、誘い出す魔法は僕だけが使って行く。トレントは根っこを攻撃されて果実で回復する事ができないので、魔法を止めようと直ぐこちらへと歩いて来た。
その後の討伐は固いトレントをみんなでひたすら叩いて行く事で無事に終了する。時間と手間がかかったが、これといった問題も起こらなかった。まあ油断したら危ないのは変わらないけれどね。
戦闘終了後僕と幸はマギーの所までトレントを運ぶ役目を割り振られる。幸が付いて来る理由は、輸送中の護衛だった。そしてみんなと別行動な理由は、帰りにマンドレイクを見付ける為である。ジャドとレイ、ニイナとミリアナとミーリスって感じで左右に別れて探索しに移動して行った。まあ彼らの心配よりこちらのトレントの輸送が問題だな。とりあえずの障害を取り除く為に枝を切り落して丸太の様にしていく。まあ、枝が無くなった所で運ぶのは大変な作業なのだけれどね。
そこで以前作った運ぶ君を丸太になったトレントの下に設置して行く。もちろんこれだけでは柔らかい地面にめり込むだけで持ち上がりさえしないので、風の魔法によって地面をなるべく平らに削り、氷の魔法によって固い道を作る。その細い道の上で運ぶ君によって持ち上げられたトレントを、ウッドマンが引っ張って移動して行く。
道を切り開き凍らせてと何度も繰り返して、やっとの事でマギーの所まで到着すると、荷台三つを使ってトレントを固定する。また後一本残っているので再び戻ると同じように枝を切り落して運ぶ君で持ち上げて引っ張って行く。切り落した枝を回収する必要があるので、後でまたここに来る必要があるのが面倒だな。
ロプ 「森は慣れないだろう、体力は大丈夫か?」
幸 「前みたいに歩けなくなる程じゃないよ。ちょっとは疲れているけれど、後で休めば大丈夫だと思う」
ロプ 「無理はしてないよな? 冒険者はそういう嘘を付いたら後で致命的なミスに繋がるから、絶対見栄とかそういうので大丈夫とか言ったら駄目だ」
幸 「うん、本当に大丈夫だよ。多分指輪のおかげだと思う。ちゃんと後で休憩するから平気」
ロプ 「そうか、ならいい。枝を採りに行くから後一往復って感じになる」
幸 「わかった」
道中、特にモンスターや野生動物に襲われる事なく枝の回収も終わらせる事ができた。自分達の仕事は無事に終わらせたので、幸と一緒に休憩しながらみんなが帰って来るのを待つ事にする。
一時間程待っているとジャドとレイが帰って来た。レイが膨らんだ袋を持っているので、どうやらマンドレイクを見付けたようだね。ただ、捕獲したのは一匹だけのようだった。はぐれのマンドレイクだったのかな?
ロプ 「お帰り~。無事に見付けたようだね」
ジャド「一匹だけだけれどな。群生地を見付けられたらよかったんだが、早々うまく行かないな」
レイ 「まだニイナ達の方が残っている。見付けて来てくれるでしょう」
ロプ 「だな」
それからさらに一時間程待つと、ニイナ達が帰って来た。全員が膨らんだ袋を持っているところを見ると、どうやら群生地を見付けたようでホクホクした顔で帰って来た。
ジャド「収穫あったようだな!」
ニナ 「もう、ばっちりだよ!」
そう言うと、バックパックの中に隠していたものを取り出した。アルラウネも捕獲できていたとは! アルラウネは、マンドレイクの変異種でぱっと見はマンドレイクと区別が付かないのだけれど、危険が近付くと走って逃げる習性がある。知能も人並みに高いと言われていて、めったに捕獲する事ができないのだが、それを捕まえて来るとはさすがだな~
今のアルラウネは湿った布に包まれていて、眠っている状態だ。アルラウネを捕獲できた場合に生きたまま持ち帰る方法として伝わっているやり方で、一杯の水分を含んだ布を巻き付けると落ち着いて眠ってしまうのだそうだ。
ジャド「よく捕まえる事ができたな。確かアルラウネは精霊魔法を使って来るって話じゃなかったか?」
幸 「マホウモツカウノデスカ!」
ジャド「ああ、確かそう聞いたぞ」
ニナ 「ニシシ、例え知能が人並みにあると言っても、それで冒険者に勝てる訳ないよ。こっちは経験も積んでいるんだしね!」
ミア 「ですね。私達が囮として正面から近付いたのですが、ニイナが裏の方で気配を消して隠れていたので、そっちに追い込んだんです」
ミリ 「作戦勝ちだ」
ニナ 「いえーい」
これで今日も無事にノルマを達成できたようだ。少し休憩を挟んだ後、早速商業ギルドまで戻る事にした。
いつもなら、ここで解散となるのだけれど、今日は日本刀が欲しいと言っていたみんなの希望を聞く為に家まで来てもらうついでに、せっかくなので庭でバーベキューでもしようって感じののりになったので、幸を手伝ってジャドとミリアナとミーリスが調理班として準備してもらい、僕はニイナとレイを連れて工房で希望を聞く事になった。
壊れやすい模造刀であると説明しておいたのだけれど、調子に乗ったニイナが振り回して粉々に砕け、掃除に手間取るという出来事もあったけれど、まあそれなりに楽しい騒がしい時間が終わり、それぞれ帰って行く。
また明日も素材集めがあるので、工房には行かずに僕も休む事にした・・・・・・




