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魔石職人の冒険記  作者: 川島 つとむ
第三章  異なる世界
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異世界で自立

登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) 小林幸=幸(台詞表記) 鹿島雄二=鹿島(台詞表記) 佐竹寿美=佐竹(台詞表記) 武田亮二=武田(台詞表記)

 こちらの世界に飛ばされた日から、おおよそ三ヶ月くらいが過ぎようとしている。

 今の僕は研究所の側に平屋の一軒家を建てて、そこに独自の工房を構えた生活をしていた。

 一人暮らしではなく幸さんと、変わらず護衛をしてくれている鹿島さん、佐竹さんが一緒の家に住んでいる。

 何故研究所の中ではなく外で暮らしているのかというと、それなりに言葉や常識などを覚えたので、いつまでもお世話になっている訳にもいかないと自立しようと考えたからである。

 ただ自立するのはいいとして、僕がいなくなると武田さん達の方に問題が有るという話だったので、敷地内に家を建てることになったのだった。

 ここでさまざまな機械部品のパーツを生産することで、日々のお金を稼ぐのが今の僕の仕事である。

 研究所の方ではお互いの技術提供っという話はまだ生きていて、こっちとも仕事としてお付き合いしていっている。

 まあしかし魔力持ちや場所は見付からないまま、魔石の解析もできていないので、僕からの魔石提供を続けている感じだけれどもね。

 永続した魔石の提供が出来ない今、魔石は試験的な使われ方をしていて、その一部の使い方は研究所内で使用している電力を魔石でまかなっている感じだった。もちろん自動車も、今までの電気スタンドで補給するのではなく、魔石によって動いている。

 おかげで雷が落ちてもこの研究所だけは停電しないって言われていたよ。この施設に直接雷が落ちない限りだけれどね。


 さて季節は秋になり、ここは山に近いせいかずいぶんと寒くなって来ていた。秋でこの寒さだとすると冬という季節は一体、どれ程寒いのか・・・・・・今から恐怖を感じているよ。夏という季節に川に落ちたのは、運がよかったといえるね。

 そういえば、こちらに来たばかりの頃は相当暑かった気がするな。向こうではそこまでの気温差などはなかったので、ここまで温度差があるのかってちょっとビックリしていた。まだまだ冬ではないので、もっと差が激しいそうだけれどね・・・・・・

 そんな訳で、今から暖房の魔道具なんかを研究していたりする。構造はそこまで複雑ではなくて、風の幕を作りその風に熱を加えるものだった。

 指輪に二つの魔石を埋め込んで、魔法をリンクさせて完成させる。今回使った魔石は、元の世界から持って来た方の魔石で、一日三つ作れる魔石は雷を作り出す為に予約済みだった。

 今回、冬がもっともっと寒くなると言われて魔道具を久しぶりに作り出したけれど、こっちに来てからは魔道具の開発はめきりしなくなっていた。

 何故かというとほとんど開発するまでも無く、電化製品としてお店で売っているので、わざわざ似たような物を開発する必要が、無くなってしまっていたからだ。科学っていうのは、すさまじいなって思ったよ。

 まあその代わりというのか日々の生活費を稼ぐ為に、毎日必死に働かなくてはいけないようだ。この国の人達は、働き過ぎなんじゃないか? って思う程夜遅くまで仕事をしている。

 おかげでこっちまで、夜遅くまで働くはめになってしまった。

 部品を作っては納品して、ただそれを繰り返す日々になりつつあって、思っていた感じの豊かな国って夢が崩れていきそうだったよ。


 幸  「ロップソンさん、大分疲れて来たわね」

 ロプ 「ああ、少し疲れが、溜まって、来たかもしれないな」

 鹿島 「夜にでも飲みに行くか?」

 ロプ 「あー、いいかも、しれませんね」

 幸  「じゃあサクサクと仕事を終わらせて、飲みに行きますか!」

 佐竹 「そうですね。お手伝いしますよ」

 ロプ 「申し訳ない、ですが、よろしく、お願いします」

 鹿島 「まあ手伝うって言っても、運ぶだけですけどね~」

 ロプ 「いえいえ、それだけでも、助かりますよ」


 夜の飲み会に盛り上がりつつ、僕と幸さんは仕事を終わらせようと働き出した。

 幸さんの仕事は、本来であれば僕のサポートらしいのだけれど、言葉と常識をそれなりに覚えてからは殆どフリーになった関係で、簡単な内職をするようになった。

 忙しそうに働いているのを、ただ見ているだけっていうのはつまらないのだそうだ。鹿島さんと佐竹さんはさすがに護衛の仕事をしているので、内職をする訳にはいかないのだそうで、たまにこっそりと手伝いをしてくれる感じだった。

 こんな平和な感じの国で、何から護衛するのかなって感じなんだけれどね~


 ロプ 「こっちは、もう直ぐ、終わりそうですよ」

 幸  「私の方はいつでもきりが付けられるわよ」

 鹿島 「今日は何処に飲みに行きますか?」

 幸  「少し離れますが、ジャズでも聴きながら飲めるところ知っていますよ」

 佐竹 「それいいですね。ぜひ行きましょう!」

 ロプ 「お任せします」

 鹿島 「さっさとこんな仕事終わらせて、飲みに行こう!」


 あー、さっさと飲みに行きたいのか、プレッシャーをかけられてしまった。できが雑にならない程度に急いで仕事を進めることにする。納品自体は明日の朝一なので、完成させてしまえば今日はのんびりできるだろう。

 みんなに急かされながら部品作りをこなして、十分で仕上げたのだけれど、みんなからの早くしろっていう無言のプレッシャーは結構精神的にきつかったよ・・・・・・

 さて嫌な仕事は片付いたので早速飲みに行きたいところだけれど、車は飲酒運転してはいけないそうなので、近場の駅までタクシーで移動し、そこから電車で目的地まで繰り出すことになった。


 鹿島 「ロップソンさんは、大分日本に馴染みましたね」

 ロプ 「ええ、ようやく、という、感じですが」

 佐竹 「言葉もほぼ問題無さそうですしね」

 幸  「私は逆に、ロップソンさんの日本語が上達しちゃったので、異世界の言葉を使わなくなっちゃいましたけれどね」

 ロプ 「幸さんの、言葉も、片言なら、うまくなって、いましたよ」

 幸  「そうですか? いつかロップソンさんのいた世界にも行ってみたいものですね~」

 鹿島 「帰って来られないのは嫌だな~」

 佐竹 「確かに、行き来できるのならば行ってみたいですね」

 幸  「確かに言葉の壁はきついですから、いつでも帰れるとかなら観光したいですよね」

 ロプ 「観光か・・・・・・あっちには、モンスターも、いますから、そこまで、気楽には、行けないかと」

 鹿島 「あー、確かにもし行くとしたら武器が欲しいところだな」

 佐竹 「銃ですか?」

 鹿島 「ファンタジー溢れる世界に、銃を持ち込むっていうのもイメージぶち壊しになっちゃいそうだが、それくらいは持っていかないと逆に怖いだろうな」

 ロプ 「そういえば、昔に、銃器と、呼ばれる武器、使っている人、いたと聞いたよ」

 鹿島 「ファンタジーの世界に、銃器が存在していたのかよ! なんというか、ちょっとがっかりだな~」

 ロプ 「いえ、確か、その武器を、持っていたのは、一人だけ、だったかと」

 佐竹 「ふむ、銃器と呼ばれているだけで、別物の可能性もありますね」

 幸  「ファンタジーっぽい感じの銃なのかしら?」

 鹿島 「ファンタジーっぽい感じの銃? 弾じゃなくて魔法が飛ぶ銃とか?」

 佐竹 「ありそうですね」

 ロプ 「確か、光の弾が、出たって、話だった、かと?」

 鹿島 「光線銃か! ファンタジー飛び越して、SFっぽいな」

 佐竹 「ああ、確かにSFですね。でもそんな物もあるなんて、どんな文明レベルなのでしょう?」

 鹿島 「こっちと違って魔法が発達しているんだろう? 空に大陸が浮いていたり、海底都市があったりとかじゃないか?」

 ロプ 「そんなものは、無いですよ。さっきも、言いましたが、銃を、持っていた人は、一人だけでしたし、魔道具の技術は、僕だけでした」

 鹿島 「じゃあやっぱり中世ヨーロッパって感じなのかな~」

 幸  「そんな世界で、一人だけ光線銃を持っていたって。やりたい放題ですね~」

 佐竹 「確かにそうですね」

 幸  「あ、次の駅で降りますよ」

 鹿島 「わかった」

 佐竹 「わかりました」


 聞こえて来たアナウンスに、そうみんなへと言って来る。駅を降りてからちょっと歩くことにはなったのだけれど、まあ行きはそこまで大変ではないので問題ない。

 帰りは多分酔っているのでタクシーで駅まで行く予定だった。

 電車から降りた僕達は駅を出て街中へと歩き出した。お店がある場所を知っているのは幸さんだけなので、みんな幸さんについて移動して行く。


 ロプ 「結構、離れていますが、よく、お店、知っていましたね」

 幸  「昔同級生に連れて来られた事があったのよ」

 鹿島 「お、恋人か?」

 幸  「いえ、女性で友達ですよ」

 佐竹 「大学のですか?」

 幸  「ええ、今はあまり会う機会もありませんが、たまに連絡くらいならしていますね」

 鹿島 「確か教育関係の大学でしたか?」

 幸  「ええ。その友達はうまく就職できたようで、今は教師をしているはずですよ。私は教師にはなれなくて、何でかこんなところにいますけれどね~」

 ロプ 「僕としては、助かって、いるのですがね」

 幸  「そう言ってもらえると嬉しいです」

 鹿島 「希望通りの職に付けるとか、早々ありませんよ」

 幸  「そういう鹿島さん、佐竹さんは何でボディガードのお仕事なんかしているのですか? 結構危険なこともあるのでしょう?」

 佐竹 「私は、道場の娘をしていたので、なんとなく流れでこうなってしまいましたね」

 鹿島 「俺の場合は、こんなガタイで普通の仕事は向いていなかったからな~。喧嘩は強かったので選択肢が限られていたって感じかな~」

 佐竹 「ロップソンさんといい勝負でしょうね、体は」

 鹿島 「護衛対象の方が強そうっていうのは、なんと言っていいやらだが・・・・・・確かにいいガタイしているな。いっそ護身術でも習ってみるか?」

 ロプ 「少しなら、習ってみても、いいかも、知れません」

 鹿島 「お、興味あるか! なら今度暇な時にでもやってみよう」

 佐竹 「そうですね、多少だけでも自衛できれば、こちらも安心できますしね」

 鹿島 「だな!」

 幸  「もう少しで着きますよ~」


 そのまま雑談をしながら歩くこと五分くらいで、店の外にまでジャズの音色が聞こえるお店に到着した。夏とかには外でも飲んだりできるように、テーブルなどがあるみたいだがこの時期だと寒いからか、お客さんは外にいないようだった。

 幸さんを先頭に店の中に入って行くと、圧倒的な音の歓迎を受ける。

 確か今吹いている楽器はトランペットとかいう物だったか、スポットライトの中で一人吹き鳴らす楽器の音は、圧倒的な魅力に溢れた音色で、音楽などろくに知りもしなかった僕でも思わず聞き惚れてしまう力があった。

 そういえば、あっちの世界にはこんな感じの楽器は存在していなかった。一般庶民には日々の暮らしをがんばる方が忙しくて、音楽を楽しむ余裕などなかったように思える。

 簡単なギターを弾いただけの語り部が、歌を詠うのが贅沢な世界だった。それこそ、貴族達しかそういう楽しみは知らないだろうな。

 まあたまに気まぐれな吟遊詩人が酒場までやって来て、歌っているって話は聞いたことがあったが、彼らは気まぐれで直ぐに店からいなくなってしまい、めったに見ることも無い。

 彼らは物語を求めて、常に移動しているのでよほどの理由が無ければ定住しないはずだった。こっちの世界では、こうして一般市民でも音楽を楽しめている。音楽を聴きながら酒を飲めるとか、いい環境だよね~


 店の中は結構な人がいた為、座る場所が無いかとも思ったのだが、店の淵の方に何とか座れる場所を確保して、僕達はやっと落ち着くことができた。

 早速ビールと軽い食事を注文してジャズを聴く事にする。

 独特なメロディーが味わい深く、ドラムといわれる楽器の重低音が体に心地いい。それにチャッチャと聞こえて来る普通なら雑音だろう音も、思わず踊りだしたくなる気持ちにさせてくれた。

 今はステージで歌手の人が歌を歌っている。あっちの世界ではこういうものも存在していなかったので、とても奇妙な感じがするな。あちらの歌というと、弾き語り。手元の楽器をたまに鳴らしては物語を音に合わせて語るものが、歌と言われていた。

 こちらの歌とはずいぶんと違っている。


 幸  「どうかな? 気に入ってもらえたかしら?」

 ロプ 「ああ、凄くいいな」

 鹿島 「騒いで飲むのもいいが、たまにはこういうのもいいもんだな」

 佐竹 「雰囲気も、音楽も楽しめますね。また来たいって思いましたよ」

 鹿島 「だな」

 ロプ 「ですね。僕も、また来たいです」

 幸  「気に入ってもらえてよかったわ」


 その後、曲の合間に雑談を挟みながら、結構長い時間をその店で過ごした。


 鹿島 「いやー、音楽っていいな~。昔自分でも楽器ができないかってギターを買って弾いていたのを思い出したよ」

 佐竹 「弾けたのですか?」

 鹿島 「いや、それがまるっきり。ドレミファってのすら、よくわからなかった」

 佐竹 「思い付きで行動するのは、昔からなんですね~」

 鹿島 「あれは思い付きって言うよりは、衝動だな。こう思わずやりたくなってしまうんだよ」

 佐竹 「まあわからなくはないですが・・・・・・」

 幸  「私も昔にピアノに憧れたことはありましたよ。さすがに買って欲しいってねだっても無理でしたけれどね」

 佐竹 「確かに、ピアノには憧れましたね。お嬢様ってイメージがあったのでやろうとも思いませんでしたが」

 ロプ 「タクシー、来たみたいです」


 鹿島さんが助手席に乗り込み、後部座席に幸さん佐竹さん、そして僕が乗り込むとゆっくりと走り出す。


 ロプ 「今日は、素敵な、お店を、教えてくれて、ありがとう」

 幸  「いえいえ、喜んでもらえてこっちも嬉しいわ」

 佐竹 「また時間を作って行きましょうね」

 鹿島 「だな」


 まだ余韻が残っている僕達は、言葉少なくそんな事を話しながら帰路に着いた。


 鹿島 「道が違うぞ」


 余韻を楽しんでいた僕の耳に、なんとなく緊張した鹿島さんの声が聞こえて来る。


 運転手「いえ、今日はこの先で工事をしているので、少し遠回りになりますがこちらの道から行った方が、かえって早く帰れるのですよ」

 鹿島 「そうか」


 車内が緊張に包まれる。何事もなければいいのだけれど、なんとなく嫌な予感がし出した。久しく忘れていた戦闘の前の緊張感とでもいうものなのか、何かが起こるって予感がした。

 そしてその予感は、薄暗いどこかの駐車場へと入ったことで確信に変わった。


 鹿島 「くそ!」


 ある程度危険を承知で鹿島さんがドライバーを殴って気絶させて、慌てて車を操作して止める。

 その間僕と幸さんは佐竹さんに頭を抑えられて、体勢を低くさせられていた。そして車が止まって直ぐに足音が聞こえたと思ったら、複数の人が車を殴り付けるガンガンと響く破壊音が聞こえて来た。

 ガラスがひび割れて徐々に壊れて行くのが、微かに頭を上げることで確認することができる。

 このままここにいては危険過ぎる。


 ロプ 「荒れ狂う風よここに、ウィンドカッター」


 落ちこぼれだったが故に、身に染み付いていた呪文詠唱は、しばらくのブランクなどものともしないですらすらと口から出て来た。

 魔力の乏しいこの世界では、完全な形で魔法を実現させることはできなかったのだけれど、それでも車の周囲を取り囲んでいた者達の体に浅いながらも傷付ける事ができたようで、車を殴る手は止まったようだった。


 鹿島 「今のうちに移動するぞ」


 そう叫んで走り出す鹿島さんに続いて、佐竹さんが僕ごしに扉を蹴り破って外に僕達を連れ出した。鹿島さんはドライバーを担いで僕達の前を走ってこの場を離脱している。

 こっちの人達は結構非力な人が多いのに、この人は案外力持ちだったんだな~。走りながらそんな事を思ったよ。


 鹿島 「こちらの位置はわかるか? 賊の一人を確保して現在警戒しながら移動中、至急車の手配をお願いする」

 ?? 「了解した、五分で到着する」


 鹿島さんの携帯からそんな声が聞こえて来たよ。今まで気が付かなかったけれど、ひょっとしてもっと一杯護衛の人達がいたのかな?

 そんな事を思いながら、鹿島さんに付いてあちこち移動していると、一台の車がやって来たのがわかった。その車はヘッドライトを何回か点滅させたので、敵ではないと判断できた。一瞬増援かって思って緊張してしまったよ。


 鹿島 「迎えが来てくれたみたいだ。さっさと帰ろう」


 僕達が後部座席に乗り込むと、車は直ぐに発進して誰とも無くため息を吐き出した。


 鹿島 「みんな怪我など無いな?」

 ロプ 「大丈夫」

 幸  「なんともないです」


 鹿島さんが確認している間、佐竹さんが連れて来たドライバーを縛り上げていた。平和な国だと思っていたのだけれど、裏ではこういうことが起こっていたんだろうな。

 改めて、ほんとの平和っていうものは、簡単には手に入らないものだと思い知らされた気がした。


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