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魔石職人の冒険記  作者: 川島 つとむ
第三章  異なる世界
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異なる世界

登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) 小林幸=幸(台詞表記)

   第三章  異なる世界


 何かがおかしい。

 違和感を感じた僕は、背の高い草の中に身を隠して身の周りをよく観察することにした。そして空気が悪く息苦しいことに気が付く。

 魔力が枯渇しているのか?

 落ちこぼれの魔法使いではあるが、魔力の存在くらいは感じ取ることはできる。それによると、ここの周辺に魔力を含んだものは何も存在していないことがわかる。そんな場所など聞いた事もない。

 と言うことは、ここは魔界なのか?

 それならば獣を連れて歩いていた人は魔族で、ウルフを支配していてもおかしくはないかもしれないな。可能性の一つとしてありえそうだと思った僕は、なるべく見付からないように情報を集めようと思った。

 観察して見ると、川の上に黒い道があり、そこをさっきからまばらに人と同じ姿の者達が歩いて行くのだけれど、結構な割合でさまざまな種類のウルフを連れていた。

 ここは調教師の住む集落か何かなのか? 集落というには、壁が見えないほど大きそうだが・・・・・・

 さらに観察してみると、人力の二輪の乗り物などを使っている者も現れる。

 ふむ、あれは移動が楽そうだな。どうやって動かしているのか、おそらくは足で何かを動かしていると思われるが、ここからでは遠過ぎてよくわからない。機会があれば近くで観察して、構造を学びたいところだな。

 マギーを小型化したような物が走っているのも見受けられた。人が乗るには屈んでギリギリ乗り込めるような、窮屈そうなマギーで、何であんなに窮屈な造りにするんだって言いたいような物が走って行っている。

 それからもしばらくは観察していたのだけれど、魔族と思えそうな者達ではない感じだった。それとも戦闘しない魔族は、普段は人と変わりがない生活をするものなのか?

 ただ見ているだけでは、これ以上は判断できそうになかった・・・・・・

 魔力が枯渇した地で、魔法を使うことは厳しいので、襲い掛かって検証とかは危険が大き過ぎる。相手の肉体能力がずば抜けている可能性も考えると、魔法を封じられたも同然な僕は子供にも負けそうだからね。

 ここは下手な行動は避けるべきだろうと判断した。

 そしてここにいつまでもいても、これ以上の情報は得られそうにないので、移動を考えるべきだなって思ったよ。


 さてここで問題なのが、まずは食料の確保だな。見たところ近くに森はなさそうだったので、確保するのならば魚になりそうなんだけれど、こんな濁った川に住んでいる魚は、どう見ても食用には向いていなさそうだった。

 となると一度この町の外に出て、草原などで野生の動物などを探すのがいいかもしれない。

 問題はどっちに向えば壁を越えられ、町の外へと出られるかだな。現在地がわからないと行動しにくいので、人通りが途切れた隙に川上にある道へと移動し、近くにあった木の上に登る事にした。高い場所からならば、この町の終わりも見えるだろうと思って見渡してみたのだけれど・・・・・・

 何だこれは・・・・・・

 どこまでも、どこまでも家と思える建物や、もっと大きな建物が乱立していて終わりが見えなかった。

 町の終わりの壁が存在していない。それに町全体が、黒い道が網のようにどこまでも続いていて、そこを数えるのも馬鹿らしい数のマギーが走り回っていた。

 ここは大都市だ。しかも僕が今までいた国などお呼びも付かないくらいに優れた国であるのがわかる。

 下手に人型の者と接触するのはまだ早いと判断して、多少お腹は減っているがここで夜を待つことにした。

 それと手持ちのチェックだな。魔石はそれなりに持って来ているが、こんなことになるとは思ってもいなかった為、食料の類はせいぜいが一食分。

 鳥が飛んでいるところを見かけたので、魔石による攻撃で捕獲できるのならば、それで多少は食いつなぐことはできそうだな。何とか数日くらいなら、現状で生きていられそうだった。


 夜になり、本来なら人々は眠りに付くものだと思うのだけれど、この国は違うようだった。町には光が溢れ、今だ人が起きて活動を続けているのが見て取れる。

 ここに来て、完全に自分の知っている世界ではないとはっきりと気が付く事ができた。

 ただそうなって来ると、ここはどんな世界なのかが問題になって来る。魔力が枯渇している状況から、ここは魔界なのではと予想してみるものの、想像していたような無秩序さが感じられない。

 少しでも何かしらの情報を手に入れる為、暗闇で多少は目立つことなく行動できると思い町を探ることにした。幸いというのか、魔法を使えなくてもところどころに照明があり、足元などに不安はない。

 これだけの人が行き来しているので、ダンジョンのように道端に罠がある訳もないだろうしね。

 ただ、明かりがあるので逆に周りの人との服の違いで目立ってしまっている感じはしたよ。それともう一つ、人込みに紛れてみてわかったことがある。どうやらこの国の人々は、僕と違う言語を使っている様子だった。おかげで何を話しているのかがわからない。

 情報を集める上で、かなり不利な状況になったものだな・・・・・・

 それにしても、この国の人間達は全体的に小さい者ばかりだな? 大人の男性だと思う者も下手をしたら僕の頭一つ分は小さい。女性はさらに小さくて、頭二つは小さい者が多かった。

 僕は国では平均より少し小さい方だと思っていたのだけれど、この国に来たらガタイが良い方になるようだ。僕は魔法使いなんだがな~

 そんな言葉も通じず、ひょろひょろとした人々とたまにすれ違いながら町を見て回っていると、壁一面が光を放ちながら、絵を刻々と変えていっている物を発見した。これは絵なのか?

 よく観察しようと顔を近付けて見てみると、光を発生させているとても小さな物が、密集して次々と絵を変えていっているのがわかる。

 どうやら光を利用した絵画のようだった。

 そのわりにはこの絵は人の表現が素晴らしいな。まるで実際に生きているかのように動いている。

 しばらくその不思議な絵画を見ていると、どうやらこれは実際にどこかの人を写しているのが理解できた。一種の情報伝達装置って事なのだろう。

 よく出来ているなっと思っていたら。こちらに近付いて来て何か話しかけて来た者達がいた。


 ?? 「・・・・・・・。・・・・・・・」

 ロプ 「あー、申し訳ないが、何を言っているのかわからん」


 どうやら即危険っていう感じの人々ではないと思われるが、まだ安心はできない。特に話しかけて来たこの二人の男は、腰に小さな棍棒をぶら下げていて、おそろいの青い服を着ている。この国の兵士か何かの可能性もあるので、状況次第では逃げる必要もありそうだった。

 相手もこちらと言葉が通じないことを理解したのか、何やら相談している感じで黒い掌サイズの物に対して何か叫んでいる。黒い箱と会話しているのか? 箱から人の声のようなものが聞こえて来る。

 新種の生物でないのなら、おそらくは離れた相手と通信する為の魔道具辺りか? 魔力もないのに、この国にはこういった不思議な道具が溢れているようだった。

 他のところも見て回ろうとして、移動しようとするのを目の前にいる二人組みが遮って来る。


 ロプ 「言葉が通じないのはわかっているんだが、邪魔をしないでくれないか」

 ?? 「・・・・・・。・・・・・・・・!」


 やっぱりお互いに意思疎通することはできそうにないな。こういう時に何か役に立つ魔法などがあれば、便利なんだけれど落ちこぼれの僕では、初級の攻撃系の魔法しか習ってもいないんだよね・・・・・・

 そんな事を考えていると、二人組みはどうやら僕を小型のマギーへと連れて行こうとしているようだった。逃がすつもりはないようだけれど、強引にどこかへ連れて行きたい感じではなさそうだな。態度としては、こっちへ来て欲しいって感じだろうか?

 僕としても小さなマギーには興味があるので、ちょっと乗って見ることにした。二人組みに引っ張られたことでわかったことなのだがとても非力で、おそらくこの人達相手ならば、五・六人くらいで押さえにかかられても、力付くで抜け出すこともできるのではって思われたので、相手が強引な態度でなければ当面は安全かなって思えたのだ。


 マギーに乗る時、頭をぶつけないように押されながら後ろの方へと座らされる。対応を見るに、敵の捕虜を捕まえたって感じではないね。とすると僕をどこへ連れて行く気なのかも気になるところだな。

 まあそれより僕が気になるのはマギーの中だった。何だこの座り心地の良い椅子は! 中はいろいろな音で溢れていて煩い感じがするけれど、振動もなく快適に動くマギーに驚きっぱなしだった。加速や停止もスムーズで、黒い道で一定のルールに従って動いているのが見てわかる。

 この国では、マギーが一般に普及していて、当たり前の文化として溶け込んでいるのがわかった。それに、外を流れる景色を詳しく観察できるのも凄いな。首が痛くなる程の高さまである建物が、一杯立ち並んでいてひょっとして未来の世界に飛ばされて来たのではって思ってしまう。

 そう考えると、マギーを発展させた未来は、こんなマギーの溢れる世界になっていたって事なのだろうか? そおう考えるのが妥当なのだけれど、それならば言葉が通じないことが疑問だった。やはり情報が足りな過ぎるな。

 やがてマギーがやって来た所は、この小さなマギーと同じ白黒の模様で統一された物が何台も止められている建物の中へと入って行った。歩いている人も青い服で統一されているところから、ここは彼ら兵士の詰め所かもしれないな。


 ?? 「・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・」


 マギーが止まると、降りるように言われているんだと思われ、建物の中へと案内される。今のところ危害も加えられる様子もないことから、とりあえずは着いて行っても大丈夫なのではと思える。

 建物の中もかなり狭い感じではあるが、青い服の人々が忙しそうに動き回っていたりする。その中で煙を吐き出している者がいたので、なんだと思って立ち止まっていると、口にくわえた細い棒で何やら煙を吸って吐いてとしているようだった。そういう煙を吐く種族かと思ったのだけれど、違うみたいだな。案内していた人達が、僕を動かそうとグイグイしていたので、再び付いて歩くことにした。

 やがて小さな部屋の中へと案内される。ひょっとして閉じ込める気か? 警戒すると、扉は完全には閉めなかったので、監禁したい訳ではなさそうだった。安心していると、どうやら椅子に座れというように言われている気がした。

 ふむ、特に問題もなさそうだったので、その椅子に座る。


 ?? 「・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・」

 プロ 「何か話し合いをしたくてここに連れて来たのかもしれないが、残念ながらわからないよ」


 無駄と思いつつも相手にそう言ってみる。ここが未来なら、古代語を理解している人を連れて来るとかした方がいいと思うんだけれどな。その後も、お互いに何かしら意思の疎通はできないかと、言葉を話してみるけれどどちらもうまく通じることはなかった。


 結局その日はその部屋で、厚手の大きな布を貸し出されて眠りに付いた。椅子に座った状態で眠っていた為少し体が痛い感じだったので、ストレッチなどをして体を解していると、どうやら朝食も持って来てくれたようで受け取る。

 紙でできた袋に、同じく紙に包まれたパンかな? パンは上下に別れていて、間に何やら挟まれていた。とても美味しいパンだったよ。僕の知っているガチガチに硬いパンと違い、とても柔らかくて甘い感じがした。パンに挟まれている野菜や肉かな? それらも、味わった事がないような美味しさだった。

 こんな高級品をご馳走になるなんて、ひょっとして僕は歓迎されているのかな? そう感じたりしたけれど、それにしてはそこまで友好的って感じの態度ではなさそうだ。状況がよくわからないな・・・・・・

 その後も、何とかお互いに意思の疎通をしようとハンドサインやら、体を使っていろいろな合図をお互いに送ってみたのだけれど、徒労に終わりそうだった。


 ?? 「・・・・・・・・・・・・。・・・・・・日本・・・・・・・・・・・・・」


 そんな中で聞き覚えのある単語が聞き取れた。それは発明王が開発した日本刀の上の部分。


 ロプ 「今、日本って言ったか?」

 ?? 「・・・・・・日本・・・・・・・。・・・・・・・日本・・・・・・・」


 お互いに、そこだけが理解できた。何でそこだけ通じたのか?


 ロプ 「じゃあもしかして、日本刀ってのも通じるのか?」

 ?? 「・・・・・・・・。・・・・・・・日本刀・・・・・・・」


 どうやら日本刀も知っているらしい。と言うことは、マギーと日本刀の技術が、遥か言葉も代わってしまうくらいの未来まで、残っていたという事なのだろうか? 残念ながら、これ以上のことはわからなかった。

 念の為に、今まで僕が発明したマギーやら、ライトリングやらその他の人の作品に至るまで、名前を上げていってみたのだけれど、そっちも反応が窺えない。言葉が通じないって言うのがこれほどの苦痛になるとは、予想もしていなかったよ・・・・・・

そんな感じで、うまく意思疎通できないまま、その日も過ぎて行った。


 翌日、部屋の外に出た僕は変な箱の前に座らされて、短い言葉かな? 箱から聞こえて来るそれを、延々と聞かされる作業をさせられた。

 様子を窺った感じ、何種類かある言葉をいろいろ聞かせてもらって、どれか会話できるものがないかどうか、確認をしたって感じらしいのだが、残念ながらこちらとしてもわかる言葉はなかったよ。

 また進展もないままなのかと思っていると、外に移動させられてマギーに乗せられる。どこかに向うのかなって思いつつもそのまま乗り込み向った先は、兵士の詰め所よりもさらに大きな白い建物があるところだった。

 案内されるまま移動して行った感じ、どうやら怪我人の収容施設って感じだね。僕は怪我なんかしていないんだが・・・・・・何でこんなところへ? そう思っていると、案内された部屋の中で何やら針を持った女性が左腕を掴んで、腕を露出させてスッとするものを塗って来た。

 針を刺そうとしていることに気が付いた僕は、慌てて回避行動をとったよ。危害は加えて来ないと思ってみていたら、危なく何かされるところだった。案内してきた青服達が押さえ付けようとして来たけれど、どうやら基本的身体能力が違っている為に、子供がじゃれて来ているくらいにしか感じられなかった。

 そんな訳で逃げ回っていたら、どこから沸いたって感じに白い服を着た女性がやって来て飛び掛って来た・・・・・・そしてさすがに小さい女の子を投げ飛ばしたりするのに躊躇していた隙に、腕に針を刺されて血を抜かれた・・・・・・

 ひょっとして、こいつらヴァンパイアの亜種とかいわないよな? ヴァンパイアにしては力が弱過ぎるし牙なども見当たらないし、もしそうなら噛み付いて来ないのがよくわからない。

 抜かれた血もほんとに少量で、この国の儀式とかそういうものに使ったりするのかもしれないな。警戒している僕をよそに、小さい女の子達は解散して行った。


 そんなどたばたもありつつ、部屋の外に置いてある背もたれのないソファに座って待機させられる。そして今度は狭い部屋に連れて行かれて、人がギリギリ潜り込めるような穴をベッドに寝っころがって通過させられた。その穴はベッドが自動で動いていたので、寝ているだけで痛みも何もなかったけれどね。

 そしてその日は青服の人達はベッドの置かれた部屋の外で待機して、僕だけが中で休むことになったようだった。見ていた感じ青服の人は兵士の所属で、白い服の人は神官所属って感じらしい。まあ、魔力がない世界で神官はできないのだろうから錬金関係者かもしれないけれどね。


 次の日もあちこち連れ回されると共に、針を持って迫ってくる女性がいた為、今回は押さえ込まれないように、魔石による結界を展開して撃退することにする。川にいた時に魔石が使えることは確認済みなので、使う事は可能だとわかってはいるのだけれど、この世界での魔力は枯渇している為に、早々乱発して使えないのがきついところだった。

 せめてもの救いは、僕自身の魔力を使って魔石を作ることは可能であって、磨り減った精神もじっくりと休めば何とか回復させることができるということがわかったことだ。

 これで何とか騙し騙し、身を守りながら帰還手段を調べていかないといけないな。ただせっかく未来に来たので、こちらの技術を少しでも多く吸収して帰りたいとは思っている。早々運よく毎回来られるとは思えないしね~

 そんな感じの日々が数日過ぎて、僕はまた別の建物へと連れて行かれることになったようだ・・・・・・


 次に連れてこられた建物も、基本は白い大きな建物だった。今度は緑色の服を来た人達が門らしき所にいるな。緑は何の関係者だ? そんな門を通過して建物の中の一室へと案内された。

 部屋の中は机や木でできた棚、四角い箱とかベッド、今までの部屋とは違っていろいろな物が置いてある。ちょっと生活感が感じられたよ。

 そんな感じで部屋の中を見て回り、ベッドもふかふかしていて裕福な人が住んでいたとかかなって思っていると、扉を叩く音が聞こえた後、女の子が一人部屋の中へと入って来た。この子は緑じゃなくて黒い服を着ているな。


 ?? 「・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・」


 相変わらず何を言っているのかは、理解できないままだったのだけれど、この女の子も危害を加えて来る感じではないな。危険が無いのならまあいいだろう。

 そう思って何をしに来たのかって思っていると、何やら持って来ていた紙を机の上に並べ出した。壁のところにある木の棚には、本を数冊並べて机の前にある椅子に座るように合図して来た。なんだろうと思いながらも椅子に座ってみる。

 机の上に並べられた紙は掌サイズの物が一杯で、それぞれにとても綺麗な絵が書かれていた。これをもし画家が書いていたのだとしたら凄腕過ぎるなって思っていると、ふとギルドで禁止された一瞬にして絵を描き出す魔道具の話を思い出した。確か、あれはどういった名前だったか・・・・・・

 

 ロプ 「写真機の絵か?」

 ?? 「・・・・・・・・。・・・・・・写真機・・・・・・・。カメラ・・・・・・・・・・・・・」


 そうだ写真機とか、カメラって言われていた魔道具だったはず。でもあれは確か、製造が中止になったはずでは? 研究することすら禁止された物だって聞いたのが、こんな未来に何故ある? 何かずれがあるように思われた。

 しばらく目の前にある絵を眺めながら、僕は一つの仮説を思いついた。

 リンデグルー自治国の現国王である元発明王のブレンダ女王と言う人物は、本来の発明王から技術提供を受けていたと言う話だった。何故発明品の数々を自分の発明品として公開したりしないで、ブレンダ女王に技術提供をする必要性があったのか・・・・・・それはおそらくは自分が知っている技術ではあったものの、元々は自分で開発した物ではなかった為ではないのかっというものだ。

 便利な物だった為に技術を渡していたけれど、自分が発明したって言う程度胸が無かった為に、技術提供だけして自分の名前は出さないようにしたとするなら、ありえると思う。

 そう考えると、その本来の発明王と呼ばれた人物は、元々この時代に住んでいた未来人で、僕のように事故で過去に飛ばされた可能性がある。そして、その本来の発明王は死んだとか行方意不明だとか言われているが、ひょっとしたら元の時代、つまりここに帰って来たのではないだろうか? それなら僕も元の時代へと戻る手段があるかもしれないな!

 何とかして、その発明王に会うことができれば、元の時代に戻れる可能性は高い。ただし、この広い世界で探し出せればの話だけれどね・・・・・・

 ここに来る前に見ただけで、この都市だけでも人間がどれだけいるのか数える気にもならないくらいいる気がする。


 ?? 「・・・・・・・・」


 そんな事を考えていると、隣に居た女の子が絵を指差して何か言っていた。相変わらず、何を言っているのかわからないけれど、何度も繰り返し同じ言葉を言っているようだった。


 ?? 「・・・・・・」


 絵を指差しては何かを言うという行為を繰り返す女の子に、やっと言葉を教えようとしているのだと理解出来た。

 今指差している絵を見てみる。


 ロプ 「これは、パンか。・・・・・・パン?」

 ?? 「・・・・・・パン? ・・・・・・」


 女の子の方でも、僕の言葉に反応している感じだった。掌サイズの小さな紙の束に何やらしているのがわかった。記録しているのかな? それにしても、随分と質の良い紙だな。

 そんな感じで、僕達はお互いに言葉を言い合って、言葉を教え合うようになった。


 女の子と言葉を教え合うようになって、どれくらいの時間が経ったのだろう。二・三週間は軽く越えているように思えた。そんな中、たまに思い出したかのように白い服を着た女の子がやって来て、僕から血を抜いて行く。

 今だに血を抜きに来るこの人間達に、何やら怖い思いを抱きつつ、ほんとに片言になるのだが意思疎通ができるようになって来ていたので、このまま知らないままだと怖いから、さっそく血を何に使うのか早速聞いてみたよ・・・・・・


 ロプ 「チ、ナニ、ツカウ?」

 幸  「ワタシ、アナタ、シュ、チガウ。オタガイノタメ、ビョウキ、シラベル」


 種が違う? 過去と未来でそんなにも違いが出て来たって事になるのかな? まあこの世界のヒョロヒョロとした人達を見ていると、ひ弱過ぎて違う種族って言われても、納得できそうだけれどね。

 ああ、それとお互いに言葉を教えて行く中で、自己紹介などもおこなった。

 この女の子は、サチ・コバヤシと言うそうで十四・五くらいの女の子かと思っていたら、十九歳だったらしい。未来の人間は、ずいぶんと若く見えるようだね・・・・・・

 まあ、種が違うとか言っていたので、エルフやドワーフのような亜人のように、寿命や成長速度なども違う可能性はあるかな。


 片言の言葉だけれどお互いに意思の疎通ができるようになって、いろいろな情報の交換ができるようになった結果、どうやらここは未来の世界ではないことが判明した。

 地図などを見せてもらって、僕の世界は平面だったのにこっちは球体をしていると言われて、球体だったら何故下の方が滑り落ちないのだとか、いろいろ疑問もあったものの、この球体の中にでも神様がいるんだと思えば納得もできた。

 つまりここは異世界、異なる世界だったと言うことである。発明王は異世界からやって来た、こちらの人間だった可能性があるようだな。

 まあそれはいいや、とりあえず戻る手段を試す為に、ここに来るきっかけとなった錬金術の魔石合成を試してみたのだけれど結果は別物になった。神様に悪戯されたのではないのだとしたら、魔法陣を描く時にどこかを間違えたのだと予測できる。そんな訳で、自分の力で帰ることができない事が判明したよ・・・・・・

 それが理解出来た後は、しばらくここで暮らして行く為に、今お世話になっている人達の実験とか情報提供しながら、こちらも技術を学んで行こうと思った。


 ロプ 「日本刀、ツクリカタ、シリタイ」

 幸  「シリョウ、ヨウイ、スル」


 まずは失われた日本刀の製造技術を学んで、後はおいおいといろいろな技術を教わろうと考える。ここの協力者達には、こちらの錬金術が使えるのかどうかわからないのだけれど、一応教えることになっている。おそらくは起動する為の魔力が無い為に、無理だと思うのだけれどね。まあ知りたいと言われたら、断る程でもないかなって思ったよ。

 しばらくそんな感じで過ごしていると、錬金術を扱うにはどうしても魔力が必要だってことが理解できたのか、こんな提案を持ちかけられた。


 幸  「マリョク、モッテイル、ヒト、サガス、デキナイ、カ?」


 つまり、この世界にも魔力が扱える人がいるのかもしれないから、それを探せないかって事だろうね。確かにこれだけの人で溢れていたら、そんな人が一人くらいいても、おかしくはないかもしれないな~。でもそっちは問題なくても・・・・・・


 ロプ 「マホウ、ミジュク、タンサ、ケイ、ツカエナイ」


 残念ながら僕にはそういう探査する為の魔法が扱える技術がなかった・・・・・・

 それでもさすがにこのまま何もしないのは、お世話になっているのに薄情な気がするので、何か考えてみようと思う。そうじゃないと、こっちの技術も教えてもらえなくなるかもしれないからね・・・・・・


 ロプ 「ナニカ、カイハツ、シテミル」

 幸  「オネガイ、シマス」


 探知はできないにしても、魔石に魔力を貯めることはできたのだから、そこから魔力を集める何かしらの魔道具ができないか、考えてみることにした。

 初めは単純に、その場で魔力を吸収したら、別の魔石が光って知らせる物を構築してみる。これは直ぐに開発できた。

 後は他人の魔力の検知ってことだと、人から魔力を吸い出す感じかな? それは僕にとっても危険な魔道具だから却下だな。そうすると、せいぜい漏れ出た魔力に反応させて光らせる感じにしたらいいかも? こっちは魔道具に触ってもらわないと反応しないけれど、それでもできない訳ではなさそうだ。これでいってみよう。


 ロプ 「ソザイ、ホシイ」

 幸  「モッテ、クル」


 そう言ってサチが出て行った。魔石化は金属を基にするというのを説明していたので、おそらく何らかの金属を持って来てくれるだろう。できたら魔石化しやすい金属が欲しいところだけれど、さすがにこの異世界では丁度いい物は無さそうだった。感覚的に近いものは、銀とか言っていた金属だったか?

 そんな事を考えていると、サチが戻って来たようだ。


 幸  「コレ、イイ?」


 持って来た物は、大小さまざまな銀の塊であった。その中に装飾されたものもあったので、人に触ってもらったりするには、こういう物の方がいいのかもと思い、それを魔石化して土台にしようと思う。


 ロプ 「スコシ、イジリタイ、ドウグ、ホシイ」

 幸  「ワカッタ」


 彼女には度々動き回らせて、申し訳なく思いながらもとりあえず頼むことにした。

 そもそもが、自分で動きたくてもこの部屋から出る許可が出ていないので自分で採ってこられないんだよな~ 説明された話では、この世界にあるどの病気にかかるかわからないと言うのと、その場合の病気に対する治療方法がないという話だ。それ以外にもなにやら難しい現象が起こって、僕と他の人の間で未知の病気が発生する可能性もあるのだとか・・・・・・

 この世界には神官がいないし、錬金術もないようなので、病気の対処はかなり大変なのだろうと思う。少々過剰なほど敏感だと思われたのだけれど、まあ仕方がないんだろうね・・・・・・

 道具を持って戻って来たサチを出迎えて、早速魔道具の開発をおこなって行った。


 作業にどれくらいの時間をかけたか、自分の工房や使い慣れない道具を使った作業だった為に、二・三日くらいはかかった気がするけれど、何とか魔道具が完成した。


 ロプ 「デキタ」

 幸  「ミセテ」


 僕の声に反応して、今まで邪魔をしないように離れた所で四角い板をいじっていたサチがこちらにやって来た。


 ロプ 「マリョク、アル、ヒト、サワルト、クサリ、ヒカル。マリョク、アル、バショ、モ、ヒカル」

 幸  「ホント、ダ」


 サチが魔道具を受け取って、僕に押し付けたり離したりしている。僕に触れた魔道具は、接触すると鎖のところが光って知らせる仕掛けになっている。ちなみに触ってもらうところは細い金属の棒がクロスした形をしていた。

 探知系の魔法は使えないけれど、近い物ならやって作れない物でもないんだなって思ったよ。サチは早速それを持って、報告に行ったようだった。

 しばらくは魔力のある場所か、人を探す作業になるのだろう。こっちはこっちで、この世界の物をいろいろと見せてもらって、研究させてもらうことにしよう~

 まあ、本来の発明王があまりこちらの技術を、向こうに伝えていないようだったので、僕もそれに合わせて過剰供給は避ける感じで今は考えている。

 こっちの技術の全てを向こうに持って行こうと初めは思っていたのだけれど、テレビと言うものでたまたま見たミサイルという武器を見てしまった時に、初めてその危険性を理解することができたのだった。

 本来の発明王も、こういう高い技術が悪用された時を考えて、慎重に行動していたんだろうと思ったよ。

 僕にはまだ、どの技術が安全でどれが危険なのかが判断つかないんだけれどね。何で写真機が開発禁止にされていたのだろう? こちらの異世界では普通に使われている技術で、特に危険性は見られないのだけどな~

 テレビを見ながら、知りたい技術などを探したりしているとサチが戻って来て、魔道具が喜ばれていたと話していた。どうやら役に立てたようだったので、代わりについさっき気になった技術を詳しく知りたいと話して、その説明を受けて行く。

 しばらくはそんな感じで生活して行くのだった。


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