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魔石職人の冒険記  作者: 川島 つとむ
第二章  錬金術
16/54

お茶と即席スープ

登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) ジャド=ジャド(台詞表記) ニイナ=ニナ(台詞表記) ミリアナ=ミア(台詞表記) レイセモルス=レイ(台詞表記)

 ミア 「ヒール」


 ジャドが治療を受けている間、怪物の討伐部位をと思ったのだけれど、黒い霧となって消えてしまったので、暇ができた僕達はここで少し休憩を挟むことにした。

 なのでお茶とクッキーを用意して、それぞれに配る。


 ロプ 「やっぱり未知の敵は危険だとわかっただろう? 無茶はやめよう」

 ジャド「面目ない。今度からはせめて少し強いかなくらいの奴にしておくよ」

 ロプ 「ああ、そうしてくれ」

 ニナ 「ロップソンさん、これ美味しいね! もっと頂戴!」

 ロプ 「わかった。待っていろ」


 そう言って来るニイナに、クッキーを五枚程作って渡した。


 レイ 「これできちんと依頼が達成できていれば、気持ちのいいお茶会になったのにね」

 ジャド「確かに、ちょっとしっくり来ない感じではあるな。まあ問題は解決されたと思うが。実際に解決したのはあの女性だったしな~」

 ロプ 「そういえば同じ日本刀を使っていたが、ジャドと雲泥の力量差だったな」

 ジャド「ありゃあ一流の戦士だぞ! 勝てっこないだろう」

 ロプ 「調教師じゃないのか? ヒュドラ退治の時にいた、ドラゴンを使役する女性だったぞ」

 ジャド「え? そうだったのか・・・・・・いやでも調教師と、戦士を兼ねているのかもしれないぞ」

 レイ 「それならそれで、一流の戦士であり、一流の調教師なのだな」

 ロプ 「凄さが上がっちまったな~」

 ジャド「上には上がいたものだな・・・・・・俺達も、がんばらないと!」

 ロプ 「無茶しないで、コツコツだぞ~」

 ニナ 「おかわり!」

 ロプ 「ニイナ、腹が減っているのなら肉とかあるぞ、そっちで腹を満たせ」

 ジャド「もういっそここで、食事にしよう。お茶会は後でもいいだろう?」

 ロプ 「わかった、肉入りのスープでも作るよ」

 ミア 「ジャドさん、腕の方痛いところとかありませんか?」


 やっと治療が終わったのか、ミリアナが具合を聞いていた。それを横目で確認しながらお茶を差し出して、スープの元と野菜玉、肉などをそれぞれの皿に入れていき、お湯を注いで加熱させたらスープが完成する。


 ジャド「問題なさそうだ。ありがとうな」

 ミア 「いえ、よかったです」


 ミリアナの方も落ち着いたので、みんなにスープを渡して、食事をすることになった。


 ロプ 「パンとかライスが欲しい人はいるか?」


 スープを味わいながらそう声をかけると、ニイナがすっと手を上げた。彼女もスープを飲みながらなので、パンかライスか、どっちが欲しいのかがわからない。


 ロプ 「パンか?」


 頷いたので早速パンを加熱して渡してやる。ふむ僕だけが準備をするのは手間だな、今度ミリアナにも教えておこう。

 ちなみに何故ミリアナだけなのかというと、魔法が使えない者が操作をすると、魔石の消耗が早くなるからである。魔法使いが魔力を流し込めば、それだけ魔石の消耗が抑えられて長持ちするので、ミリアナと僕が使うのが一番いいと思う。

 これらの魔道具は、量産品のテストも兼ねているのでそのうちに壊れたら、僕達専用の物を用意しようと思っている。

 ちなみにそちらは永続式の魔道具にしようと考えているので、使い減りしないからジャド達にも操作できるだろう。

 そんな感じで食事の後お茶で一服した僕達は、町へと帰ることにした。

 ギルドで報告をおこなった結果、森にいたのは昔魔王の呪いにやられた人間で、その生き残りが隠れていたということが判明した。危険度が一気に跳ね上がった為に、僕達は特別危険報酬が後日貰えるという話になり、討伐はしなかったのだけれど、かなりいい仕事になったようだった。僕としては実力に似合った仕事の方が嬉しかったのだけれどね。

 あの時女性が来なければ、僕達は死んでいたからな~

 どれだけお金を積まれても、もうあんな仕事はやりたくないって思ったよ。

 その後、分配をしてミリアナにティーポットと加熱板の使い方を説明して、お茶玉と保存食料などを渡して家に帰ることにした。

 一気に食べられているかもしれないのだが、まあそれはそれで耐久テストとかにもなるからいいだろう。

 量産品をミリアナに渡してしまったので、自分達用のティーポットと加熱板を製作した後、まだ時間がありそうだったので、学校に顔を出してみることにした。


 ロプ 「失礼します」

 教頭 「あらいらっしゃい、何か困りごとでも出て来ましたか?」

 ロプ 「いえ、今回はお世話になりましたので、ちゃんとした完成品を持って来ました。あの後商業ギルドの方で、いろいろと共同開発したので、お茶の味とかもいい物になりましたよ」


 そういいながら、箱に詰めて来たそれらをケイト教頭の前に並べていく。


 教頭 「あらあら、これはまた一杯作りましたね~ せっかくですので、早速お茶を入れましょうか」


 ケイト教頭がマイカップを出したので、お茶玉を出してどれがいいですかと言いつつ説明して、選んだ物をカップに入れてお湯を注いだ。自分も木のコップを持って来たので、今日使い続けているお茶玉にお湯を注ぐ。今のところ味は衰えていないと思う。複数回は使えそうだね。


 教頭 「確かにいい味になりましたね。クッキーも申し分なさそうです」


 ついでにプレーンなクッキーを加熱して出したら、中々好評のようだった。おそらく商業ギルドから売り出される時には、いろいろなクッキーも出て来るだろう。


 ロプ 「このように、とても助かりました。今回はいろいろお世話になりました」

 教頭 「いえいえ、お役に立ててこちらとしても嬉しいですよ。錬金術が役に立ったことも喜ばしいですしね」

 ロプ 「また何かあったら、教えてもらいに顔を出します」

 教頭 「ええ、遠慮なくいらっしゃい」


 その後少し雑談をして家に帰って来た。

 さてお次は商業ギルドへ納品にでも行くかな~。ティーカップと過熱板を持って商業ギルドを訪れた。


 ロプ 「失礼します。夜遅くに申し訳ないのですが、食料開発課に納品に来たのですがいいですか?」

 ギルド「話は伺っていますので、大丈夫ですよ。応接室に案内します」


 応接室でしばらくの間待たされ、共同開発の時にお世話になった、食料開発課の人がやって来たので出迎えた。


 食品課「お待たせしてすみません。納品ですね?」

 ロプ 「はいそうです。こちらをどうぞ」


 そう言って魔道具を渡すと、一つ一つ確認している。


 食品課「確かに受け取りました。では今回の契約料になります。おそらく追加発注がかかると思うので、準備の方お願いしますね」

 ロプ 「わかりました。予想では、どれくらいになりそうですか?」

 食品課「そうですね、まずは百といった感じで考えています。その後は実際に売れてから、また百って感じでしょうかね」

 ロプ 「結構な数になりますね。がんばって作ってみます」

 食品課「よろしくお願いしますね」


 もう大分遅かったのでそんな感じで話を終えて、家に帰ることにする。量産はまた明日にしよう~

 翌日、冒険者ギルドに顔を出すと、ミリアナとニイナが早速待っている間お茶を楽しんでいた。


 ロプ 「おはよう~」

 ミア 「おはようございます」

 ニナ 「おっは~」


 コップの中にお茶玉を入れて差し出すと、ミリアナがお湯を注いでくれる。お礼を言ってのんびりとくつろいだ。

 さて全員が揃うまではまだ時間があるだろうから、少し切り札を考えてみるかな。昨日の切り札が効かなかったのは、結構ショックだったので、錬金術を絡めて何かしら上位の切り札ができないか考えてみることにした。

 単純に考えるのならば魔石その物を錬金術で合成して、上位の物にするとかが考えられるのだけれど、問題はどう変化するのか、予測もつかないから魔法陣構築も難しいんだよね。後は僕もミリアナのように鞭を使うとか、そういう方向なら錬金術を使わずに戦う術も出てきそうだった。まあ、鞭ではあの怪物は倒せないだろうけれど・・・・・・

 いろいろと考えていると、ジャドとレイがやって来る。

 お互いに挨拶してジャドが依頼を選びに向う。そして今回選んで来た依頼は、アースウォームの討伐というもので、村の畑を縄張りにしてしまったらしく、なるべく早めの討伐が望まれているらしい。

 緊急依頼ではないものの、それなりの依頼料になっているようだ。


 ロプ 「いいんじゃないか? 地中にいるから少し厄介だと思うが、縄張りに入ったら、向こうから出て来るだろうしね」

 レイ 「ですね、問題ありません」

 ニナ 「私達も、これでいいよ」

 ジャド「よし、ならサインしてくれ」


 僕達は依頼を受けて、早速村へと向って移動した。

 村に着くとそこはとても寂れた感じがするところだった。おそらく、音を立てるとアースウォームが侵入者だと思って暴れるので、仕方がないのだと思われる。

 これは生活がしにくいだろうと思って、とっとと倒しに行こうとハンドサインで意見を伝える。

 ジャドやみんなも頷いたので、早速問題の畑の方へと移動して行った。

 移動はなるべく振動を与えないように、ゆっくりと慎重に進み、結構な時間をかけて辿り着く。

 目に入った畑は、食い散らかされて穴だらけになっていた。これはかなりの被害になりそうだな。まだ、実がついている作物もあるので、これ以上の被害は出したくないなって思ったよ。

 ジャドもそう判断したのか、畑から少し離れたところを戦闘場所に選んで、そっちへ向うように指示を出して来た。全員でゆっくりとそこに移動して、軽くハンドサインでの打ち合わせを始める。

 魔法でおびき出し、ジャドとレイがアースウォームを押さえ込み、みんなで体力を削る。シンプルだけれど、特に問題はなさそうな作戦だった。体力を削っている最中、地面に逃げ込まれないかどうかが、今回の鍵になるだろうね。その時は、切り札で地面ごと攻撃でもしてみるかな・・・・・・

 ジャドが開始の合図を出して来たので、魔法を唱える。


 ロプ 「大地の怒りをここに、アースボム」


 土属性爆発を使ったので、地面が揺れて丁度いいだろうと思われる。程なく地震のような振動が響いて来て、魔法を撃ち込んだ地面の辺りを突き破り頭を出したアースウォームが確認できた。


 ジャド「ゴウ!」

 レイ 「行きます!」


 二人が突撃して行くのを見ながら、次の呪文を使う。


 ロプ 「焼き尽くせ、ファイアアロー」

 ミア 「神罰!」


 僕に合わせてミリアナが魔法を発動させた。ニイナは視界の端にちらりと見えた感じ、側面の方へと走って行ったのがわかる。ジャド達がうまくひきつけている間は、多分大丈夫だろう。

 アースウォームは、突撃や体を使ったプレス攻撃の合間に、酸を吐き付ける攻撃も使って来たのだが、ジャドとレイがうまく盾を使ってその攻撃を捌いているのがわかった。

 しかし、レイの盾は酸を受けるたびに煙を出して、溶けていっているのがわかる。ジャドの盾と違って、魔法がかかっていない普通の盾だから仕方ないのかもしれないが、今後のこともあるので、この機会に魔道具の盾を作ってあげないといけないな。

 それと武器も欲しいところだと思う。ジャドは日本刀の攻撃でダメージが与えられているのだけれど、ニイナのショートソードよりもダメージが少なそうだった。レイが今使っているのはバスターソードかな。状況次第で両手で扱える、汎用性の高い剣である。この依頼が終わったら考えてみよう。


 ロプ 「荒れ狂う風よここに、ウィンドカッター」

 ミア 「神罰」


 今のところは不安な部分はなく、順調に体力を削れている気がするのだけれど、そろそろ逃げに入る頃だと予想した。


 グオオォォ


 アースウォームが叫び声を上げて、地下に逃げ込もうと動き出すのがわかった。

 あらかじめ投擲準備を終えてタイミングを計っていたので、即座にそれを投げ放つ。アースウォームの体が穴から出ている辺りに切り札が命中したのが確認できた瞬間、爆発が起こりアースウォームの動きが止まった。

 ぴくぴくと痙攣したように体を震わせているので、おそらくはまだ止めは刺せていないのだろう。


 ロプ 「止めを!」


 僕達は一斉に襲い掛かって、最後の体力を奪い取った。

 無事に討伐を成功させた後、ジャドが村人達を安心させる為にもう大丈夫だと言いに行ったので、戻って来る間に討伐部位の回収を残りのみんなでおこなった。

 その作業が終わると、ミリアナが早速お茶の準備をしているのが見ていてなんとも微笑ましいなと思える。仕事で殺伐とした雰囲気が、一気に無くなるのがわかったよ。

 テーブルと椅子とか魔道具で出せないものかな? あれは空間を利用しないと駄目だろうから、やっぱり普通に折り畳みになるとすると、かさばるかな~ 僕の力では空間系の魔道具は無理そうかな? 錬金だったら、何か都合の良さそうな物はできないだろうか?

 お茶を飲みながら、しばらくそんな事を考えて悩んでいた。

 その後戻って来たジャドとお茶をして、落ち着いてから町へと戻る。忘れないうちに、レイの装備の話でもしておこうかな・・・・・・


 ロプ 「レイ、今日の戦いで盾が壊れただろう? こっちでレイの装備を作ろうかと思ったんだけれど、どうする? 少し時間はかかってしまうと思うけれど・・・・・・」

 ジャド「それはいいな、俺もそろそろって考えていたしな」

 レイ 「迷惑でないのなら、お願いしたいです」

 ロプ 「じゃあ分配が終わった後、家に来てもらえるかな? 盾の形や重さとか、希望があればなるべくそれに合わせたやつを作るから意見を聞かせてくれ。後、武器の方もついでに作ろうかと思っている。盾と違ってこっちはかなり時間がかかると思うけれど、そっちは今日壊れていないから急がないだろう?」

 レイ 「そうですね、とりあえず盾だけあれば、冒険に支障はないと思います」

 ロプ 「じゃあ終わった後で宿の方にも送るから、家まで来てくれ」

 レイ 「わかりました」

 ジャド「じゃあとりあえず明日は休みにするか、そうすれば盾は完成するだろう?」

 ロプ 「そうだな、そうしてもらえると助かる」

 ジャド「という訳だ、明日は休みにするので自由行動にしてくれ」

 ニナ 「わかった」

 ミア 「わかった」

 レイ 「了解した」


 ギルドで分配を終えた僕達は解散すると、ジャドとレイを連れて家に向かった。


 ロプ 「じゃあ、とりあえず盾の重さをどれくらいがいいのか、教えてくれ」


 そう言って盾の形をした錘をレイに持たせる。


 レイ 「もう少し重量感が欲しい」


 その意見に錘を少しずつ足していきながら、レイが満足する重さを探る。それが終わると、次は形の希望を聞くことにした。まずは取っ掛かりがない為に今まで使っていた盾と同じ物を羊皮紙に描き込む。


 ロプ 「これが今まで使っていたやつだけれど、形を変えたいところなんかあるか? 大きくても少し削ったりも、好きに言ってくれていいよ」

 レイ 「でしたら・・・・・・」


 盾の絵が描かれた羊皮紙に直接修正を加えていく。出来上がった物を参考に、即席の形と錘を付けた物を作製して、レイに持たせてみる。


 ロプ 「どんな感じだ? まだ修正はきくから、変えて欲しいところがあれば、言ってくれていいぞ」


 それから少し形をなぶって、盾の情報は揃った。次は剣の方だな。同じように錘を付けた武器を持たせて、形を聞いて大体の希望をメモしていく。こっちは微妙なバランスなどがある為に、なるべく完成に近い形の時に、もう一度希望を聞く必要がある。即席では無理なので、こんなところだな。


 ロプ 「ありがとう。また調整とかで意見を聞いたりするから、またその時によろしく」

 レイ 「こちらこそ、新しい装備をありがとう。よろしくお願いします」

 ロプ 「じゃあ宿まで送って行くよ。ジャドもまたな」

 ジャド「ああ、じゃあ俺も家に戻るよ。レイもまたな~」

 レイ 「はい、お疲れ様でした」


 マギーで宿まで送って行った後、家で早速レイの盾を作ることにした。


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