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魔石職人の冒険記  作者: 川島 つとむ
第二章  錬金術
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錬金術

登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) ジャド=ジャド(台詞表記) ニイナ=ニナ(台詞表記) ミリアナ=ミア(台詞表記) レイセモルス=レイ(台詞表記)

   第二章  錬金術


 教頭 「それでは授業を始めます」

 ロプ 「よろしくお願いします」


 朝、学校に着た僕は早速教頭室へと向い、教室に入ると同時に直ぐ授業が始まった。


 教頭 「錬金術が一体どういった感じのものなのか、調合と違う点なども含めて、まずは初心者ポーションを作製する工程を順に追いながら説明していきます」

 ロプ 「はい」

 教頭 「まずは初心者ポーションを作るには、薬草を二束用意します。調合の場合ですと、まずはこの素材を壷などで茹でて煮汁をこし不純物を除いた液体を、さらに煮詰めて濃縮することで完成になります。さて、結果はどちらも同じになりますが、錬金術では違う方法をとります。まず必要になってくるのが、基礎錬金に必要な魔法陣です。壷を用意してその中に薬草二束、水と使用している物は調合とほぼ同じです。後は魔法陣に魔力を流し込めば、錬金の完成になります」

 ロプ 「先生、魔力量などはどうなりますか?」

 教頭 「いい質問ですね、ロップソンさん。ここで錬金術の肝になってくるものは、流し込む魔力です。あまり少な過ぎる魔力量では錬金は失敗に終わり、逆に多過ぎても失敗してしまいます。そして、完成までの間に流し込む魔力は常に一定にするのが質のいい錬金物を作る為に求められる技術です。最初は、この程よい魔力量の流し込み方を練習しましょう。とはいえ全てを教えていては先に進めませんので、これは自分で練習をしてください」

 ロプ 「わかりました」

 教頭 「では次に魔法陣の構築の仕方を教えていきましょう・・・・・・」


 そう言うと、ケイト教頭は魔法陣に描かれている文様の意味を一つ一つ解説していった。

 それを教科書に描かれている模様と見比べて、必要ならば持って来た羊皮紙に書き込むことで、自分の中に吸収して行く。ほんとの基礎的な部分で行けば、教えてもらった魔力を流し込む作業と魔法陣の知識で、錬金の作業はできてしまうようだった。

 組み合わせや条件、いろいろな要素を考えなければいけない事が難しいところではあるのだけれど、生産肌の僕には素直に楽しいと思える作業だった。


 教頭 「以上のように、一部の市民が思い描いている、魔女が壷を笑いながらかき混ぜるというものは、偏見なので注意してください。錬金術は、あんなことはしませんので!」


 昔、誰かに言われたのだろうか? 妙に力説して来た。

 その後、僕はまだ初級なので扱える魔法陣の数は一個だと教わり、壷の中に入れた物とその後の変化させたい物の関連性で、どんな魔法陣を描いたらいいのかを、クイズ形式で教わって行った。


 教頭 「やっぱり思っていた通り、ロップソンさんには、錬金術の適正がありますね。とても飲み込みが早くて、優秀ですよ」

 ロプ 「そうなのでしょうか? いまいち実感が湧きませんが」

 教頭 「今は座学で、実際に錬金していないのでピンと来ないだけでしょうね。家に帰ったら、早速復習して使ってみるつもりでいるのでしょう?」

 ロプ 「はい、そのつもりでいますよ」

 教頭 「それなら多分うまく魔力を流し込めれば、最初っから成功する可能性があります。まあ魔力量で迷うと思うので、さすがに一回では、あまり成功することはないのですが、すぐに成功するでしょうね」

 ロプ 「そうですか。直ぐ使えそうなら、なんだかやる気も出てきそうですね」

 教頭 「ですがくれぐれも、いきなりのアレンジは控えてくださいね。最悪慣れない生徒は爆発させる子もいますので、ちゃんと基礎の部分を終えてからするように、我慢してください。それでもどうしてもという場合には、私のところに確認をしに来てください」

 ロプ 「わかりました」

 教頭 「経験を積んだら、魔法陣を一つ増やした錬金の合成というものを、教えましょう。おそらくこの段階になってくれば、自分でアレンジを加えていっても大丈夫ではないかと思います。ですので、アレンジはそこまでは我慢するようにしてくださいね」

 ロプ 「わかりました」

 教頭 「では今日の授業はここまでにしておきましょうか。後は自分で道具などを整えて、復習してみてください」

 ロプ 「ありがとうございました!」


 ケイト教頭にお礼を言って、早速基礎の道具をそろえることにした。

 いずれ自分の使いやすい物を自分で作ることにして、とりあえずは町で道具をそろえて家に帰る。そして壷を工房の床の上に置きそこに魔法陣を描き、薬草束と水を入れて魔法量の調節を練習し始めた。

 ケイト教頭は、素質があると言っていたようだったけれど、意外と難しいと思った。

 まずはどれくらいの量を流していけばいいのか、見当がつかないのと、常に一定にするには集中力がいる。そんな訳で、最初の一回は失敗してしまい、あれ~っと思い、その後の二回が品質の普通の物になった。

 まあ二回目にして作れたこと自体が、素質があると言われたところなのかもしれないのだけれど、ただ作ったでは僕のプライドが納得しなかった。

 がんばって集中した結果、四回目の錬金で品質の高そうな初心者ポーションが完成して、やっと満足できた。その後もがんばって練習したのだけれど・・・・・・


 ジャド「よういるか~」

 ミア 「こんばんは、お邪魔します~」

 ロプ 「やあいらっしゃい」


 その後、初心者ポーションの高品質を五個ほど作っていたら、二人がやって来た。そして出来上がったばかりの高品質品を睨んでいた僕に気が付いたジャドは、それを手にとって中身を確認している。

 ちなみに、ミリアナは僕の様子に気が付いて、緊張した顔をしていた。


 ジャド「こいつはかなりいい品質のポーションじゃないか! まあ見たところ初心者ポーションではあるが、もうこんなのが作れちまったとか、どんな才能だよ!」

 ミア 「そんなにいい出来なのですか? ロップソンさんは、なんだか満足できていないって感じなのですが・・・・・・」

 ジャド「え? この出来でなにが不満なんだよ!」


 そう言ってこっちに凄い形相を向けて来る。


 ロプ 「いや、出来に不満はない。ただ作製手順が納得いかなかった・・・・・・思わず浮かんだ考えを元に、魔道具を開発して作ってしまったら。全部高品質になりやがった・・・・・・」

 ジャド「何だそりゃ、良いことなんじゃないのか?」

 ロプ 「いや、なんかがんばって作っている錬金職人に対して、その努力を無にするような気がしてな・・・・・・いたたまれない思いがするんだよね。僕自身の修行にもならないだろうし」

 ジャド「なるほど、生産者の苦悩とでもいえばいいのかもしれないな」

 ミア 「はあー。何事かと思いましたよ。でもとにかくうまくいっているようで、安心しました。おめでとうございます」

 ロプ 「うん? まあ、ありがとう。そっか、魔道具の操作方法を覚えてもらって、検証をお願いするのだったな。ちょっと待ってくれ」


 そう言って、二つの魔道具を引っ張り出した。そしてそれの操作方法などを、ミリアナに説明して行く。


 ミア 「これは、遊びで気軽に使ってはいけない気がしますね」

 ロプ 「ああ、ギルドの方からも販売禁止を言われているよ。だから絶対に取られるなよ?」

 ジャド「変なプレッシャーをかけて来るなよ・・・・・・まあ大丈夫だ、ちゃんと検証もすませて来るから待っていてくれ」

 ロプ 「ああ、頼んだよ」

 ミア 「任せておいてください!」

 ジャド「そっちも錬金がんばれよ!」

 ロプ 「ああ、がんばるよ~」


 そんなやり取りをして、僕達は別れた。


 ロプ 「おはようございます」

 教頭 「はい、おはようございます」


 あの後、それなりに納得できるまで練習をしてから眠り、翌日学校へやって来た。


 ロプ 「先生、昨日作った初心者ポーションを持ってきました」

 教頭 「どれどれ~。高品質が作れるようになりましたか。やはり才能がありそうですね。これなら次に移れそうです」


 実力で作った方を提出して、言ってもらえたケイト教頭の言葉に、よし! って心の中で声を出した。


 教頭 「では入門編をこれで終了として、基礎編へと移りますね。ここから先は、専用の部屋での授業としましょう。ついて来てください」

 ロプ 「はい!」


 大人しくケイト教頭の後について、錬金実技室へと入って行った。そして部屋に入ると、基礎編という教科書をもらう。早速パラパラっとめくって、大まかにどんなことが書いてあるのかを確認した。何か一杯の表が書いてあるな。

 そんな僕のことを確認しつつ、ケイト教頭は話し出した。


 教頭 「少し見たと思いますが、錬金の合成には法則があります。つまり同じ素材を使って合成された結果は、同じ結果になります。

 教科書に書かれている表は、その一部ですね。全ての素材が記されている訳ではないので、それ以外のことについては、自分で見付けていく必要が出てきます。当然、表だけではなく、魔法陣も条件や素材によって変わってきますので、その失敗の場合も結果に影響を与えてきます。

 つまり、魔方陣一をわざと失敗させた合成の結果というものが存在します。どの組み合わせでも、失敗しても大丈夫という訳ではありません。これも条件次第になります。つまり、魔法陣一と、魔法陣二が、両方とも失敗魔法陣であっても、合成が成功して特別な合成結果が得られたという事例が、過去に少数ですが、確認されています。

 ちなみに、失敗の合成表は、存在していないので、それも自分で調べる必要があります」

 ロプ 「急に難しくなって来ましたね」

 教頭 「そうですね。まあ結局はコツコツと合成を繰り返して、望む結果を探す作業ということです」

 ロプ 「なるほど」

 教頭 「それでは、合成のシステム構築を勉強していきましょう」

 ロプ 「よろしくお願いします!」

 教頭 「それでは教科書の初めから行きましょうか・・・・・・」


 先生の話を聞きながらメモを取り、時に実際に目の前で実演してもらいながら、錬金合成を学んでいった。

 掛け合わせだけでも、無数にあるところに来て、合成の手順すらも複数に渡って方法があって、それで同じ素材を使っても結果が分かれて来ると聞いた時には、何て複雑なんだって思わず思ってしまった。

 だが、結局はパターンがあってそれを覚えることで、ある程度の傾向みたいなものがわかるのだそうだ。


 教頭 「今日はここまでにしておきましょうか」

 ロプ 「ありがとうございました」


 夕方になって、ケイト教頭にそう言われて、やっと一息を付けた。片付けを手伝ってくれたので、二人で掃除などをして部屋を出る。


 教頭 「まあ一度に覚えられるとは思えませんが、しっかりついて来てくださいね」

 ロプ 「がんばります」


 ケイト教頭にそう言われるのに対して、そう返事をするしかなかった。疲れた~


 ロプ 「ありがとうございました」

 教頭 「はい、気を付けて帰ってください」

 ロプ 「はい、失礼します」


 僕はケイト教頭と別れて、家に着くと、ちょっと休憩をした後で、今日の復習と研究を含めて、いろいろと試してみることにした。入門が終わっり、アレンジの許可が下りたから挑戦する事にした作業である。まあ、いきなりは完成しないのだろうけれど、駄目元でお茶の合成表作りから研究を始めることにする。

 今考えているものは、魔道具でまずお湯を作る。そのお湯をカップに注ぎ、ただのお湯のそこにお茶の元になる物を入れると、直ぐにお茶が楽しめるような形の物を考えていた。ただその物が消費するのか、何回か使える物になるのか、ずっと減らないというのは、おそらくないだろうと思うけれども・・・・・・ともかく、そういう結果に繋がる物を開発したかった。

 いくつか思いつく物を素材として、まずは魔法陣一つで実験を繰り返して、望む結果が得られないことを確認し、いよいよ無数ともいえる組み合わせになる魔法陣二つに挑戦しようとしていると、ジャド達がやって来た。


 ジャド「邪魔するぞー」

 ミア 「こんばんは、お邪魔します」

 ロプ 「お帰り~。その様子からすると、上手く行ったのか?」

 ジャド「ああ、ばっちりだったぞ」

 ミア 「まずロープの方なのですが、私の思う通りに動いてくれました。逆に私が想像していたよりも、きちんと拘束してくれたので、助かったくらいです」

 ロプ 「ちゃんと機能したようだな。一応拘束用という目的を持たせているから、使用者の捕まえようという意思で、自動的に縛るようには開発していたんだよ。素人が使った場合、下手をすると縄抜けされる可能性もあるから、その点を注意しないといけないと思ってね。まあ縄抜けの達人だったらどうなのか、わからないけれどな。しょせん僕も素人だ」

 ミア 「なるほど・・・・・・自白用の指輪の方ですが、使った瞬間に私の事を誰かと勘違いしたみたいで、こちらが聞いていないことまでいろいろ話し出しましたよ。後、聞きたかったことも簡単に答えてくれました。その後、喋れなくしたり意識を奪う機能も試してみましたが、私が見たところでは問題がなかったと思います」

 ジャド「こっちも横で見させてもらったが、二つとも、役目をちゃんと果たしていたと思うぞ」

そう言って、ジャドが二つの魔道具を渡して来た。

 ロプ 「ありがとう。じゃあ両方とも使えそうだな」

 ジャド「だな。効果を見たところ、悪用されないように、しっかりと管理しないと駄目だなって思ったよ」

 ロプ 「そうだな。二人ともありがとう」

 ジャド「何、いいってことよ」

 ミア 「無事に終わって、ホッとしました。それでこれは、お茶を作る作業ですか?」

 ロプ 「お茶の元って感じだけれどな。まあこれからって感じだよ」

 ミア 「うわー、早くできないか楽しみです」

 ジャド「おいおい、ロップソンはまだ錬金の技術を習っている途中なんだぞ。そんな途中でそうそう簡単にできないだろう」

 ロプ 「まあ手探りって感じだな。一応基礎が終わってアレンジしてやってもいいって許可は出たから、今は実験もかねていろいろ試している感じだよ」

 ミア 「がんばってください!」

 ロプ 「あ、ああ。がんばるよ」

 ジャド「それじゃあ、俺達はこれで帰るよ。また来る」

 ロプ 「ああ、今日はありがとうな~」

 ミア 「それでは失礼します。あまり無理はしないようにしてくださいね」

 ロプ 「またな」


 二人は帰って行った。とりあえず魔道具は完成になるようだ。先にこっちの魔道具を自分達用として製造しておくかな。

 サンプルとして一つは商業ギルドに持って行く可能性もあるからな。

 そう思い早速魔道具を作った。ついでにお湯を出す魔道具も開発しておく。

 こっちは単純にティーポットの底の部分に魔石を二つ埋め込んで、一つは水を出してもうひとつが暖めるように魔法構築をすれば完成だった。これで水がないところにいても、熱々のお湯を用意できる。

 さて、随分と横道にそれてしまったのだけれど、お茶の元を開発する作業を始めるかな~

 それから眠くなるまでの間、合成表を作る作業を開始した。


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