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魔石職人の冒険記  作者: 川島 つとむ
第一章  凸凹コンビ
12/54

地道に商品の売り込みを

登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) ジャド=ジャド(台詞表記) ニイナ=ニナ(台詞表記) ミリアナ=ミア(台詞表記) レイセモルス=レイ(台詞表記)

 ジャド「ロップソン、起きろ、ロップソン」


 そう言いながら揺すられて目を覚ました。


 ジャド「起きたか、動けそうか?」


 僕はそれを聞いて体を動かして確認をした。多少疲労みたいなものはあるようだが、動くのは問題なさそうだった。


 ロプ 「大丈夫そうだ、行ける」

 ジャド「そうか、じゃあ。そろそろ帰るぞ」

 ロプ 「わかった」


 どうやら危険が迫って起されたのではないとわかって、少し安心できた。

 僕達はそのまま遺跡調査しながら、脱出する。途中で雑魚モンスターに遭遇したけれど、特に問題になるようなことはなかった。

 みんなちょっと疲れ気味ではあったものの、今回も脱落者を出さないで町まで、帰って来られたようだ。

 今回はちょっと際どかったな~

 ギルドで分配を終えた僕は、ジャドにこれからの予定を伝えることにした。


 ロプ 「だんだん作りたいって物が出て来たので、しばらくの間は生産の方に集中したいと思う。だから冒険の方は一時休ませてもらうよ」

 ジャド「どれくらいの予定かわかるか?」

 ロプ 「そうだな、とりあえずは一週間くらい考えている。まだ構想段階だから、何ともいえないんだけれどな」

 ジャド「ふむ。とりあえず了解した。こっちも今回大変だったことだし、二日くらいは休憩にしようか。レイは稼がないときつい状況か?」

 レイ 「いえ、緊急依頼とか結構いい収入がありましたので、今は大丈夫です。二日休みという話なら、とりあえずはゆっくり休みたいなって思うくらいは余裕があります」

 ジャド「そうか、じゃあ一応こっちは三日目辺りには何かしらの依頼をしようか。その後は依頼が終わった後で決めて行こう」

 ニナ 「はい」

 ミア 「はい」

 レイ 「わかった」

 ロプ 「じゃあ、今日はここで失礼するよ。みんなまたな~」

 ニナ 「またね!」

 ミア 「生産の方がんばってくださいね」

 レイ 「お疲れ様でした」


 ミリアナのは心の声で、お茶とクッキーって聞こえてきそうだったが、まあ手を振って別れた。

 一泊して来た為、今はまだ昼過ぎくらいだったので、商業ギルドの方に寄って行こう。光の指輪と、荷物を持ち上げる魔道具を見せる為にギルドを訪れて、受付に顔を出した。


 ロプ 「失礼します。新しい魔道具を開発したので見てもらいに来ました。フラメルさんは今手が空いていますか?」

 ギルド「少々お待ちください」


 新しい物ができた場合、まずは鑑定士の人に見てもらい、その後に有用だと思われた場合は、担当となる人物との交渉になるのがここでのやり方であった。

 受付の人に案内されて、応接室へと入ることになる。

 しばらく待つと、いつも鑑定してくれている魔道具専門鑑定士のフラメルさんがやって来た。


 鑑定員「ロップソンさん、お待たせしました。早速ですが、どんな物が出来たのか見せてもらってもいいですか?」

 ロプ 「ええ。この二つなのですが・・・・・・」


 僕は使い方とか、活用方法の例などの説明をして行く。それを受けた鑑定士さんは、助手の人に声をかけて、担当者の人に応接室に来るようにと話をしていた。

 どうやら第一関門はクリアできて、商売の話になりそうだった。

 しばらく雑談などをして待っていると、二人のギルド員の方が部屋に入って来た。

 その担当のギルド員にも、使い方などを説明していき、早速商談と話は移行して行った。

 僕は商人ではないので、商業ギルドの人が専属で契約をして商品を買い取り、それをいろいろな場所へと売っていく形になるのだとか。

 僕としては必要経費がもらえて、活動資金になってくれるのなら、それでいいんだけれどね。ただ、自分の場合は魔道具なので、僕以外の人は作れないのだけれど、一般発明品などになると開発費としてのお金をもらった後は、製造も販売もギルドがおこなう場合が殆どなのだそうだ。

 それが嫌な者は、ギルドにこういう道具を自分のお店などで売りますよという許可をもらい、そこで商売をするらしい。勝手に売り出さないのは、技術の横取りをされないように予防する為という話だ。

 その代わり、許可をもらう為の登録料などを少しばかり払っていかなければいけない。

 世間の発明家達も、結構苦労しているのだった。

 僕の場合は売らないと言ったら市場に流れることは無くなるので、そこらへんを考慮されて結構上乗せされた値段での交渉がされている。だから売れると判断された商品は、大体が満足のいく値段で契約が結ばれることが殆どであった。

 今回の二つの魔道具に関しても、特に問題はなかったようで、十分な値段での契約を結ぶことができて、後日必要数の納品条件が出されて、それを受ける形でまずは契約を結ぶ。

 今後売れ行きを見て、追加発注がかかることになるだろう。契約は、その追加発注毎で交わされていく事になる。


 ロプ 「今日はありがとうございました」

 鑑定員「いえいえこちらこそ、いい魔道具を取引させていただきました。また何かできましたら、よろしくお願いしますね」

 ロプ 「はい、では失礼します」

 鑑定員「お疲れ様でした」


 契約を終えて家に帰り着いた。

 後は必要数の商品を納品すると、その場でお金の支払いがしてもらえるので、まずは他の魔道具の構想を考える前に、必要数を作ることにした。

 その作業で夜までかかり、軽く家でご飯を作って食べた後、やっと魔道具開発の構想へと移ることになった。


 お茶とクッキーは、とりあえずはギルドなどに行って、資料を見た方がいいかな。多分今の僕の技術ではできない感じの作品だから、ヒントを探したいので保留とする。

 次に邪神教の尋問とかで考えた、自白させる魔道具と拘束する魔道具の開発かな。こっちは自分で使う用で、ギルドに売るのはどうなのだろうか? まあとりあえず開発できたら考えようと思う。

 構想としては闇属性魔法の中に、敵に幻覚を見せるものがあったのでそれを応用していけば、自白に持っていける可能性はある。僕は闇属性の魔石を取り出して、構想を練っていった。

 真夜中過ぎになって大体の構想ができ、尋問をする人の能力によるのだが相手に最も信頼されて、最も油断する疑いが持てない存在に見えるようになる指輪とうい物を作り出した。

 これを使って話しかければ、相手は質問に答えてしまうと思われる。

 まあ、あくまでも予想なのでどうなるかは不明かな? おそらくは質問する人の技量も関係するだろう。

 とりあえず効果を試すことはできないので、こんなものだろう。そう思って、今日は寝ることにした。


 翌朝、目が覚めた僕は商業ギルドへの納品を後回しにして、開発作業をすることにした。

 自白用の指輪は一応完成したので、次は拘束用の魔道具の開発である。こちらも構想自体はもう出来ている。

 ミリアナ用に開発した鞭を応用して、素材を革から金属繊維に変更し、使用者の意思で相手を縛り上げて動きを阻害、必要ならば闇属性の魔石を追加してあるので相手の意思を奪うことと、言葉を奪うことができる感じだ。

 偶然の発見なのだけれど、以前質の悪かった素材を手に取ってみた時に、思わずもっといい素材にならないかな? なんて考えていたら素材に変化が起こった。

 その後いろいろと検証してみると、どうやら僕には素材の品質をワンランクアップさせるスキルみたいなものが、あることがわかった。

 生産をする僕にとっては、まさにぴったりなスキルだと喜んだものだったが、ここで金属繊維を作り出したりするのにも、そのスキルは活躍する。

 鍛冶の技術では金属繊維を取り扱うことはできても、作る為の方法がなかったからだ。せいぜいできるといえば、細い棒になる。曲げると当然折れるし、クネクネとさせることもできないので、はっきりいって使えない物になるのだ。

 だがその使えない細い棒をこの素材をワンランク上げてやる作業で、金属繊維に変換して使うと、ミリアナの鞭のように曲がって丈夫な物へと変わる。

 今回はこの繊維部分だけを使って、拘束用の魔石を内部に仕込んだロープを作製した。実験したいところだけれど、下手にモンスターに使おうとしたら、失敗した時が怖いから、ジャドが来たら試してみよう。

 とりあえずは拘束用のロープの魔道具を開発終了として保留にした。


 さて、次は以前水晶のところで出会った女性が連れていたゴーレムを見て、あれに似た物が欲しいと思ったので、それの製作をする。おそらくだけれど、出会った時のウッドゴーレムは自立して動いていたように見えた。

 さすがにあの技術は僕には創れないと思われるので、造る物は遠隔操作で、自分の動きを真似させるように動くタイプの作業用のゴーレムになるだろう。

 生身の僕とゴーレムがやるのと何が違うのかというと、圧倒的にパワーが違って来ると予想している。

 例えば僕が岩などを生身で持ち上げることは不可能だけれど、ゴーレムを使えば持ち上げられるのでは? そんな感じの予想をしていた。

 まあ実際にはそこまでの重量は無理かもしれないのだけれど、グレートカウくらいなら持ち上げて、荷台に乗せるくらいはできるのではないかと、期待してみる。

 製作していく上で判明したことなのだけれど、結構人が歩くという動作はバランスが難しくできているようで、止まると前後に倒れたり、足を上げると横に倒れたりする感じになってしまう。

 そこでどうせ人型にこだわる必要性はないかと、ケンタウロスのように四本足にすることにした。

 ちょっと場所をとるかもしれないのだけれど、無理に二本足に拘るよりは目的が果たせるのならば、最終的な結果が変わらなければ問題ないと考えられる。個人用に造るだけだしね。

 材質は芯の部分で金属を使い、見た目の部分で軽量化させる為に木材を使用してみたので、ケンタウロス型のウッドゴーレムのような形になった。まあこれはゴーレムと呼んでいいものなのか、正直微妙であったが・・・・・・

 とりあえず自立行動しないから、ウッドマンとでも呼んでおこうかな・・・・・・

 その後ウッドマンが四本足になった為に、各関節に取り付けられた魔石を連動させるのに手間取りながら、走るくらいの動作ができるように調整するのにかなり手間がかかったのだけれど、一応の動きは操作できるようになったようだ。

 ケンタウロス型になったおかげで、馬の部分に座る事ができるようになったし、荷物も乗せられるようになったのは嬉しい誤算だったのだが、問題はどれだけの重量を持てるかというところだろう。

 そのテストをする為に、家に保管していた鉱石などを箱に入れたりして重い荷物を作ったり、実験をすることにした。

 その結果、持ち上げる過程で重さに耐え切れずに倒れる。これは本体の軽量化にも原因があることが直ぐにわかって、持ち上げる時の脚の動きを調節する事で何とか対応した。次に持ち上げた状態で荷物を運ぼうとしてみたのだけれど、重心が安定しないので動くと転ぶことが判明した。

 おそらく、こっちも本体の軽量化が原因で、荷物を固定するだけの重量を維持できない為だと思われる。これはバランス感覚とかで対応できる案件じゃないな・・・・・・

 本体を重くすることはできるのだけれど、そうするとマギーに乗せる重量がその分減るんだよな~

 これは予想外で悩みどころになったよ。

 その日は結局解決案がないまま、どう対処すればいいのかを考えるだけで終わってしまった。


 翌日、ウッドマンの開発を一時やめた僕は、商業ギルドに納品するのを優先することにした。

 一応、自白の魔道具と拘束ロープも持って来て、売るかどうかの検討もすることにする。ウッドマンは、完成しても自分用と考えているので、あっちは開発状況を気にする必要はない。


 ロプ 「おはようございます。ロップソンですが、光の魔道具と、荷物運びの魔道具の納品に来ました」

 ギルド「おはようございます。話は聞いていますが、今回はずいぶんと早かったですね~ とりあえず担当者に連絡を付けますので、応接室へ案内させていただきますね」

 ロプ 「お願いします。それと、ちょっと相談とかしたい魔道具もあるので、フラメルさんも来られそうならお願いします」

 ギルド「わかりました。こちらへどうぞ」


 受付の人に案内されて、応接室で待たせてもらった。しばらくすると担当の人がやって来て、とりあえず納品とそれの代金をもらって、無事に取引が終了する。


 雑貨課「それでは、このライトリングの追加注文があった場合は、またよろしくお願いします」

 ロプ 「はい、よろしくお願いします」

 工業課「こちらの運ぶ君も、追加の時はよろしくお願いするよ」

 ロプ 「ええ、よろしくです」


 ちなみに、名前はそれぞれ担当の人が考えたらしい。僕にはセンスが無さそうだったので、自分で付けるよりは任せてしまった方がいいかなって思ったのだ。まあまあ無難な名前になったみたいだな~

 それから二人が帰って行って、しばらくしたらフラメルさんがやって来た。


 鑑定員「これはこれは、あれからそんなに経っていないのに、もう次の発明品ができましたか。さすがですね~」

 ロプ 「ちょっとこちらは、売り物になるのかどうかわからない感じなのですが、一応できた物を持って来ました。とりあえず見てもらってもいいですか?」

 鑑定員「ええ、もちろんですとも。取引するかどうかも、こちらで判断させてもらうので、そこは心配されなくてもいいですよ」

 ロプ 「では、この二つになるのですが・・・・・・」


 僕は取り出した、自白用指輪と、拘束用ロープを机の上に置いて、使い方や効果などの説明をする。そして安易に試せない為に、まだ実際の使用テストはおこなっていないことも伝えた。


 鑑定員「なるほど、よくわかりました。確かにこれは判断が難しいですね。とりあえずこれは完成させても誰にも売らないようにしてもらえますか?」

 ロプ 「もちろんです。完成した時は、商業ギルドで買い取ることもありそうですか?」

 鑑定員「はっきり言いますと、ギルドでは扱いきれないかもしれませんね。拘束用ロープの方は、もしかしたら、格ギルドでいくつかの希望が出るかもしれません。一般販売はしないでしょう。自白指輪の方は司法関係の方で、発注がかかる可能性はありますが、その時は商業ギルドが仲介しますか?」

 ロプ 「そうですね、その時はお願いしていいでしょうか?」

 鑑定員「こちらとしては、商業ギルドの一員として交渉してもらえると嬉しいので、歓迎しますよ」

 ロプ 「なるほど、それなら仲介の必要がでたらお願いします。完成したらもう一度持って来る感じでいいですか?」

 鑑定員「そうですね、未確認で話だけ進めるのも面倒な事になりそうなので、この話は完成してからにしましょう」

 ロプ 「わかりました。それでは今日はどうもありがとうございました」

 鑑定員「いえいえ、前もって教えてもらえて助かりましたよ。またお待ちしていますね」


 応接室を出ると、とりあえずここの書庫を利用させてもらって、お茶とクッキーについてうまい加工方法などがないか、調べることにした。

 さすがに商業ギルドを名乗るだけあって、食料品に関する資料などもここには保管されている。本来なら関係者以外立ち入り禁止などの資料などもあったりするのだけれど、僕は特別に制限を解除されていた。理由としては魔道具を作るうえで何が必要な資料になるのか、わからない為らしい。まあ、実際にそれが今回関係して来たので、さすが商業ギルドって言いたい感じだね。

 まずは料理レシピなどを調べて、目的に合いそうなものがないかを調査して、応用する感じに考えていた。

 結果で言えば、料理で利用できそうなものを発見することはできなかったのだけれど、錬金術の方で形を変える方法がありそうな感じだった。

 そういえば、僕はいろいろな生産技術を覚えて来たのだけれど、錬金術には手を出していなかったな~

 そして今回料理を調べていて、気になるものを一部発見できた。

 料理って言うか嗜好品のデザートの方になるのだけれど、レシピがわからない作る方法がわからないデザートというものも、この世界には存在しているという。

 料理分野においても日本刀のように、不明っていうものがあったのだな~

 原材料が絶滅した動物の卵とか、そういう類なんだろうか?

 商業ギルドを出て、久しぶりになる学校へと向かいながら、そんな事を考えていた。


 何故母校となる学校へと向っているかというと、錬金術を教えてもらう為である。

 本来錬金術を習うといえば魔術師ギルドで学ぶことができるのだけれど、あいにくそこに所属していない為に、教えてもらうことが出来ない。その為学校でさわりの部分だけでも教えてもらい、後は独学で研究していこうと考えた為だった。

 学校では、こうして卒業後に何かしら足りない技術、不安になって学び直したいと思った時など、もう一度教えてもらうことができるようになっていた。

 もちろん今いる生徒の方が優先される為、殆どは資料を見て自分で学び、どうしても行き詰まった時などに先生の手が空いていれば、指導をお願いできるといったシステムではあるのだが、それでも魔術師ギルドのように、実力がなければ教えないという態度をしないだけ、僕にはありがたかった。

 僕が冒険者の役割の中で魔法使いをしていても、魔術師ギルドに所属していない理由は、魔術師ギルドの方から不要と言われた為だった。

 まあ考えるとドンドン気分が落ち込むので、目的の錬金術についてまずは本を見せてもらおう。

 時間も忘れて教科書を読んでいると、声をかけられる。


 教頭 「あら、まだ残っている生徒さんがいましたか。というか卒業生ですね。お久しぶりですロップソンさん」

 ロプ 「あ、ケイト教頭先生、お久しぶりです。お邪魔させてもらっています」


 ケイト教頭は、あまり上達しない僕の授業を根気よく続けてくれた恩師である。

 この学校にはもう一人魔法科教師がいるのだけれど、才能がない諦めろと言われて早々に投げ出されていた僕に、ケイト教頭が特別授業をしてくれたのだった。

 おかげで僕は能力不足で使えないけれど、呪文だけは暗記していると思われる魔法の知識とかもあったりする。おそらく今の底上げされた僕なら、そんな使ったことのない魔法も使えるかもしれないな。

 そして知識だけでなく、本来なら長い詠唱が必要だった僕が、簡易的な省略魔法を使えるようになったのも、ケイト教頭が根気よく座学をしてくれて、それを習得できたおかげでもある。ほんとに頭が上がらない恩師だった。


 教頭 「今日はこんな遅くなるまで勉強するなんて、何か魔法で行き詰りましたか?」

 ロプ 「あ、いえそうではなくてですね。今は生産活動などもしていまして、そちらで錬金術を使えば何とかなりそうなものがあったので、基礎だけでも学べないかと思って来たのです」

 教頭 「あらあら、あなたも錬金術を学ぼうとしていたとは。それなら明日から少し授業をしましょうか?」

 ロプ 「いいのですか? 他の生徒さん達の授業もあるでしょうに」

 教頭 「それなのですが、今期で錬金術を学ぼうとする生徒さんは、いないのですよ。寂しいことなのですが、どうも錬金術は裏方のお仕事と思われているようで、華々しく前で戦いたい生徒さん達には、魅力がないように見えるようですね」

 ロプ 「はあ、確かにどちらかといえば、裏方になるのでしょうね。少し見ましたが、ポーションなどの作製が主な活動になりそうですし」

 教頭 「まあ間違ってはいませんが、少し違いますよ。偉大な錬金術師になれば、世界に影響を与える程の人物だっています。使い方なのでしょうが、前線に立って戦う錬金術師の人だって世の中にはちゃんといるのです」

 ロプ 「そんな凄い人がいるのですか?」

 教頭 「そうですよ? 錬金術を馬鹿にしてはいけません!」


 どうやらケイト教頭は、錬金術に思いいれのようなものがあるみたいだった。それなら教えることが出来ない今期は、さぞがっかりしていたことだろう。


 ロプ 「それなら少しだけお願いしてもいいでしょうか?」

 教頭 「ええ、もちろんです。とりあえず基礎的な知識でいいのですよね?」

 ロプ 「はい、基礎だけで大丈夫です。その後もわからないことがあれば、こちらに伺いたいと思っていたのですが、いいでしょうか?」

 教頭 「どうぞいらしてくださいな。私も同志が増えるのは、とても喜ばしいと思っていましたからね。それにあなたはあまり魔法が得意ではなかったので、元々興味がないかなとは思っていました。いい機会なので、がんばって習得していってください」

 ロプ 「ありがとうございます。ケイト教頭先生!」

 教頭 「では、入門編の教科書を渡しますので、軽くでもいいので読んで来てください。今日はもう遅いので、明日の朝から早速授業を始めましょう。場所は、教頭室に来てくださいますか?」

 ロプ 「はい、よろしくお願いします」


 そう言って、入門編の教科書を受け取って学校を後にした。

 家で早速軽く教科書を読んでいると、ジャドが顔を見せたので、今の現状を話す。


 ジャド「学校でお勉強か~ 俺は机にかじりついて勉強するのは向かないから、うへ~って感じなのだが、まあお前らしいよ」

 ロプ 「基礎だけ教えてもらうって話なんだが、ちょっとどれくらいかかるかは、わからなくなったよ」

 ジャド「だな。まあいいがんばってくれ。錬金術が使えるようになったら、ポーションなどの補充も楽になることだしな」

 ロプ 「生産の開発だけじゃなくて、そういう支援もできるようになると、幅が広がっていいよな~」

 ジャド「だよな。いろいろと期待しておくぞ!」


 そう言って帰ろうとするジャドに、僕は思い出して声をかけた。


 ロプ 「あ、そうだ。ちょっと実験を手伝ってくれないか?」

 ジャド「うん? 何か作ったのか?」

 ロプ 「ああ、自白用の指輪と、拘束用のロープを作った」

 ジャド「げ! 何て物を作りやがる!」

 ロプ 「文句はいいから、テストさせろよ」

 ジャド「それ失敗したら、洒落にならねえだろうが!」

 ロプ 「他に何かいいテストの方法があるのか?」

 ジャド「待て待て、少し考える、いい方法、いい方法・・・・・・」


 そう言ってジャドが考えている間、教科書を読んで待つことにした。


 ジャド「よし、いきなりの実践テストになるが、依頼で使ってみよう!」

 ロプ 「それって問題があった場合、依頼の方が失敗に終わるぞ、それはまずいだろう」

 ジャド「そこは魔道具が失敗作だったとしても、問題にならない依頼を見付けるから安心しろ。犯罪者相手なら不測の事態になっても、多少は問題ないだろうしな。そいつには悪いが、俺の代わりに生贄になってもらう!」

 ロプ 「まあ僕としては効果が確かだったら問題はないが、とりあえず使い方とかを教えないとだめかな」

 ジャド「ああ、教えてくれ」

 ロプ 「お前魔法使えないから無理だろう? ミリアナに教えるのがいいと思う。さすがに今からは無理だな? 明日の夜とかにでも、家に連れて来てもらえるか? 別に急ぎじゃないから、明日でなくてもいいが」

 ジャド「わかった、話を付けておこう」

 ロプ 「頼んだぞ~」


 そう言って僕らは別れた。

 検証の方はジャドに任せておけば問題無さそうだから、こっちは錬金術をがんばろうかな~


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