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魔石職人の冒険記  作者: 川島 つとむ
第一章  凸凹コンビ
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大物ヒュドラ

登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) ジャド=ジャド(台詞表記) ニイナ=ニナ(台詞表記) ミリアナ=ミア(台詞表記) レイセモルス=レイ(台詞表記)

 朝、僕はギルドに向うのに、昨日試作していた盾を持って行くことにした。確か、今日からはお金になりそうな大物を相手にするって話だったしね。


 ロプ 「おはよー」

 ミア 「おはようございます~」

 ニナ 「おは~」

 レイ 「おはようです」

 ジャド「早速サインしてくれ」


 ニイナがますます打ち解けて来て、お茶目になっていっている気がするな。それとも素が出て来たってことかな? まあそれはともかく、サインサインっと。

 マギーに乗り込んで早速現地へと向う。


 ロプ 「で、今日の依頼内容は?」

 ジャド「ちょっと大物を狙うのは言ったと思うが、今日の相手はヒュドラだ」

 ロプ 「おー、それは確かに大物だな。いけるのか?」

 ジャド「いろいろな素材とかが取れる洞窟に住み着いたらしくてな、緊急依頼だったので依頼料が良いってのが、まず一つ目の理由な。で、倒せるかって言うのは正直わからんが、前衛が増えたから、挑戦してみようと思っている感じだ。メインは、お前の火力だと思っている」

 ロプ 「なるほどそういうことか、まあ、やれるだけやってみよう」

 ジャド「ということだ、全員気合を入れろよ!」

 ニナ 「はい!」

 ミア 「わかりました」

 レイ 「やってみよう」


 それぞれが気合を入れているのが背後に感じられる。

 でも、マギーの中で和やかに美味しそうなお菓子か何かを食べているのが匂いでわかって、やっぱり女子だなって思ったよ。そして操作しているから、参加できなくて、とてもひもじい思いをした。

 まあ、後からお裾分けを持って来てくれたミリアナが、口の中に放り込んでくれたので、不満は無くなったのだけれどね。

 このマギー、自動で動けるようにならないかな? まあ、どう考えても不可能そうだから、検討もしないけれどね・・・・・・

 さて、現地に付いた僕は、早速試作品をジャドに渡す。


 ロプ 「形とか重さとか、何かあれば教えてくれ。後は効果なんだけど、属性に対する防御力みたいなのを上げる感じで作ってある。ただ使用者の意思が必要だから、攻撃を受ける時に火に対抗するとか、そういう風に念じてくれないとうまく効果を発揮しないと思う。通常攻撃に対しては、受け止めるか受け流すって感じで念じてくれれば、盾の方がうまく機能してくれると思うよ」

 ジャド「ほー、ちょっと難しそうだけれど、なんとなくはわかった。扱うのに少し特訓がいりそうだな」

 ロプ 「そうだな。まあ今回使わないなら、とりあえず家に来た時にでも提案とかしてくれ」

 ジャド「せっかくだし、使ってみたい気はするな」

 ロプ 「使い慣れない盾で、戦えるものなのか?」

 ジャド「そこは、腕の見せ所かな。魔法の機能の方は、ちょっとぶっつけではきつそうだが。まあ試してみたい」

 ロプ 「まあ最悪壊れてもいいよ。できるだけ、魔石はそのまま回収したいけれどね」

 ジャド「了解した。待たせたな、移動しよう」


 今回は洞窟の中なので、光の魔石を取り出して、それをそのまま光源として使用する。今まで暗いところで戦ってこなかったから、あまりこういう魔道具は作っていなかったのだけれど、よく考えたら冒険には必需品だったな。今度何か光源になる魔道具を開発しておこう。

 しばらく進んでいると小さな蛇などが一杯いる場所があった、このぶんだと毒蛇やでかい蛇など襲って来るかもしれないな。


 ジャド「上に注意しろ!」


 ちょっと広めの洞窟に出た時、ジャドがそう警告をして来た。

 ちょうど顔をあげた時に、上から何匹かの蛇が降って来るのがわかった。大きさは、大きいのから小さいのいろいろいてちょっとびっくりする。


 ロプ 「荒れ狂う風よここに、ウィンドカッター」


 条件反射で魔法を発動させていた。上空で荒れ狂う風が、落ちて来る蛇を如く斬り刻む。

 そして、天井には鍾乳石が多く垂れ下がっていて、このままだとそれも砕けて落ちて来ると予想できた。


 ロプ 「石が落ちて来る、走って移動して!」


 みんなを急かせて、その場を通り過ぎることにした。

 魔法の範囲外まで走って後ろを見ると、案の定鍾乳石が壊れて降り注いでいるのが確認できる。まあ、天井が崩れたとかではないので、帰れなくなったとか、そういうのはないのが幸いだったな。


 ロプ 「すまん、反射的に魔法を使ってしまった」

 ジャド「いや、いい。毒を持った奴とかがいたら、厄介だったからな」


 そう言って、先に進むようにみんなに指示を出す。


 レイ 「ロップソンさんは、かなりの魔法の使い手なのですね」


 先程の魔法の威力を見て、レイがそう言って来たのだと思う。まあいきなり見たら、そう思うかもしれないな。でも間違いは正しておかないと後々自分が困るかもしれない。


 ロプ 「本来の僕は、落ちこぼれと言われる魔法使いだよ。足りない力を、魔道具を使って底上げしているから、さっきみたいな魔法も使えるようになっただけだ。優秀な魔法使いだ、みたいな誤解はしないようにな。僕は本来なら冒険とかに出ないで、普通に町で生産とかしていた方がいいくらいの実力だよ」

 レイ 「はあ、そうなのですか」


 納得できていないって感じの返事だな。


 ミア 「私も初めは信じられませんでしたよ。ゴブリンが倒せないとか聞いて、驚いたぐらいですから」


 そう言って説明していたけれど、事実だけれどそう言われた事で、少し凹んでしまう・・・・・・いや、事実だからこそ凹むのだろうな。


 ジャド「今は素の状態でも、ゴブリンなら倒せるようになったよな」

 ロプ 「ああ、まあそうだな」


 それはフォローのつもりなのだろうか? 逆にゴブリンくらい初心者でも倒すのだから、倒せるようになったところで、自慢にもならないんだけれどな・・・・・・

 さすがにレイも気まずい雰囲気に気が付いて、僕の実力を察したようだった。おそらくもう、この話題には触れないだろう。触れないでください。


 ニナ 「魔道具作れるのも、才能だと思うけれどな~」

 ミア 「そうですよ」

 ジャド「確かにそうだな」


 なんだか、新人が来る度にこういう思いをすることになりそうだな。そんな事を思いながら洞窟を進んで行った。

 洞窟の中、時間の感覚が無くなり、どれくらい経ったのかがわからないけれど、かなり進んだところでジャドとニイナが警戒し出した。ってことは、そろそろかと僕も気合を入れる。

 直ぐにジャドがハンドサインで慎重に進むようにと指示を出し、僕達はなるべく音を出さないようにジャド達について行く。

 足元がヌルヌルした場所を進み、しばらくすると、前方に大きな生き物が見えて来た。

 でかいな、四・五メートルくらいの高さはあるか? 尻尾など合わせた全長になると、どれくらいの巨体になるのか・・・・・・

 ジャドが僕とミリアナにここで待機と指示を出し、三人でヒュドラに接近して行った。

 僕とミリアナはそれを見守る。ジャド達が接近する間、気付かれないようにと見守るこういう緊張感は、いつ感じても嫌なものだ。とっとと終わって欲しいものだな。

 やがて、ヒュドラの足元に辿り着いたジャドが、攻撃始めの合図を出して来た。さて、うまく魔法が通じたらいいのだけれど、どうなるかな!


 ロプ 「焼き尽くせ、ファイアアロー」

 ミア 「神罰」


 僕達は魔法攻撃を開始した。

 僕の声に反応して、ヒュドラがこちらに首を向けて来て、その瞬間には魔法に焼かれるヒュドラが確認できる。

 どれくらいのダメージを与えることが出来たかで、今後の方針が変わって来るのだが、体の一部に酷い火傷ができたな~、くらいのダメージでしたよ!

 そしてそう思っている間に、傷がドンドンと塞がっていく。こいつの厄介なところは、この異常に早い自己再生能力があるところなのだ。

 炎によるダメージならば、傷口を塞ぐのに、多少の時間が余分にかかるのだけれど、それでもこんな小さな威力では焼け石に水だなって思わされる。

 だからと言って、範囲攻撃にすることもできない、あれは威力が高くなるのだけれど、仲間も巻き込んでしまうからな~

となれば、僕の使える手は一つだな!


 ロプ 「とりゃ!」


 そんな間の抜けたような声で、火属性の切り札を使った。投げられた切り札がヒュドラの数ある首の根元に突き刺さると、爆発を起した。


 ギャーー


 叫び声をあげて、弾き飛ばされた首が地面へと落ちて行った。


 ロプ 「焼き尽くせ、ファイアアロー」


 すかさず落ちた首に攻撃を加える。こいつは、斬り離されてもしばらくは生きていて、油断すると襲って来るので早めの無力化が必要なのである。


 ミア 「神罰」


 僕が攻撃をしたのを見て、ミリアナも察したように攻撃を加えていた。落ちた方はミリアナに任せよう。そう思い切り札を何個か取り出して、ヒュドラの方へと投げ付けた。


 ギャーーギャーー


 さすがに何本もの首が吹き飛ばされたヒュドラが、弱っていっているのが見て取れる。

 これが刃物によって斬られたのなら、また生えて来るのだけれど爆発で焼かれている為に、さしものヒュドラも再生できないようで、ジャドとレイの攻撃に段々と弱々しくなっていった。ちなみにニイナの攻撃は弾かれていた、腕力が足りていないんだな。

 ジャド達の攻撃も、本来なら再生されるのだけれど、再生するだけの生命力を失っているのか、治りがかなり遅くなっている。ここまで来れば、おそらくはもう大丈夫だな。


 ロプ 「ミリアナ、不測の事態に備えて、精神力の温存をしてくれ」

 ミア 「わかりました」


 これ以降は、僕も切り札はいらないだろう。


 ロプ 「焼き尽くせ、ファイアアロー」


 僕は不測の事態を恐れて、落ちた首を焼いていく。たまに様子を見ては本体にも魔法を放っていった。もう勝負はついたなと思ってから、少しの時間がかかって、ようやく完全に倒すことに成功したと確認できた。


 ロプ 「お疲れ様~」

 ミア 「お疲れです!」


 みんながそれぞれに労いの言葉を掛け合って、まずは討伐部位を回収することにした。


 ロプ 「何とかいけたな~ 切り札を作っておいて、よかったよ」

 ジャド「だな、最初の攻撃であの効果だった時は、まずったって思ったよ」

 ロプ 「ああ、あれは僕も焦った」

 ニナ 「あのショートソードがあれば、私だってもう少し戦えたんだけどな~」

 ロプ 「それはすまん、もう少しだから待っていてくれ」

 ニナ 「うん」

 ジャド「ヒュドラ相手に、怪我をしなかっただけで十分だぞ~」

 ミア 「そうですよ。まだまだこれからですから、次ぎがんばりましょう!」

 ニナ 「うん。そうする!」


 無事に終わったからこその軽口を言い合って、僕達は入り口に向けて歩き出した。

 しばらく歩いていると、何か微かに聞こえたような気がした。ジャドが素早く、警戒しろと指示を出して来た。


 ?? 「・・・・・・。・・・・・・、・・・・・・・・・」


 話し声?


 チリンリン


 何か、涼やかな音色も聞こえて来た。


 ロプ 「誰かが来たようだが、ここが危険だと知らない素材収集の冒険者でも来たのかな?」

 ジャド「かもしれないな。でも冒険者なら緊急依頼の事を、知っているはずだと思うけれどな?」

 ロプ 「どちらにしても、もうヒュドラは倒せたのだから安全は確保できている。問題はないな」

 ジャド「だな」


 そしてしばらく進んだ先で、水晶を採っていると思われる女性がいた。まあ実際には彼女本人ではなく、木でできたゴーレム? ウッドゴーレムかな、が動いて集めているようだった。

 女性はそれを眺めている感じだ。そしてその女性は金色の小さな生物を抱えている。

 おそらくドラゴンの子供? 調教師だとして、ドラゴンを使役できるとは、相当の使い手かもしれない。


 ロプ 「こんにちは~」


 僕は一応の礼儀として、おそらくは同業者へと挨拶をしておいた。


 女性 「こんにちは」


 向こうも挨拶をしてくれていたが、あまり人付き合いは好きじゃなさそうだな。そう思いそのまますれ違うことにした。

 しばらくして後ろを見てみたのだが、その時には移動したのか、既に女性とウッドゴーレムの姿は見えなかった。


 ジャド「ドラゴンを調教できて、ウッドゴーレムを連れていたって事は、相当なやり手じゃないかな」


 ジャドも似たような評価を下している。そう考えると、ヒュドラがいると知っていても、お構いなしに水晶を採りに来られると考えて、ここに来ていた可能性があるな。

 単独でヒュドラと戦えるか、ベテランの中でも上位の冒険者かもしれないな。

 僕もがんばってそれくらい強くなるか、生産者の方でそれくらいの功績を挙げてみたいものだ。

 その後、アナコンダという巨蛇に襲われながらも無事に出口まで辿り着き、町に向けてマギーを走らせた。


 ギルドで報酬をもらいみんなで無事を祝って、やっぱり緊急依頼は危険性が高い分、報酬は凄かったなとみんなでわいわい騒いで各自別れた。

 さて我が家にて、ジャドを向かえてシールドの検討を始める。

 とりあえずは話を聞きながら、ショートソードの仕上げをする。


 ジャド「大きさは、もう少し大きい方がいいかもしれんな、重さは逆にちょっと重いかもしれない。形は、上の方をもう少し削って欲しいかな」


 それを受けて、羊皮紙に実物大の型になる絵を描く。


 ロプ 「こんな感じか?」

 ジャド「逆に凹ませてもらってもいいかもしれないな」

 ロプ 「何かこういう盾あったな、カイトシールドだったか?」

 ジャド「ああ、それそれ、それがいいかもしれないな」

 ロプ 「ふむ、わかった、後は重さかちょっと待っていろよ」


 そう言って錘を持って来ると、似せ盾を作ってそれに錘を付け足す。できた物をジャドに渡した。


 ジャド「もう少し軽くだな」


 いくつか錘を減らしてまた渡してを繰り返して、大体の重さを調べた。


 ロプ 「この重さになって来ると、材質で金属は難しそうだな。亀の甲羅とかどうかな?」

 ジャド「あんなの、直ぐに割れないか?」

 ロプ 「強度はある程度仕方ないさ。軽い金属があればいいのだけれど、現状は難しいしな。それにいろいろと貼り付けて強度を上げるようにして作るよ。メインベースが、金属じゃなくなっただけで金属は使うからね」

 ジャド「なるほどな、じゃあそこら辺りは任せる」

 ロプ 「まあ、結局は完全な金属よりは、強度は落ちるだろうけれどね~」

 ジャド「まあ、仕方ないのかな?」

 ロプ 「逆にいけば、強度を取るか、重さを取るかの選択だよ」

 ジャド「その二択なら、重さかな?」

 ロプ 「じゃあ、多少は仕方ないさ」

 ジャド「だな」

 ロプ 「また暇を見て作ってみるよ。魔法の効果はどうだった?」

 ジャド「わるい、そっちは試せなかった」

 ロプ 「それじゃあ、またの機会で」

 ジャド「ああ、それで頼むよ」


 そう言ってジャドは帰って行った。僕は今日で仕上げてみようと、がんばってショートソードを磨き始める。


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