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角が有る者達  作者: C・トベルト
第二章 悪魔から知恵を授かったソロモン
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第94話 WGPとはゴブリンの如く世界の裏側から平和を守る組織の事です。

メンドール「はじめまして、私は貴方達の上司となる、ナンテ・メンドールと言います」


そう言ってナンテ・メンドールはハサギに名刺を渡す。

そこには『mendoll・nande WGP class peach men』と書かれていた。


ハサギ「あ、これはどうもご丁寧に…?

クラス『Peach men』?何ですかこれ?」

メンドール「このWGPで職員は『Dog(いぬ)』『Monkey(さる

)』『Pheasant(キジ)』、

そして『peach men(桃太郎)』の4クラスに分けられています」

ハサギ「4つのクラス?

何だ、偉いとか偉くないとかあるのか?」


ナンテ「ハサギとノリは本来最も階級の低いD級職員なのですが、イシキ局長と『peach men』であるケシゴとペンシの計らいにより、貴方達も特別に『peach men』…略して『Pメン』として働く事になりますね」

ノリ(うわ名前ダサい!)


ノリは心の中でツッコミを入れるが、当然顔には出さない。


ハサギ「そうか…皆ありがとう」

ケシゴ「ふん。

今度は堂々と働けるな」

ペンシ「もはや貴様は馬鹿者ではないからな。

私達の仲間として、一緒に戦おう」

ハサギ「…ああ!」


ハサギは二人の手を繋ぎ、固い握手を交わした。

ナンテが喋るのを止めたのを見計らい、イシキが話を始める。


イシキ「さてハサギよ、ここが何をする組織か分かるかね?」

ハサギ「まだ明確には教えてもらってないですが、多分ここはゴブリンズ又は能力者集団を逮捕する組織なのでは?」

イシキ「正解だよ、我が部下よ」


小さな老人は皺だらけの口を歪ませ、優しく微笑む。


イシキ「我等ゴブリンズは天才との長き戦いに勝利し、ようやっと対等に戦う事ができるようになった。

そして我等が支配者に成らぬよう、ゴブリンズという組織は一度完全解体した。

だが…」

メンドール「ですが、五十年も続いた戦いの味を忘れる事が出来ない者達が新たにゴブリンズを結成、幾つもの亞種ゴブリンズが発生する形になってしまいました」

ハサギ「亞種ゴブリンズ…」

(彼等も亞種ゴブリンズ、なのだろうか…)


ハサギは一瞬、アイ達の事を思い出し心の中に何とも言えない感情が僅かに出てくるのを抑え、二人の話に集中する事にした。


イシキ「嘆かわしい事じゃ、同じ目的を持って戦ってきた戦友に、儂等は銃を向けなければいけないとはの」

メンドール「これから世界はもっとより良い方向へ進むというのに、過去の快楽を忘れられず無意味に世界を崩壊させようとしている…実に愚かしい事です。

だからこのWGP(ワールドゴブリンポリス)は創設された。

かつてゴブリンズを立ち上げた『最初の能力者』イシキを筆頭にしてね」


メンドールはゆっくりとハサギに向かって歩き、目の前で立ち止まる。

ハサギはかなり身長が高い方だがナンテ・メンドールは更に背が高く、完全にハサギを見下ろしている。

ノリの目には、それがまるで下級生を小馬鹿にする上級生のような感じに見えた。


メンドール「我々はあの素晴らしきゴブリンズ以外のゴブリンズを認めてはならない!

君達はその考えに賛同しているからこそ、この場にいる…違うかね?」

ハサギ「…その通りです。

俺は悪の手に堕ちたゴブリンズを許す気はありません」


睨むメンドールをハサギは真っ直ぐ見返した。

真っ直ぐ見るハサギの目を見たメンドールはニヤリと笑い、懐から二枚の写真を出す。


メンドール「ならば、彼等を探して貰おう。

二人の内一人は亞種ゴブリンズのリーダー各の男だ。

…最も、頭脳はあまり良くないがね」


ハサギは二枚の写真の内1枚を見る。

そこには頬に傷の付いた軍服の金髪の男が写し出されていた。

それを見たハサギは目を丸くして驚く。


ハサギ「こいつはライじゃないか!

あいつ、生きていたのか!?」

メンドール「知り合いかね?」

ハサギ「は、はい…昔の戦友です。

血の気が多い奴でした…」

メンドール「そいつは亞種ゴブリンズ達をまとめあげるリーダーだ。

通称『雷鬼』のライ。『電気を操る能力者』であり…」

ハサギ「…原子力空母専用超長距離電磁砲を武器に戦う、ゴブリンズ内でも屈指の戦闘狂。

彼の攻撃で何百の死ななくて良い人間が死んだか、計り知れず、しかし戦果も非常に優秀な兵士……。

そうでしたよね、イシキさん」


ハサギは沈痛な顔でイシキを見る。

イシキは少しだけハサギから目を逸らしながら、話の流れに乗る。


イシキ「そうじゃ…奴め、儂がゴブリンズを解体する時、誰よりも強く反対しておった。

『強さの先に、戦いの先にこそ正義はある、ここで解体すれば更なる敵と戦う事は出来なくなる』…と。

儂は平和を信じて戦ってきた。

平和になった今、ここで止まらなければ儂等の先は破滅だけだ。

だが奴は…」

ハサギ「…イシキさん、ライは必ず俺が見つけて止めてやるぜ」

イシキ「すまない、ハサギよ…」


イシキは淋しそうに、ハサギはそれを元気付けるように話す。

そしてその間に割り込むように、ナンテ・メンドールがもう1枚の写真を見せる。

そこに映っていたのは可愛らしい女の子だ。

黒い長髪で、顔が半分隠れている。


メンドール「この女の子の名前はユーという。

ライはアタゴリアン港町である実験をしているようだ…その女の子もライに誘拐された実験材料の一人だ」

ハサギ「実験材料…!?」

メンドール「何でもGチップを使いある研究をしているようだ。

…場所はアタゴリアン港町の何処か」

ハサギ「アタゴリアン港町…そこに行けば良いんだな?」

イシキ「そうじゃ、君達はこれからアタゴリアン港町に向かい、ライとユーを見つけて欲しい。

武器や人材はこちらで用意する……頼むぞ、ハサギ」

ハサギ「ああ、大丈夫だぜイシキさん!

俺が必ずここにアイツを連れ戻してくる!

皆、行くぞ!」


ハサギは急いで部屋を出ていき、皆もそれにつられて部屋を出ていく。

ナンテ・メンドールもすぐに部屋を出ていき、残ったのはイシキ一人だ。


イシキ「…ふむ、これで良し。

後は彼等をアタゴリアンに連れて行けば、全部OKじゃな」


イシキはそう呟くと、

椅子の下にあるレバーを引っ張る。

すると足元に穴が開き、イシキが椅子ごと落ちていく。


イシキ「若者達よ、すまない。

全てはこの爺が起こした大罪じゃ、ワシはその尻拭いを未来ある若者達の全てを踏み潰して償わせている」


イシキが乗った椅子はチューブ型エスカレーターに引っ掛かり、上へ上へと上がっていく。


イシキ「儂こそ全ての大罪をかぶるべきなのじゃ、

儂以外の全てのモノに大罪をかぶせるな…」


ウィーンという機械音を聞きながら、イシキが乗った椅子は上へ上がり、やがてある部屋に到着する。

さまざまな古い飾り物が鎮座されており、木製の扉が目の前にある。

その扉からノックが聞こえるのと、イシキの床の足元が閉まるのは同時だった。

イシキは厳かな口調で喋る。


イシキ「入れたまえ」

「失礼するぜ、館長」


イシキの言葉を聞いて、部屋に入ったのはゴブリンズのリーダー、アイだ。


アイ「久しぶりだな館長」

イシキ「よしてくれ、アイ。

儂はこの通り老いぼれだよ、何もできやしないさ」

アイ「何言ってるんだ、皆あんたを尊敬してるぜ。

あの戦争の後力に溺れず、新しい者が戦争を忘れないようにと戦争博物館を設立したんじゃないか」

イシキ「ふぉふぉふぉ、入って来るのはお主か蝙蝠位のものじゃがな」


イシキは笑いながら机のボタンを押すと、自動で緑茶が出てきた。


アイ「…で?

俺を呼んだのは何が理由なんだ?

元ゴブリンズ首領が現ゴブリンズ首領を呼ぶナンテ凄い事じゃないか、一体どんな…」

イシキ「ふむ、実は旅行券が当たってな」

アイ「…はい?」

イシキ「アタゴリアン港町行きのチケット。

たまにはこれで温泉なんてどうじゃ?」

アイ「温泉…?」


アイの眉がピクッと動く。

イシキはここぞとばかり喋り始める。


イシキ「今なら美味しいご飯も付いて豪華な船旅、誰もがニコニコの美味しいアタゴリアン港町…どうじゃ?行ってみないか」

アイ「…成る程、行く価値はあるな、だが良いのか?

こんな豪華なもの頂いちゃって」

イシキ「大丈夫じゃ」


イシキはフッと笑う。


イシキ「ワシはこの通り老いぼれでのう。

遠い所には行けんのじゃ」

アイ「そっか、悪いなイシキ。

後で土産とか写真とか沢山撮ってくるからな〜」

イシキ「気をつけてな〜」


イシキはニコニコ笑いながら部屋から出ていくアイを見送る。

そして一人になった時、こう呟いた。


イシキ「…あそこは危険が一杯だからの」


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