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角が有る者達  作者: C・トベルト
第二章 悪魔から知恵を授かったソロモン
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第93話 迷宮島

迷宮島 空港。


『おいでませ 迷宮島』と書かれた暖簾をくぐり、ハサギ、ノリ、ペンシ、ケシゴの四人は空港の待合所に立っていた。


ノリ「スゲー広さッスね、迷宮島…」

ハサギ「ノリ、あまりキョロキョロするなよ。

俺達は観光で来たんじゃないんだ」

ペンシ「わはーーーーっ!!

お土産が一杯だー!

ケシゴ、『ひなこ』買うぞ『ひなこ』!

後で皆で食べよう!」

ケシゴ「…ああ…そうだな…」


と、四人がいつも通りの調子で待っていると、誰かが近づいてくる。

紺色のスーツを着た男性で少し痩せこけている。


「失礼。

貴方方がハサギ、ノリ、ケシゴ様ですか?」

ハサギ「ああ、そうだが…貴方は?」

「失礼。

私、こういうものです」

ハサギ「あ、どうもご丁寧に」


と、男は名刺をハサギに渡す。

そこには『WGP class DOG

ボルペン・シャルペ』と書かれていた。

と、丁度土産屋からたんまりと紙袋を両手に抱えたペンシがやってくる。


ペンシ「イヤー買った買った。

ん?貴方は?」

シャルペ「失礼。

私の名前はシャルペと申します。

貴方はペンシ、で間違いないですね?」

ペンシ「その通り!

ここに来たって事は本部まで案内してくれるの?」

シャルペ「ええ、その通りです。

ささ、車を待たせてあるのでこちらへ」


シャルペに案内され一行が乗り込んだ車はリンカーンリムジン。

超高級車だ。


ハサギ「え?これに、乗るの?」

シャルペ「ええ、その通りです」

ハサギ「だ、だだだだ大丈夫なのか!?

俺達ノーマネーだぞ!?

朝昼晩カップラーメン一個で生活している身だぞ!?」

シャルペ「大丈夫でございます」


顔面蒼白でシャルペの肩を掴みガクガクと揺するが、シャルペは表情を全く変えなかった。

ハサギは暫く口をパクパクとさせていたが、諦めたようにリムジンに乗り込む。

そして全員が乗り込んだ所で車は出発した。


ハサギ「…フカフカだ。

椅子がすっげえフカフカしてる。

これがセレブという奴か…」

ノリ「ハサギさん、あんまり気にしすぎると貧乏にみられるッスよ」

ハサギ「あ、すまねぇ…」

ペンシ「見ろ、ケシゴ!

ここに冷蔵庫があるぞ!ワインが入ってるぞワイン!

乾杯しよう!」

ケシゴ「それ車内で飲んだら酔うぞ?」


ハサギはチラッと窓の外を見る。

町は治安が行き届いているのかとても平和で、どこにも銃を構えている人物はいなかった。


ハサギ「…『迷宮島』…。

ここは確か、そう呼ばれているんだよな」

ケシゴ「そうだが、どうかしたか?」

ハサギ「いや、実は…」


ハサギが何か言いかけるが、シャルペがそれを遮るように放送を入れる。


シャルペ『まもなく車専用エレベーターに乗ります。

少し辺りが暗くなりますが辛抱下さい』


シャルペの放送が途切れると同時にリムジンがエレベーターの中に入る。

車内が暗くなり、全員の顔も見えなくなる。

その中でハサギは言いかけた言葉を吐き出す。


ハサギ「…ここは昔、『ゴブリンズ島』と呼ばれていたんじゃないのか?」

ノリ「ゴブリンズ島?

え、ゴブリンズ!?」

ケシゴ「!

良く知ってるな」

ハサギ「当たり前だ。

何故ならここは……俺の生まれ故郷だからだ」

ノリ「ええぇぇっ!?」

ペンシ「…!」


ノリが目を丸くしてハサギを見るが…ハサギの顔は暗闇で隠れて見えない。


ハサギ「何となくそうなんじゃないかとは思ってたんだ。

ゴブリンは穴蔵の迷宮を住み家にする。

あの人なら、ここを『迷宮島』なんて名前にするのも納得できるからな」

ノリ「あの人?」

ハサギ「ケシゴ、俺達はこれからWGP本部のお偉いさんと会うんだろ?」

ケシゴ「そうだ。

これから俺達が働く部署の上司と、WGPの創立者に会うためにな」

ノリ「WGP…そう言えば、これは何の略なんすか?」

ケシゴ「World Goblin Police(世界小鬼警察)。

ゴブリンズ専用の警察だ」

ノリ「ゴブリンズ専用!?

あの5人組を捕まえる為に、そんなデカイ組織があるっスか!?」


ケシゴは頭を横に降った。


ケシゴ「今から数年前、五十年続いた戦争は終結し、能力者と天才は差別を無くした。

そして能力者軍の創立者イシキは軍を解体し、差別が起きない限り、二度と軍を作らないと宣言したんだ」

ノリ「…そんな事があったんすか」

ハサギ「…因みに俺はその中で幹部クラスの人間だった」

ノリ「!?!?」

ハサギ「うわー…って事はWGPの創立者は…イシキか」

ケシゴ「正解だ」


暗闇の中でケシゴはフッと笑う。

そしてノリはパクパクと口を開閉させる。


ハサギ「ん?どうかしたか?」

ノリ「は、ハサギさん…軍の幹部だったんすか?」

ハサギ「あ、いや、まあ…あれ、ノリには話して無かったっけ?」

ノリ「し、知らなかったッスよ!

びっくりし過ぎ心臓がバクバクしてるッス!」

ハサギ「暗くて良く見えないが、顔が赤いような…誰か灯り点けてくれないか?」

ノリ「だだだだだ大丈夫ッスススス!!

全然、のーぷろぶれむっす!

灯り付けなくても大丈夫ッスよ!」

ハサギ「そうか?

ならいいが…」

シャルペ「到着しました。

迷宮島第31階層WGP本部駐車場でございます」


シャルペの声と同時に車内が明るくなる。

そして辺りを見渡すと車が何十台も並んでいる駐車場になっていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



WGP本部 総帥室前


ハサギ「…で、ここまで来たのはいいんだけどさ」


ハサギはチラッと後ろを見る。

そこにはペンシの背中に隠れるノリがいた。


ハサギ「なんでそんなに緊張してるんだ、ノリ?」

ノリ「だ、だってこれから会う人…イシキさんって能力者軍のリーダーだったんスよね?

それだと天才のボク達が入ったら気まずいんじゃないッスか?」

ハサギ「大丈夫だよ。

イシキが憎んでたのはあくまで差別する古臭い考えだけだ。

天才を煮て食おうなんて考えちゃいないよ」

ノリ「で、でも怖いッス…」

ハサギ「…」


ハサギはノリにそっと手を伸ばす。


ノリ「?」

ハサギ「俺は天才でありながら能力者軍の幹部になれた男さ。

だから、俺と一緒なら絶対ノリを酷い目に合わせない」

ノリ「は、ハサギさん…!

分かったッス!

ボク、頑張るッス!」


ノリはハサギの手を掴み、一緒に総帥室の扉を叩く。

扉の向こうから老人の声が聞こえる。


「どうぞ」

ハサギ「失礼します」


ハサギは扉を開け、総帥室の中に入る。

絨毯を敷き詰められた豪華な部屋の中に、二人の男が立っていた。

一人は80代の老人。

もう一人は30代の男性だ。


老人「久しぶりだな、ハサギ」

ハサギ「久しぶりですね、総帥」

老人「そんなかたっくるしい名前で呼ばんでくれ。

イシキでいい」

ハサギ「…では、イシキさん。

改めて久しぶりですね」

老人改めイシキ「ああ…終戦以来だな」


二人は静かに握手をする。

その空気は独特で、正に戦友同士の会話だった。

もう一人の男性が軽く咳払いする。それを聞いたハサギは男性の方に顔を向けた。


ハサギ「はじめまして、貴方は…?」

男性「はじめまして、私は貴方達の上司となる人です。

名前はナンテ・メンドールと申します」


男性…ナンテ・メンドールはハサギの前で愉しそうな笑みを浮かべた。


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