第72話 日食パート 月龍の改名、仮初めの終幕。
9・00 学校・校庭
アイ、スス、メルの三人はパーの目の前に立つ。
メルはずっと右腕を上げ続け、月龍はその後ろで動く事が出来ない。
パーは布を巻き止血させていたが、立ち上がる事は出来ないのか方膝ついて座っていた。
パーがアイの方に顔を向け、皮肉を込めて喋り始める。
パー「Ello, beastie(よお、怪物)」
アイ 「Ello, beastie(よお、怪物)。
お前に幾つか聞きたい事がある」
パーは皮肉を込めて、アイは楽しそうに同じ言葉で話し始める。
パー「大罪計画、果心林檎、Gチップ。
それについてまだ授業し足りないというのかい?」
アイ「ここまで傷付けた後で言うのもおかしいが、お前は老体だ。
下手に拷問すれば直ぐ死んでしまう。
だが早々に話せば無傷で解放する事を約束しよう」
アイはパーの顔を見たまま話すが、右手の銀の拳は今か今かと何かを期待するかのように握り締めていた。
パーはアイの顔をみた後、ニヤリと笑う。
パー「フフフ…。
くどい説明はいいさ、全てを話してやる。
嘘もつかない」
アイ「……へぇ、こういうのは黙るのがお約束だと思ったんだがな」
拳を握りしめたまま、アイは笑みを浮かべる。
パー「ふん。
貴様1人なら死んでも話す気は無かったんだがな」
パーは目線をアイからススに変え、少し険しい表情で喋り始める。
パー「…そちらの娘さんが復讐で動いていると聞いたのでな。
…我等の計画はあくまで人々を幸福にするための計画だ。
だが犠牲が発生した以上、犠牲者の親族であるスス嬢には真実を伝えねばならぬ」
スス「え…」
ススは思わず驚きの声を上げ、パーの顔を見つめる。
パーという老人の表情にはアイに向けていた憎しみの表情は無く、まるで孫を見つめるおじいさんのような優しさを感じられた。
メル「騙されないよ」
メルは一歩前に出てススとパーの間に割り込む。
パーの眉が少しだけつり上がる。
パー「騙されない、とは?」
メル「僕は一度、貴方達の仲間に似たような事を言われた。
…でもそれは、僕が真実を知って絶望させるための罠だったんだ」
メルの記憶に一瞬だけ、魔法美少女カスキュアのゲタゲタと笑う顔が浮かび上がる。
メル「貴方達は悪人だ。
誰がなんと言おうと、どんな歯の浮く台詞を吐こうと…もう僕には届かないよ」
パー「…そうか」
パーは軽く笑みを浮かべた後、アイに顔を向ける。
パー「真実を教えよう。
まず何から聞きたい?」
アイ「…Gチップから、だ。
お前達はあれを人体から引き剥がす方法を知っているのか?」
パーは首を横に降った。
パー「…分からないな。
儂が知る限りではあるが、誰も一度人体に入れたGチップを引き剥がす方法を考えてはいなかった。
Gチップの詳しい事はオーケストラ・メロディ・ゴートか…その息子、ドリーム・メロディ・ゴートしか知らぬ」
メル「僕の父さんか、じいちゃん…!」
メルはぎゅっと拳を握り締める。
自分の祖父は世界にGチップをばらまき、父は戦争兵器をばら蒔いた。
それが世界にどんな被害をもたらしたか…思えば思う程、無知だった自分が恥ずかしくなる。
気づけばメルは叫んでいた。
メル「その二人は今何処に!?」
アイ「メル、黙ってろ!」
アイはメルの言葉を止めさせる。
そして小さく舌打ちした。
メル「?」
アイ「…質問を変える。
パー、大罪計画はあと3つあるはずだな。
『強欲』『憤怒』『傲慢』。
…それぞれ何処でやるんだ?」
パー「…憤怒計画は、外国で行われるそうだ。
確か…『アタゴリアン』という寂れた港街だ。だが何をする気なのかは儂も知らん。
強欲計画は…『ジャン・グール』と言えば分かるだろう?」
スス「ジャン・グール…」(シティのお父さんの名前よね、それ。
アタゴリアンもどこかで聞いた事があるような…?)
ススは一瞬、シティの顔が浮かび上がる。
パー「傲慢計画は…月でやるそうだ。
それ以外は何が何だか儂も知らん。」
アイ「今のが真実だという証拠は?」
パー「…儂の胸ポケットを探ってみろ。USBが入っている筈だ。
…それに今言った事が書かれている」
アイがパーのスーツにある胸ポケットを探ると、ビニールの小さな袋に入った小さなUSBを見つけた。
アイはそれを手に取り、暫く見つめた後、真剣な表情でパーに訪ねる。
アイ「これは?」
パー「大罪計画、怠惰の内容だ。
…最も、果心様が不老不死の方法を知った今、最早意味の無い代物だがな」
メルは明後日の方向を見ながらも右腕を上げ続け必死に耐えていた。
しかしその間も、月龍はメルの力により動けないでいた。
体中の力を込め、必死に動こうとしていたが…全く体は動かない。
月龍(ダメだ…動けぬ…この、我が…『月龍』が動けないなんて…)
月龍は歯軋りしたいのだが、口すら動かす事出来ない。
情けなくて涙が出そうになるが、それも出ない。
月龍(嫌だ…このまま…何も出来ないのは…嫌だ…)
月龍の目に或る記憶が甦る。
それは自分に『月龍』の名をくれた魔女の姿だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
Pm1:00 結界・外側
「…………ーー覚ましなさい。目を覚ましなさい」
パチリ、と龍は目を開く。
目の前には女性が空中で浮きながらこちらをじっと見つめていた。
『だれだ?』
「私は果心林檎。魔術を行使し貴方を作り出した者です」
『…把握。術者名、『RINGO・KASHINN 』。
『月の食卓、太陽を食す』の呪術契約に従い、貴方に我が力の一部を日が沈むまで付与させます』
その時は、月龍と呼ばれた存在は単なるプログラムの一部に過ぎなかった。
日の力を魔力に変換させ、術者に力を与える。
それが自分の存在意義であり、理由であり、全てであった。
自分は魔力を与える為の存在であり、日が沈むまでに魔力を与え契約を与える為の存在。
契約を行った魔術師は結界内でのみ様々な魔術を行使出来る。
だから果心と言う魔術師が次に行うのは様々な魔術を行使する事だと決めつけていた。
だが果心が次に行ったのは魔術ではなかった。
果心「宜しい。
…さて、次は貴方に名前を刻ませて貰うわ」
『?』
果心「貴方は本来、今日1日しか存在出来ない魔法生物。
だけど名前を刻めば、貴方は呪術が終わった後も貴方の存在を保つ事が出来る」
『…なぜ、そんな事を?』
果心「…私はね、太陽が嫌いなのよ」
果心は空を見上げる。
つられて上を見上げれば、そこには輝く夏の太陽が見えた。
果心は太陽を見ながらフッと笑う。
果心「あんなに眩しく輝いて、暴力的な光よね。
それより私は闇の中で綺麗に輝く月が好きなのよ。
…でも、月も寂しがり屋でね?
お話できる人が欲しいのよ」
果心は微笑むが、龍は冷ややかに『それは答えになってない』と言うと少し寂しそうな表情に変わる。
果心「そうね…勿体無いから、かしら」
『勿体無い?』
果心「貴方の存在はとても珍しく、恐ろしく、素晴らしい存在。
しかしたった一夜でその命終わらせるには勿体無いのよ。
だから私は貴方を『改造』し、名前を刻む事で千夜生き永らえさせる事にしたの」
『千夜…長いな』
龍はフッと笑みを浮かべる。
どうせ自分は一夜で消える存在だ。
もし契約に従いこの魔術師を倒しても邪龍となり体内の魔力尽きるまで宛もなく夜の中をさ迷う存在に成り果てるだけの、小さな存在。
しかし果心はそんな小さな存在にこう話しかけた。
果心「千夜は短いわ。
貴方が望めば全ては短く小さく、直ぐ手に入るのです」
『我が…望めば?』
果心「ええ。
『月の食卓、太陽を食す』。
この言葉の本当の意味は、『自分の作った世界ごと、自身を殺す』…つまり自殺の魔法なのよ。
でも、『命』を持たない貴方はその真の意味を知らない」
『命?命とは何だ?』
果心「…それを知りたければ、」
果心はいつの間にか和紙を取りだし、筆でさらさらと何かを書く。
果心「…この一晩、貴方は『月龍』と名乗りなさい」
『つき…りゅう?』
果心「そう。そしてもし、貴方がこの一晩の間に『命』を望むのであれば、私は貴方にこの真名を授けますわ」
そう言って、果心は和紙に書いた文字を龍に見せる。
『!』
果心「『ーーー』。
もしも貴方が生きたいと望んだ時、この名を使いなさい。
そうすれば貴方はこの魔術とは別の存在になり、『命』を持つ事ができるようになるわ」
『…我はこの魔術の為の存在だ。
生きたいなど、願うものか。
…だが、この名は気に入ったので使わせて貰うぞ』
「フフッ。
宜しくね、月龍」
魔女は楽しそうに微笑み、
龍は不機嫌に鼻を鳴らした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そして今、月龍は生きたいという望みが思考を支配していた。
月龍(…我は、ここで死ぬのか?
何も出来ずに消えてしまうのか?
名前まで頂いたのに!?)
月龍は悔しくて歯軋りしたいが、メルの力でそれは出来ない。
月龍(嫌だ…消えるのは嫌だ!
我はもっと生きたい!もっと知りたい!もっと…もっと何かをしたい!)
心の中で叫ぶ月龍。
果心林檎の幻が目の前で問いかける。
果心(ならば、どうする?)
月龍(…。
いいだろう、果心林檎。
我は貴方の野望についていこう。
我は生きたい。生きて世界を知りたい!
そして、奴等に復讐を!
我の動きを止めさせた奴等に復讐をしてやるのだ!)
「…あ…あ…あ…」
月龍があらんかぎりの力を使い、口を動かしていく。
そして月龍にとって幸いな事に、三人の耳に月龍の言葉は聞こえなかった。
月龍「わ…我…我の、名は…」
月龍は口を動かす度に強力なエネルギーを行使し、顎が外れそうになる。
それを抑えながら、月龍は真名を告げた。
月龍「我の、真名は……朧!」
叫んだ瞬間、月龍の体が変化していく。
三人にとって不幸な事に、今月龍の変化に気付いた。
メル「あれ、なんか違和感を感じる……!」
スス「え、何?うわ!?」
アイ「何だ!?月龍の体が……透けてきている!?」
月龍は自分の体が消えていくような感覚を覚える。
そして、消えていく体の中で何かが作り上げられていくのを感じた。
再度、果心の言葉が月龍の心に響いてくる。
果心(貴方の真名は朧。夜の幻。
その言葉を叫んだ瞬間、貴方は魔法生物ではなくなり『命』を持つ、生物と同等の存在になる。
貴方は夜の間だけ、『どこにも存在しどこにも存在しない』者になる)
月龍(どこにも存在し……どこにも存在しない)
月龍は目を閉じる。
その瞬間、月龍は完全に姿を消した。
三人は思わず息を呑む。
しかしパーは、自分の足元に何かが転がっているのに気付いた。
それは二枚貝と砂が入った瓶だ。ラベルには『朧』と書いてある。パーはそれが何か考えるよりも早く、素早く手に持ち隠した。
そして目線を三人に戻し、話しかけた。
パー「おや、あの龍は何処にいったのかねぇ」
アイ「…俺が知るかよ」
アイはパーに背をむけ、辺りを伺う。
しかし次の瞬間、アイの左腕を巨大な龍の口が噛みついていた。
アイ「!?」
幾ら金属で出来ているとはいえ、顔だけで3メートルはある大きな口から逃れる事もできず、あまりにあっさりとアイの左腕を噛み千切ってしまった。
うずくまるアイのすぐ上を、30メートルはある巨大な金色の龍が飛んでいく。
バキィ!!
アイ「!!」スス「リーダー!」メル「あ…あ!」
アイ「メル、俺の事はいいから早く動きを!」
メル「う、うん!止まれ!」
メルは月龍を見て右腕を上げ、もう一度止まれと念じる。
しかし、月龍は止まらない。
朧「無駄だ!
今や我は貴様らと同じ、命を持った存在!」
そして、月龍の巨体が消えていく。
完全に姿が見えなくなった瞬間、メルの背後に龍の三本の爪が出現した!
メル「っ!『硬化』!」
ギイイン、と音を立てて龍の爪が弾かれる。
しかし掌を避ける事は出来ず、メルは押し出され吹き飛ばされる。
メル「ぐ!」
朧「フハハハハハハ!!
楽しい!楽しいぞ!
貴様らを蹂躙するのがこんなに楽しいとは思いもしなかった!」
パー「月龍!こっちへこい!」
朧「我の真名は『朧』だ!」
パーの命令に従い、月龍…朧はパーの周囲で巨体を使い、パーを守護する。そして朧の口から光が溜め込まれて敵を殲滅する準備を始める。
アイはまずいと思い、ススは殺されると直感し、メルはその両方を感じ取っていた。
月龍の守護の中でパーが立ち上がり、ニヤリと笑う。
パー「これで……」
『 お わ り よ 』
突如、パーのセリフを切り裂いて声が空間に響き渡る。
あまり大きい声で無いにも関わらず、声は全員の耳に入りこんでいった。
朧の口から光が消え、瞳がギョロリと動き出す。
朧「…誰だ?何処にいる?」
『ここよ…私はここにいる』
再び聞こえる、謎の声。
それはパーのすぐ後ろから聞こえていた。
パー「…!!
この声は…果心様!」
アイ「果心だと!?」
三人がパーに目線を向ける。
そこにはパーの背後に闇が渦巻いていた。
夜の原始の闇よりも暗い、真実の闇。
その中から白く細長い手が伸びていき、パーの体を抱き締める。
果心「パー…退くわよ」
パー「!?」
パーは驚き、振り向かないまま果心に話し始める。
パー「何故です!?
今、月龍は更に強力になりました!
今なら、今なら奴等を殺す事が出来る!」
果心「何の為に殺すのです?
もはや目的は果たされた、我等の元には既に不老不死の秘密があり、月龍は真名を持ち命を持つ存在となった。
……もう戦う意味はありません」
パー「ですが!」
果心「黙りなさい、パー。
貴方は充分に私の為に戦った。
70を越える老体の身で、成長する奴等と対等に渡り合った。
ですが自分でも理解しているでしょう。
貴方の命がそう長くない事に」
パー「…………」
パーは自分の足元を確認する。
ナイフで刺された傷を布で止血していたが、もう真っ赤に染まっていた。
気づけば体のあちこちがずきずきと痛む。
しかしその痛みを和らげるのは、果心の腕の温もりであった。
果心「このまま戦えば負けるのは貴方よ。
もう傷つく必要はないわ」
パー「……分かりました」
果心「朧」
果心に朧、と呼ばれた龍はパーの方を…果心の方を睨み付ける。
朧「…」
果心「もう貴方は自殺の魔法から生まれた凶器ではない。
何物にも拘束される事の無い、立派な生物に成長した。
…その上で尋ねるわ。私と共に同じ夢を見ない?」
朧「…我は、龍ぞ。
無敵の龍、朧。
…その我が付けば、貴方の夢はもっと輝く。…我は今から我の意思で果心の下に着く」
果心「宜しい。
我々の勝利でこの戦いは終わる」
果心の姿は腕しか見えないが、その表情は笑顔だと声だけで良く理解した。
まるで、果心林檎が勝利者というべきこの状況。
それを踏み潰したのは、アイだった。
アイ「逃げるのか?」
果心「……」
スス「リーダー?」
メル「…?」
ススはアイの顔を覗き込む。
アイは余裕たっぷりな笑みを浮かべていた。
アイ「お前さん、目的を果たしたと言ったが……本当は無理なんだろ?」
果心「……」
アイ「ふん、さしずめ不老不死の方法を理解したが……全人類にそれを分配する方法がないのだろう?」
果心「……良く解ったわね」
アイ「ふん」(ほとんどハッタリだったんだけどな…)
アイは闇を睨み付けたまま話を続ける。
アイ「それで、お前は目的を果たせず無様に逃げるわけだ。何処が勝利なんだか」
パー「貴様、果心様を侮辱するとは…」
パーが前に動きだそうとするが、果心の手はパーを離さない。
果心「パー、静かに。
無様ついでに、一つ置き土産を残しておくわ」
アイ「何?」
果心が指をパチンと鳴らすと、急に左側から何かが聞こえてきた。
……人の声だ。
アイが目を向けるとそこには学校の生徒の姿が見えた。
全員人の姿をしており、魚人の姿をしているものは誰もいない。
果心「今まで私が閉じ込めていた学校の生徒達よ。
休戦の証として、彼等を解放するわ」
アイ「あいつら、魚人化してたのに……」
果心「魚人の時の記憶も消したわ。休戦の証としてこれ以上の取引材料は無いわよね?」
アイ「……チッ。人質を用意してたとはな。
分かったよ、良く分かった。
やっぱりこの戦い、果心の一人勝ちだ」
果心「フフフ、いいえ…引き分けですわ。
貴方を殺せなかったんだもの」
闇の中で果心は楽しそうに笑う。
この時、メルとススは何も言わず、こんな事を考えていた。
メル(アイさん、さっきから普通に話してるけど…人が急に出てきたり、龍が動きを止めたりで全然話がついていけないよ!
ああ、せめて果心の顔だけでも確認したい)
スス(え、何、なんなのこのダークファンタジー?
私達魔法とかさっぱりなんだけど…ダンクがいてくれたらペラペラ説明してくれるんだろうなあ)
果心や魔法の面識がほとんどない二人にとっては何が何だか分からない状況ではある。
果心とアイの二人はそんな事お構い無しに話を続けた。
果心「…それでは消えさせて貰うわ。
朧が別の存在になった事で、この結界を維持する事は出来なくなった。
あの楽しい魚人も、結界の影響がか無くなれば元に戻れるでしょう」
アイ「あー、そういえば」
アイはちらっと振り返る。
巨大な魚人は少しずつ縮こまり始めていた。
また、暗闇が薄れ星の光が少しずつ見えてきた。
忌々しい結界が消えていくのだ。
果心「…それでは、さよならさせていただくわ」
アイ「…『逃げるのか』?」
果心「?」
アイはパーと、闇に向かって問いかける。
パー「挑発?
何を今更…」
アイ「『まあいい。今は逃がさせてやる。
せいぜい遠くまで逃げて、力をつける事だな』」
果心(・・・これは。
そう、そう言う事…)
果心は思い出す。
初めてアイと出会い、そして逃げる時に言った台詞と全く同じなのだ。
アイ「『今度会ったらその首捻り切ってやる』。
…次は本当にな」
果心「…クスッ。
その願い、叶うといいわね」
果心は闇の中で笑い、そして朧とずっと掴んだままのパーと一緒に闇の中に呑まれていった。
果心林檎やパーと不老不死を巡る戦いは今、終わったのだ。
アイ「…行ったか。
やれやれ、やっとこの長い戦いも終わったな。
さて、どう生徒達に伝えようか」
そう言ってアイが振り返りる。
そして、バァン、という乾いた破裂音が響いた。