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角が有る者達  作者: C・トベルト
太陽の命と月の命。
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第69話 日食パート 大化物VS 大化物

ざわざわ、ざわざわざわざわ、

白山羊の髪の毛は自身を完全に覆い、黄色い目だけが白髪の奥底からシティの方を覗いている。

両手は髪の毛から突き出し、まるで角のような存在にみえる。

怪物、そう呼んでもおかしくない存在がシティの目の前に立ちはだかっていた。


対してシティは口笛を鳴らし、強敵の攻撃に備え右腕を上げて能力を発動する構えをとる。


シティ「随分化け物らしい姿に変身したじゃない。

うん、煽った甲斐があったわ」

白山羊「たかが人間の分際で『究極の道具』である私に対して戦いを挑んだ事、

後悔させてやるわ!」

シティ「……まーた道具だって言ってる。

もう少し煽らせた方が良かったかな?」


あくまで余裕の笑みを崩さないシティ。しかしその後ろでは、ダンクが壊れ始めた結界をせっせと修復していた。


ダンク「くそ、何だよあの力。

俺の結界をここまで傷つけらせるのは久しぶりだ。

…これは、ヤバいか?」


ダンクの脳裏に一瞬、細切れにされたシティの姿が浮かび上がる。

それを振り払うようにダンクは頭を降り、シティに向かって叫ぶ。


ダンク「シティ!」

シティ「ん?なに、ダンク?」


ダンクが叫び、シティは振り返らずに答える。


ダンク「俺と代われ!

アイツの力は危険だ!お前は生身の人間なんだぞ!」

シティ「ダンク……あはははははは、何言ってんの、魔法使い?」

ダンク「!」

シティ「私は高鬼シティ!

誰より高い高い高い高ーい場所が大好きな、鬼なんだよ……。

あんたみたいな地面に縛られて生きてる奴に、私が助けられる訳ないじゃん」

ダンク「シティ……!」


シティは笑みを浮かべながら、白山羊を睨み付けている。


シティ「来なよ白山羊!

大怪物になったあんたの力、高い高い私に届いてみなよ!」

白山羊「愚かな人間ごときが、もう喋るな!」


白山羊の髪の毛がうねり、シティに向かっていく。

シティは右手を降り下ろすと同時に、足元から電柱が飛び出してきた。


ズドオオオオン!


次の瞬間、髪の毛はシティが立っていた場所にある電柱をぐるぐる巻きにし、その上に立つシティを絡めとる事は出来なかった。


シティ「危ない危ない」

白山羊「まだです!」


白山羊が髪の毛を引っ張る。

それだけで、コンクリートで出来た電柱がズタズタに切り裂かれた。


ズバズバズバズバ!


シティ「う、わ、落ち…ない!」


シティは自分の足元に鉄板を出現させ、それに乗って空を飛んで行く。

しかし白山羊の黄色い眼はそれを捕らえていた。


シティ「残念でしたー」

白山羊「逃がすと思う? 」


白山羊の広げた両手から銃火器が出現する。

白山羊の両掌は特殊な物体移動装置となっており、様々な武器を掌から出現させる事ができる。


しかし白山羊は出現した銃火器を掴まずにボトボトと落としていく。

落ちた銃火器は髪の毛の海に沈み姿を見せない。


シティ(なんかする気ね、それなら私も)


シティはパチン、と指を鳴らした。

次の瞬間、白山羊の上空に電柱が出現する。


白山羊「!」

シティ「潰れろ!」


そして、電柱がシティの声に従うように真下にいる白山羊に向かって落ちていく。

しかし次の瞬間、電柱は空中で停止した。


シティ「!」

白山羊「残念。もう電柱ごときじゃ私には届かないんですよ」


白山羊は髪の毛の奥でニヤリと笑う。シティが目を凝らして良く見ると、電柱が細い糸でがんじがらめに絡みとられていた。


シティ「…へぇ、面白い技ね」

白山羊「お楽しみはこれからですよ」


白山羊が髪の毛を操り、空中停止した電柱の先がゆっくりとシティに向かっていく。


シティ「…」

白山羊「潰れろ」


白山羊の声に従い、電柱は上空で鉄板の上に立っているシティに向けて飛んでいった。

更に、白山羊の大量の髪の毛もシティの方に向かっていく。

しかも髪の毛の奥には銃火器の黒い筒が見え隠れしていた。


ダンク「あいつ、攻撃に合わせて一気に射撃をする気だ!

逃げろ、シティ!」


ダンクが叫ぶ。

しかしシティはニヤリと笑い、


シティ「『コンクリート・ボックス』」


とだけ呟いた。

次の瞬間、シティの姿が巨大なビルの中に隠れた。

空中に突然10階建てのビルが出現したのだ。


白山羊「!?

な、なんです、あのビルは!?」


白山羊が目を白黒させる前で、対象を見失った電柱がビルの4階部分を突き刺し、貫通する。


ズドオオオオオオオオオン!!


しかしビルは重力に従い、地面に真っ逆さまに落ちていく。

そして地面に叩きつけられる直前、ビタッと停止する。

今度は髪の毛は絡まっていない。

そしてゆっくりと降下し着陸した。

それでも、大地が揺れ動いてしまったが。


ズズウウウウン…!


白山羊「…ま、まさかあの人間。

ビルまで操れるんですか!?」

シティ「どれ程でかくても、ただの長方形だからねー。

しかもビルの中には直線の鉄線が大量に存在している。

ビルを操るのは、むしろ電柱より簡単なのよ?

…ただ、ごちゃごちゃした物が入ってない廃ビル限定だけどね」


ビル内部から、シティの声が響いてくる。先程の電柱は外れてしまったようだが…何処にいるのか全く分からない。

白山羊はビルを睨み付けた後…ニヤリと笑った。


白山羊「…案外臆病なんですね。

それだけの巨大な『切り札』を持ちながら、その身を隠す事にしか使わないなんて」

シティ「……」

白山羊「私は違います。

『道具』には様子見なんて必要ない。

全てが必殺技です。

銃火器(彼等)のようにね」


ジャコン!ジャカ!ガシャン!ジャキン!ジャキン!ガシャガシャガシャ!


白山羊の髪の毛の中からがんじがらめに絡めとられた銃火器が動き出す。


白山羊「『model1887』『UTSー15

』『八九式小銃』『43型ロケット対戦車兵器パンツァーシュレック』『ノーリンコT54』『九七式自動砲』『MP34短機関銃』『MG3機関銃』『G22狙撃銃』『03式自動歩槍』『M202a1』『P90』『M134ミニガン』『パンツァー・ツェリスカ・600Ne』。

他にも他にも、たかが人間を殺せる武器など幾らでも有りますよ」


白山羊が名前を上げる度に、銃達がその後ろで髪の毛によって安全装置を外し弾丸装填され引き金が髪の毛で絡まり何時でも撃てる状態になる。


ダンク「白山羊…あいつもしかしなくても、ものすげーガンオタ…?」

白山羊「さあ、愚かな人間よ、無様にし(ゴロン!)…何です?」


ゴロン!ゴロン!ゴロン!ゴロン!ゴロン!ゴロン!ゴロン!


白山羊のセリフを遮り、何か大きな物体が転がる音が聞こえてくる。


ノリ「なな、なんすか、この音は…」

ペンシ「嫌な予感しかしない…」


二人が呟く間にも、ゴロン、ゴロンという音は絶え間なく響いてくる。

その音は、ビルの中から聞こえていた。


白山羊「ふざけてるのですか、実に人間らしい…」


白山羊の言葉と同時に銃火器が一斉に髪の毛から飛び出す。


ダンク「まずい!

白黒魔法『モノクロシアター』!」


ダンクが叫ぶと同時に、結界内部の色が全て白と黒に変化する。

その次の瞬間、白山羊の銃達はビルに向かって一斉掃射を始めた。


ノリ(ダンク!何をしてるッスか!?

…あれ、声がでない!)

ペンシ(でもなんて言ってるかは伝わるわ、ふしぎー!)

ダンク(『モノクロシアター』の結界内では、一切の外部からの音が遮断される…これで、銃の発砲音で鼓膜が破れる心配はない)


ダンクは白山羊を睨んだまま喋る。

音は聞こえない筈だが、何故かその言葉は全員に伝わった。


そして、『モノクロシアター』の外部…つまり白山羊の周囲は無数の銃達の発砲音が響き渡っていた。


バウバウガガガガガズドンズドンジャガガガガガバンバンバンボウンボウンドンドンズドドドドドバシュウウウボガアンバンバンバン!


その音は凄まじく、これだけでもダンクが結界を張ってない家の窓ガラスが割れていた。

しかし恐ろしいのは音だけではない。

高威力の銃達がたったひとつのビル目掛けて撃ち込む事で、コンクリートの壁がまるでスポンジのように砕け破壊されていく。

銃達の発砲音とその際の光の中で白山羊が宝かに笑っている。


白山羊「ハハハハハハ!

どぉうですか、人間!!

これが道具の力!

これが大怪物の力!

これが、傲慢計画の最強の武器である私の力!!!」


10階建てのビルの壁はドンドン削れていき、やがてボロボロになっていく。


白山羊「所詮人間は雑魚なのです!『私を殺せるのは怪物か大怪物だけ』とほざきながら、

たった一発の弾丸であの世にいき、私の髪の毛一本で切り刻まれてしまう!

弱い…弱い弱い弱い!

貴方は怪物じゃない、ただの人間だ!

ハハハハハハ、ハハハハハハ!」


白山羊が叫ぶと同時に、ビルの壁は完全に破壊された。

そしてビルの中に詰まっていた大量の鉄球が転がり落ちてくる。

鉄球の大きさは直径2メートルはある。


白山羊「え?」

シティ「残念だけど、私は鬼。

遊ぶのが大好きな鬼なのよ」


シティの言葉が何処かから響いてくる。

白山羊は慌てて辺りを見渡した。


白山羊「ど、何処だ!?

何処にいる!?」

シティ「『コンクリート・ボックス』の中に入っていたのは、球よ。

これが私の弾丸…」


シティの声と同時に、電柱が現れる。

それは水平に飛び、ビルから転げ落ちてきた鉄球に狙いを定めている。


シティ「ゲームスタート!『コンクリート・ピンボール』!」


ズドン!


シティの号令に従い、電柱が転がる鉄球を撃ち抜く。

ゴロゴロゴロ、と鉄球が高速で白山羊に向かって転がってきた。


白山羊「!?」


白山羊は急いで髪の毛を操り、鉄球を捕らえる。

重さ1トン以上ある鉄球を、数本の髪の毛で捕らえる。


白山羊「よし…」

シティ「まだまだぁ!」


ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!ズドン!


白山羊の号令と共に何十の鉄球が電柱によって撃ち抜かれ、白山羊の方に向かって転がっていく。


白山羊「く!」


白山羊は銃火器で鉄球達を撃ち抜こうとするが…


バウバウガガガガガズドンズドンジャガガガガガバンバンバンボウンボウンドンドンズドドドドドバシュウウウボガアンバンバンバン!



白山羊「……止まらない!?」


どれ程威力のある銃達でも数十の鉄の球は止められない。

白山羊は銃達を髪の毛の中にしまうと、髪の毛を近くの家の屋根に向かって飛ばしていく。

そして思い切り跳躍し、転がり出す鉄球から抜け出した。


白山羊「くそ…なんてふざけたまねを!」

シティ「でもあんたご自慢の銃より強いわ!

弱いわね、大怪物!」


また何処かから響いてくるシティの声。

白山羊は辺りを見回しながら叫んだ。


白山羊「何処だ!?

何処にいる!!」


シティ「ここよ!」


白山羊は上を見上げる。

そして、思わず目を見開いた。


白山羊「!?!?!?!?」


そこには四十以上ある電柱、三十以上ある鉄板、二十以上あるバス、十以上あるビルが白山羊の上空に浮かんでいた。

その遥か上空で、鉄板に乗ったシティが鬼のように愉快な笑みを浮かべている。


シティ「高鬼の攻撃、

最強攻撃…『反天世界(リバーサル・ワールド)

貴方の最強攻撃、見ていて滑稽だったわよ」

白山羊「………」


白山羊は目を見開いたまま、先程の地面を見下ろす。

もうさっきの鉄球も電柱も何処にもなかった。


白山羊「…さっきのは、囮…!」

シティ「いや、そうでもないわよ?

あれで倒せるならその程度の奴だったってだけ。

…で、どうする?

まだやるなら、これ全部貴方に向けて落とすけど?」


町一つが、たった一人に向けて落ちてくる。

それを対処できる銃を、白山羊はコンピュータで一応検索したが…そんな武器は何処にも見つからなかった。


白山羊「……いや、私の負けです。

好きにしなさい」

シティ「やったぁ!

私の勝ちね!」


シティはニコニコ笑ったが、直ぐに真顔になり白山羊の目の前まで飛んでいく。

あまりに速く、そして一気に顔に近づくので白山羊は思わず面食らってしまった。


シティ「それで!」

白山羊「うわ!」

シティ「人間は『道具』だって考え……ちゃんと訂正しなさいよ!」

白山羊「え…?

あ、貴方…それだけのために戦ったのですか!?

あんな命懸けの勝負を!?」

シティ「当然でしょ!( ̄^ ̄)

私は人も自分も『道具』扱いする奴が大っ嫌いなの!」



ダンク(…どうやら終わったみたいだな。

『モノクロシアター』解除)

ペンシ「お、普通に喋れる…なんだ、戦いは終わったのか!?」

ノリ「シティが勝ったみたいッス…ケシゴさん、見てますか、シティさん勝ちましたよ!」

ケシゴ(気絶中)


戦いが終わったのを確認したのか、ダンク達も一安心する。


白山羊「…分かった。

お前みたいな奴がいるんだ。

もう私は人間を道具扱いしません」

シティ「宜しい!」


シティはニコニコ、と笑う。


白山羊は髪の毛を元の長さに戻していく。

しかし白山羊の左手にはm9が握られていた。


白山羊(…ですが、貴方が敵である事を改める気はありません。

この銃で撃ち殺して)

「白山羊、戦争活動、停止」


白山羊の思考を誰かが遮り、左手を押さえる。


白山羊(え?)



振り向くと、黒山羊が立っていた 。腕に穴が空いているものの、それ以外に破損している姿は見られない。


白山羊「く、黒山羊…生きていた、のですか?」

シティ「ひひー、さっきは電柱で体を抑えて動けなくしただけだよ。

こんな戦いで私が誰かを殺す訳ないじゃん」


シティはケラケラと楽しそうに笑い、それを聞いた白山羊は更に衝撃を受けた。


白山羊「あ、貴方は初めから誰かを殺すつもりは無かったのですか…!?

そんな…私は、殺す気で戦ったのに…」

黒山羊「白山羊…抵抗、中止。

彼等、強力。

我等、貧弱…。」

白山羊「………確かに、そうですね。

私達の…負け…です」


そう言って、白山羊は銃を手放した。

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