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角が有る者達  作者: C・トベルト
太陽の命と月の命。
62/303

第63話 本当の太陽パート そして陽は沈み闇が起き上がる。


『その結界をぶち破れ!』




ススは夢の中で、膝を抱えてしゃがんでいた。

白い光に包まれた夢の中では、ススが小さい頃良く聞いた歌が流れていた。『十人のインディアン』という曲だ。



♪10人のインディアンの少年が食事に出かけた♪

♪ひとりがのどを詰まらせて、9人になった♪

♪9人のインディアンの少年がおそくまで起きていた♪

♪一人が寝過ごして、8人になった♪

♪8人のインディアンの少年がデヴォンを旅していた♪

♪一人がそこに残って7人になった♪

♪7人のインディアンの少年が薪を割っていた♪

♪一人が自分を真っ二つに割って、6人になった♪

♪6人のインディアンの少年が蜂の巣にいたずらしていた♪

♪蜂がひとりを刺して、5人になった♪

♪5人のインディアンの少年が訴訟を起こした♪

♪一人が裁判所にいって、4人になった♪

♪4人のインディアンの少年が海に出かけた♪

♪一人が燻製のニシンに飲まれ、3人になった♪

♪3人のインディアンの少年が動物園を歩いていた♪

♪大熊が一人を抱きしめ、2人になった♪

♪2人のインディアンの少年が日向に座った♪

♪ひとりが陽に焼かれ、一人になった♪

♪一人のインディアンの少年は一人ぼっちで暮らしていた♪

♪彼が結婚し、そして誰もいなくなった♪




スス「…なんで、最後の一人は結婚なんかしたのよ…」


ススは膝を抱えながら呟く。


スス「仲間が皆いなくなったのよ?仲間を探しなさいよ。

そうじゃなきゃ、仲間を誰が覚えてくれるっていうの…?

それとも、忘れれば良かったの?死人の事なんて忘れて、ただ一人楽しく生きていれば、それで良かったの?…私にはできないわ」


ススは更に強く膝を抱える。すると歌は聞こえなくなり、代わりに昔良く聞いた声が聞こえてきた。


スミー『あら、スス。

何をボサッとしているのよ、早く立ちなさいよ』

スス「スミー…」


ススはゆっくりと顔を上げる。

そこには車椅子に乗った自分の姉、スミーがいた。

楽しそうに笑いながら、細い手をススに向かって伸ばしている。


スス「スミー…」

スミー『早く立ちなさいよ、スス。

皆待ってるんだから、急がなくちゃ』

スス「やめて、スミー…。

貴方はもう死んだのよ、夢の中で出てこないで…」

ズパル『スス、また泣いているのか?

全く泣き虫だなぁ。

そうだ、エッグ!お前なんか楽しい事してくれよ!』

エッグ『よーし待ってなよ、今分身の俺と一緒に楽しい漫才してやるから!

おーいぶんしーん!』

クックロビン『……分身は、いないよ』

エッグ『あれ、そうだっけ?

すっかり忘れてたなあ、ハッハッハッ』

サイモン『ほらほら皆さん、ススさんを忘れては駄目でしょう』

ズパル&エッグ&クックロビン『あ、スス、ごめんごめん』


気がつけば、ススの周りに拍手部隊のメンバーが次々に現れていく。

彼らは皆ススを楽しませようと話しかけてくる…が、ススは両手で耳を塞ぎ、叫んだ。


スス「ヤメテ!!

私に話しかけてこないで!!

貴方達はもう死んでしまったのよ!出てこないで!」


ススは叫ぶ。

そして心に浮かぶのは何度も何度も殺そうとして殺す事が出来なかった少年、メルだ。


スス「メル!

貴方は何故私の前に現れた!?

復讐の為に生きる私を笑うために?一人も殺せない私を馬鹿にするために?私の仲間の力を使って…私の痛みを知った気になって!

私の記憶を覗いて、私の苦しみを勝手に同情して…ふざけるな!

あんな奴の同情なんかいらない!私はそんな事の為に生きてきたんじゃない…」


感情は一気に吹き出し、そのまましぼんでいき、叫んだ声はだんだん小さくなり、ススは涙をボロボロと流す。

しかしメルの姿はハッキリ見えていき、ついにこう叫んだのだ。


メル『そして、その夢を見て僕はある事を決心しました。

もう二度と、あんな悲劇を起こしてはいけない。

僕の一族に与えられた力で苦しむ人々を、僕は助けたい』

メル『お願いです。

僕をススの仲間に...ゴブリンズの仲間に入れてください』


スス「……!!」


ススはメルを睨み付けようと泣きながら立ち上がる。

しかしそこはススの夢の中で、メルの姿はない。


スス「……………」


拍手部隊の幻影が心配そうに見ているが、ススにそれを気にする余裕は無かった。


スス「私は…私は…何の為に復讐をしようとした?

もう誰もいないのに、そんなのわかっているのに…!

私はどうすればいいの…?

う、うぅ…うぁああ…!」


ススは泣き崩れ、ボロボロと涙を流していた。

その時、ススの近くで立っていたサイモンの幻がぐにゃりと姿を変え、ススの兄セキタに変化した。

セキタの幻は、ススを見下ろした後、泣き伏すススの肩の上にそっと手を置いた。


セキタ『スス…』

スス「!

セキタ?」


ススは顔を上げると、セキタが微笑んでいた。


セキタ『ススよ…』

スス「やめて…貴方はただの幻よ…セキタの声で…話しかけないで…」


セキタの言葉を否定しようとするスス。しかしその声はあまりに弱々しく、セキタを振り払う事ができない。


セキタ『…そうだ…俺は幻だ……もう俺は君のために、ジャグリングを見せる事は出来ない…サーカスの楽しい話をする事もできない…』

スス「それなら、消えてよ…私は貴方達の死を忘れられなくて、前に進めなくて……だから……もう…消えてよ…貴方の……姿を見ても……辛いだけ、なんだから……」


話している内に悲しみが押し寄せてきて、涙がまたボロボロと流れてきた。

セキタは一度口を開けようとして、閉じて、微笑んでから、また口を開いた。


セキタ『そうか、忘れられない、か。

それなら、一つ頼みがある』

スス「え?」


ススは顔を上げた。セキタは微笑んでいる。


セキタ『探してくれないか?

俺達が残したものを』

スス「貴方達が…残したもの?」

セキタ『そうさ…できるか…?』

スス「……わからないわ」


ススは一瞬目を伏せた。

そしてまたセキタの方に目を向けようとする。


スス「でも、それって一体……あれ?」


しかしそこにセキタの姿は見えない。代わりに見えるのは、ダンクの姿だ。



スス「あれ?」

ダンク「お、目が覚めたか」


ダンクはそっとススに手を伸ばす。ススはキョトンとしつつも、その手を掴む。


そして、ススは『ホワイトシェル』という殻の外に出た。

足元にはダンクが作り上げた魔法の絨毯が宙に浮いていて、それがススをささえている。

辺りはすっかり暗くなり、月が登っていた。


スス「ダンク?

あれ、私、なんで?」


ススは一瞬だけ、何もかも忘れていた。しかし次の瞬間全てを思い出す。


スス「あ!そうだ私足をやられて、それで……あれ、回復してる?」

ダンク「ま、そのための回復魔法だからな」

スス「今の状況は?」

ダンク「ああ、今は……暴れているよ」

スス「え?」


ダンクの変な説明に、ススは思わず聞き返そうとして、ビュンと高速で空を飛ぶ電柱が自分のすぐ横を通り過ぎて、そして納得した。


スス「……ああ、そういう事ね……」


ススがちらりと後ろを見ると、そこは半分予想通りで、半分予想外の光景が見えていた。

まず予想通りな光景は、シティが電柱を出現させて、何かにぶつけているのだ。


シティ「アハハハハハハハハハハハハ!!」

スス「シティ、相変わらず無茶苦茶ね……って、あれ?

シティは何を壊そうとしているの?」



シティは『速さが足りない!』とプリントされたエプロンを着ていて、腰まで届く長い青髪を揺らしながら、空飛ぶ鉄板の上で両手を振り上げたり降り下ろしたりしている。

端からみれば怪しい踊りにしか見えないが、シティ曰く「手を振り上げないと電柱があらわれないのよ」らしい。


そして予想外の部分は、シティが操る電柱や鉄板より遥かにでかい、黒いドームだ。


スス「何、あれ?」

ダンク「ああ、あれ?

アイツらが言うには、強力な結界らしいぜ?

今は皆で結界を壊しているんだ。

だけどあの結界、壊してもコンマ数秒で直ってしまうんだ」

スス「なんて強力な結界……って、アイツらって?」


ダンクは黙って指を刺す。

そこにはワイヤーでぐるぐる巻きにされたピエロと岩が鉄板の上で座っていた。


ダンク「ピエロはバベル・エンヴィー、岩は崑崙って名前らしい。

結界を守ってたそうだが……あまりにあっさりとやられたそうだ。

シティ曰く『カカシですな(笑)』だそうだ。」

崑崙「さん、をつけろよ包帯野郎!」

シティ「い、岩が喋った!?」

崑崙「岩ではない!崑崙さん、と呼べ褐色肌女!!」

スス「イラッ」

ダンク「やめとけ、お前じゃこいつにダメージ与えられないぞ。

本物の岩なんだ」

崑崙「ケケケ、バーカバーカ褐色肌おん……むぎゅ!」

バベル「やめろ!あのミイラを刺激させるな!」

崑崙「は?

我が馬鹿にしてるのはあの女だぞ。なんでミイラが刺激されるんだ?」

バベル「お前はアイツの本性を知らな……ヒィッ!」


バベルがススの方を見て小さく悲鳴を上げる。


スス「え?私?」

バベル「あ……が……」

ダンク「一つだけ確認するぞ」

バベル「ヒッ!?」


ススの後ろに立っていたダンクがバベルの方へ歩いてくる。

ダンクが一歩近づく度に、バベルの恐怖は増加していく。

まるで鬼を直接見た子どものように。

そして、バベルの目の前でダンクは歩みを止めて、屈んだ。

これで縄で縛られたダンクとバベルはしっかり目があう状況になってしまった。


バベル「ヒイイイィィィ!!」

ダンク「おいおい、そこまで怖がるなよ。ただのミイラがそんなに怖いのか?

ま、あの後でまた俺の仲間を襲った度胸だけは褒めてやる」

崑崙「どうしたバベル!?

そんなミイラ怖くないだろ!」

バベル「や、ややややめろ崑崙!

こいつは」


ドカッとダンクの拳が大地を叩く。それだけでバベルの恐怖が最高潮に達した。


バベル「ワアアァァ!!」

ダンク「落ち着けよ、バベル。

俺はただ聞きたいだけだ。

あの結界の中で何をしているのか。

わめいてばかりじゃなくてキチントオシエテクレナイカナァ?」

バベル「ヒッ!!

……わ、分かりました分かりましたちゃんと教えますぅ!」

崑崙「ば、バベル!?

何を考えて」バベル「崑崙さん!

お前、少し黙ってろ!」


バベルは無理矢理崑崙を黙らせた。それを見たダンクは左手を後ろに回し、ススに向けてピースサインを出した。


スス「ダンク……さっき声がわりしてなかった?」

ダンク「気のせい気のせい。

さあ教えておくれ、中で何をしているのか」

バベル「そ、それは…神を殺すんだと、さ」

スス「え?」

ダンク「神を殺す?」


二人は首をかしげる。


バベル「宇宙には人間が知り得てはいけない真実が幾つも幾つも転がっている。

怠惰計画はその真実の中から『不老不死』になる方法を知る神様を呼び出し、その方法を聞き出す計画なんだ」

ダンク「……不老不死を神様から聞く?

そんな馬鹿げた話があるわけがないだろ」

スス「ナイフで刺されても死なない貴方が言っても何の説得力ないわ」


ダンクはケラケラ笑い、ススはジロッとダンクを見つめた。

その軽い雰囲気に、脅されている筈のバベルが激昂する。


バベル「う、嘘じゃない、本当にあるんだ!

果心様は不老不死の法を知った後で、邪魔な神様…クァチル・ウタウスを殺す為にこの結界を張ったんだぞ!」

ダンク「分かった分かった。その話を信じるよ。

…ただ、神殺しを本気で考えてるとなるとまずいな。

奴も相当な戦力をそこにつぎ込んでいるはずだ。

…こりゃ、マジでアイ達の命が心配だな。

それはともかく、お前らは何処かに置いていくか」

バベル「え?ま、待って俺達まだ出番がほとんどな」


バベルと崑崙を適当に投げ捨てた後、ダンクはシティの方に声をかける。


ダンク「おい、そっちはどうだ?」

シティ「うーん、全然ダメねー。

やっぱりもっと強い力じゃないと壊せない…ってあら?

スス!気がついたのね!」


声をかけられたシティはススに気が付くと、攻撃を中止して二人の方へ向かう。

それを見たダンクは結界の方に目を向ける。


ダンク「さて、俺は色々準備してくるかな」


そう、誰にいうわけでもなく呟いた後、ふわりと何処かへ飛んで行った。

それとすれ違うようにシティが魔法の絨毯の上に乗る。


スス「シティ」

シティ「こらスス!今まで何処うろついていたのよ!

私達は心配したんだから!」

スス「…ごめんなさい」


ススはペコリ、と頭を下げる。

シティは少しだけ恥ずかしそうに、「別に頭下げなくてもいいわよ」とだけ言った。

頭を上げたススはシティに尋ねる。


スス「アイ達は、この中にいるの?」

シティ「間違いなく、ね。

私の戦闘の勘が叫んでいるわ。

『この中にめっちゃめちゃ面白い戦闘が待っているー!』って」


シティは相変わらずの戦闘狂だ。

それに気付いたススは戻ってきたという懐かしい気持ちと、

アイ達に対して申し訳ないという恥ずかしい気持ちで一杯になりそうだった。


シティ「あ、そうそう。

貴方達が連れてきたメルって子、面白い能力持ってるのねー。

コピー能力の使い手なんて、そうそう見れるものじゃないわ。

ああ、いつか全力で戦いたい!」

スス「シティ…あれは、メルヘン・メロディ・ゴートなのよ」

シティ「?」


ススは少し声を落としてシティに話しかける。


スス「メルヘン・メロディ・ゴートはGチップを製作し、世界を混沌の渦に叩き込んだ最悪の人間の一族…貴方は、それについて何も思わないの?」


ススはそれが許せなくて殺害しようと考えたのだ。しかしシティはケラケラ笑いながら、こう答えた。


シティ「…なーんにも思わないわ。

なーんにも」

スス「え、なんで?」

シティ「だって私もメルと似た立場だもの」

スス「え?」


ススは首をかしげる。

シティもまた、少しだけ声をお年ながら、話し始めた。


シティ「…私はシティ。

シティ・グール。

世界一有名な会社、グール会社の社長令嬢にして、強欲計画首謀者ジャン・グールの娘だもの」

スス「!?!?!?!?」


ススは驚きのあまり、思わず体が反り返った。

そして、シティに思いっきり人差し指を指す。

だがあまりの衝撃に言葉が見つからず、ひたすら「え?」と言うだけだった。


スス「え?え?え?

えええええ???

し、シティが…あのシティが…社長令嬢!!?

ウッソオ!!」

シティ「ホンットオ!!

私の高貴なるオーラを見て何も感じなかったの?」

スス(戦闘狂のオーラしか感じませんでしたよ?

高貴さもセレブ感も何にも感じませんでしたよ?)


口に出して言うのが怖くて心の中でツッコミを入れるスス。

シティはススから結界の方に目を向ける。


シティ「…ま、リーダーにはバレてたんだけどさ」

スス「…え?

アイは知ってたの?」

シティ「ええ…私、ジャン・グールの家を知っているからそっち行こうってリーダーに話したの。

そしたら、リーダー何て言ったと思う?」

スス「?」

シティ「…コホン。『なんだって、そうかじゃあジャン・グールの家は一番最後に襲おう!!

俺はまだこの計画の事を何も知らない!

なのにお前の父ちゃん苦しめたら、後で仲直りしづらくなるからな!』…だってさ。

私、どっかの社長の娘とは言ったけど、ジャン・グールの娘だなんて一言も教えてないのにね」

スス「…シティ…」


静かに話すシティの顔には、今までの狂気じみた笑顔はなかった。

そしてなるべく明るい口調で話を続ける。


シティ「それでリーダーは、『俺はまずルトーに学校の楽しさを教えたいから、先ずはそれを伝えたい』って理由で怠惰計画の潜むこの学校に侵入したのよ。

…リーダーの頭には、計画を潰す事より、私達のお節介をしようという気しかないみたい。

あーあ。なんであんなバカの下についていこうなんて考えちゃったんだろ?」


シティはフッと笑う。

その笑みはとても大人びていて、いつもの狂気は全く感じられない。


シティ「…貴方には、私が敵に見える?」

スス「…え?」

シティ「オーケストラの孫であるメルが世界の敵なら…。

ジャンの娘である私は世界の破壊神、になるのかしら?」

スス「…そ、それは…」


ススは一歩たじろぐ。シティはススを追い詰めようとはせず、只一言、友達として伝えた。


シティ「スス。

憎しみと親しみの境界線なんて、誰にも引く事の出来ない線なのよ。

…どんなに恨みを持っても、人は表面上だけでも笑う事ができるのだから」







メルはダンクに幾つもの対抗呪文をかけられていた。

敵が魔法使いだと判断したダンクが、メルにありったけの対抗呪文をかけているのだ。


ダンク「よし、これであらかたの対抗呪文をかけられたな」

メル「呪文をかけられた気が、全くしないんだけど…」

ダンク「ま、呪文なんてそんなものだ。こういうのは後で役に立つんだよ」

メル「ダンクさん、本当にやる気なの?」

ダンク「ん?何をだ?」


ダンクはわざとらしく首をかしげる。


メル「作戦だよ。

『シティの全力攻撃で穴を開けて、穴が直る一瞬の間に僕が穴に飛び込んで中に入る』作戦。

上手くいくのかなぁ」

ダンク「うーん、だがこれしか中に入る方法がないんだよなぁ。

あの結界、かなり頑丈だし壊しても直ぐ直る。

解除するには魔力の核となる物を壊さないといけない。

シティの話だと、ばかでかい金色の龍がそれらしいが、内部に入っちゃ壊す事も出来ない。

…となれば、ススの高速移動の力を持ったお前さんしか中に入る事はできないわけだ」

メル「う、うん…それに、中にはゴブリンズのリーダーも入ってるんだよね。

僕はリーダーがどんな人なのか、知りたい」

ダンク「その意気だ。

さあ始めるぞ!」



メルとシティは結界の直ぐ近くで鉄板の上に乗って空を飛んでいた。結界から少し離れた所ではススとダンクが魔法の絨毯に乗っていた。


ダンク「いけるか?」

シティ「準備はいいわよー」


シティはぶんぶんと手を振る。

メルは辺りをキョロキョロと見渡した後、


メル「あ、あの…」

シティ「ん?」

メル「シティさんの能力って、電柱を操る能力なんですか?」

シティ「違う違う。私の能力は『2メートル以上ある単純な形の物体を操る能力』。

電柱は形がただの棒だから、操りやすいわけよ」

メル「そうなんだ…」

シティ「ちゃんと私の能力もコピーしなさいよー。

でないと後で私と戦う時に大変だからねー」

メル「は、はい…え?

シティさんと戦う?」

シティ「アハハハハハハ!

その時が楽しみだわ〜♪じゃあ作戦始めるわよ〜♪

能力発動!『コンクリート・ロード』!!」


シティはとてもとても楽しそうに笑いながら、右手を上げる。

そして空中に現れたのは電柱…だけではなく、バスや、ワイヤーや、棒から家、ビル、廃墟まで様々な建築物が宙に浮いている。


メル「!?!?!?」

シティ「どうせなら、派手にやらなきゃね♪

最強攻撃、『コンクリート・ジーラ』!!」


シティが叫ぶと同時に、シティが出した全ての物体が合体し、灰色の恐竜の出来損ないのような物体が完成する。

身長は60メートルもある超弩級の怪物が、瞬間的に現れた。


メル「えエエエエエ!!?

ご、ご、ご、」シティ「コンクリート・ジーラ完成!!

いままで出られなかった分、派手にい・く・わ・よ〜〜!!」


ジーラ『ギャオオオオオン!!』

ダンク「な!?

あいつコンクリートでできている癖に吠えたぞ!?」


シティ「まず、しっぽぉ!」


シティの命令に従い、灰色のゴジラが70メートルもある長いしっぽを振り回し、結界を攻撃する!


バガアアアン!!


ダンク「やったか!?」

シティ「いえ、まだよ!」


シティの言う通り、結界にはヒビが入った程度で穴は開いていなかった。そのヒビも次の瞬間には消えていた。


シティ「お次は光線よ!

やれ、ジーラ!」

ジーラ『ギャオオオオオン!!』


ジーラの咆哮と同時に長いしっぽを勢いよく大地に降り下ろし、叩きつける。

そして開いた口から、何十本もの電柱を吐き出した。


シティ「いけぇ、ジーラの『シティ最高光線』!!」

メル(絶句)


吐き出された光線(?)は全部結界に命中するが、結界にはヒビすら入らない。


シティ「ちぃ、ダメか!」

メル(いやネーミングの時点でもう…)

シティ「ならば、踏み潰す!

飛べ、ジーラ!!」


ジーラはフワリと浮かび、結界の真上まで飛んでいく。

そして、真上で停止した後、一気に結界に向かって落下し、ジーラが粉々に砕け散った!!


ドンガラガッシャン!!


シティ「あ、ジーラ壊れた!」

ダンク「丁寧に扱わないから…」

シティ「で、でも穴が開いたよ!」


シティの言う通り、結界の真上には大きな穴が開いていた。

しかし、それは直ぐに修復されていく。


シティ「メル!

今の内に行きなさい!

私達の代わりにリーダー助けてきて!」

メル「うん!

行ってくるよ!」


メルは高速移動能力を発動し、一気に結界の穴に向かって走る!


メル(この穴の先に…リーダーはいるんだ。

一体、どんな人がリーダーなんだろう…)


メルはごくり、と喉を鳴らした。

そして穴に入ろうとした瞬間、自分の直ぐそばに誰かがいる事に気づく。


メル「え?」


メルが振り返ると、そこにいたのはススだった。

険しい表情で真っ直ぐ穴を見つめている。


メル「す、ススさん!?」

スス「…私も行かせて貰うわ」

メル「ダメだ!

ススさんはもう戦いに参加しちゃ」スス「私はリーダーに助けられた!だから今度は私がリーダーを助けるのよ!」(…それに、セキタが言っていた『残したもの』を、ここで見つけられるかもしれない!)




かくて二人は暗い暗い穴の中に飛び込んでいく。

中で何が起きているのか、知らないままに…。

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