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角が有る者達  作者: C・トベルト
太陽の命と月の命。
61/303

第62話 本当の太陽パート かくて少年は強くなる。


メルの夢の中・『ピンクの象とジャングルジムの世界』



ズゥン、ズゥンとピンクの象が細いジャングルジムの上を歩いている。

そして、象の背中には自称『ダンス・ベルガード』と自称『魔法美少女カスキュア』、そしてメルの三人が乗っていた。


メル「僕の知らない能力?

僕の能力はコピー能力以外にもあるの?」

カスキュア「コピー能力?

ああ、ススと戦った時に使われた力の事ね。

あれはね、『後天性能力』よ」

メル「?」

カスキュア「うーん、ちょっと科学の授業をしないといけないわね。

チャンチャカチャーン!

魔法美少女カスキュアの科学教室の、始まり始まり〜♪」


カスキュアが歌うとダンス・ベルガードが適当にハンドベルを鳴らしていた。


カランカランカランカラン♪


メル(あのハンドベル何処から出したの?)

カスキュア「はい、突然ですが問題です!

『人間はどうして突然、超才能や超能力に目覚めたのでしょう?』」

メル「…僕の祖父が開発したGチップ…」


ピンポンピンポンピンポーン♪

ダンス・ベルガードが木琴を叩いている。どうやら彼は効果音担当のようだ。


カスキュア「はい、正解でーす♪

まあ、世間的にはゴルゾネス・トオルなんていう超おバカな奴の名前だけど、

あなたはそのひっかけに引っ掛からなかった!」


魔法美少女は楽しそうに笑う。


カスキュア「 そう、人間が今の科学力を手にしたのも超能力を手に入れたのも全てGチップのおかげなのよ!

Gチップは体内のDNAを調べ、その中で最も優秀なDNAを探し、それを育成させる。

それによって人は超能力や天才に目覚める事が出来るのよ!

開発者であるオーケストラは更に研究を進めた結果、ある事実に気付いたのよ!」

メル「ある事実?」


カスキュアはニヤリと笑い、掌を掲げるとススの姿が写し出された。


カスキュア「能力には『先天性能力』と『後天性能力』の二つが存在するということよ。

『先天性能力』は生まれつき備えられた能力。殆どの能力者がそれに当てはまるわね」



〜現実〜



ノリ「ふむふむ」

ダンク「へー、勉強になるな」


ノリは手帳に、ダンクは包帯にカスキュアの話した事を書き込んでいく。

そして夢の中のメルは、慎重に尋ねた。



メル「…『後天性能力』は?」


カスキュアが開いた手を握りしめると、ススの姿がフッと消えた。


カスキュア「『後天性能力』は違う。

これは他者がGチップを操作する事で意図的に創られた能力を刺すわ。 メルのコピー能力はそれに当たるわね」

メル「成る程…え?」


メルは一度納得して、そして首を傾げた。


メル「誰かに意図的に操作された能力…能力を操作するなんて、一体どうやって能力を操作できるっていうの?」

カスキュア「そんなの簡単よ、優秀なDNAを探すプログラムを変更させれば、好きなDNAを育てる事が出来るんだから」


カスキュアはニヤニヤ笑ったまま話し、メルはサァッと顔を青くしていく。


メル「ぼ、僕の能力が改造された能力…?ちょっと待ってよ、誰がそんな事をしたのさ!」

カスキュア「それはね、貴方のおじいちゃんよ」

メル「!!」

カスキュア「良かったね、メル。

貴方の人間を弄び続けた一族の遺伝子は、更に意地悪に歪められた!

おかげで全人類の能力を操る事が出来る!」

メル「…………!!」

カスキュア「なに顔を青くしているの?

貴方の体がどれだけいじくられていようが今更関係ないじゃん。

それに、こんなのはただの前座でしかないんだよ?」

メル「前座…?

何言ってるんだよ……僕の体をおじいちゃんが改造しただって?

ふざけないでよ。

そんな事出来る訳ないだろ!?」

カスキュア「あらら、今度は赤くなった。カルシウム足りないんじゃない?」

メル「だ…黙れ!

今すぐこの夢から出してよ!

僕は現実でやらなきゃ行けない事があるんだ!」

カスキュア「あら、出たいの?でも貴方の改造は四つもあるんだから、それ全部説明しないといけないんだけど」

メル「!?

四つ!?」


メルはみるみる顔を青ざめさせ、

カスキュアはみるみる笑みを深めていく。


カスキュア「最初に言ったでしょう?貴方の知らない能力があるって。

もう貴方の体にはオーケストラ・メロディゴート、ナンテ・メンドール、ジャン・グール、果心林檎の四人が作り上げた二つの『後天性能力』と二つの『後天性天才』が埋め込まれている。

…あ、面倒だから教えとくけど、『後天性天才』は『後天性能力』の天才バージョンと考えていいわ。」


突然出てきた四つの名前に、メルは耳を疑った。


メル「え…?

今の名前、さっきの歌に出てた人ばかり…」

カスキュア「彼等は果心林檎が作り上げた『大罪計画』のメンバーなのよ」

メル「大罪計画…?」


次々と知らない単語が出てきてメルは戸惑い、対極にカスキュアは薄い笑みを浮かべている。



ダンク「大罪計画!?」

ノリ「わ、どうしたッスか、ダンク!」


ダンクは目線を一度学校の方に向けてから、静かに話し始める。


ダンク「…『大罪計画』…。

ゴブリンズが追っているのは、この大罪計画なんだ。

今から五十年も前にGチップを開発した、狂った科学者達による複数の計画の総称が、『大罪計画』なんだ」


ノリはそこで初めて気付いた。

自分が乗っているダンクが、とても焦っているという事に。


ダンク「あいつ…何を知っている…何者なんだ…?」



メル「…待って」

カスキュア「 何?」


カスキュアは首を右に傾げる。

メルはカスキュアを見つめた。


メル「今、大罪計画の事は後でいい…それより、僕の知らない能力について教えてよ。

僕は、どんな能力を加えられたの?」

カスキュア「あー、そうね。

アタシとした事がドジふんじゃったわ、テヘ☆」



ダンク「ああーー!

違う違う、仲間の事を聞けよ!」

ノリ「ダンクさん落ち着いて!」


現実で二人が叫ぶが、夢の中の三人には全く聞こえない。



メル「いいから教えて!」

カスキュア「うん。

まずは貴方のおじいちゃんから貴方にプレゼントした能力は、『一度見た能力を全て自分の能力にする事が出来る能力』。

…ま、これは自分で使ったから知っているわね」

メル「…!」

カスキュア「そして、夢の能力は『憤怒計画』のナンテ・メンドール。

彼が貴方にプレゼントした能力は『他人の最も刺激的な記憶を無意識に受信し、夢として見る事が出来る能力』」



ダンク「憤怒計画…怠惰計画じゃないのか」

ノリ「他人の最も刺激的な記憶を見る…それって、かなりヤバイ能力なんじゃないッスか?

眠る度に誰かのトラウマを見せられるって事じゃないッスか」

ダンク「…いや、トラウマだけじゃないな。

甘酸っぱい青春や楽しかった日々もまた、ある意味では刺激的な記憶だと言える…」

ノリ「それを、夢の中で見せられるッスか…?

しかも無意識じゃ、いつどこでその夢を見せられるか分かったもんじゃない。

そんなの、迷惑なだけじゃないッスか…なんて嫌な能力を…



メル「…おじいちゃんがくれたコピー能力と、ナンテ・メンドールがくれた他人の記憶を見る能力…この二つの能力があれば、

僕は過去の人間の力を再現する事ができるようになる…」


ピンポンピンポンピンポーン♪


カスキュア「正解正解だいせいかーい!

そう、貴方がススと戦えたのはその二つの力があったからなのよ!

良かったわね、メル!

おじいちゃんがくれた力のおかげで、貴方は生き延びられたのよ!感謝しなさい!」




ダンク「ふざけるな…メルはそいつらのせいで殺されかけたんだぞ!」

ノリ「誰が感謝するッスか!

これじゃ…メルは被害者じゃないッスか!

こんなの、酷すぎるッス!

ダンク、今すぐメルを夢から解放させるッス!

もうこれ以上傷つけさせたくない!」

ダンク「わかってる!」(…が、いいのか!?止めて?)


ダンクの止めたいと思う心、それと全く同時に聞こえた、自分自身の別の声。

その声をダンクは聞いてしまう。


ダンク(いいのか?

ここで止めれば、お前のもう一つの名を使う道化師の存在がわからないままだぞ?)

ダンク(…いや、あれはただの別人だ。考えろ、『俺』は数百年も前の存在だぞ?

同姓同名の奴が何人存在したって不思議じゃないだろう?)

ダンク(だがそうじゃなかったら?

明らかにこの現象は魔術師しか引き起こせないモノだ。

その魔術師でダンス・ベルガードと言えば、それはもう『俺』しかいないな)


ダンク「………」

ノリ「ダンク?」

ダンク(……俺は……)


ダンクは動けなくなる。

後少し手を伸ばせば、メルを包む殻に手が届くという所で、彼の体は停止してしまった。

そして後ろの映像から、カスキュアの声が聞こえてくる。

ダンクはそれを聞こうと、思わず振り返ってしまう。

映像の中のカスキュアはニヤリと笑っていた。

まるで、翻弄する自分を嘲笑うかのように。



カスキュア「それからー、貴方に与えられた『後天性才能』はー」メル「ありがとう」


カスキュアの言葉をメルが止める。カスキュアは先程と同じように可愛く首を傾げた。


カスキュア「ん?」

メル「…やっと分かった」



ノリ「え?」

ダンク「…………」



カスキュア(ん?

なんか感じが変わった?)


カスキュアは更に首を傾げる。

45度曲がったメルの姿は、先程の弱々しさをまるで見せない。


メル「僕は知りたかったんだ。

あの夢が本当にあった事なのか、それとも偽物だったのかを。

やっと分かった」


メルはギュッと拳を握りしめながら、カスキュアに向けて答える。


メル「あれは全て本当にあった出来事だったんだね。

拍手部隊は本当に存在して、そして敵と戦い散った…」


メルは握りしめた拳を開き、じっと掌を見つめる。


メル「カスキュアさん、僕はね、夢の中で何度も手を伸ばしたんだ。

皆に生き延びて欲しくて…でも、ダメだった」


メルの脳裏によぎるのは、一生懸命戦って散っていった者達の姿だ。


メル「僕は誰も助ける事はできなかった。

自分は弱い存在なんだと、ただ弱い存在なんだと何度も思い知らされたんだ。

…だけど、彼等は決して諦めなかった。

どんなに苦しくても、どんなに辛くても精一杯頑張って生きたんだ」


メルは開いた拳をまたギュッと握りしめた。そして目線をカスキュアに向ける。


メル「だから僕は、貴方の言う真実に何の恐怖も感じない。

僕が彼等から教わった事は、そんな柔なものじゃないんだ。

僕があの戦場で感じた恐怖は、そんなものじゃなかった。

…だから、どんな事実だって受け入れられる」

カスキュア「!」


その一言に珍しくカスキュアがたじろいだ。


カスキュア「怖くないの!?

恐ろしくないの!?

貴方の人生はもう普通じゃないんだよ!?」

メル「僕はもう決意したんだ!

僕は僕自身の力で、助けられる人を助けたいって!

そのためにゴブリンズへ入ったんだ!」



ダンク「ノリ!」

ノリ「う、な、なんすか!?」

ダンク「俺を殴れ!

力いっぱい!」

ノリ「へ?

な、何を言ってるッスか?」

ダンク「いいから早く!」

ノリ「そ、それじゃ遠慮なく…え〜〜い!!」


ドガバキベキバキドコバコガスガス!!


空中でノリの遠慮ない拳の応酬を受けるダンク。


ダンク「い、一発だけで…良か…」

ノリ「それならそうと早く言って欲しかったッス!」

ダンク「だがおかげで気合いが入った!

よおおし!!」



メル「カスキュア、さぁ教えて!

僕にはどんな改造がされたの!?

全部教えて!」

カスキュア「う、わ」


メルは立ち上がり、カスキュアに一歩近付く。

カスキュアはたじろぎそうになるが、ここは象の背中の上、逃げ場はない。


カスキュア「…………」

メル「後二つ、それは一体どんな才能なの!?

教えて!」

カスキュア「……アハハ」


カスキュアがニヤリと笑う。

しかしその笑みには、邪悪さが滲み出ていた。


カスキュア「アーーーッハハハハハハハハハ!

残念でした、もう何も教えてやんないよ〜!」

メル「ええ!?」


メルは驚き思わずたじろいでしまう。

カスキュアは笑みを浮かべたまま話を続ける。


カスキュア「だって、貴方はアタシの話を聞いても何の絶望も恐怖も感じないんでしょ?

だったら話したって意味ないじゃーん!」

メル「え?」

カスキュア「アタシはね、貴方の苦しむ顔が観たくて、話を始めたんだよ?

貴方の絶望を味わいたくて、ここまで教えたんだよ!?

なのに、そんなに希望を持ってたら意味ないじゃーん!

だから、もうこの話しはオシマイ。

アタシはもう今後、貴方に何も教えてあげません!

アハハハハハハハ!!」

メル「そ、そんな……」


メルが驚愕したその瞬間、世界が突然ねじれ始めた。

ピンクの象がグニャリと曲がり、ジャングルジムがまるでバネのようにぐるぐる巻かれていく。


メル「!?」

カスキュア「あ、もうダメかー」

ダンス「奴め、なかなかせっかちだな」


そんなダンスの言葉を皮切りに、メルの視界は一瞬消えてしまう。

そして次に見えたのは、自分の体を引っ張る包帯の腕だ。


ダンク「メル!大丈夫か!?」

メル「ダンクさん……」


メルは体を動かそうとして、非常に体がダルい事に気付いた。

起き上がろうとした体がそのままガクリと倒れそうになる。

その体を、ダンクが支えてくれた。


ダンク「メル…すまない!」

メル「?」


ダンクが必死に何かを謝っているが、メルには分からない。

すると、自分の体から何かがスゥッと抜けていく感覚がした。

その後、耳元であの声が聞こえてくる。


『一つだけ、教えてあげる』

メル「!」

『アタシはカスキュア。

果心林檎によって捨てられた計画、『嫉妬計画』のカスキュアよ。』

メル「え…?」

『また会おう。

アタシは呪いで癒し。

誰かの欲望を叶えさせて、絶望させるのがアタシの希望…♪』


そして、声は聞こえなくなった。

ダンクは暫く虚空を睨みながらはなしかける。


ダンク「いったな…」

メル「ダンク…さん…」

ダンク「さっきの夢、悪いが見させて貰った」

メル「!!」

ダンク「すまない…もう少し早く目を覚まさせていれば…あいつ、わざと情報をバラバラに話していたろ。」

メル「?

そうなの?」

ダンク「そうなの。

ああやって、俺達の気を引かせてたんだ。

最悪、お前の精神が崩壊しても情報を聞かせるように…」

メル「!」


ダンクは視線を虚空からメルに目線を向ける。


ダンク「ススにやったのと手口がにている。

あいつは復讐心を煽られ暴走した。

そして俺は、『知りたい』という気持ちを利用された…あの女、かなり危険だ」


メルはゾッとした。

あの会話の裏に、そんな駆け引きがあったなんて知らなかったからだ。


ダンク「…大丈夫、か?」

メル「ううん、僕は大丈夫。

それに色んな事が分かったし、敵の正体が見えてきた。

さあ、早く学校にいこう」

ダンク「…ああ、そうだな。

確か学校には先にアイツ等が…

ん?アイツ等…?

ああーー!!」



ダンクはそこで気づく。

学校に向かわせたのが、一体誰なのかを今まで忘れていたのだ。

そして、それと同時に、あの笑い声が聞こえてきた。




シティ「アーーーッハハハハハハハハハ!!!

破壊!破壊破壊破壊破壊破壊破壊破壊はかーい!」

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