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角が有る者達  作者: C・トベルト
太陽の命と月の命。
54/303

第55話 本当の太陽パート 助ける、償う、死ぬ

空中戦艦『モーセのステッキ号』の残骸が散らばるなかで、メルは辺りを見渡す。


メル「い、今ゲイシーさんの声が聞こえた。本物はあそこで戦っている筈なのに、何故?」


メルはチラッと前を見る。

そこには空中戦を繰り広げるゲイシーとヘイグの姿が見えた。


メル「それに、なんでセキタさんがゲイシーって名前を使っているんだ?

セキタさんはススさんの兄じゃ、ないの…?」


メルがふらっと岩の向こう側に歩くと、誰かが倒れていた。

そうっと顔を見るとそれはススだった。


メル「 す…スス!!?」


さっきまで自分を殺そうとしていた女性が、今は岩の後ろで倒れている。

しゃがんで顔に手を伸ばすが、手は顔を突き抜けてしまう。


メル「…そうか、ここでは僕は夢の住人なんだ。 今ここでススを助ける事は出来ない…」


ここは戦場…そして今生きている者は僅かススを4名だけ。

しかしサイモンは胸に穴が開いて死にかけているし、ヘイグもセキタも真剣勝負の最中だ。

間違いなくどちらかが死に、生きている方も無傷では済まされないだろう。

…つまり、この場所にいる者にススを助ける事は不可能なのだ。


メル(それじゃあ、ススは誰に助けられたんだろう?

気絶しているんだ、自力で脱出は出来ない。

誰かがススをここから運んだんだ)

「でも誰が…?

それにどうしてススを助けたんだろう。

…生きていたって苦しいだけなのに」


ススは静かに寝ている。

顔にも服にも満遍なく煤や汚れが付着し、一見したらそこらに転がっている死体と同じ姿だ。

メルは目を細め、立ち上がる。


メル「ススも可哀想に。

助からなければ良かったんだ。

それなら、あんなに苦しみながら生きる事もなかったろうに」


メルは思わず呟いた。

すると、耳元で声が響く。


『それを言ってはいけないよ、少年。』

メル「っ!?

この声は、ゲイシーさん!?」

ゲイシー『セキタ、と呼んでくれ。君にはその名前で呼ばれたくない』


メルは再度辺りを見渡すが、気絶しているスス以外に誰も姿はない。


メル「セキタさん…何処から?」

セキタ『いずれ君も訪れる場所に、俺はいる』

メル「……?」

セキタ『君に有る物を見せたくて話しかけてきたんだ。

見てくれ……俺の人生を』


グニャリと世界は歪み、ひっくり返る。メルはこの現象を知っている。これは他人の人生を見る時に起きる現象だ。

だが、この人生を見る事をメルは恐れていた。

そしてセキタの人生は、恐れから始まる事を知る事になる。









キャアアアアアア!アーッハハハハハ!ヒューーイ!イヤアアアアア!ヒィエエエエエエエ!ウォッホッホッホッホッホッ!!イーヒヒヒヒヒヒ!!ウワアアアアアアア!!



メル「……なんなんだ、ここは?」


メルが辺りを見渡す。

どうやら天幕のようだが、辺りが異常に暗く不気味さを感じる。

そしてそこらかしこで悲鳴や笑い声が響き渡っている。更に妙な匂いが鼻に入り、それが更に増長させた。

メルの人生の中で、ここまで悪寒と恐怖と嫌気を感じる場所は無い。

メルは思わず、もう一度同じ言葉を呟く。


メル「…なんなんだよ、ここは…」

セキタ『ようこそ、僕の人生へ』


メルはバッと勢い良く振り返る。

そこには、セキタが立っていた。

しかしその姿はメルと同じ半透明であった。


セキタ『やあ、こうやって顔を会わせるのは初めてだね。』

メル「セキタ…!」


メルは手を伸ばす…が、その手もすり抜けてしまう。


メル「あ…」

セキタ『ごめんね。

俺はこの人生の解説をするために現れた存在だから、

君に触る事は出来ないんだ』

メル「…そん…な…」


メルにとって、それは衝撃だった。

今まで傍観者だった彼にとって、たった一人で辛い世界を見つめ続けた彼にとって、『話が出来る』存在はあまりにも大きかったからだ。

セキタは優しく微笑む。


セキタ『悲観してはいけないよ、メル。

君はまだ知らないんだ。』

メル「え…」

セキタ『夢は現実になる事を。

現実は夢になる事を…ね』


メルは目をパチクリさせる。

セキタは優しく笑みを浮かべたまま、目線を別の場所に向ける。

…薄暗い天幕の方に目を向ける。


セキタ『そしてこの場所も、君は知らない』

メル「…そうだ、ここは何処なの?

この変な匂いは…」

セキタ『これは阿片だよ。』

メル「アヘン!?

む、無茶苦茶ヤバい奴じゃないか!!?」


メルは慌てて息を止める。

セキタはフフッと笑みを浮かべた。


セキタ『大丈夫。

ここは夢の中のような物だから、君の身体には何の影響も及ぼさないよ』

メル「…………本当?」

セキタ『信じなければそれでもいいさ。

どのみちこんな腐臭、何の意味もないんだ』


セキタは少し目を細める。

メルはセキタが少し震えている事に気付く。


メル「どういう意味?」

セキタ『この場所の狂気は、阿片の香りが原因ではないという事さ』

メル「?」


バチン!!


突如、天幕の中心をスポットライトが照らす。

振り返るとそけには燕尾服にシルクハットを被った中年の男性が丁寧に御辞儀していた。

そしてメルが見渡すと自分達がいる所より上は客席のようで、そこに何十人もの仮面を被った人間が座っていた。


「皆様ようこそ!

『フリークス・サーカス』へ!

私はバーニア・ウェイン・ゲイシー!

このサーカスの団長です!」

メル「バーニア・ウェイン・ゲイシー………!

そ、それって!」

セキタ「あれが僕の本当の父親さ。似てないだろ」


セキタは呟くように答えた。

メルが見ると、確かに似てない。



バーニア「皆様!

今日も世にも恐ろしい私の怪物達をお見せしましょう!

先ずは、自己紹介…。

彼に階段は登れない!彼は椅子に座れない!

ああ!ああ!壊れた人形だ!

ジョニー・エック!!!」


バチン!


バーニアの言葉に合わせて舞台の一点をスポットライトが照らす。

そこには下半身のない男性が虚ろな表情で客席を見ていた。

そして客席からは悲鳴や笑い声が響き渡る。


ワアアアアア!キャアアアアアア!ヒヤアアアア!!



メル「!?!?!?!?」

エック「やあ、皆さん今日は。

今日はここまで足を運んで頂きありがとう。

足の無い私はとても嬉しいよ」


バーニアの言う通り、壊れた人形のように無表情で楽しそうに喋る下半身の無い男性。

それを見たメルは心の中を恐怖が支配していくのが耐えられなかった。


メル「うわああ!

な、なんなんだよあれは!」

セキタ『彼はジョニー・エック。

このサーカスの愉快なお喋りさんだ。』

メル「あ、あれの何処が愉快なお喋りなの!?

無表情じゃないか!」

セキタ『彼はまだ狂気に囚われていないからね。』


淡々と喋るセキタ。

その言葉もまた、どこか虚ろだ。


バーニア「続いては可愛らしい彼女『達』に来てもらいましょう!!

繋がりし双子姉妹、 デイジー&バイオレット・ヒルトーン!!」

デイジー「ハァイ!」

バイオレット「こんにちはー!」

デイジー&バイオレット「私達、ヒルトン・シスターズでーす!」

メル「……!!」


ヒイイイイイイ!キャアアアアアア!オオオオーー!!ヒルトン姉妹ー!こっち向いてくれー!


メルは顔から血の気が引く音を初めて聞いた。

何故なら楽しそうに笑う彼女の足と腕は同化し、まるで接着剤でくっ付けたかのように見える。

セキタが静かに呟いた。


セキタ『彼女達はシャム双生児さ。

生まれた時から繋がっているんだよ』

バーニア「さーらーにー!

彼女に食べれぬ物は無し!

今日も彼女は狂気を食べる!

ニバリ・フランケーン!」

ニバリ「あはははははは!!

皆たべていいのー!?」

バーニア「ニバリ!

君の食べる死人はちゃんとあるから、彼らを食べちゃだめだよ」

ニバリ「はーい!

今は土を食べて我慢してるねー!

ガツガツ!ムシャムシャ!」


ウワアアア!コワアアイ!土を食べてるうう!もっと食べろ!もっと食べろオオオオ!!


メル「つ…、つつつ土を食べている!?」

セキタ『彼女は『すべてを食べる事が出来る能力』を持っている。

おまけに大飯喰らいで味なんか気にしない。

だから土でも死体でも彼女はお構い無しに食べていくんだ。

自分の手足だって食べるから、彼女の右足と両手は義手で出来ている』

メル「む、無茶苦茶じゃないか…!」

セキタ『ところで』


セキタがニコニコ笑ったままメルに尋ねる。


セキタ『さっきから観客達が妙に騒いでいるのに気付いているかい?』

メル「…!

そ、そう言えば…!」

セキタ『昔のサーカスでは観客達がオーバーリアクションするために阿片を香にして焚いていた。

このサーカスでも、それに倣って阿片を焚いているんだ』

メル「だ、だからさっきから観客の声が大きかったんだ。

…じゃ、じゃあ僕も!?」


メルは自分の体を見つめる。

そう言えば自分はいつもより派手に驚いたりしてないかと疑心暗鬼になっていく。

それを止めたのはセキタだ。


セキタ『君はこの世界の人間じゃないから効果はないよ。

…っと、そろそろだね』

メル「何が?」

バーニア「そろそろ彼の登場と行きましょう!!

悪魔が生んだ恐怖の泥人間!

ペニーワ~~イズ!!」


バチン!


スポットライトが舞台の一点を照らす。

そこには灰色の肌をした少年が虚ろな目で座り込んでいた。

上半身裸で、下半身もボロボロの布切れを腰に巻いているだけだ。

少年…ペニーワイズが右手を上げる。

しかし彼の身体はドロドロで、肘から灰色の液体が滴り落ちていた。


ヒャアアアアアア!!悪魔だあああ!!悪魔の子だあああ!!気持ちわるううい!!あっはははははははは!!!



阿片に狂った観客達の声は、正気で生きる人には耐えられない悪口の数々だった。

メルは思う。

阿片とは、ここまで人の正気を捻れさせてしまうものなのかと。

セキタはニコニコ笑ったまま、静かに呟く。


セキタ『あれが僕だよ。

悪魔の子、恐怖の泥人間ペニーワイズ。

その実態はフリークス・サーカスの団長バーニアの一人息子、

ジョン・ウェイン・ゲイシーなんだ』

メル「……!!」


メルは舞台からセキタの方に振り返る。

彼はニコニコ笑ってはいたが、腕はガタガタと震え、顔は青ざめている。

笑顔の仮面を株っていても尚、彼の心の震えを抑える事は出来ないのだ。


セキタ『僕は生まれた時から阿片の匂いを知っていた。

そして能力を知った僕の父はまだ4歳にもならない僕を悪魔の子として舞台に出させ、注目と金を集めていた。

…僕がどんなに怯えても怖がっても、父は舞台に出させたよ。

6歳になる頃には自分が感情を持っている事を忘れていた。

ただ口の端を筋肉で持ち上げれば、皆が明るくなるのを知っていたから、いつも口の端を持ち上げていたよ』


セキタはニコニコ笑っている。

しかしその笑みはあまりに作り物染みていた。


セキタ『7歳になる頃にはもう僕は』

メル「もうやめてよ!!!」


叫んだ。

あまりに大きな気持ちが膨れ上がりで、その余りに異常な感情が、

そのまま心から口に流れてきた。


メル「もううんざりだ!!

異常な世界、異常な歴史、異常な人達…!

これ以上僕に何を見せたいの!?

どこまで僕を苦しめるの!?

僕はもう死ぬんだよ!!」


メルはセキタの襟首を掴もうとする…が、出した右手はセキタの体をすり抜けてしまう。

それでもメルは叫ぶのを止めない。


メル「僕は、僕の家族は世界を不幸にしたんだ!

おじいちゃんはGチップを作り世界を二つに分けて、戦争のきっかけを作った!

お父さんは世界中の軍隊に兵器を売り続け世界に死と苦しみを与え続けた!

そうやって世界中を不幸にし続けた僕は、君の妹によって殺されるんだ!!

もうほっといてよ!僕は死ぬ事でしかこの罪を償えないんだ!」

セキタ『………』


メルが叫んだ間、セキタは何も言わず黙っていた。

しかし後ろの客席は相変わらず阿片に酔った客達が騒いでいる。

メルはその客達を睨み付けた。


アーッハハハハハハハ!キャアアーーアア!!ヒヒヒヒヒヒヒ!!ウワアアア!!


メル「黙れ……!!

黙れ黙れ黙れ黙れえええ!!!

僕をこれ以上怒らせるな!

死ね!死ね!!

全員、糞を口に詰めて死んじまえ!!

うわああああああああ!!!

うわああああああああああああ!!!」


最後はもう言葉にすらなっていなかった。

今まで彼の体の中で溜まっていた感情が、今爆発したのだ。

そしてそれは、一気に萎んでいく。


メル「うわああああ!!

うわああああ……!!

うわあああん…!!

なんなんだよ…!うわああん…!

なんなんだよぉ…!!

セキタ…なんでこんなの見せたんだよぉ……!!

こんなの、辛いだけじゃないかああああ!!」


メルは座り込んでうずくまり、涙をボロボロと流しながら叫ぶ。

セキタはしばらく黙っていたが、

静かに口を開いた。

もうニコニコと笑みを浮かべていない。


セキタ『それは、君が訊ねたからだ』


メルは涙と興奮で真っ赤に染めた顔を上げる。


メル「訊ねた…?

訊ねただって!?

僕が!?

一体何を訊ねたというんだ!!」

セキタ『何故ススを助けたのか?…という問いに、さ』

メル「……!」

( どうしてススを助けたんだろう。

…生きていたって苦しいだけなのに…)


少し前に呟いた一言をメルは思い出す。


セキタ『助ける、と言う言葉は誰でも簡単に使える。

だが真に『助ける』事が出来るのは、ほんの一部の人間にしか過ぎない。

そして、君は言ったな。『僕は死ぬ事でしか罪を償えないんだ』……とな。

違うぞ。死は罪を洗ってはくれない。土をかけて汚す事は出来るがね』


ゆらり、とセキタはメルに近づいてくる。その静かな迫力に、爆発した筈のメルの感情が少しずつ沈んでいく。


セキタ『知りたまえ、少年。

『助ける事』を。

『償う事』を。

そして『死ぬ』、という事を』

メル「『死ぬ』……?

セキタさん、それは一体」


メルの台詞を遮るようにぐにゃり、と世界が歪んでいく。

どうやら元の世界に戻るようだ。

あの、地獄のような戦場に。


メル「ま、待って…僕はまだ何も

セキタ『続きはゲイシー達の戦いを見てからだ。

そうでなければ意味がない』





ぐにゃり、と世界が歪み、そしてひっくり返る。


戦場に、戻ったのだ。


戦場では、相変わらず瓦礫と死体が山を築き上げている。

その下でメルがキョロキョロと辺りを窺っていた。


メル「戻った……。

二人は!」


その上空でセキタ=ゲイシーとヘイグが空を飛んでいた。

しかしヘイグは右足を斬られ、空中で右足を抑えていた。


ヘイグ「いってえええなああ!

ちくしょおおう!!

貴様、猛毒英雄のジョン・ヘイグの足をよくも斬ったなああ!」

ゲイシー「……」

ヘイグ「いてええ!いてええ!いてええ!

………………。

あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」


突如、ヘイグが笑い出す。

そしてガスマスクで覆われた顔をセキタに向けた。


ヘイグ「よく追い撃ちしなかったなぁ……。

もし来たらコイツで殺そうとしていたのによおおお!!」


そう言いながらヘイグは右手に隠し持っていた、紫色の液体が入った試験管を適当に放り投げる。


ジュワッ!!


試験管が地上に落下した瞬間、管が破裂し液体が地面に染み込み、

何故かボコボコと恐ろしい泡が吹き出した。

ヘイグはセキタに尋ねる。


ヘイグ「何で攻めてこなかった?

今なら確実に殺れたのによぉ」

ゲイシー「……弱者をいたぶる気は無いからな」

ヘイグ「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!

いい解答だ。

ますます殺しがいがあるぜえ!」


足を斬られたにも関わらず、とても楽しそうにヘイグは笑う。


ゲイシー「……幾つか聞いていいか?」

ヘイグ「なんだ?」

ゲイシー「お前が拘る『英雄』……。

そんなに良いものなのか?」


今度はゲイシーがヘイグに訪ねる。

ヘイグはしばらく黙っていたが、やがてニヤリとえみを浮かべた。


ヘイグ「……。

あひゃ?

なんだ、そんな事か?

そんなの、最高に決まっているだろ?」


ヘイグはやれやれと首を横に降る。


ヘイグ「『私の嫌いな奴を殺してありがとう!』『俺が別れたかった彼女を殺してありがとう!』

『我々を助けてくれてありがとう!』

…………そんな感謝の言葉ばかり聞こえてくるんだぜ?

そして、皆から注目を浴びせられて自分の顔が新聞にも雑誌にも映る。

更に輝く勲章とうまい肉もたらふく食べれる!!

あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」


ヘイグはゲイシーに向けて楽しそうに話している。

先程までの殺気は失せ、子どものように無邪気に話す。


ヘイグ「英雄になるってのはこんなに良い事なんだ!

最高だぜ、皆から認めてもらえるのはよおお!!」


そして、空を見る。

雲一つない青空は、手を伸ばせば太陽さえ掴みそうなほど、清々しかった。


ヘイグ「そして英雄と呼ばれる度に思うんだ!

ああ、俺は天に選ばれたんだってなあ!!

どうだ、最高だろ!?

英雄ってのはよおおおお!!!

あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

ゲイシー「それじゃあお前はやってないんだな?」


ヘイグのセリフを、ゲイシーは遮る。ヘイグは笑いを止め、ゲイシーを睨み付けた。


ヘイグ「…………なんだ?」

ゲイシー「助けた事を、だ。

人を助けた事、お前は無いんだろ?」

ヘイグ「は?は?はぁ~~!?

馬鹿かお前は!?

俺は英雄!

人に感謝されている!

……つまり俺は人を助けているんだよ!!

馬鹿な事いってんじゃねえ!!」

ゲイシー「……。

違うな」

ヘイグ「ああん!?」

ゲイシー「お前は知らないんだろう。

『るいそう』になった子を抱いた事も無い奴が、

瓦礫の中を歩き続けた事も無い奴が、

人の苦しみを何一つ知らないお前が、助けるだの偉いだのほざく権利はない!」


ゲイシーは一気に、真っ直ぐ突進していく。

ヘイグはニヤリと笑った。


ヘイグ「馬鹿が!

真正面から突っ込みやがって!」


そして右手をゲイシーに向け、スイッチを押す。


ヘイグ「強酸浴びて死んじまえ!」


カチッ、

ブシュウウウウウウ!!


強酸は真っ直ぐ飛んでくるゲイシーに向けて真っ直ぐ飛んでいき、彼の体を飲み込んだ。


ゲイシー「!」

ヘイグ「あひゃひゃひゃひゃ!

溶けろ溶けろ溶けろおお!!」


強酸はゲイシーの体を包み、少しずつ溶かしていく。

だが、それより早くゲイシーは真っ直ぐヘイグへ飛んでいく。


ヘイグ「あひゃあ!?」

ゲイシー「貴様こそくたばれ!」


ドゴオオオオオオ!!!


ゲイシーの強烈な頭突きがヘイグの腹部に直撃した!!


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