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異世界料理道  作者: EDA
第四十六章 群像演舞~五ノ巻~
778/1681

    舞台の裏で(三)

2019.8/21 更新分 1/1

「どうもどうも。調理の見学をしていると、一刻などはあっという間ですな」


 休息の時間が終わると、約束通りにボズルたちがやってきた。

 今度の力比べは広場の中央で行われるので、客人たちはそれを取り囲む格好で陣取っている。レイナ=ルウの周囲にいるのは、さきほどまでと同じく、客人として招かれた余所の氏族の人間たちであった。


「お次の勝負は、なんでしょう? 力比べはあと2種目とうかがっておるのですが」


「残されているのは、棒引きと闘技であるそうです。まずは棒引きからであるようですね」


 ジザ=ルウはフェルメスの相手をしており、ルド=ルウはあちこち動き回っていたので、自然とレイナ=ルウが相手をすることになった。

「なるほど」とうなずくボズルの横から、ロイとシリィ=ロウも目礼をしてくる。彼らは森辺の集落において委縮しがちであったので、レイナ=ルウは自分から声をかけることにした。


「力比べは、如何ですか? あなたがたには、あまり関心のない行いであるかもしれませんが」


「そりゃあ俺たちには畑違いだけど、ぞんぶんに感心させられたよ。森辺の狩人ってのは、本当にすげえんだなあ」


 ロイがしみじみとつぶやくと、シリィ=ロウが横目でそちらを見た。


「このロイは、自分の非力さを痛感させられたそうです。料理人にそこまでの腕力は必要ないとたしなめたのですけれどね」


「うるせえなあ。また赤面したくなかったら、黙ってろよ」


「な、なんですか、その言い草は! あなたはいつになったら、先達に対する礼儀というものを覚えるのですか?」


 と、まんまと赤面するシリィ=ロウである。

 ただ、どうして彼女が赤面しなければならないのかは、レイナ=ルウにもよくわからない。まあ、このふたりはいつもこんな調子であるのだ。


「森辺の狩人というのはギバを狩るのを仕事にしているのですから、腕力に秀でているのも当然の話です。町の人間が気にする必要はないかと思います」


 レイナ=ルウがそのように取りなすと、ロイがふてくされたような視線を向けてきた。


「でも、お前だってその森辺の狩人が父親なんだよな。しかも、あんなすげえ身体をした族長さんの血筋だろ。もしかしたら森辺の民ってのは、男女関係なく、みんなすげえ力を持ってるんじゃねえのか?」


「男衆と女衆では、比べるべくもありませんが――」


 と、そこでレイナ=ルウは、古い記憶を思い出した。


「……ただそういえば、ずっと昔にアスタも同じようなことを言っていたような気がします。わたしの姉のヴィナ・ルウ=リリンが自分よりも腕力に秀でていることが、アスタには衝撃であったようですね」


「え? ヴィナ・ルウ=リリンって、あの色っぽい姐さんだろ? あんななよやかな姿をしたお人が、アスタよりも怪力だってのか?」


「怪力というほどではありませんが、ヴィナ姉はけっこう背もありますし、森辺でも力のあるほうなのでしょうね。ただ、アイ=ファのように修練しているわけではないので、特別に力が強いわけではないかと思います」


「勘弁してくれよ」と、ロイはがっくりと肩を落とした。


「俺なんざ、アスタにだって太刀打ちできねえってのによ。森辺の女衆は、その上をいくのが当たり前だってのかよ?」


 その言葉には妙に実感が込められていたので、レイナ=ルウは不思議に思うことになった。


「アスタに太刀打ちできないとは、どういう意味でしょう? あなたはアスタと力比べでもしたことがあるのでしょうか?」


 ロイは顔をしかめると、少しくせのある褐色の髪をかきむしった。


「力比べなんてするまでもねえよ。俺はあいつに腕をつかまれただけで、悲鳴をあげることになったんだからな。俺なんざ、片手でねじ伏せられちまうだろうさ」


「アスタに、腕をつかまれた? いっそう意味がわからないのですが……」


「うるせえなあ。お前には関係ねえだろ」


 ぶっきらぼうに言い捨てられて、レイナ=ルウはむっとしてしまった。

 すると、ボズルが丸太のような腕をのばして、ロイの細首をからめ取った。


「口が悪くて、申し訳ありませんな。ロイ、シリィ=ロウが相手ならばともかく、森辺の方々にそのような口を叩くのは感心しませんぞ」


「いてて、痛いですってば! あんたとだって力比べをするつもりはありませんよ!」


「わ、わたしが相手ならばともかくというのは、聞き捨てなりません! わたしだって、彼の口の悪さには手を焼いているのです!」


 なんだかずいぶんと、子供じみた様相であった。

 すると、近くにいたレイ=マトゥアが笑いを噛み殺しつつ振り返る。


「なんだか楽しそうですね、みなさん。でも、そろそろ力比べが始まるようですよ」


「ああ、これは申し訳ない。……おや、あなたは先日、《銀星堂》にまで出向いてこられた――」


「はい。マトゥアの家人で、レイ=マトゥアと申します。先日は、素晴らしい料理をありがとうございました」


 レイ=マトゥアはにこりと微笑んでから、レイナ=ルウに耳を寄せてきた。


「こちらの方々も、あまり気を張ってはおられないようですね。レイナ=ルウのおかげで、緊張がやわらいだのではないでしょうか?」


 レイナ=ルウとしては、「さあ、どうでしょう」としか答えようがなかった。

 その間に、広場の中央では力比べが開始される。綱を使ったくじ引きの結果、最初の対戦はアイ=ファとジョウ=ランであった。

 大接戦ののちにアイ=ファが勝利を収めると、歓声の中でロイが溜め息をつく。


「やっぱり、すげえ身のこなしだな。あのアイ=ファなんて、俺よりも身体は小さいのによ」


「アイ=ファは女衆とはいえ、修練を積んだ狩人です。町の人間と比べるほうが筋違いなのではないでしょうか」


「……なんだか、とげのある言い方だな。まださっきの件でむくれてんのかよ」


「むくれてなどはいません」


「だったら、どうしてそんなにつんけんしてやがるんだ?」


「あのですね」と、レイナ=ルウは身体ごとロイに向きなおった。


「あなたに悪意がないのでしたら、自分の思っていないところで他者を苛立たせているのだと思います。もう少し、相手の心持ちというものを考えながら発言するべきではないでしょうか?」


「そうです! あなたの言葉には思いやりというものが欠けています!」


 シリィ=ロウも便乗してくると、ロイは「うわあ」と頭を抱え込んだ。


「お前らが結託すんなよ。なんか、悪夢でも見てる気分だ」


「こ、今度は人を悪夢呼ばわりですか! そういうところが、思いやりに欠けていると――」


 と、シリィ=ロウはいっそう熱くなっていたが、レイナ=ルウのほうは怒気を削がれていた。ロイの力ない姿が、妙に可笑しく感じられてしまったのだ。


(やっぱり料理を前にしていないと、感覚が違うのかな。ロイもシリィ=ロウも、普通の町の人間みたいだ)


 思うにレイナ=ルウは、これまで彼らのことを「料理人」としてしか認識していなかったのだろう。

 かつては彼らを、ルウの祝宴に招いたこともある。しかしあのときは、絆を深めるためというよりは、森辺のかまど番の調理を見学し、その料理を口にする、というのが本懐であったので、ずいぶん心持ちも異なっていたように思う。彼らは料理人として森辺を訪れ、レイナ=ルウたちもかまど番としてそれを迎え撃つ格好であったのだ。


(ジザ兄は、城下町の民ともっと絆を深めるべきだって言ってたもんな。料理人やかまど番としてだけじゃなく、ひとりの人間として絆を深められればいいけど……うーん、どうなんだろう)


 この中で、もっとも心安いのはボズルである。彼はときおり宿場町の屋台を訪れることもあるし、南の民らしく大らかな気性をしている。物腰はずいぶんと丁寧であるものの、基本の部分はあの建築屋の一行と大差はないように思われた。


 反面、ロイとシリィ=ロウは――喋りにくいことはないのだが、いかにも城下町の人間らしい偏屈さを持っている。ロイはときどき腹立たしくてならないときがあるし、シリィ=ロウはけっこうな癇癪持ちだ。レイナ=ルウとしても、まだそれを美点と思えるほどの絆は得られていなかった。


(ふたりとも、料理人としては尊敬できるんだけどな……そもそも彼らのほうだって、わたしたちのことをどう思ってるんだろう)


 レイナ=ルウが思案している間に、棒引きの勝負はどんどん進められていた。

 接戦にもつれこむ勝負も多く、そのたびに歓声は高まっていく。特に、アイ=ファがリッドの家長やスドラの家長を打ち負かしたときなどは、すさまじいばかりの歓声があがっていた。


「すげーすげー! また勝っちまったよ!」


 離れた場所で、ルド=ルウもはしゃいだ声をあげている。周囲の男衆らと意気投合して、ボズルたちのことなど忘れてしまっている様子だ。

 しかしこちらでは、レイ=マトゥアを筆頭とする女衆らがボズルたちの世話を焼いてくれていた。この場に集った女衆のほとんどはアスタの商売を手伝っている者たちであったので、城下町の料理人たる彼らにも大きな関心を寄せていたのだ。


「あ、あ、あの、ご挨拶が遅れてしまいました。み、みなさん、お元気そうで何よりです」


 と、棒引きの力比べが終盤に差しかかったあたりで、ひょろひょろとした人影が近づいてきた。

 とたんに、シリィ=ロウが鋭い面持ちになる。それは、かつて《銀星堂》にも出向いたマルフィラ=ナハムであったのだ。


「おひさしぶりです、マルフィラ=ナハム。あなたも、お元気なようですね」


「は、は、はい。わ、わたしも変わらずに過ごしています。せ、せ、先日は大変お世話になりました」


「……あなたも今日は、客人の立場であるそうですね。あなたの料理を口にできないことを、とても残念に思っています」


「い、い、いえ、わたしの料理なんて、まだまだ不出来ですので……と、とうてい客人にお出しできるようなものではありません」


 あたふたと目を泳がせるマルフィラ=ナハムの姿を、シリィ=ロウはじっとにらみ続けている。マルフィラ=ナハムの非凡ならぬ才覚を垣間見たシリィ=ロウは、ずいぶんと対抗意識を燃やしているようであるのだ。


(アスタはもちろん、わたしだってあんな風ににらみつけられたことがあったもんな。でもきっと、あれだって悪気があるわけではないんだろう)


 シリィ=ロウは、ただ感情がそのまま出てしまう気質であるのだ。

 もしもレイナ=ルウが、彼女と同じぐらい直情的であったのなら、同じような眼差しでマルフィラ=ナハムを見ていたかもしれなかった。


「……森辺の民は、全部で5、600人って話だったよな」


 と、ロイがひそめた声でレイナ=ルウに問いかけてきた。

 レイナ=ルウが「はい」と答えると、ロイは「そうか」と息をつく。


「単純計算で、料理に関わってる人間が3分の1ていどって考えると……まあ、せいぜい200人ってところか。それでこの有り様は、どうなんだろうな」


「有り様とは? 言葉の意味が、よくわからないのですが」


「余所者だったアスタやマイムって娘は除外しても、お前やシーラ=ルウやトゥール=ディンは、ヴァルカスに腕を認められるほどの料理人だろ。それで後には、あのマルフィラ=ナハムって娘も控えてるし……料理を得意にする人間の割合が、ずいぶん多いってことにならねえか?」


 レイナ=ルウは、少なからず困惑を覚えることになった。


「ちょ、ちょっとお待ちください。茶会に招かれているトゥール=ディンはまだしも、わたしやシーラ=ルウをそこに加えるのは、いささか早計ではないでしょうか?」


「なんでだよ。お前とシーラ=ルウだって、アスタに負けない料理を作れるってヴァルカスに評価されてたろ」


「ですがそれは、練りに練ったいくつかの料理が認められただけのことですし……」


「だからさ、城下町の料理人は、たったひと品でもヴァルカスに認められるような料理を作ることはできねえんだよ。……弟子の俺たちを除けば、な」


 と、ふいにロイはにやりと笑った。


「あと例外は、ジェノス城の料理長ダイアか。ヴァルカスが城下町で腕を認めてるのは、ダイアと俺たち弟子の4人だけなんだ。ヴァルカスたちの次に高名なティマロってお人が、ヴァルカスにどんな評価を下されてるか、お前も知らないわけじゃねえだろ?」


「そ、それはそうかもしれませんが……」


「それでもって、弟子である俺たちもヴァルカスに文句を言われずに済むのは、練りに練ったいくつかの料理だけだ。ってことは、俺たちとお前たちの腕がだいたい五分ってことになるんじゃねえのかな」


「……それはあくまで、ヴァルカスの基準です」


 そこでレイナ=ルウは、なんとか態勢を整えることができた。


「わたしもヴァルカスのことはアスタやミケルと同じぐらい高みの存在であると考えていますが、ヴァルカスの評価だけが絶対であるとは思っていません。ヴァルカスの口に合わなくとも、多くの人間を喜ばせることのできる料理というものも、きっと存在するはずです」


「そうなのかな。ヴァルカスは自分とまったく作法の違う料理だって正当に評価できるんだから、間違いなんかは起こしそうにねえように思えるな」


 そうしてロイは、ふっと表情をやわらげた。


「まあ俺は、森辺に腕のいい料理人が多いことに感心してるだけなんだ。なんか気を悪くさせちまったんなら、謝るよ」


「いえ、べつだん気を悪くしたわけではないのですが……ヴァルカスに腕を認められたなどというのは、あまりに重すぎる言葉です」


「そうか? ヴァルカスはお前たちの料理を上等だって評価したんだから、素直に喜んでおけよ」


 そう言って、ロイは白い歯をこぼした。


「あの偏屈者に褒められると、誇らしいよな。ま、本人には口が裂けても言えねえけどよ」


 つられて、レイナ=ルウも笑ってしまった。


「そうなのですか? わたしはきちんと、ヴァルカスに光栄だと伝えたと思います」


「そりゃあ、お前が余所の人間だからだよ。あいつの下で働いていたら、とうていそんな気持ちになれるもんか」


 やはりロイは口が悪かったが、レイナ=ルウの怒気が喚起されることはなかった。

 それはきっと、ヴァルカスのことを悪しざまに言いながら、ロイの声に尊敬や情愛の念がにじんでいたからであるのだろう。


「……ヴァルカスがどうしました? まさか、また何か不平などを言いたてていたわけではないでしょうね?」


 と、マルフィラ=ナハムの相手をしていたはずのシリィ=ロウが、ぬっと顔を突っ込んできた。

 ロイは苦笑をしながら、「なんでもねえよ」と身を遠ざける。


「俺の師匠は偉大で完璧だって話してただけさ。なあ、レイナ=ルウ?」


「いえ。森辺において、虚言は罪ですので」


「……やはり、ヴァルカスを貶めるような言葉を口にしていたのですね。だいたい、あなたは――」


「勘弁しろって。ほら、決着がついたみてえだぞ」


 棒引きの力比べが、終結していた。

 勇者となったのは、フォウの家長バードゥ=フォウだ。アイ=ファはまたしても、最後の勝負で敗れてしまったようだった。


「これでようやく、最後の競技か。退屈するヒマはねえけど、けっこうな長丁場だな」


 狩人たちには小休止が与えられるので、こちらも同じく小休止である。ロイは大きく腕をのばしながら、天を仰いでいた。


「でも、こんな風に長いことおひさまを浴びるのはひさびさだもんな。なんだか、気持ちがいいや」


「うむ。普段は朝から晩まで厨にこもりっぱなしだからな」


 そんな風に答えてから、ボズルがレイナ=ルウに笑いかけてきた。


「おっと、うっかり気安い口を叩いてしまいました。お忘れくださったら幸いです」


「いえ、どうぞお気兼ねなく。わたしも家族には気安い口をきいていますので」


「へえ、そうなのか。当たり前の話なんだろうけど、なんだか想像がつかねえな」


 と、こちらの会話に口をはさみつつ、ロイはシリィ=ロウに向きなおった。


「お前は家族が相手でも、そういう馬鹿丁寧な言葉を使ってそうだよな。何せ、旧家のお嬢様なんだからよ」


「……いちいちそうやって、わたしを小馬鹿にしないと気が済まないのですか、あなたは?」


「いえいえ、滅相もございません。ただ、次は闘技の力比べって話だぜ? どんな内容かは知らねえけど、お嬢様には刺激が強すぎるんじゃねえか?」


「余計なお世話です! そのていどのことで音をあげるわたしではありません!」


「的当てでも木登りでも青い顔をしてたくせに、よく言うぜ。……なあ、闘技の力比べってのは、どういう内容なんだ?」


 ロイが、レイナ=ルウに呼びかけてくる。口は悪いが、何やら本心からシリィ=ロウを気づかっている様子だ。


「闘技の力比べというのは、武器を使わずに力を試し合う力比べです。手の平と足の裏を除く部位を地面につけたら、負けとなります」


「ああ、要するに押しくらっこか。それならうちのお嬢様も、目を回さずに済みそうだな」


「ええ。相手に傷を負わせても負けとなりますので、血が流れることもありません」


「だってよ。ひと安心だな、お嬢様?」


「……いつまでもそうやってわたしをからかおうというおつもりでしたら、こちらにも考えがありますよ?」


 シリィ=ロウはいまにも癇癪を爆発させそうな様子であったが、ロイは鼻で笑っていた。ボズルも苦笑しているばかりであるので、まだまだ常態の範疇であるのだろう。


(これも、ふたりが気安い関係だからなのかな。そういえば……ルドとララのやりあいに似てるかも)


 ロイがヴァルカスの弟子と認められて、すでにそれなりの月日が過ぎている。なおかつ、ロイはその前からシリィ=ロウたちの世話になっていたようなので、いっそう絆は深まっているのだろう。


(いつだったか、ふたりがずいぶん気安い関係に見えたこともあったもんな。もしかしたら、ふたりはおたがいに心を寄せているのかな)


 レイナ=ルウは、少なからず好奇心を刺激されることになった。

 しかし、いきなりこのようなことを問いかけるのはぶしつけであろう。そのように考えて、迂遠に問いかけることにした。


「たしかシリィ=ロウは、わたしと同い年であったでしょうか?」


 シリィ=ロウは、いくぶん虚をつかれた様子でレイナ=ルウに向きなおってきた。


「あなたが何歳であるかは存じませんが……わたしは、次の新年で19歳となります」


「ああ、町の人間は銀の月で年齢を重ねるのでしたね。それなら、やはりわたしと同じ年齢であるようです。……ロイは、おいくつなのですか?」


「俺は、それより2歳上だな。年下の先輩様ってのは、なかなかに扱いが難しくてよ」


「ああ、あなたはもう20歳であったのですね。森辺であれば、婚儀をせっつかれる頃合いです」


「ほう」と反応したのは、ボズルであった。


「20歳で、もう婚儀をせっつかれてしまうのですか。まあ、決して遅いわけではないでしょうが……そういえば、あなたの姉君やシーラ=ルウ殿も、すでに婚儀をあげておられましたな」


「はい。それでもルウ家は、まだのんびりしているほうだと思います。もっと小さな氏族においては、血が絶えてしまわないように婚儀を急ぐものだと聞いています」


「それは、難儀なような、羨ましいような、ちょっと複雑なところですな。わたしなんぞはいつまでも修行が終わらず、この年齢まで婚儀の機会を逃がしてしまいました」


 ボズルは陽気に、声をあげて笑った。

 しかし、顔の半面を覆った髭のせいで老けてみえるが、まだそれほどの年齢ではないのだろう。せいぜい30を少し過ぎたぐらいであろうと思われた。


「では、レイナ=ルウ殿もあと2年ほどで、婚儀をせっつかれることになるわけですな。さぞかし立派な花嫁になることでしょう」


 ロイたちに探りを入れるつもりが、こちらに矛先を向けられてしまった。

 やっぱりこんな風に相手の心情を探ろうとするのは母なる森がお許しにならないのだな、とレイナ=ルウは早々にあきらめることにした。


 そうするうちに、力比べの再開が告げられる。

 ルウ家でもお馴染みの、闘技の力比べである。またもやアイ=ファが最初の狩人に選ばれて、対戦相手はスドラの家長であった。


「では、始め!」


 ランの家長の声が響くなり、スドラの家長がアイ=ファに跳びかかる。

 それと同時に、シリィ=ロウが「ひっ」と咽喉を鳴らしていた。


 アイ=ファはその突進をやりすごし、相手の背中に手をのばす。

 しかしスドラの家長は、凄まじい敏捷さでその手を回避していた。


 今度はアイ=ファが地を蹴って、相手の腹に蹴りを繰り出す。

 それをかわしたスドラの家長は、下から手の平を突き出した。

 おそらくは下顎を狙ったのであろうが、アイ=ファが素早く身をねじったので、その手は頬をかすめるに留まった。


 やはりこの両名は、狩人として卓越した力を持っているのだろう。

 ルウの血族の勇者同士が戦っているかのような迫力であった。


「お、おい、話が違うじゃねえか。押しくらっこじゃなかったのかよ?」


「押しくらっこというのはよくわかりませんが、これが闘技の力比べです。何か正しく伝わっていなかったでしょうか?」


「だって、あんな攻撃がまともに入ったら、無傷じゃいられねえだろ!?」


「アイ=ファもスドラの家長も、そこまで迂闊ではないでしょう。さっきも相手を傷つけないよう、拳ではなく手の平で叩こうとしていましたしね」


「いや、だけど……」と、ロイは口をつぐんでしまう。

 不審に思って振り返ると、ロイは戦いの場ではなくシリィ=ロウのほうを見ていた。

 そうして、シリィ=ロウはというと――ロイの腕に取りすがりつつ、小さく肩を震わせている。


「どうしました、シリィ=ロウ? ずいぶん顔色が悪いようですが……」


「い、いえ、ご心配には及びません。ただ、ちょっと……こういう荒事に慣れていないだけです」


 そんな風に答えながら、声まで震えてしまっている。

 レイナ=ルウは小首を傾げつつ、戦いの場へと視線を戻した。


 確かに、凄まじい迫力である。おたがいに優れた力を持ち、しかもそれが拮抗しているものだから、火花が散るような激戦となっているのだ。

 ドンダ=ルウとダン=ルティム、あるいはジザ=ルウとガズラン=ルティムの力比べを思い出させる様相である。血族ならぬレイナ=ルウでも血が躍り、周囲の人々も熱狂して歓声をあげている。母なる森も、心から満足してこの戦いを見守っていることだろう。


(そういえば、アスタも最初の頃は青い顔をしてたっけ。町の人間には、何か恐ろしく感じられてしまうものなのかな)


 しかしこれは、喧嘩ではない。狩人が日頃の修練の成果をぶつけあい、母なる森と同胞たちに力を示す、神聖なる力比べであるのだ。

 相手を傷つけることは禁忌とされているのだから、何を心配する必要もない。的当てや棒引きといった他の力比べと、根本の部分で変わるところはないはずだった。


「アイ=ファの勝利である! ……いや、両名ともに見事であった!」


 しばらくののち、アイ=ファの勝利で力比べは終わりを迎えた。

 怒号のような歓声が、ふたりをたたえている。レイナ=ルウも手を打ち鳴らして、アイ=ファの勝利を祝福してみせた。


 その後も粛々と勝負は続けられて、数多くの狩人たちが実力を示すことになった。

 異変が起きたのは、ちょうどひと通りの勝負が終わって、またアイ=ファに出番が回ってきた際のことである。

 アイ=ファとリッドの家長が激戦を繰り広げる中、ロイが「うわ」と声をあげたのだ。


「お、おい、大丈夫かよ? しっかりしろ、シリィ=ロウ」


 何事かと思って振り返ると、シリィ=ロウがぐんにゃりとロイにもたれかかっていた。

 ロイの胸もとに顔をうずめている格好であるが、そこから覗く横顔は蒼白となっており、まぶたは力なく閉ざされてしまっている。すべての体重を預けられているのか、ロイまで一緒にひっくり返ってしまいそうな様子であった。


「どうしたのです? 彼女は病魔でも患っているのですか?」


 ロイの身に触れることはできなかったので、レイナ=ルウはシリィ=ロウの肩をつかんで支えてやった。

 ロイは眉をひそめながら、「いや」と首を振る。


「たぶん、貧血でも起こしちまったんだろう。ったく、こうなる前に言えばいいのに、強情者は手に負えねえな。……悪いけど、こいつを背負うから手を貸してもらえるか?」


「はい、おまかせください」


 すると、アイ=ファたちの力比べに夢中になっていたボズルが、きょとんと目を向けてきた。


「おお、シリィ=ロウはどうしてしまったのです?」


「我慢の糸が切れちまったんでしょう。ちょいと休ませてきますよ」


「では、わたしも行きましょう」


「いや、3人そろって席を外すのは失礼でしょうよ。ボズルは俺たちの代表として、お役目を全うしてください」


 シリィ=ロウを背負ったロイのために、レイナ=ルウが道を作ることにした。

 そうして人垣を脱出すると、年配の女衆がすかさず駆け寄ってくる。これはたしか、バードゥ=フォウの伴侶である。


「どうしましたね、お客人? 何か、具合でも?」


「いや、このお嬢さんは荒事が苦手なんで、狩人さんらの迫力に目を回しちまったみたいなんだ。少し休めばよくなるだろうから、心配はご無用だよ」


「そりゃあ大変だ。家に案内しましょうかね」


「いや、木陰で十分だよ。ただ、水を一杯もらえるかい?」


「水だね。ちょいと待っててくださいよ」


 フォウの女衆は駆け去っていき、ロイは人垣から離れた樹木の根もとにシリィ=ロウを下ろした。

 シリィ=ロウはまぶたを閉ざしたまま、「ううん」と幼子がむずかるように声をあげる。顔色は、変わらずに蒼白であった。


「なんでしゅか……わたしはだいじょうぶでしゅ……」


「いや、大丈夫じゃねえからひっくり返ってるんだろ。いいから、じっとしておきな」


 地べたに寝かされたシリィ=ロウは、いくぶん苦しげに身をよじった。

 その姿を見て、レイナ=ルウはひとつのことに思いあたる。


「ロイ、シリィ=ロウのかたわらに座っていただけますか?」


「え? なんでだよ?」


「幼子が熱を出したときなどの対処法を思い出したのです。こちらに足をのばし、木にでももたれて楽に座ってください」


 ロイは首を傾げつつ、レイナ=ルウの言葉に従った。

 レイナ=ルウはシリィ=ロウの頭と首の裏にそっと手を差し入れて、それをロイの腿のあたりに移動させる。

 シリィ=ロウはまた「ううん」とうなりながら横を向き、ロイの脚衣をぎゅっと握りしめた。


「お、おい、これはどういう対処法なんだよ?」


「こういうときは、少し頭を高くしたほうがいいのだと聞きました。あと、親に膝枕をされると、幼子は安心するものであるのです」


「……俺がこいつの親にでも見えるってのか?」


「親ではないけれど、大事な同胞でしょう? それに町の人間は、異性の身に触れることも禁忌ではないはずです」


 ロイの隣に腰を下ろしながら、レイナ=ルウは笑ってみせた。


「シリィ=ロウが目を覚ましたとき、わたしの膝の上では、気を悪くするでしょう。わたしはそれほど、彼女に好かれていないでしょうから」


「いや、べつにこいつもお前のことを嫌っちゃいないはずだぞ」


「嫌いでなくとも、好いてはいないでしょう。彼女が多少なりとも心を許しているのは、ユーミやシーラ=ルウだと思います」


 そのとき、革の水筒を携えたフォウの女衆が戻ってきた。


「お待たせしたね。ただの水だけど、これでよかったのかい?」


「ああ、申し分ないよ。あとはこっちで何とかするから、あんたも力比べを楽しんでくれ」


「いや、大事な客人を放っておくわけにはいかないよ」


「大丈夫だって。あんたの伴侶も、まだ出番が残ってるんだろ? 何かあったらすぐに声をかけるから、それまでは気にしないでくれ」


 それでも女衆は迷っていたので、レイナ=ルウも声をあげることにした。


「わたしもしばらく、こちらで休ませていただこうと思います。あなたはどうぞ、血族の力比べを見届けてあげてください」


「……ありがとうね、レイナ=ルウ。あたしはそこの端っこにいるから、いつでもすぐに声をかけておくれよ」


 女衆はやわらかく微笑みつつ一礼し、人垣のほうに戻っていった。

 ロイはおかしな形に眉をひそめながら、またレイナ=ルウに向きなおってくる。


「お前だって、俺たちにつきあう必要はないんだぜ? この収穫祭ってのを見届けるのが、お前の役割なんだろ?」


「はい。その客人であるあなたがたの様子を見守るのも、その役割に含まれるかと思います」


 そう言って、レイナ=ルウは笑ってみせた。


「それにやっぱり、彼女のことが心配ですからね。あなたの見立てが間違っていて、何かの病魔であったら一大事ですし」


「ちぇっ。お前もけっこう口が回るんだな。勝手にしやがれってんだ」


「はい。勝手にさせていただきます」


 この場においても人々の歓声が聞こえてきているが、風がそよそよと吹きすぎており、なんとも和やかな風情である。

 ずっと大勢の人間に囲まれていたレイナ=ルウにとっても、これは心地好い休息のひとときであった。


「あなたはシリィ=ロウが倒れても、それほど慌ててはいない様子でしたね。彼女にとっては、珍しくないことなのでしょうか?」


「ああ。寝る時間を惜しんで無茶をしたときなんかは、よくこうやってひっくり返ってたよ。気は強いけど、身体はあんまり強くねえんだろ」


「なるほど。寝る間も惜しんで、料理の修練に励んでいるのですね」


「そりゃあ、ヴァルカスの弟子になろうなんて考えるやつだからな」


「それでは、あなたも同様ということですね」


「ああ。非才の身としては、寝る時間を削るぐらいしか手段がねえからな」


 それはレイナ=ルウにとって、いささか承服しかねる言い分であった。


「わたしたちは、眠る時間を削ってまで修練を重ねることはありません。身体が健やかでないと、頭や手足を満足に動かすこともできませんし、舌だって鈍ってしまうのではないでしょうか?」


「ああ。人間は疲れると、強い味を求めるようになるらしいからな。間違いなく、舌の感覚にも影響が出るんだろう」


 そこでロイは、何か遠くのものでも見やるような眼差しになりながら、くすりと笑った。


「で、俺たちのお師匠様なんかはな、ひと晩寝ないで修練に明け暮れたあげく、舌の感覚が鈍ったことまで計算に入れて、きっちり味を組み立てちまうんだよ。呆れた話だろ?」


「それは……呆れるというより、恐ろしい話ですね」


「本当にな。どれだけ力を振り絞ればあんな化け物みたいなお人に追いつけるのか、見当もつかねえよ」


 ひゅうっと強い風が吹いて、3人の髪や頬をなぶっていった。

 いつの間にか、シリィ=ロウはすうすうと寝息をたてている。

 その安らかなる寝顔を見下ろしながら、ロイはぽつりとつぶやいた。


「……俺がアスタに腕をつかまれたのは、あいつがトゥラン伯爵のお屋敷にさらわれてきたとき、俺がマヒュドラの女に瓶を投げつけようとしたからだ」


 レイナ=ルウは、きょとんとロイを見返した。

 ロイは目をそらし、皮肉っぽく笑う。


「アスタの料理が一番美味いとか言われて、俺も頭に血がのぼっちまったんだ。あいつは毒見役として、ヴァルカスやティマロなんかの料理も食ってたやつだからよ。こんな名もない若造の料理が、ヴァルカスたちより上等なわけがねえだろうって……つい我を失っちまったんだ」


「そう……ですか。どうしてわたしに、そのような話をするのです?」


「聞いてきたのは、お前のほうじゃねえか。俺はそれに答えただけだろ」


 ロイは頭上を仰ぎ見て、深々と息をついた。


「まあ……あの女は、なかなか確かな舌を持ってたってことだな。俺も薄々、アスタの力を感じ取ってたから……余計に頭にきちまったんだろうけどよ」


「ええ。アスタもヴァルカスも、わたしたちには手の届かない高みにいるのでしょうね」


 レイナ=ルウも、頭上に目を向けてみた。

 樹木の枝葉が折り重なり、わずかに木漏れ日が差している。


「そんなに力のある人間に手ほどきをしてもらえるというのは……とても幸福であると同時に、とても苦しいものですよね」


「へえ。森辺の民でも、苦しいなんて感じるのかよ? お前たちは、劣等感だの何だのとは無縁だと思ってたぜ」


「他の女衆は、感じていないのでしょう。でも、わたしは自分がアスタの域に至らないことを、とても口惜しく感じます。だから余計に、強い気持ちで修練に取り組むことができるのです」


「だったら、俺と同じだな」


「ええ、同じです」


 レイナ=ルウがロイのほうを向くと、ちょうど彼もこちらを向いたところであった。

 これといって特徴のない、町の人間の顔である。

 しかしその瞳には、あまり町では見かけないほどの、明るくて強い光が灯されていた。


「……あなたは、シリィ=ロウに思いを寄せているのですか?」


 レイナ=ルウの問いかけに、ロイはがっくりと肩を落とした。


「お前もずいぶん唐突じゃねえか。何をどんな風に考えたら、そんな突拍子もねえ言葉が飛び出てくるんだ?」


「いえ、あなたがたは強い絆で結ばれているように感じられたので、それは恋情であるのかと考えたのです」


「そりゃあ仕事仲間なんだから、絆のひとつやふたつは芽生えるだろうよ。ったく、シリィ=ロウに聞かれてたら、また大騒ぎだったぜ?」


「では、恋情ではないのですか?」


 ロイは深々と息をつきながら、頭をかき回した。


「よくわかんねえけど、あんまり考えねえようにしてるよ。正直に言って、いまは色恋にかける時間もひねり出せねえからな」


「だったら、わたしと同じです」


 レイナ=ルウは、心のままに笑ってみせた。


「ずっと前から思っていたことなのですが……わたしたちは、少し似ている部分があるのかもしれませんね」


「へえ、そいつは光栄なこった。いったいどこが似てるってんだよ」


「料理に打ち込むあまり、くよくよと思い悩んでしまうところがです。ヴァルカスに弟子入りを願う前のあなたは、とても腹立たしくて見ていられませんでした」


「そいつはどうも、お世話さま。俺をへこましてくれたのは、マイムやお前さんがただった気がするけどな」


「ええ。わたしたちは、他者と自分の腕を比べて、くよくよと思い悩まずにはいられない性分なのでしょうね。そういうところが、似ているのです」


 だけどそれは――


「だけどそれは、大きな力になるのだと思います。狩人にだって、口惜しさを糧に成長する人間はたくさんいます。わたしたちも、この難儀な性分を糧にするしかないのでしょう」


「ああ、俺の近くにもそういう人間がいた気がするな。負けず嫌いの強情者がさ」


 そう言って、ロイは自分の足もとを指さした。

 レイナ=ルウはこらえようもなく、くすくすと笑ってしまう。


 何か、とても清々しい気持ちであった。

 吹きすぎる風が、レイナ=ルウの胸の中をも清涼にしてくれたかのようである。


「ロイ、ありがとうございます」


「今度はなんだよ。お前に礼を言われる覚えはねえぞ」


「いえ。わたしはずっと、誰にも心の内を明かせずにいたのです。料理の腕でアスタにかなわないことを口惜しく思うなんて……森辺では、そんな風に考える人間など存在しないのです。わたしはどうしてこんなに浅ましい人間なんだろう、と……誰にも打ち明けられないまま、わたしはずっと思い悩んでいました」


「へえ、そいつは難儀な話だな。それが浅ましいってんなら、俺やシリィ=ロウなんざ、浅ましさの権化だぜ」


「はい。あなたたちのように優れた腕を持つ料理人でも、同じような苦しみを抱えているのだと知ることができて、わたしは……少しほっとしたのかもしれません」


 ロイは「へん」と、鼻を鳴らした。


「だからって、苦しいばかりじゃやってられねえけどな」


「はい。それでもアスタやヴァルカスに強く魅了されている、という、そういった部分まで似通っていたことが、わたしはとても嬉しかったのです」


 ロイは、なんとも複雑そうに笑いながら、言った。


「森辺の民ってのは、こっちが恥ずかしくなるぐらい正直者だよな。そういう部分は、ちっと苦手だよ」


「はい。わたしもあなたやシリィ=ロウには、いささか苦手な部分を持っています。……だけどそれ以上に、あなたたちを好ましく思えるようになったみたいです」


「だったら俺たちも、図々しくお招きされた甲斐があったよ」


 ロイは、ロイらしい顔で笑っている。

 さきほど見せた素直な表情は、やっぱりちょっとした気まぐれであったのだろう。偏屈で、皮肉屋で、時として傲岸で――そして、その内側に繊細な心を隠した、彼はそういう人間であったのだ。


 友として、もっと彼と絆を深めたい。

 レイナ=ルウは、心からそのように思うことができた。

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