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異世界料理道  作者: EDA
第三章 ルティムの祝宴
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幕間 ~予期せぬ再会~

2014.9/14 更新分 3/3

 宴までの残りの4日間は、それはもう物凄い速度で過ぎ去っていった。


 多忙であった、というのはもちろんのこと、とにかく、時間が足りなすぎたのだ。


 森辺の民は、男衆も女衆も、みんな勤勉で覚えが早かった。要領がいいとか、能力が高い、というのではなく、とにかく愚直で、真面目であったのだ。


 比較的穏やかで人あたりのいい女衆と、粗暴か寡黙かの両極端な男衆。人柄なんかはけっこう真逆なぐらいなのだが、しかし「真面目」という一点については、まったく勝り劣りは存在しなかった。


 それはきっと、「仕事」に対する姿勢、ひいては「家」に対する帰属心の強さが要因なのだろう。


 とにかく彼らは、よく働く。「家」のために。「生きる」ために。不平も文句もなく、働く。ロボットのように、という無機質的なイメージはまったくないが、日本という異世界からやってきた俺には、やっぱり野生の動物のように、まるで本能のプログラミングに従って行動しているかのようだ、という印象は拭えなかった。


 しかしそれは、嫌な印象では、まったくなかった。

 今回の行動を「仕事」としてとらえていた俺には、むしろそれは望ましい環境であり、彼らは最良のパートナーであるようにすら感じられた。


 機械のように働けばいい、とは思わない。

 仕事を果たすのに人間らしい感情など必要ない、とも思わない。


 そういうことではなく、彼らは息をするように、自然体で、しかしきちんと喜びや苦しみをも抱えこみながら、仕事というものをまっとうしているように見えたのだ。


「生きる」ということと「働く」ということが直結している、森辺に住む狩猟民族ゆえの、それは愚直さであったのだろうか。


 まあ、何でもいい。

 大事なのは、それが俺にとって心地いい空間であった、ということだ。


 俺もとにかく、がむしゃらに働いた。

 肝要であったのは「ポイタンを使った新しい鍋」の確立であったが。俺の仕事は、それだけではない。何せ相手は100人分、実家にいたときだってチャレンジしたことのないような団体様がお相手であったのだ。


 日が近づけば、どういう手順で当日に調理を進めていくかのプランを練らねばならない。

 そして、それを正確に女衆に伝えて、そのための手順や技術も教えこまなくてはならない。


 最初の試食会を終えた翌日からは、ルウの分家からも手伝いがやってきた。

 広場の周囲に建てられた7戸の家屋。その内の空き家を除く5戸に住むルウの眷族たちである。

 まあ要するに、ドンダ=ルウの弟の家族、叔父の家族、それらの息子の家族、という家柄の人々だ。

 その中には、もちろんシン=ルウの母君や姉君なんかも混ざっていた。


 ルティム、レイ、ミン、マアム、リリン、ムファ、といった6つの氏族の親家たるルウの家は、毎回こうして眷族の祝宴の準備を受け持ってあげているらしい。


 もっとも、ルウの集落の大広場を使えるのは、よっぽど絆の深い眷族に限られるという話ではあったが。ルティムの本家ともなれば、ルウの分家と同じほどに縁が古く、深い。それゆえに、今回の宴は本家も分家も総出で宴の準備に駆り出されることになったのだ。


 男衆は何であれ、ギバ狩りの仕事をおろそかにすることはできなかったが。宴の3日前ともなると、女衆のほとんどは宴の準備を最優先にしているように見受けられた。


 その中から俺の手伝いに割かれたのは、ごく一部である。

 仕事は他にも、山のようにあったのだ。


 まず、広場には簡易型のかまどがいくつも設置された。

 宴が終わったらすぐに取り壊すことが可能な、石を積み上げただけの簡単なかまどだ。

 だけどその石は女衆が引き板を使って運んできたものであり、しかもかまどは10個ばかりも新設された。それだけでほとんど半日がかりである。


 そして、かまど番の仕切り役である俺としては、その簡易型かまどの火力を確認する必要にも迫られた。

 ただ石を四方に積み上げてその上に鉄鍋を置くだけの簡単な作りであるから、それだと熱も煙も四方から逃げまくってしまう。同じだけの薪を入れても、火力は断然に下がるのだ。


 想像の範疇内ではあったが、ステーキやハンバーグは家に備えつけのかまどで調理して、完成品をふるまうしかない。となると、またどのような手順で作成していくのかを入念に計算せねばならず、自分の目の及ばない場所でも女衆がきちんと調理できるように技術を習得させねばならない。


 自分で受けた仕事とはいえ、そのあたりの苦労はもう本当に泣きたいぐらいの過酷さであった。


 そして女衆たちにしてみても、さらにそのかまどで使用する薪の確保、宴は夜半にまで及ぶので照明設備の準備、新郎と新婦が座するやぐらの建設など、さまざまな準備に追われながら、なおかつその日を生きるための仕事もこなさなくてはならないのだ。


 大変なのは、俺だけではない。

 むしろ、そんな中で俺の手伝いまでしなくてはならないのだから、やっぱり内心では面白くない、と感じていた者も多いだろう。

 通例通りのギバ鍋のごった煮や焼肉で済むのなら、食事の準備など食材の確保だけで十分なのだから。


 それでも彼女たちは、愚直に働いてくれた。

 そうして、試食でステーキやハンバーグ――というか、血抜きをして臭みのないギバ肉を賞味してもらうと、ルウ本家の人々のように驚きと喜びを爆発させ、その後はもうほとんどの女衆が嬉々として手伝ってくれるようになったのは、本当にありがたいことだった。


 毎日2、3頭は血抜きと解体に成功したギバ肉を手に入れることができたので、宴で使う分はすぐに確保することができた。その後は、5つの分家に余った肉を分配することになり、その際にも彼女たちは涙を流さんばかりに喜んでいた。


 ルウの本家でも思ったことだが、やはり男衆よりは女衆のほうが「料理」というものへの関心が高いようだった。


 まあ、それが当然なのだろう。

 この森辺において、かまど番は女衆の仕事だ。

 自分の仕事で家族により深い喜びや安息をもたらすことができるなら、それは幸福なことであるに違いない。


 それを実感できただけでも、俺はこの仕事を受けた甲斐があった。

 自分という異端者が関わることで、森辺の食文化に悪い影響を与えてしまうかもしれない――という不安や恐怖をも上回る充足感を、俺は得ることができたのである。


 俺の道と、ガズラン=ルティムの道は、たぶん重なっている。


 より深い喜びを得ることで、家族の絆が深まれば幸い――と述べた俺の、いささかならず気恥ずかしい言葉を、彼は自分の婚儀という場を使って体現しようとしているのだ、きっと。


 男衆がギバを狩り、血抜きをして、皮を剥ぎ、解体する。

 女衆が薪を集め、香草を集め、かまどの火を炊き、肉を調理する。

 どちらが欠けても、美味い料理は完成されない。

 家族が力を合わせることによって、それは初めて成し遂げられるのだ。


 そうして得られる深い喜びを、100余名の眷族で共有し、より深い絆、より強い力を得たい、とあの愚直な青年は考えたのだろう。


 その期待に応えるために、俺は全力で働いた。

 この過酷な環境で、ひとりでも多くの人に、少しでも大きな喜びを与えられるように――俺は俺の仕事をしよう、と思った。


 そんな中、ちょっとしたハプニングが生じたのは、宴の2日前――俺がルウの集落に泊まりこんでから3日目の昼下がりのことだった。



          ◇



「ア、ア、アスタ! 大変大変! ちょっとこっちに来て! 男衆が、大変なの!」


 その騒動を俺に知らせてくれたのは、リミ=ルウだった。

 その日も俺は朝からかまどの間に引きこもり、中天あたりからはハンバーグの作成法を女衆に習得させる仕事に励んでいた。


「どうしたんだよ? 男衆がどうしたって? 森には、これから向かうところだろ?」


 かまどの間には、5名の女衆が控えていた。レイナ=ルウと、ティト・ミン=ルウ、あとは分家の女衆である。


「な、な、なんか変な人が来て! 男衆とイッショクソクハツなの! ダルム兄が、刀を抜いちゃったの! とにかく、大変なんだよぅ!」


 リミ=ルウは、ほとんど泣き顔になってしまっていた。

 俺の胸にも、緊張が走る。


「変な人って何だ? まさか、スン家の男衆か?」


「違うよ! 石の都の人間だよっ!」


「……なに?」


「アイ=ファみたいに綺麗な髪の男の人! その人が、ファの家はどこだって聞いてきたみたいなの!」


 俺は、愕然と立ちすくむ。

 金褐色の髪をした、石の都の人間――それは間違いなく、カミュア=ヨシュだ。


 それ以外には、考えられない。

 しかし、何故あの男が、森辺に?


「――すみません。ちょっと行ってきます。ティト・ミン=ルウ、わかるところまででいいんで、俺の代わりに説明をしておいてもらえますか?」


「そりゃあいいけど、でもあんた――」


「行くのは危険です、アスタ!」


 と、レイナ=ルウが取りすがってきた。

 リミ=ルウ以上に、泣きそうな顔である。

 俺は少し呼吸を整えてから、その柔らかい肩をそっと引き離す。


「大丈夫だ。危険な真似はしない。心配しないで待っててくれ」


 俺は、リミ=ルウとともにかまどの間を飛び出した。

 家の横手を駆け抜けて、家の正面に建てられた巨大なやぐらを横目に、大広場にまで足を進めると――もう、その光景が視界に入った。


 広場の出口に、人だかりができている。

 森への出立の刻限であったのだ。リャダ=ルウの退陣により16名に減じたルウの男衆たちが、そこに群れをなしている。


 そして――その屈強なる男たちの隙間から、確かに見覚えのある長マントの色合いが見えていた。


「待って――待ってくださいっ!」


 走りながら、俺は叫んだ。

 しかし、振り返る者はいない。

 ただ、ひときわ高い位置にあるドンダ=ルウの頭が、ちらりと横目でこちらを見たような気がした。


「……去れ! ここは都の住人の居場所ではない!」


 やがて、聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 ルウ本家の次兄ダルム=ルウだ。

 ダルム=ルウが、蛮刀をかざして、その男と対峙していた。


 その男――

 身長だけなら、ドンダ=ルウと同じほどもあり。

 ただし、ひょろひょろの痩身で。

 金褐色の蓬髪に、淡い紫色の瞳。

 面長の顔に、無精髭。

 革のマントに、革の長靴。

 老人のような、子どものような、不思議な眼差しをした、男――


 カミュア=ヨシュが、飄然とそこに立ちつくしていた。


「……やあ。ようやく会えたね、ファの家のアスタ」


 鼻先に迫った蛮刀の切っ先を眺めつつ、そいつは相変わらずのすっとぼけた声で言った。

 ダルム=ルウがもう一歩踏み込めば、頭を割られる間合いである。

 そうであるにも関わらず、カミュア=ヨシュは長マントの前もはだけずに、飄然と微笑んでいた。


「君の家の場所を尋ねただけなのに、この有り様だよ。でも、会えて良かった。4日ぶり、かな?」


「黙れ! 話をしているのは、俺だ!」


 ダルム=ルウが、吠える。

 その瞳は炎のように燃え、野生の狼を思わせる顔も激情に引き歪んでいる。

 まるで、殺気の塊だ。


 俺は男衆の人垣を迂回して、対峙する両者を真横から見られる位置で、足を止めた。

 とたんに、リミ=ルウが左腕に取りすがってくる。

 こんなところにまで着いてきてしまったのか。

 身体を半身にして、その小さな身体を少しでも隠してやる。


「アスタ、君からも言ってくれないかなあ? 決してこちらに害意はない。俺はただ、『守護人』としての仕事の下見がてら、君たちを訪ねてきただけなんだ」


「あんたはちょっと黙っててくださいよ! 話がややこしくなりそうだから!」


 俺は相当に錯乱しながらも、ダルム=ルウ本人に声をかける愚を避け、ドンダ=ルウの巨体を振り仰いだ。


「ドンダ=ルウ! この男は、俺の顔見知りです! 4日ほど前に、宿場町に買い出しに行ったときに知り合いました! 善人か悪人かはまだわかりませんが――乱暴な人間では、ないと思います!」


「おいおい。俺みたいに善良な人間をつかまえて――」


「いいから、あんたは黙っててくれってば!」


 ドンダ=ルウは、横目で俺の姿をねめつけながら、ダルム=ルウのかたわらに進み出た。


「都の住人。貴様はさっき、この森辺の集落に仕事でやってきた、と言っていたな」


「はいはい。今度ジェノスを出立する商団を東の王国の領土まで守護する仕事があるのです。その際に、この集落を通らせていただく予定なのですよ」


 まだ普段の迫力はおし潜めているとはいえ、ドンダ=ルウを前にしてもこの調子である。


 上背は同じぐらいでも、厚みや横幅は一回りも違う。まるでヒグマとカマキリが対峙しているかのようだった。


「そんな酔狂な人間を見るのは、10年ぶりぐらいだ。で、10年前のその連中も、ギバに襲われて全員くたばっちまったそうだがな」


「ええ。飢えたギバは、旅人の食糧さえ襲うそうですからねえ。……まあ、本当にギバに襲われたかどうかは不明ですけれども」


 ドンダ=ルウの目が、細められる。

 顔つきや物腰に変化はないが、まぶたが下がったぶん眼力の密度が濃くなった気がした。


 そこで「おい馬鹿、何やってんだよ、お前ら」と、いきなり後ろから頭を小突かれる。


 振り返ると、ルド=ルウが半分がた狩人の目つきになりながら、俺たちの腕を引っ張ってきた。


「もうちょい下がれ。刀を抜いた人間にこんな近づくな。……てか、お前はほんとに何やってんだよ、ちびリミ!」


「う、うるさいやい!」


 カミュアの頬がふっと緩んだのは、そんな彼らの会話が耳に届いてしまったせいなのだろうか。

 その結果として、ダルム=ルウはいっそう凶悪な顔になり、ドンダ=ルウはいっそう目を細めた。


「……都の住人がらみの仕事は、すべて族長筋のスン家が取り仕切っているはずだ。どうして貴様はその案内もなく、こんなところをひとりでひょこひょこ歩いてやがったんだ?」


「はあ。案内の申し出はあったんですがね。いえいえただの下見ですから今日はひとりでけっこうですよと応じたら、ならば好きにしろとご快諾を頂けたのです。スン家のほうからご連絡はありませんでしたか?」


 ドンダ=ルウは一瞬だけその目に激情の火を燃やし、おそらくはこの場にいない何者かに向かって「糞が」と吐き捨てた。


「それで、ファの家に用事ってのはどういうこった。貴様らは、どういう関係だ?」


 これは、俺に向けられた言葉だ。

 決断の時である。

 あたりさわりのないエピソードを捏造するか、思い切って真実を告白するか――アイ=ファにとって正しい道は、どちらだ?


「……アスタ、君に都合のいいようにお話していいからね?」と、カミュアがぼしょぼしょ語りかけてくる。


 もちろん周りには丸聞こえである。


 もう本当にダルム=ルウに斬り殺してもらったほうが話は早いかもなコン畜生と思いながら、俺は決断した。


「……宿場町で、アイ=ファとスン家の人間がもめてしまったんです。それであやうく俺たちは衛兵に捕らわれそうになったんですが、そこをこのカミュア=ヨシュという人物に取りなしてもらうことができたんです」


 その瞬間――今度こそ、ドンダ=ルウの目に青い炎が爆裂した。

 それでも表情は動かさぬまま、「そのスン家の男の名は?」と底ごもる声で問うてくる。


「ドッド=スンと名乗っていました。そんなに背は大きくないけど体格のいい、四角い顔をした若い男です」


「ドッド=スン――本家の次兄か」


 ドンダ=ルウの獣の瞳が、俺からカミュアへと移動する。


 とたんに、カミュアはにんまり笑った。


「奥ゆかしいというか何というか、それでは説明不足じゃないかい、アスタ? それではアイ=ファとドッド=スンなる御仁のどちらに非があるのかさっぱりわからないじゃないか? ……あのですね、ドッド=スンなる御仁は昼間から酩酊しており、陰でこっそり森辺の民を誹謗していたと思われる宿場町の人間に刀を向けたのです。それを力ずくで止めたのがアイ=ファであった、というのが真相でありますよ」


「…………」


「で、その御仁はスン家の人間であるという特権を駆使して、非はアイ=ファにありと衛兵をだまくらかそうとした。そこで最初から最後まで事態を見守っていた俺が衛兵に証言をして事なきを得たと。つまりはそういうわけなのです」


「……それで、貴様はファの家に何の用事があるってんだ?」


「いや、アイ=ファもアスタも実に気持ちのいい人たちだったので、ただもう一度会って話がしてみたいなと思っただけです。……あ! アスタが身をていしてターラを救った話をするのを忘れてた! ターラも君に会いたがっていたよ、アスタ?」


 もういい。もういいから、黙っていてくれ本当に。

 何ひとつ間違ったことは言っていないのに、この男の口から語られると、何もかもが薄っぺらくなってしまう感じがする。


「……この小僧には、仕事がある。貴様のような男と話をしているひまはない」


「あ、そうなのですか。それは残念です」


「帰れ」


「そうですね。そういうことなら、今日はあきらめます。……それでまた日を改めてファの家を訪れることは許されるのでしょうかね?」


「……石の都の住人はみだりに森辺へと足を踏み入れるべからず、という約定があったはずだ」


「そうですか。ではまた何かもっともらしい仕事でもでっちあげることにしましょう」


「貴様……!」と歯を剥いたのは、ダルム=ルウである。

 こうして会話が繰り広げられている間も、彼の蛮刀はずっとカミュアの鼻先に突きつけられていたのだ。


 しかし、カミュアは涼しい顔で俺に笑いかけてくる。


「アスタ。いつになったら、君の仕事は終わるんだろうか?」


「あ、明後日を過ぎれば終わりますけど、でも――」


「では、3日後にまたお邪魔しようと思います」


 カミュアの不思議な紫色の瞳が、ドンダ=ルウを見つめやる。


「俺は、『守護人』のカミュア=ヨシュといいます。森辺の狩人よ、あなたのお名前をうかがってもよろしいですか?」


「……ルウの本家の家長、ドンダ=ルウだ」


「ルウ家。ドンダ=ルウ。ありがとうございます。あなたともいつか酒を酌み交わしてみたいものですね」


 すうっとカミュアが身を引いた。

 慌てて追いすがろうとするダルム=ルウの肩に、ドンダ=ルウの分厚い手が置かれる。


「それでは、ごきげんよう」


 そうしてカミュア=ヨシュは去っていった。

 俺のみならず、ルウ家の男たちの胸にも大きな波紋を残しながら。

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