森辺の家長会議④~魂の在処~
2018.4/5 更新分 1/1
「今まで長々と語られていたのは、町で肉を売る商売についてだ。それでは、屋台でギバの料理を売るという商売については、どのように考えているのだ?」
デイ=ラヴィッツの言葉に、アイ=ファは「ふむ?」と小首を傾げる。
「どのように、とはどういう意味であろうか? ラヴィッツの家長が何を疑問に思っているのか、くわしく聞かせてもらいたい」
「ふん。お前たちは、ギバの肉の味を知らしめるために屋台の商売を始めたと言っていたであろうが。もう1年以上もその商売を続けてきたのだから、すでに役目は果たされているのではないか?」
「ふむ。屋台の商売に関してはアスタに任せているので、アスタに答えてもらおうと思う」
アイ=ファは力強い眼差しで俺を見つめてきた。
それにうなずき返してから、俺はデイ=ラヴィッツに向きなおる。
「確かにデイ=ラヴィッツの仰る通り、この1年間で俺たちはそれなりの役目を果たせたと思います。ただ、肉を売る商売を軌道に乗せるためには、今後も屋台の商売を続けていくべきだと考えています」
「何故だ? もう町の人間には、ギバの味をぞんぶんに知らしめることができたはずであろうが?」
「ですが、ジェノスというのは交易の町で、人の出入りがとても激しいのです。屋台を訪れるお客さんの中には、いまだに『これが噂のギバ料理か』と感心する人も多いぐらいなのですよ」
「ふん。肉を買うのは、ジェノスの人間であろうが? ジェノスの外からやってくる連中など関係あるまい」
「いえ。ギバ肉を大量に買ってくれているのは、おもに宿屋のご主人たちなのです。そういった人々は、ジェノスを訪れる旅人にギバ料理をふるまうために、肉を買いつけているのですよ」
俺は帳面を繰って、その数字を確認した。
「少なくとも、宿場町で売られる肉に関しては、その8割から9割までが宿屋に買いつけられています。肉はまとめ買いでないと倍の値段になってしまうために、個人で買いつける人はそうそういないというのが現状です」
「……しかし今では、宿屋の主人とやらも自分たちでギバの料理を作っているのだろうが?」
「はい。ですが、宿場町で巧みにギバ料理を作れる人間は、まだそれほど多くはありません。口はばったいことを言うようで恐縮ですが、俺やルウ家の人々が屋台で商売をしていることが、今でも何よりの宣伝になっていると思うのですよね」
ここで屋台の商売に反対されてはたまらないので、俺は懸命に弁明することになった。
「それに、ギバ肉を個人で買いつける人が少ない以上、俺たちの屋台というのは、ジェノスに住まう人たちがギバ料理を口にできる、貴重な場なのです。ジェノスの民との交流を深める場としても、俺たちの屋台はお役に立てていると思います」
「ふん。では、どうあってもお前たちは、屋台の商売というやつを続けようという算段なわけだな。そうしてファとルウの家だけは、今後もより多くの富を得ていくことになるわけだ」
デイ=ラヴィッツは、じっとりとした目つきで俺のほうをねめつけている。
バードゥ=フォウやライエルファム=スドラは不快げに眉をひそめていたが、俺はそれほど気にならなかった。
「その代わりに、ファの家は肉を売る仕事に関わることができません。アイ=ファの捕獲したギバの肉は、自分たちの食べる分と屋台の商売で使う分ですべて使いきってしまいますからね。……というか、それでも肉はまったく足りていないので、近在の氏族から買いつけている状態にあるのですよ」
「ああ。その肉をファの家に売っていたのは、俺たちガズとラッツの血族だ。ファの家の商売も、余所の氏族の富になっているということだな」
「そうだ。そして、この先はその仕事も他の氏族と分け合えば、富が偏ることにもなるまい」
ガズとラッツの家長の声にも、挑むような響きが含まれていた。
ガズのほうは壮年で、ラッツのほうは若年であるという違いはあるものの、どちらもけっこう強面の家長たちである。俺としては、フォウの血族よりも彼らのほうが気性は荒っぽいような印象があった。
が、デイ=ラヴィッツは恐れ入った様子もなく、「ふん」と鼻を鳴らしている。
「それでも、1日に赤銅貨400枚も稼いでいるのだろうが? 眷族の多いルウ家はまだしも、わずかふたりしか家人のいないファの家では、それこそありあまる富と言えような」
「お前はどうしても、ファの家に難癖をつけたいようだな、ラヴィッツの家長よ」
と、俺のすぐそばから、底ごもる声があがった。
振り返ると、ライエルファム=スドラが中腰の体勢でデイ=ラヴィッツをねめつけている。
「現在、ファの家は休息の期間にある。だからこの半月は、ずっとガズやラッツから買いつけた肉で、屋台の商売に取り組んでいるのだ。お前にその意味がわかっているのか、ラヴィッツの家長よ」
「ふん。さっぱりわからんな」
「ああ、お前にはわからないのだろう。だから、俺が教えてやる。今のアスタは、1日でギバ1頭分の肉をつかった料理を屋台で売っているのだ。だから、毎日赤銅貨120枚をガズやラッツに支払っているということだな」
デイ=ラヴィッツは、うろんげに顔をしかめてライエルファム=スドラを見返した。
ライエルファム=スドラは、せりでた眉の下で茶色い瞳を炯々と光らせている。
「また、アスタは商売をするために、大勢の女衆に仕事を頼んでいる。その代価がどれほどのものであるかは、お前も伴侶を働かせているのだから、わきまえているはずだ。屋台の商売と、その前後に行っている下ごしらえの仕事を果たすために、アスタは赤銅貨200枚ぐらいを代価として支払っているのだ」
「…………」
「ギバの肉を買うために赤銅貨120枚、女衆を雇うのに赤銅貨200枚で、赤銅貨320枚だ。1日の稼ぎが赤銅貨400枚であれば、せいぜい赤銅貨80枚ていどの稼ぎにしかならん。それでもなお、アスタは森辺の民の行く末こそを重んじて、休息の期間でも商売を続けているのだ。……いや、アスタのみならず、それを許している家長のアイ=ファもな。それでもお前は、ファの家がその身に余る富を得ていると言い張るつもりか?」
「ふん。まるで赤銅貨80枚がちっぽけな富だとでも言わんばかりだな。わずかふたりの家人では、それでも十分以上の富であろうが?」
「ああ、もちろんそれはかけがえのない富であるだろう。しかしファの家は、それ以上の富を余所の氏族に受け渡しているのだと言っているのだ」
ふつふつと煮えたぎるような激情を漂わせつつ、それでもライエルファム=スドラは低い声で言葉を重ねていった。
「スドラの家は、その富で救われた。ファの家と縁を結んでいなければ、新たに生まれた赤子たちが健やかに育ったかどうかもわからん。それでもお前は、ファの家の行いが間違っていると言いたてるつもりか?」
「まあ待て、スドラの家長よ。今は是非を問うために必要な言葉を述べてもらっている最中だ。その途中でラヴィッツの家長の心情を問う必要はない」
ゆったりとした口調でダリ=サウティが言葉をはさむと、ライエルファム=スドラは強い眼差しをそちらにも差し向けた。
「俺もそのために必要な言葉を述べているつもりだ。確かにファとルウの家は他の氏族よりも大きな富を得ていたが、それでトトスや荷車や猟犬を買い、他の氏族に貸し与えた。ファとルウの家が誰よりも正しくあろうとしていることは、すべての氏族が知っておくべきだろう」
「ふむ。まあよかろう。それで、ラヴィッツの家長は得心がいったのかな? 他にも疑念があれば、決を取る前に述べておくがいい」
「ああ、ぞんぶんに述べさせてもらおう。俺にとっては、ここからが本題であるのだからな」
そうしてデイ=ラヴィッツは、ふてぶてしい顔でこう言った。
「たとえ町の商売が正しい行いであると認められたとしても、ファの家はその仕事から手を引くべきではないのか?」
「なに?」と、ダリ=サウティは目を見開いた。
もちろん俺も同様であり、アイ=ファは逆にすっと目を細めている。
ざわざわとどよめく家長たちを制しつつ、ダリ=サウティは言葉を重ねた。
「言っている意味がわからんな。これはファの家が発端で始まった話であるのに、どうしてファの家が手を引かねばならんのだ?」
「肉を売る商売も料理を売る商売も、すでに道筋はできているのであろう? だったらこれ以上、ファの家がそれに関わる必要はあるまい」
「だから、どうしてファの家だけが手を引かねばならんのだ? まさか、すでに十分な富を得ているから、などと言いはすまいな?」
「ああ。ファの家でも肉を準備できたときは、他の氏族と同じように町で売ればいい。しかし、屋台の商売などは、族長筋であるルウ家に任せておけばいいではないか」
「おい」と、ドンダ=ルウがひさかたぶりに声をあげた。
「だから、その理由を言えと言っているのだ。貴様の言葉はさっぱりわからねえぞ、ラヴィッツの家長」
「何故わからないのだ? そもそも異国の民であったファの家のアスタに、これほどの仕事を任せるほうがおかしいと思うのだが」
その言葉で、アイ=ファの双眸がぎらりと光った。
「ラヴィッツの家長よ、お前はまだアスタの出自などに疑念を抱いていたのか? 重要なのは血筋ではなく魂の在りようだと、かつて私はそのように伝えたはずだ」
「ああ。しかし、アスタが異国の生まれであるという事実は動かん。これほど大きな仕事を取り仕切るには、不相応な人間であろうよ」
アイ=ファはめらめらと眼光を燃やしながら、腰を浮かせかけた。
すると、ダリ=サウティが「待て」と声をあげる。
「それもひとつの意見であることに変わりはない。しかし、それならば、町で商売をすること自体に異を唱えるべきではないか? 肉を売る商売も料理を売る商売も、すべてはアスタが思いたった行いであるのだからな」
「しかし、猟犬やトトスを手にするには大きな富が必要であるのだろう? さきほど、そのように話していたではないか」
「では、アスタの行いが正しいと認められても、アスタが手を出すことを許さぬということか? それでは、筋が通るまい」
「筋とは、何に対しての筋なのだ? 俺たちの喜びのためならば、母なる森も許してくれるだろうさ」
ダリ=サウティが口を開く前に、アイ=ファが立ち上がってしまった。
「どうしてアスタをないがしろにすることが、森辺の民の喜びとなるのだ? そのようなことに喜びを見出すのは、この森辺においてお前ひとりだ!」
「ほお、たいそうな自信だな。まあ、他の氏族の連中には十分な恩を売ることができたのだろう。そのために、銅貨やトトスや荷車を配っていたのだろうからな」
「ラヴィッツの家長、お前は――!」
「しかし、俺とて森辺の同胞であるのだぞ? そして、ふたつの眷族を率いる親筋の家長だ。俺の血族は、俺の喜びを同じ喜びとして分かち合ってくれるはずだ」
そのように述べるデイ=ラヴィッツの左右で、ナハムとヴィンの家長は石のような無表情を保っていた。
きっとこの家長会議を迎える前に、意見は統一できているのだろう。原則として、子たる眷族は親筋の氏族に逆らうことはできないのだ。
そんな彼らの周囲にひしめく他の氏族の家長たちは、みんなうろんげな面持ちをしている。もともとファの家の行いに反対していたザザとベイムの血族でも、それは同様であった。
そんな人々の様子を見回してから、ダリ=サウティはアイ=ファに向きなおった。
「どうにも話がこじれてきたようだな。とりあえず俺がラヴィッツの家長と言葉を交わしてみようと思う。……アイ=ファは腰を下ろし、しばしその問答を聞いているがいい」
「しかし――!」とアイ=ファは反論しかけたが、最後にデイ=ラヴィッツの姿をにらみつけてから、荒っぽく腰を下ろした。
そんな中、悪びれた様子もないデイ=ラヴィッツの声が響く。
「屋台の商売は、ジェノスの民との交流を深める場としても役に立っている、などと言っていたな。そのような場所に、異国生まれの人間がまざっていることも、決して正しい行いとは思えん。森辺の民が西の民と正しい絆を深めるべきだというのなら、それは自分たちの手で為すべきであろうよ」
「しかし、最初にその場を作ったのは、他ならぬアスタであるのだぞ?」
「そうだからといって、アスタをずっとその場所に居座らせる理由にはなるまい。道が間違っていたならば、正しい道に戻るべきであろうが?」
「それが間違いであるならば、商売そのものを取りやめるべきではないか?」
「皆がそれを間違った行いであると考えるなら、取りやめればいい。俺はただ、その商売からファの家を外すべきだと言いたてているだけだ」
デイ=ラヴィッツの言葉はのらりくらりとしていて、あまりに取りとめがなかった。さしものダリ=サウティも、「ううむ」と考え込んでしまっている。
「やっぱりよくわからんな。アスタの行いが正しいと認められるなら、アスタを外す理由はないように思える。それでは、アスタの苦労がまったく報われないではないか?」
「アスタが自分を森辺の民だと言い張るのなら、十分に報われているだろうさ。自分の行いによって同胞が幸福になるならば、それにまさる喜びはあるまい」
「しかしそれでは、大役を果たしたアスタをないがしろにすることになる。それでは、俺たちが自分の生を誇ることができまい」
「ふん。アスタが納得して身を引いてくれれば、誰の心も痛まないだろうさ」
ダリ=サウティは溜息をつきながら、俺のほうに向きなおってきた。
「ラヴィッツの家長は、このように述べている。アスタも、率直な意見を聞かせてほしい」
「ええ? 俺はもちろん、この先も屋台の商売に関わっていきたいと考えていますけれど……」
アイ=ファが、火のような目つきで俺を見据えてきた。
もっとしっかり反論せよ、ということなのだろう。もちろん、俺もここで引く気はさらさらなかった。
「デイ=ラヴィッツの言い分は、俺にもわからなくはありません。俺としても、当初は自分ぬきでも商売ができるようにという思いで、ルウ家の人たちに手ほどきをしていたのです。肉を売る商売に関しても、いずれはフォウとダイの人だけでもこなせるように、という思いで取り組んでいました」
「ふん。ならば、話はおしまいだな」
「いえ。それはあくまで、俺が不慮の事態で生命を落としてしまっても、きちんと商売を続けられるように、という考えにもとづいてのことです。そうでなかったら、俺は俺にできる限りの力を尽くしたいと考えています」
デイ=ラヴィッツだけではなく、すべての家長に聞いてもらうために、俺は声を張り上げた。
「確かに俺は、異国の生まれです。異国の、町で生まれ育った人間です。だから、町で商売をしようだとか、美味しい料理を作りたいだとか、そんな風に考えることができたんです。そして俺は、俺みたいに胡散臭い人間を受け入れてくれた森辺の民に、深く感謝しています。だから、少しでも森辺の民の役に立ちたいと考えたんです」
「…………」
「今でもその気持ちに変わりはありません。俺はあくまで森辺の民として、森辺の同胞のために、町の人たちとの架け橋になりたいんです。俺のしてきたことが間違いであったなら、それは身を引くしかないのでしょうが……もしも正しいと認めてもらえるなら、この先も森辺の民のひとりとして仕事を果たさせていただきたいと考えています」
「うむ! 何をどう考えても、アスタのほうが真っ当なことを言っているようだな! すでに家長ならぬ身だが、俺はそう思うぞ!」
しばらく大人しくしていたダン=ルティムが、そこで豪快な笑い声とともに発言した。
そのすぐ近くにいたギラン=リリンも、「そうだな」と賛同する。
「どうにもラヴィッツの家長は、ファの家にことさら厳しい目を向けているように思える。だから、話に筋が通らないのだ。ラヴィッツの家長は、ファの家を嫌う特別な理由でもあるのか?」
「……ファの家を嫌って、おかしなことがあるか?」
「どうであろうな。理由があるなら、ぜひとも聞かせてもらいたいところだ」
デイ=ラヴィッツは、不機嫌そうに「ふん」と鼻を鳴らした。
「女衆が狩人として生きることも、男衆がかまど番として生きることも、俺は気に入らん。ましてや異国の民を同胞として迎えることなど、もっての外だ」
すると、退屈そうに身体をゆすっていたラウ=レイが「ふむ?」と首を傾げた。
「しかし、ドムの家は女衆に狩人となることを許したし、ルウの家は異国人のシュミラルを眷族の家人となることを許した。それが気に食わんのなら、どうしてさきほど声をあげなかったのだ? 森辺の習わしを重んじようというならば、相手が族長筋でも小さき氏族でも変わりはないはずだ」
「…………」
「まさか、ドンダ=ルウやディック=ドムに恐れをなしたわけではあるまいな? それではあまりに惰弱に過ぎようというものだ」
「ふざけるな。俺はただ……ファの家の有り様が気に食わんだけだ」
「だから、それは何故なのかと問うている」
なんとなく違和感を感じてラウ=レイのほうを振り返ると、その水色の瞳には思いも寄らぬほど強い光がたたえられていた。獲物を狙う猟犬のごとき眼光である。
そして、そのような目つきをしているのは、ラウ=レイばかりではなかった。ライエルファム=スドラや、バードゥ=フォウや、ランの家長、それにガズやラッツの家長なども、デイ=ラヴィッツの姿を探るように鋭くねめつけていたのだった。
「ラヴィッツの家長よ。お前が森辺の行く末を案じて、ファの家の行いに異を唱えているのなら、それはそれでかまわない。そういった疑念を解消するためにこそ、俺たちは言葉を交わしているのだからな」
そのように述べたのは、バードゥ=フォウであった。
「しかし、お前が何か自分の都合に左右されて、ファの家を敵と見なしているのなら、それは別の話として語り合うべきだろう。ファの家の有り様が気に食わないからといって、その行いを否定しようとするのは、とうてい正しいとは思えん」
「ふん。だから俺も、その行いのすべてを否定しているわけではないと言っただろうが」
「では、どうしてそのように憎まれ口を叩いているのだ? お前には、何かファの家を憎む理由でもあるのか?」
「……ファの家とはもう何十年も関わりを持っていなかったのだから、ことさら憎む理由などあるはずもない」
そのように述べてから、デイ=ラヴィッツは深々と溜息をついた。
「ただ……かつてファの家は、ラヴィッツの眷族であったのだ。だったら、このような騒ぎを不快に思うのも当然のことであろうが?」
「なに?」と、バードゥ=フォウは目を剥くことになった。
他の家長たちも、いっせいにどよめき始めている。
もちろん俺もびっくりまなこでアイ=ファを振り返ることになったが、愛しき家長は最前までの張り詰めた表情を消して、きょとんとしているばかりであった。
「ファの家が、ラヴィッツの眷族だと? そのような話は、聞いたこともないぞ。だいたい、ファとラヴィッツでは家が遠すぎるであろうが?」
「ファの家がラヴィッツの眷族であったのは、俺の祖父の代までだ。その頃に、ファの家は血の縁を絶たれて、俺たちから姿の見えぬ場所にまで家を移したのだと聞いている」
デイ=ラヴィッツは立てた膝の上に頬杖をついて、またひとつ嘆息した。
「もちろんすでに血の縁は絶たれているのだから、ファの家がどのような騒ぎを起こそうとも、ラヴィッツの家には関わりのないことだ。しかし、かつての眷族がこのような騒ぎを起こして、森辺の平穏を大きく揺るがせば、居たたまれなくなるのも当然ではないか?」
「お、お前の祖父の代というと……それはモルガの森辺に移り住んで、まだ間もない時代なのだろうな。長老モガは、そのような話を記憶に留めているか?」
ダリ=サウティに呼びかけられると、サウティの長老モガ=サウティは「さてな……」と柔和な笑みを浮かべた。
「儂は分家の家長であったので、そこまでたびたび家長会議に加わっていたわけではない。しかし……言われてみると、ラヴィッツが眷族と血の縁を絶ったという話は、耳にした覚えがあるような気もするな」
「ふうむ。そうなのか。ラヴィッツの家では、よくもそのような時代のことが伝わっていたものだ」
「ふん。ファの家には決して関わるなと、祖父から父に、父から俺にと伝えられることになったのだ。そのような時代から、ファの人間は厄介者の集まりであったのだろうよ」
デイ=ラヴィッツの目が、不機嫌そうに俺とアイ=ファを横目でにらみつけていた。
「そんな厄介者の集まりだから、家を移した後も血の縁を広げることができず、滅びに瀕することになったのだろう。それがまさか、最後の最後でこのような騒ぎを起こそうとはな」
「これが最後とは限るまい! アイ=ファとアスタの間で子が生されれば、ファの氏も絶えずに済むのだからな!」
豪快な笑い声とともに、ダン=ルティムがそのように言い放つ。
思わぬ奇襲攻撃をくらい、俺とアイ=ファはひそかに顔を赤らめることになった。
「ともあれ、そのように古い話にお前さんが引きずられる必要はあるまい! むしろお前さんは、かつての眷族がこれほどのことを成し遂げたのだから、それを誇りに思うべきであろうよ!」
「何を誇りに思えるものか。これをきっかけに森辺の民が滅んでしまっても、俺は驚く気にはなれん」
「ふふん。どうして森辺の民が滅んだりするものか。アスタが森辺に現れて以来、愉快なことしか起きていないではないか!」
そう言って、ダン=ルティムはまたガハハと笑った。
「俺たちは、美味い食事を口にするという楽しみと、それに必要な銅貨を稼ぐ手段を知った! ついでに猟犬やトトスという便利なものまで手に入れて、これまで以上に大きな力を得たのだ! これは、黒き森に住まっていた時代のように、外界との縁を絶っていたならば、決して得られなかった力であろう?」
「はい。そして、外界への扉を開いてくれたのは、他ならぬファの家です。私はアイ=ファやアスタと友になれたことを、心から誇らしく思っています」
豪快に笑う父親のかたわらで、ガズラン=ルティムもそのように発言した。
「アイ=ファとアスタがいなければ、私たちはいまだに西の民と手をたずさえることもかなわなかったことでしょう。それどころか、スンとルウの間に戦が起きて、ともに滅んでいたかもしれません。アイ=ファがアスタを家人として迎え入れたからこそ、森辺の民は新たな道を切り開くことができたのだと思います」
「ふん。その道が滅びに向かっていないと、誰にわかるのだ?」
「そのようなことは、誰にもわかりません。ただ私たちは、正しいと信ずることのできる道を探して、進むのみです。……そして私は、この道が正しいのだと信ずることができています」
ガズラン=ルティムは穏やかに微笑みながら、そのように言葉を重ねていった。
「ラヴィッツの家長、あなたも自分の心で、ファの家の行いを判じてください。祖父の代から受け継がれてきた反感をねじふせるというのは、とても難しいことなのでしょうが……ラヴィッツとファの間に不和がもたらされたのは、もう数十年も昔の話です。今を生きるあなたが、今を生きるアイ=ファとアスタを見て、信ずるに値する人間であるかを見極めなければならないのでしょう。私は、そのように思います」
「……たかが数回顔をあわせたぐらいで、そのようなことを見極められるものか」
そのように述べるなり、デイ=ラヴィッツはのそりと立ち上がった。
そして、光の強い目で周囲の家長たちを見回していく。
「俺にはどうしても、得心がいかないのだ。この1年で森辺に騒動が起きるとき、その中心にはいつもファの家のアスタが存在しているように感じられてしまう。スンの家が滅んだときも、貴族の罪を暴いたときも、町の人間と絆を結ぶときも、すべてにおいてだ。森辺の民が正しく生きるために、ここまで異国生まれの人間を頼るということが、本当に正しい行いなのだろうか?」
「それは……さきほどアイ=ファが言っていた通り、血筋ではなく魂の在りように重きを置くべきではないだろうか?」
反感の色を消した静かな面持ちで、バードゥ=フォウがそのように答えた。
デイ=ラヴィッツは、険しい面持ちでそちらを振り返る。
「アスタとは本当に、森辺の同胞に相応しい魂を有しているのか? アスタのことを家人として迎えたファの家長の行いは、本当に正しかったのか? 俺は伴侶をアスタのもとで働かせていたが、その言葉だけでは確信することはできなかった。……フォウの家長よ、お前の家はもっともファの近在にあったはずだな?」
「ああ。俺はアスタが森辺の同胞に相応しい人間だと信じている」
「ならば、ドンダ=ルウはどうだ? ルウの家は、フォウの家よりも古くからアスタと絆を深めていたのであろう?」
「……ファの家のアスタが森辺の同胞に相応しい人間でなければ、俺の血族たちが絆を深めることを許したりはしなかった」
重々しい声音で、ドンダ=ルウはそう言ってくれた。
「ならば、ガズとラッツの家長らはどうだ? お前たちは、それほどアスタ自身と言葉を交わしていたわけではあるまい? それでも、アスタを信ずることができるのか?」
「できる。ファの家の行いに関しては、もう何ヶ月にも渡って女衆から話を聞いていたからな」
「ああ。正直に言って、アスタが異国の生まれであることなどは、ここ最近では頭になかったほどだ」
すると、少し離れた場所に座していたダイの家長も声をあげた。
「ファの家の行いに賛同する氏族の中で、もっとも縁が薄かったのはダイの家でありましょう。わたしはファの家のアスタともアイ=ファともほとんど言葉を交わしたことのない身でありますが……その行いをもって、ファの家は正しいのだと信じておりました」
デイ=ラヴィッツは、無言で唇を噛みしめる。
すると、普段の沈着さを取り戻したライエルファム=スドラが「ラヴィッツの家長よ」と静かに呼びかけた。
「俺も去年の家長会議では、ダイの家長と同じ心情だった。そして、それから1年をかけて、ファの家と絆を深めてきた。もしもそれでアスタが森辺の同胞に相応しからぬ人間であったと感じていたならば……おそらく、絶望に打ちひしがれていたことだろう。豊かな生を手に入れるという希望を、自ら手放すことになっていたのだろうからな」
「…………」
「しかし、そのように不幸な事態には至らなかった。だからこそ、俺は……アスタの生命を脅かすスン家の大罪人を、この手で斬り捨てたのだ」
祭祀堂の内部は、水を打ったように静まりかえっていた。
そんな中、ライエルファム=スドラの声だけが低く響きわたる。
「たとえ大罪人であろうとも、かつては森辺の同胞であった男を、俺は殺めた。アスタもまた森辺の同胞であるのだと信じていない限り、そのような真似ができるわけもない。俺はそのような思いで、アスタを信じ……そして、報われたのだ。ガズラン=ルティムと同じように、俺はアスタやアイ=ファと友になれたことを、心から母なる森に感謝している」
「…………」
「俺と同じぐらいファの家と親しくしていた人間は、みんな同じ思いであるはずだ。そして、これまでファの家と縁の薄かったお前やダイの家長などは、これから時間をかけて、より深い絆を――」
「もういい」と、デイ=ラヴィッツがぶっきらぼうにライエルファム=スドラの言葉をさえぎった。
そして、ひょっとこのように額を皺だらけにしながら、もといた場所に腰を下ろす。
「これ以上の問答は不要だ。さっさと会議を進めるがいい」
「うむ? ラディッツの家長は、得心がいったのか?」
ダリ=サウティが問うと、デイ=ラヴィッツは「ふん」と鼻を鳴らした。
「俺がこの場でこれ以上言葉を重ねても意味はあるまい。……ファの人間は屋台の商売から手を引くべきであるというさきほどの言葉は、いったん取り消させてもらう」
「そうか」と、ダリ=サウティは微笑した。
「どのみちそれは、ファの家の行いが正しいと認められて、商売を続けていくと断じられてからの話だ。まずはそちらから、決を取るべきだろう」
そう言って、ダリ=サウティは家長らを見回した。
「他に不明な点がなければ、ここでいったん決を取りたいと思うが……誰も異存はないだろうか?」
声をあげる人間はいなかった。
慌てふためいたのは、俺である。デイ=ラヴィッツからの思わぬ告白や、ライエルファム=スドラたちの言葉によって、気持ちも考えもとっちらかったままであったのだ。
「あ、あの、もう決を取ってしまうのですか? 俺はまだまだ自分の気持ちや考えを語り尽くしていないように思うのですが……」
「ふむ? これで意見が割れたときは、またぞんぶんに語ってもらうつもりでいるぞ。その前に、それぞれの氏族の考えを一度明らかにしておくべきだと思うのだ」
そう言って、ダリ=サウティはゆったりと笑った。
「心配せずとも、すべての氏族の気持ちがひとつとなるまで、会議を終えるつもりはない。今日一日で話が終わらなければ、また別の日に集まってもらうまでだ」
「そ、そうですか……承知しました。余計な口をはさんでしまって申し訳ありません」
「うむ」とうなずいてから、ダリ=サウティは姿勢を正した。
「それでは、決を取る。ジェノスの町で商売をして、これまで以上の富を得ようというファの家の行いは、森辺の民にとって毒であるか薬であるか……ファの家の行いに異を唱える家長があれば、立ち上がり、その理由を申し述べてもらいたい」
俺はなんだか、居ても立ってもいられないような心地であった。
胃袋がきゅっと縮みあがり、寒くもないのに震えそうになってしまう。
すると――膝の上にのせた俺の手に、アイ=ファの手が重ねられてきた。
その温もりが、固く強ばった俺の心を優しく解きほぐしていく。
俺たちの周囲で、腰を上げる人間はいなかった。
まあ、すぐそばにいるのはフォウの血族の人々であるし、その向こう側に陣取っているのはルウの血族の人々であるのだから、それも当然だ。
では、それよりも遠くに座している人々はどうなのか。俺が覚悟を固めて、そちらを振り返ろうとしたとき――「そうか」というダリ=サウティの声が聞こえた。
「さしあたって、ファの家の行いに反対する者はいない。……それでいいのだな、家長たちよ」
俺はいっそう心臓をどきつかせながら、ようよう祭祀堂の内部を見回した。
すべての人間が、敷物の上に座したままである。
満足そうに微笑んでいたり、まったくの無表情であったり、不機嫌そうな仏頂面であったりと、表情は人それぞれであったものの、誰ひとり立ち上がろうとはしなかったのだ。
俺は脱力し、その場にへなへなと崩れ落ちそうになってしまった。
その腕を、アイ=ファが力強い指先でぐっと支えてくる。
「気を抜くな。まだ話が終わったわけではないのだぞ」
「ああ、うん、わかってる。……ただ、ちょっぴり驚かされただけだよ」
俺は何とか気力を振り絞り、ぴしっと背筋をのばしてみせた。
そこに、ダリ=サウティの声が響きわたる。
「……では、グラフ=ザザもファの家の行いに賛同した、と見なしていいのだな?」
俺がハッとして視線を巡らせると、グラフ=ザザはどっしりと座したまま、「ふん」と下顎をさすっていた。
「ありあまる富が森辺の民にもたらすのは、堕落か繁栄か……現時点で、それを判ずることはできないと、俺は考えている。また、いまだに森辺の民はありあまる富を得たわけではないというアイ=ファとガズラン=ルティムの言葉にも、いちおうは賛同しておく」
「なるほど。ありあまる富を手にして、堕落するような人間が現れたときは、改めて是非を問う、ということか。ならば、俺も同じ心情だ」
そのように述べながら、ダリ=サウティは家長たちのほうに視線を巡らせた。
「では、かつてファの家の行いに反対していた氏族にも話を聞かせてもらいたい。まずは――スンの家長は、どのような考えであるのだ?」
「うむ。ファの家の行いに異を唱えていたのは、先代家長のズーロ=スンだ。俺も俺の血族たちも、ファの家の行いに異を唱えようとは思わない」
新たな本家の家長と定められたその人物は、決然とした表情でそう言った。
1年前には腐った魚のような瞳をしていた、分家の家長である。その表情に、迷いや躊躇いの色はなかった。
「それでは、ベイムの家長はどうであるのかな。ベイムの家長は、ファの家の行いに反対していた氏族の代表として、族長の集まりに加わっていたはずだ」
「……最初に言っておくが、俺はありあまる富が森辺の民を堕落させると思って、ファの家の行いに反対していたわけではない。俺はむしろ、町の人間と絆を深めるという行いに疑問を抱いていたのだ」
「ああ……ベイムの家は、かつて血族を町の人間に害されたのだったな」
「ああ。血族のひとりは町の無法者に害され、その復讐をした血族は大罪人として処断されることになった。俺たちほど町の人間を恨んでいる人間は、森辺でも他になかったことだろう」
ベイムの家長は、ぶすっとした顔でそう述べたてた。
「しかし、俺たちは西方神の子として西の民と絆を深めねばならぬのだろう? それが決された時点で、俺たちが宿場町での商売に反対をする理由はなくなった。ただそれだけのことだ」
「なるほどな。では、ラヴィッツの家長は――」
「俺は別に、何から何まで賛同したわけではないぞ。しかし、猟犬やトトスを引き合いに出されては、うかうかと反対の声をあげるわけにもいかなくなってしまうではないか。……まったく、小賢しい真似をする連中だ」
「小賢しいと言っても、ファやルウの家が猟犬やトトスを森辺に持ち込んだわけではないのだぞ? それらはすべて、思いもよらぬ道筋から、森辺にもたらされたのだからな」
わずかに苦笑を浮かべつつ、ダリ=サウティはうなずいた。
「では、すべての氏族がファの家の行いに賛同したと見なした上で、話を進めさせてもらおう。今後、俺たちはどのような形でジェノスでの商売を続けていくべきか――」
すると、アイ=ファが「待たれよ」と声をあげた。
「森辺に豊かさをもたらしたいという私たちの言葉が正しいと認めてもらえたことは、非常に嬉しく思う。……ただ、美味なる料理に関しては、どうなのであろうか?」
「うむ? 美味なる料理が、どうしたと?」
「私とアスタは、美味なる料理というものも、森辺の民にこれまで以上の力と喜びを与える存在だと言いたてていたのだ。今ではすべての氏族が血抜きの技を習得し、ポイタンを焼きあげる方法を知った状態になったはずだが……これも正しき行いであると認めてもらうことはかなったのだろうか?」
ダリ=サウティは、不思議そうに目を丸くしていた。
「まさか今さらそのようなことを問われるとは思っていなかったな。美味なる料理というものに手間をかけることは、森辺の民にとって害となる――そのように考える家長はいるか? いれば、腰を上げてもらいたい」
立ち上がる人間は、いなかった。
アイ=ファは「そうか」と息をつく。
「それならば、いいのだ。余計な手間を取らせてしまったな」
「いや、アイ=ファの立場であれば、そこに懸念を覚えるのも当然の話なのだろう。そこまで思いを巡らせることができず、申し訳なかった。……ただ、今さら美味なる料理に文句をつける人間はいないだろうと、俺も頭から思い込んでいたのでな」
大らかに笑いながら、ダリ=サウティは俺を振り返ってきた。
「俺たちは、アスタのおかげで美味なる食事の存在を知ることができた。すべての氏族、すべての同胞が、アスタに感謝していることだろう。あらためて、礼を言わせてもらいたい」
「いえ、俺は――」と言いかけて、俺は咽喉を詰まらせてしまった。
思いも寄らぬ激情が、胸の奥底からせりあがってくる。俺は、口からこぼれそうになる嗚咽を呑みくだすために、必死に奥歯を噛みしめることになった。
ガズラン=ルティムや、ライエルファム=スドラや、ダン=ルティムや、バードゥ=フォウや、ドンダ=ルウや――これまでみんなが語ってくれていた言葉が、ぐるぐると頭の中を巡っている。その言葉のひとつひとつが、あらためて俺の心にしみいってきたかのようだった。
「どうしたのだ、アスタ」と、アイ=ファが顔を寄せてくる。
その綺麗な細面が、ふいにぼやけた。
嗚咽を呑みくだすことはできても、涙を止めることはできなかったのだ。
俺はどうしても、感情を抑制することがかなわなかった。
この1年の行いは、決して間違ったものではなかったと、すべての氏族の家長たちに認めてもらうことができたのだ。それを実感できた瞬間に、俺はとてつもない勢いで情動を揺さぶられてしまったのだった。
「何だ、何を泣いているのだ?」
「ダリ=サウティの言葉を聞いたであろう? 誰もアスタの行いを害だなどとは思っておらんのだぞ」
と、バードゥ=フォウやライエルファム=スドラまでもが、心配げに顔を寄せてくる。
しかし、そんなことをされてしまうと、俺はますます感情の抑制がきかなくなってしまった。
1年前――ルウの血族の他にはひとりの仲間もなかったファの家の言葉に、真っ先に賛同してくれたのは、このバードゥ=フォウであったのだった。
そして、そんなバードゥ=フォウたちにディガが脅しの言葉を吐いた後、それをはねのけるようにして賛同の意を示してくれたのが、ライエルファム=スドラであったのだ。
あの頃は、ふたりの顔も名前も知らない、初対面の間柄であった。
そんなふたりが、アイ=ファと一緒になって俺の心中を思いやってくれている。
いや、きっと、その後ろではさらに多くの人たちが、こちらの様子を気にかけてくれているのだろう。
ドンダ=ルウも、ダン=ルティムも、ガズラン=ルティムも、ラウ=レイも、ギラン=リリンも――俺がまだ名前を覚えきれていない、たくさんの人々も――もしかしたら、ダルム=ルウやグラフ=ザザやディック=ドムまでもが、いったい何事かと眉をひそめているかもしれない。
この1年で、俺はそれだけの人々と縁を結ぶことができたのだ。
それを思うだけで、俺はなかなか涙を止めることができなかった。