大いなる変革①~待望の日~
2017.1/1 更新分 1/1
・新年あけましておめでとうございます。今回の更新は全6回となります。
金の月の16日。
ラヴィッツ家における手ほどきの仕事を終えた後、休業日を一日はさんで、俺たちはまた宿場町の商売に取り組んでいた。
休息の期間に入ってからは、14日目のことである。
この世界でもひと月はだいたい30日ほどであるので、明日でおよそ半月が経過することになる。
よって、狩人たちの血抜きの手ほどきは、明日をもって終了する予定になっていた。
もっとも、休息の期間が半月というのはあくまで目安であり、ただちに狩人としての仕事が本格的に再開されるわけではない。荒らされに荒らされた森の恵みが半月ほどで回復することはないので、まだまだしばらくギバが押し寄せてくることはないのだ。
しかし、恵みが実らなくても、ときおりはギバが迷い込んでくることはある。そういった気まぐれなギバに実りかけの恵みをまた食い尽くされてしまわないように、罠を仕掛けたり森を巡回する必要が出てくるのだった。
これから半月か20日ぐらいはそういう時期が続くので、狩人たちの生活にもまだゆとりがある。その期間こそ、身体を休めながらぞんぶんに家族たちとの時間を大事にしてほしいと願ってやまない俺であった。
いっぽうかまど番のほうは、今日からスン家への手ほどきが始まることになる。
こちらは休息の期間などを気にすることなく継続することができるので、5日から7日ぐらいを目処に仕事を完了させるつもりでいた。
だけどその前に、まずは宿場町での商売だ。
本日からは、ラヴィッツの家長の嫁たるリリ=ラヴィッツが仕事を手伝ってくれることになっていた。
あのファの家を嫌ってやまないデイ=ラヴィッツも、ナハムやヴィンの家長たちとの協議の末、女衆を貸し出すことを了承してくれたのだ。
俺にしてみれば、ありがたいこと、この上ない話であった。
ただ意外であったのは、その手伝いに選ばれたのが、ラヴィッツの女衆の束ね役であるはずのリリ=ラヴィッツであるということであった。
「至らぬ点も多々ありましょうが、どうぞよろしくお願いいたします」
約束の刻限にファの家までやってきたリリ=ラヴィッツは、そのように述べながら頭を下げていた。
とても小柄で、ちょっぴりふくよかで、お地蔵様のような風貌をした壮年の女衆である。年齢は、40に届くか届かないかぐらいであろう。
このように年配の女衆を商売の手伝いに迎えるのは、実は初めてのことであった。
ファの家における下ごしらえの仕事の際は、老若問わずさまざまな立場の女衆が集まるが、こと宿場町に下りるという仕事に当たっては、どの家も申し合わせたように若い娘を選出していたのである。
リィ=スドラとアマ・ミン=ルティムが退いてしまったために、現時点では全員が未婚の女衆となっている。一番の年長者はおそらく21歳のヤミル=レイであり、それに続くのは19歳のフェイ=ベイムであったかもしれない。それぐらい、平均年齢は低かったのだ。
年配の女衆には、家の仕事を取り仕切るという大事な役割がある。
また、若い女衆のほうが思考が柔軟で、町の人間に対する偏見や忌避感が少ないという面がある。
それらのふたつの理由から、どの家も若い女衆を選ぶことになったのだろう。
そんな中に突如として現れた、リリ=ラヴィッツなのだった。
「……だけど、とりたてて問題はないようですね」
仕事の合間にそのように囁きかけてきたのは、フェイ=ベイムであった。
確かにリリ=ラヴィッツは、仕事の手際にも不備はなかったし、働き者であった。そしてその風貌も、ぱっと見には柔和であり礼儀正しくもあったので、客商売をするには非常に適しているように感じられた。背が小さいので、リミ=ルウやツヴァイのように足場を準備しなくてはならなかったが、そんなものもご愛嬌であった。
現在はもちろん銅貨のやりとりをしてもらったり、あとはせいぜいふかした『ギバまん』を渡してもらったり、というぐらいの仕事しかまかせてはいないが、なかなか堂にいっているように見えてしまう。特に年配の女性や幼い子供のお客さんなんかは、リリ=ラヴィッツの柔和な表情に触発されてか、笑顔でやりとりをしている人が多いように見受けられた。
そんなリリ=ラヴィッツの姿を横目で見やりながら、フェイ=ベイムはまたこそこそと囁きかけてくる。
「問題があるどころか、以前の自分がどれほど不手際で役立たずであったかを思い知らされるような心地です。わたしなど、最初の数日はひどい有り様でしたものね」
「そんなことはありませんってば。でも本当に、リリ=ラヴィッツは手際がいいですね」
これならば、数日ていどの研修で即戦力たりえそうであった。
あとはじっくりと、料理の盛りつけや簡単な調理などを覚えてもらえれば完璧だ。
「……それで他の女衆と変わらぬぐらい働けるようになったら、他の誰かをひとり削ることになるのよね?」
と、隣の屋台からヤミル=レイも声をかけてくる。
「そうですよ」と俺は答えてみせた。
現状では、ベイム、ダゴラ、ガズ、ラッツから、毎日3名ずつの女衆を借りている。そこにラヴィッツも組み込まれれば、4交代から5交代のローテーションに変更されるわけだ。
「いっそのこと、わたしを外してしまったらいいのじゃない? そうしたら、他の女衆はこれまで以上に働くことができるでしょう?」
「いえ、ヤミル=レイに関しては、ラウ=レイから是非にと言われて協力してもらっているわけですし――それにやっぱり、ヤミル=レイがいると心強いのですよね。特に復活祭を迎えてからは、ずっとひとつの屋台の責任者を受け持ってもらっていましたから」
「…………」
「ヤミル=レイは、俺のほうではなくルウ家のほうの屋台で働きたいですか?」
「別に、そういうわけではないけれど」
アイ=ファであれば唇のひとつでもとがらせそうな場面であるが、もちろんヤミル=レイは普段通りのクールな面持ちで肩をすくめるばかりであった。
「それに、毎日7名のかまど番を小さき氏族から出すことになると、毎日ファの家から2台の荷車を出すことにもなってしまうのですよ。やっぱりこれぐらい大荷物だと、運転者をあわせて6名が限界のようなので」
「…………」
「まあ、そういう業務的なことを抜きにしても、俺はヤミル=レイと一緒に働きたいと願っています」
「わかったってば。他の女衆に不満がなければ、それでいいわよ」
きっとヤミル=レイは、自分だけがルウの眷族であることに引け目を感じてしまっているのだろう。
それでもやっぱり、俺は今の編成――手練の4名が固定で、それを手伝う3名が交代制、という編成がベストであると考えていた。
現在は青空食堂のほうがメインになっているユン=スドラならば、ヤミル=レイの代わりをつとめることもできるだろう。しかし逆に言うと、トゥール=ディンやヤミル=レイは、あまり青空食堂の仕事に適性がない。その代わりに、屋台をまるまる任せられるスキルが身についている。それに俺を加えた4名がしっかり土台を支えているからこそ、残りのメンバーがどのように入れ替わっても過不足なく店を回すことができているように思うのだ。
(本当は、休息の期間にフォウやランの人たちにこっちの商売を体験してほしかったんだけどな。そいつは次の機会までお預けだ)
なおかつ、ガズやラッツのほうでも眷族の女衆を働かせてみたい、という声があがっているらしい。そうした要望に応えるためにも、やはり固定メンバーのほうはむやみに人員を動かすべきではないと思われた。俺としても、ひとりでも多くの人たちに町の人々との交流を体感してほしいと願っているのである。
そのように考えながら、俺が仕事に励んでいると、数日ぶりに貴族のトトス車が屋台に近づいてきた。
またポルアースかな、と思ったが、そこから登場したのは彼の侍女であった。
「アスタ様、おひさしぶりです」
「おひさしぶりです、シェイラ。今日はヤンのお手伝いではなかったのですね。……それに、ポルアースはご一緒じゃないんですか?」
「はい。ポルアース様は城下町で外せぬお仕事があったため、わたしだけが遣わされました」
そのように述べてから、彼女は深々と頭を下げてきた。
「あの、先日はわたしの言葉が足りなかったばかりに、大変なご迷惑をおかけしてしまいました……」
「はい? ああ、舞踏会の一件ですか。いやあ、あれは不幸な行き違いですよ」
「でも、アイ=ファ様もさぞかしご立腹なのではないでしょうか……?」
シェイラは、ものすごく心配そうな顔になってしまっていた。
何故かしら、彼女はひどくアイ=ファの存在を気にかけているようなのである。
「アイ=ファがシェイラに対して腹を立てるようなことはありませんよ。案外すんなりと、舞踏会への参加を決断していましたし」
その件に関しては、もう族長たちとポルアースの間で話がついていた。
期日は、金の月の26日。今日からちょうど10日後となる。俺はルウ家や宿屋のご主人たちとの話し合いの末、屋台の休業日を10日ごとから5日ごとに変更したところであったので、次の次の休業日の前日にあたる日取りとなっていた。
ちなみに休業日の間隔を縮めたのは、復活祭を機に1日の売上が激増し、下ごしらえをこなすだけでもハードワーク気味になってきたので、いったんペースを緩和させようと思いたったためであった。
体力的には問題もないのだが、こうまで朝から晩まで働きづめであると、それに参加している女衆は家族と過ごす時間がずいぶん削られてしまう。そういったメンタル面を考慮しての決断であった。
ともあれ、舞踏会は10日後だ。
宿場町での商売を終えた後、みんなを森辺の集落に送り届けてからアイ=ファと合流し、俺は城下町に向かう段取りになっていた。
「それで、今日はどういったご用件でしょう? 何か予定されている内容に変更でも生じたのでしょうか?」
「いえ、今日は仕立て屋を連れて参った次第です」
「仕立て屋?」
聞き覚えのない言葉を耳にして、俺は思わずきょとんとしてしまう。
「はい。舞踏会で必要となる宴衣装を仕立てるために、アスタ様のお身体を採寸させていただきたく思います」
それはまた、とびきり予想外の申し出であった。
「えーと、宴衣装をそちらで準備していただけるという話は、いちおう族長から聞いています。でも、それを一から仕立てあげる、ということなのでしょうか?」
「はい。狩人の皆様は町まで下りる機会もないとのことでしたが、それならばせめてアスタ様だけでも採寸を、と――申し訳ありません。伯爵夫人様は、そうして宴衣装をお贈りすることを何よりの喜びとしているのです」
例の、エウリフィアとたいそう気の合うというポルアースの母君のことである。
俺は「あはは」と乾き気味の笑い声をあげることになった。
「何だかものすごく気が引けてしまうのですけれど、その申し出をお断りするのは、きっとずいぶんな非礼になってしまうのでしょうね」
シェイラはちょっともじもじしながら、にこりと微笑んだ。
おそらく、この申し出を断ると、彼女がポルアースの母君に叱責されることになるのだろう。
「了解いたしました。えーと、中天には戻りたいのですが、大丈夫でしょうか?」
「はい。車の中で、肩の幅や足の長さなどを採寸させていただくだけですので、四半刻もかからないはずです」
四半刻というのは半刻の半分であるから、15~20分ぐらいのことだ。
俺は溜息を噛み殺しつつ、屋台を離れることになった。
「すみません、少しの間、屋台をお願いします」
「はい。今日の献立であれば問題はありません」
今日の日替わりメニューは『ロースト・ギバ』である。つけあわせの野菜を炒めるぐらいなら、フェイ=ベイムは俺抜きでこなせるようになっていた。
ちなみにリリ=ラヴィッツは、お地蔵様のような眼差しで俺の挙動を見守っている。舞踏会については連絡網が回っているはずであるが、それがこの状況とどう繋がるかは、のちほど補足説明が必要であるようだった。
(まあ、これが貴族流のもてなしなんだもんな。ポルアースにはお世話になってるんだし、俺も素直に感謝するべきなんだろう)
そのように考えながら、シェイラの先導でトトス車に向かう。
そうして青空食堂のかたわらを通り抜ける際に、俺はピンと閃いた。
「あの、舞踏会に参席する女性がこちらにひとりいるのですが、その方に関してはいかがでしょう?」
「ああ、そうなのですか? それでしたら、是非とも採寸させていただきたく思います。参席する皆様の大体の背格好はうかがっているのですが、やはり採寸させていただいたほうが、より素晴らしい宴衣装に仕立てることができますので」
ならば重畳、と俺は食堂のほうに呼びかけた。
「シーラ=ルウ、申し訳ありませんが、少しこちらに来ていただけますか?」
「はい、何でしょう」
その手の食器をレイの女衆に託してから、シーラ=ルウがこちらに近づいてくる。
けっきょくルウ家からは、彼女が参席することになったのだ。
しかも、ダルム=ルウをパートナーにして、である。
ルウ家でどのような話し合いが為されたのかは聞いていないが、それが決定された日の翌日、彼女は頬を赤く染めながら、なおかつ決然とした表情で、俺にそれを伝えてくれたのだった。
シェイラのほうから採寸についての説明がされると、シーラ=ルウは反問することなく「了解いたしました」と応じていた。
そうして、町の入り口のところにとめられていたトトス車へと、ふたりいっぺんに招き入れられる。
車の中には、シェイラと同じようなお仕着せを着た品のいい娘さんたちが待ちかまえていた。
車は、ドンダ=ルウでもぎりぎり立っていられそうなぐらい、天井が高い。2頭引きの、巨大な箱型の車である。シーラ=ルウがその奥に導かれると、間に織物のとばりが引かれて、おたがいの姿が見えなくなった。
「それでは、失礼いたします」
娘さんが、巻尺のようなもので俺の身体のサイズを計測し始める。
服を脱ぐように言われなかったのは幸いだ。肩の幅に腕の長さ、首から腰、腰から足首、首回り、胴回り、太もも回りなど、あちこちを計測してその結果を帳面に書き留めていく。
「あの、俺にだけ豪奢な衣装が準備されるということはないですよね?」
「はい。それでは他の皆様に対して礼を失してしまいますので」
俺には身を飾りたてる習慣というものがない。森辺の住人になる前から、学校の制服か調理着か部屋着かで24時間のほとんどを過ごしていたため、よそゆきの私服など数えるぐらいしか持ち合わせていなかったのだ。
そんな俺がパーティ用の衣装をオーダーメイドされるだなんて、面映ゆい限りであった。
(これじゃあ、宴衣装に文句を言うアイ=ファのことをどうこう言えないよな。……でも、アイ=ファはどんな衣装だって見事に着こなせるからなあ)
それにシン=ルウも、かつてのお茶会で武官の白装束を見事に着こなしていた。俺があのような格好をさせられたら、さぞかし滑稽な姿になることだろう。
俺とシン=ルウはだいたい同じぐらいの背丈であるが、森辺の狩人というのは手足が長くて腰がしまっていて、とにかくスタイルが抜群なのである。それにシン=ルウは東の民のようにすっきりとした面立ちをしており、日を重ねるごとに凛々しさを増していっているように感じられた。
(まあ、人様と外見で張り合う気はないけどさ)
そのようなことを考えている間に、今度は採寸用の上着を着させられることになった。
かなり大きめに作られた生成りの装束で、腕や腰の太さに合わせて、針で仮止めがされていく。
服を一着仕立てるのに、なかなかの手間である。貴族たちは、毎回こうした手間をかけて身に纏うものをあつらえているのだろうか。
「お疲れさまでございました。これで終了となります」
「はい、ありがとうございました」
俺はお先に車を出て、シェイラとともにシーラ=ルウを待つことになった。
2、3分ていどの遅れで、シーラ=ルウも姿を現す。
「お忙しい中、申し訳ありませんでした。仕立て屋が腕によりをかけて皆様の宴衣装を準備しますので、どうぞ楽しみにしていてください」
「はい、よろしくお願いします」
シェイラは最後にもう一度頭を下げてから車に乗り込み、護衛役の騎兵とともに立ち去っていった。
軽く息をつきながら、俺はシーラ=ルウと向かい合う。
「かまど番の俺たちが完全な客人として招かれるのは初めてのことですよね。俺なんて族長筋の人間でもないのですから、なんだか気が引けてしまいます」
「しかし、アスタがいなければ貴族たちと正しい縁をつむぐこともかなわなかったでしょう。アスタが招かれるのは当然のことと思えます」
「俺が楽しみなのは料理ぐらいですけどね。料理長のヤンはもちろん、余所からも料理人を招くという話であったので、いっそう楽しみです」
「ええ、わたしもそれは楽しみにしています」
シーラ=ルウは、はにかむように微笑んだ。
ダルム=ルウとともに出向く、ということに関しても、今日のところは心を揺らさずに済んでいる様子である。
これ以上は、余計な口を叩くべきではないだろう。そのように思いながら、俺もシーラ=ルウに笑い返してみせた。
「それでは、仕事に戻りましょうか」
「はい。まもなく中天のはずですね」
俺たちは、人通りの増えてきた街道を南に進んだ。
そうして、青空食堂のかたわらまで辿り着くと、素っ頓狂な声で呼びかけられることになった。
「あ、やっと戻ってきた! アスタ、こっちこっち!」
リミ=ルウが飛び上がり、俺たちのほうに手を振ってきている。今日の当番は、シーラ=ルウとリミ=ルウであったのだ。
「どうしたんだい? 何か問題でも起きたのかな?」
「いいから、早く早く!」
いつも元気なリミ=ルウであるが、ちょっと尋常でない取り乱しようである。俺はいくぶん心配になりながら、シーラ=ルウとともに小走りで屋根の下に向かおうとした。
その眼前に、人影が立ちはだかる。
革の長マントを纏った、背の高い人影だ。
さらに、席を立った男たちがわらわらと左右から取り囲んでくる。
俺はシーラ=ルウをかばいながら、「な、何ですか?」と後ずさることになった。
すると、その中からひとりの人物が進み出てきた。
やっぱり背が高い。全員が180センチ以上はある。それは――全員が、東の民であった。
「おひさしぶりです、アスタ」
なつかしい声が、静かに響く。
それでようやく、俺は理解することができた。
「ああ……おひさしぶりです。ようやく戻ってこられたのですね」
心ならずも、俺の声は震えてしまった。
だけど、それを責めるような人間はいなかっただろう。いたとしても、別にかまわない。誰がどのように文句をつけようとも、俺は心を乱さずにはいられなかった。
「予定、遅くなり、申し訳ありませんでした」
その人物が、フードを背中にはねのけた。
明るい日差しに、白銀の長い髪がきらめく。
「アスタ、再び会えて、嬉しいです」
そのように述べながら、その人物はふわりと微笑した。
最後の別れ際に見せた、あの、包み込むような微笑みである。
切れ長の黒い目には、とても優しい光が宿っている。
高い鼻梁も、薄い唇も、やや面長で引き締まった顔も、すらりとした長身も、いくぶんくたびれた革のマントも――何もかもが、以前に見たままの姿だ。
俺はついに、異国生まれの友人と――商団《銀の壺》の団長たるシュミラルと、6ヶ月半ぶりに再会を果たすことがかなったのだった。
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