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異世界料理道  作者: EDA
第十九章 太陽神の復活祭(上)
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ギャムレイの一座④~獣使い~

2016.6/2 更新分 1/1 誤字を修正

 ヴァムダの黒猿に別れを告げて、俺たちは道を折り返した。

 その道の中ほどで俺たちを出迎えてくれたのは、あの、荷車を引いていた2頭の巨大トカゲであった。


「これはワースの岩蜥蜴ですよォ。南や東の砂の海に住む大蜥蜴でさァ」


 体長3メートルの恐竜のごとき巨大トカゲである。

 彼らも高い木の上にその巨体を潜めており、見物客を大いに驚かせてくれた。


「こいつはマダラマの大蛇にそっくりだよな。やっぱり人を食うのか?」


「いいえェ、砂の海にはロクな生き物も住んじゃおりませんからねェ。しなびた葉っぱを食べるだけで何日も生きられる、トトスよりも使い勝手のいい獣なんですよォ」


「ふーん。確かにまあ、トトスみてーにとぼけた顔をしてんな」


 木の上の岩蜥蜴を恐れげもなく覗き込みながら、ルド=ルウはそう言った。


「シムやジャガルでは、こいつをトトスの代わりにしてるところも少なくはないですからねェ。ま、トトスほど速く走ることはできやしませんけど、のんびりとした旅にはうってつけなんでさァ」


 そうしてさらに通路を進むと、突き当たりは垂れ幕でふさがれていた。


「さァ、ここが獣使いの舞台でございますよォ」


 入口のときと同じように、ピノが垂れ幕を引き開ける。

 とたんにリミ=ルウが「うわあ」と感嘆の声をあげた。


「ようこそおいでなさったな。どうぞこの老いぼれの芸をご堪能あれ」


 ここは街道に面した部分、本来であれば屋台などが置かれるスペースであるようだった。

 5メートル四方の、いささか不格好な四角の部屋である。地面は土で、平坦だ。


 そこに老人と、2頭の獣が待ちかまえていた。

 老人は、かつて岩蜥蜴の手綱を引いていた人物である。

 見事な白髪を胸のあたりまでのばしており、痩せた身体に黒と灰色がまだらになったボロギレのような長衣を纏っている。


 その左右に控えているのは、豹と獅子だ。

 豹のほうは、淡い褐色に斑点のある毛並みが美しい。体長は、俺の身長ぐらいもあるだろう。巨大だが、実に優美でなめらかな体格をしている。俺が知る豹と異なるのは、その口にサーベルタイガーのごとき牙が生えていることであった。


 獅子のほうは、その豹よりもひとまわり巨大である。

 全身にごつごつとした筋肉の線が浮かんでおり、優美さよりも力強さが勝っている。蓬々となびくたてがみが見事であり、実に雄々しい立ち姿であった。

 こちらは俺の知るライオンとほぼ同一の姿をしている。

 が、その巨体を包む毛皮は淡い灰色であり、その瞳は澄みわたった水色であった。


「こちらはアルグラの銀獅子、名前はヒューイ。こちらはガージェの豹、名前はサラと申します」


 にこにこと笑いながら、老人はそのように申し述べた。

 かなりの年齢であられるようだが、矍鑠とした様子だ。

 が、2頭の巨大な獣の間に立っているため、実際よりも小さく見えてしまう。


「そこなお客人、この者たちの名前を呼んではくださらぬかな?」


 と、その指先が真っ直ぐにリミ=ルウを指し示す。

 リミ=ルウは一瞬きょとんとしてから、「ヒューイ?」と呼びかけた。

 ヴァフッ、と咳払いのような声で、銀獅子がそれに答える。


 リミ=ルウは瞳を輝かせて、「サラ!」とさらに呼びかけた。

 牙を持つ豹は、グルアッと咽喉を鳴らして吠えた。


「すごーい! 人間の言葉がわかるの!?」


「自分と仲間の名前ぐらいならば聞きわけることができておりますな」


 にこやかな表情で、老人は長衣の内側に隠していた手を抜き出した。

 そこに握られていたのは、直径15センチていどのボールである。何かの固い果実の殻に縄を巻きつけたものであるらしい。


「名を呼びながら、これを投げてみてくだされ」


 老人が、リミ=ルウのほうにそれを投じる。

 が、それはルド=ルウによって素早くキャッチされてしまった。

 ルド=ルウはそのボールにあやしい仕掛けなどがないことを確かめてから、リミ=ルウとターラにひとつずつ手渡した。


 リミ=ルウは期待に満ちた眼差しで、「ヒューイ!」と呼びながらそのボールを高めに投げあげた。

 銀獅子は後ろ足でのびあがって、そのボールをぱくりとくわえる。


 ターラは「サラ!」と呼びながらボールを投じた。

 が、手もとが狂ってしまったのか、ボールはあさっての方向に飛んでいってしまう。

 それでも豹は俊敏に跳びすさると、ボールが地につく前に横合いから捕獲した。


「すごいすごーい!」とふたりの少女は手を打ち鳴らす。

 それにまぎれてひっそりと、老人もぽんとひとつ手を打った。


 ヒューイとサラは頭を垂れて、口にくわえていたボールを高々と宙に放りあげる。

 3、4メートルはありそうな屋根に届きそうなぐらいの高さにボールはあがり、やがてそれが落下してくると、ヒューイとサラはそれぞれの右前足の甲でそいつをぽーんと弾き返した。


 ボールは再び宙にあがり、次に落ちてきたときは、左の前足で弾き返す。

 そうして2頭の獣は左右の前足で交互にボールをリフティングし続けた。

 ユーミとマイムも笑顔で手を叩く。


 最後に老人がまたひとつ手を打ってから両腕を広げると、2頭の獣はボールをヘディングした。

 ボールは山なりの軌跡を描きつつ、老人の左右の手の平に舞い戻る。


 次に老人は、口をすぼめて、ヒュッと短く口笛を吹いた。

 とたんにヒューイが地面を蹴り、助走もなしに老人の頭を飛び越える。

 それが地面に降り立った瞬間、老人が同じように口笛を吹くと、今度はサラが老人の頭を飛び越えた。


 さらに老人はヒュッ、ヒュッ、ヒュッとテンポよく口笛を吹く。

 従順なる2頭の獣たちは、そのリズムに合わせて、たがい違いに前後と左右から老人の頭を飛び越え続けた。


 頭を飛び越え、地面に降り立っては老人に向きなおり、また跳躍する。ものすごい躍動感であった。

 その鋭い爪がかすめるだけで大惨事になりそうであったが、老人は穏やかに微笑んだままであり、獣たちの動きは機械のように正確であった。


「すっげーなあ。中に人間が入ってるみてーだ」


「いや、人間ではあそこまで軽々と宙を飛ぶこともできまい」


 さしもの狩人たちも感嘆の声をあげている。


 最後に老人は、ヒューッと高らかに口笛を鳴らした。

 ヒューイとサラは同時に飛び上がり、老人の頭上で交叉してから地面に降り立ち、何事もなかったようにその身を伏せた。


「さて。どなたかこのサラの上に乗ってみたいという方はおられませんかな?」


 一瞬の沈黙の後、リミ=ルウが「はーい!」と元気いっぱいに手をあげた。

「おいおい、大丈夫かよ?」とルド=ルウがしかめ面でそれを見下ろす。


「何も危険なことはございません。お客人に傷ひとつでもおつけしたら、この皺首を差し出しましょう」


「じーさんの首ひとつじゃ割に合わねーな」


 ルド=ルウは不満顔であったが、リミ=ルウは「大丈夫だよー!」とサラの前に進み出た。

 老人がやわらかく頭をなでると、サラはいっそうその巨体を低く沈める。

 リミ=ルウは怯えた様子もなく「よいしょ」とその背中にまたがった。


 トゥール=ディンでもいればまた青ざめてしまいそうなところであったが、ターラもマイムもきらきらと瞳を輝かせながらその様子を見つめている。一番どぎまぎしているのは、またもやユーミであるかもしれなかった。


 その場にいる全員の注目をあびながら、老人はひゅるりと口笛を鳴らす。

 サラは、ゆっくりと起き上がった。

 リミ=ルウは「わーい」と喜びの声をあげる。


 そのままサラは、ひたひたと部屋の中を回り始めた。

 やはり優美で、しなやかな足取りである。

「豹のような」というのは、かねてより俺がアイ=ファに抱く印象であった。


「少し走らせてみてもよろしいかな?」


「うん!」とリミ=ルウはサラの首に腕を回した。

 老人がパチンと指を打ち鳴らすと、サラはすみやかに足取りを速める。

 せまい室内であるので限度はあるものの、目の前を通りすぎるときには風を感じるぐらいのスピードではあった。

 リミ=ルウの赤茶けた髪がなびき、「きゃー」という楽しそうな悲鳴が響く。


 そこで老人が、ヒュッと鋭く口笛を吹き鳴らした。

 サラは老人に向きなおり、地面を蹴る。

 リミ=ルウをその背に乗せたまま、サラは再び老人の頭を飛び越えた。

「うわわわわ!」とリミ=ルウがサラの首をぎゅうっと抱きすくめる。


 さきほどよりもうんと高い位置にまで飛びあがってから、サラは音もなく地面に降り立った。

 実に軽やかな着地であったが、そこでリミ=ルウの腕力が尽きた。

 リミ=ルウの身体がサラの背中からすべり落ち――そして、ルド=ルウが足を踏み出すより早く、ヒューイがかぷりとリミ=ルウの首ねっこをくわえる。


 ユーミが、「ひっ」と咽喉を鳴らした。

 が、ヒューイがくわえているのは、リミ=ルウの着ていた装束の生地であった。

 リミ=ルウはぷらんと一瞬だけ宙に浮いてから、そのままそっと地面に下ろされた。


「びっくりしたー! ありがとー、ヒューイ!」


 リミ=ルウは、笑顔でヒューイのたてがみに頬をうずめる。

 ヒューイは俺たちのほうを向いたまま、すました顔で自分の鼻先をなめた。


「ふうむ、大したものだ! ヴァルブの狼にも負けぬ賢さだな!」


 感極まったように、ダン=ルティムが分厚い手を打ち鳴らす。

 老人は、穏やかな笑顔のまま、そちらを振り返った。


「お客人は、森辺の民ですな? モルガの山に住むというヴァルブの狼と縁がおありなのでしょうか?」


「うむ! ヴァルブの狼とは2回ほど顔をあわせたことがあるぞ! あやつは俺の恩人だからな!」


「それは興味深い。儂もヴァルブの狼と縁を結びたいものです」


 そのように言ってから、老人はまたヒュウッと口笛を吹いた。

 しかし、リミ=ルウに抱きつかれたヒューイとサラは不動である。

 その代わりに、俺たちから見て左手側の幕がもぞりと動いた。

 そこから現れた新たなる獣に、女性陣が歓喜の声をほとばしらせる。


 それは、子供の獅子であった。

 いや、ひょっとしたらヒューイとサラの子なのだろうか。その毛皮はヒューイよりも淡い灰色をしていながら、なおかつサラのような斑点をも有していた。


 何にせよ、生後まもない幼子である。体長は40センチていどしかなく、ぬいぐるみのようにころころとした体格をしている。

 その幼子は、小さな口に大きな草籠をくわえて、俺たちの足もとにちょこちょこと進み出てきた。


「獣使いの芸は、これにて終了となります。ご満足いただけたならば、お慈悲を賜りたく思います」


 あざといなーと内心で苦笑しつつ、俺は狩人たちの分もふくめて、3枚ほどの赤銅貨を献上させていただくことにした。

 女性陣は大喜びで割り銭を投じ、そして幼き獣を取り囲む。


「子供だと、こんなにちっちゃいんだね! この子にも名前はあるの?」


「その幼子は、ドルイと申しますな」


「あの、この子を抱かせてはいただけませんか?」


 こらえかねたようにマイムが言うと、老人は「どうぞご随意に」と口もとをほころばせた。

 横合いから手をのばしたピノが草籠を受け取ると、まずはマイムがその愛くるしい存在をすくい取る。


 もこもこのふわふわで、これでは女性陣がとろけてしまうのも無理はない。

 だけどやっぱり、これはヒューイとサラの子供であるようだった。頭のてっぺんにはたてがみの予兆と思える毛がふさふさと波たっているし、口の端からは八重歯のようなものが覗いている。成長したら、立派なたてがみとサーベルタイガーのような牙を持つ、勇壮なる姿となるのだろう。


(俺の故郷にも、レオポンやライガーなんてのがいたもんな。ライガーなんて、親のライオンや虎なんかよりも大きく育つんじゃなかったっけ)


 ともあれ、現在は体長40センチていどの幼子である。

 ただ、その胴体や四肢などは猫などと比べると図太くてずんぐりとしており、それがまた愛くるしさを増大させているのだが、いずれとてつもなく大きな姿に成長する証なのだろうと思われた。


「今日は、ジーダがいなくて正解だったな」


 と、ルド=ルウが誰にともなくつぶやいた。

 確かに、ガージェの毛皮を纏ったジーダがサラの前に姿を現すのは、いささかならず気まずいところだ。


(だけど、野生のガージェは凶暴な人喰いの獣で、ジーダやバルシャはそれをマサラで相手取ってたってことなんだよな)


 あらためて、それはギバ狩りにも負けない苛烈な仕事なのだろうなと思う。

 こんな巨大な肉食獣と山の中で遭遇してしまったら、俺には辞世の句を考えることぐらいしかできそうにない。


「今日はお客が少ないねェ。昨日まではそこそこ賑わってたから、ひと段落ついちまったのかなァ」


 と、いつもの調子に戻ったピノがそんな風に述べたてた。

 女性陣は、まだドルイを愛でているさなかである。

 とりわけ、これまでずっと静かにしていたアマ・ミン=ルティムが彼女らしくもなく笑みくずれて幼き獣を抱きすくめているのが、何やら可笑しかった。


 とりあえず、森辺の民たちもそれぞれ《ギャムレイの一座》の見世物を満喫できたようだ。

 ララ=ルウあたりは絶対に来たがるだろうなと内心で思いつつ、俺はピノに向きなおる。


「13人もお仲間がいて、おまけにこんなたくさんの動物たちまで食べさせるとなると、なかなか大変な商いのようですね」


「そりゃあもう、人も獣も大食らいがそろってるからねェ。ま、腹が減ったとうるさく騒ぐのは、たいてい人のほうだけどさァ」


 草籠を小脇に抱えたピノが、にいっと微笑む。


 13名の座員たちも、これでだいぶん出揃ったようだった。

 曲芸師のピノ、吟遊詩人のニーヤ、双子のアルンとアミン、仮面の小男ザン、怪力男のドガ、笛吹きのナチャラ、占い師のライ、獣使いのシャントゥ――あとは、入口に立っていた痩身の男ディロに、名前はわからないが革の甲冑を纏った奇妙な人物が荷車を引いていたのを覚えている。これで、11名だ。


「そういえば、ギャムレイというのは座長さんのお名前なんですか?」


「ああ、そうさァ。座長は太陽の光を何よりも憎んでてねェ。夜にならないと姿を現さないんだよォ。もうひとり、夜しか動けないぼんくらがいるから、そいつと一緒にぐうすか眠りこけてるねェ」


 では、夜型のその2名を加えれば、きっかり13名だ。

 その方々とは、2日後の夜に対面するときを楽しみに待つことにしよう。


「あの、革の甲冑を着た方も姿を見ないですね。あの方も夜の専門なのですか?」


「うん? ああ、ロロも昼間は役立たずだから、たいていは天幕の中に引っ込んでるかなァ。どうしてだい?」


「いえ、せっかくですから、全員のお姿と名前を一致させておこうかなと。甲冑の方は、ロロと仰るのですね」


「……兄サン、まさか、アタシたちの名前を全員覚えたってのかい?」


「はい、お昼寝をされているという方以外は、いちおうひと通り」


 するとピノは、何か眩しいものでも見るかのように目を細めた。


「ずいぶん嬉しいことを言ってくれるねェ。夜しか動けないぼんくらはゼッタで、占い小屋のライ爺はライラノスってェ名前だよォ」


「ゼッタにライラノスですね。ありがとうございます」


「……ねェ、こっちは兄サンの名前をまだ聞いてなかったよねェ?」


「あ、そこまではカミュアに聞いていなかったのですね。俺はファの家のアスタといいます。名乗り遅れて申し訳ありません」


「ファの家のアスタ。素敵な名前じゃァないか?」


 そう言って、ピノはひらひらとした袖をつまみ、可愛らしく一礼した。


「すでにお覚えだそうだけど、アタシは軽業師のピノってもんだァ。祭の終わりまでどうぞよろしくねェ、ファの家のアスタ」


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


 ピノというのは、いまひとつ正体の知れない、謎めいた少女である。

 それでもやっぱり、悪人ではないような気がしてならなかった。

 たとえ俺の目が節穴であったとしても、この予感は外れてほしくなかった。


「そういえば、カミュアとはどういうお知り合いなんですか? 俺たちも、彼とは浅からぬ縁があるのですが」


「いやァ、あちらもこちらも大陸中をさまよっている身なもんだから、ときおり出くわすことがあるってだけの話でさァ。……あれは、面白い御仁だよねェ。たいそう腕も立つみたいだし」


「そうですね」と俺も笑ってしまう。

 やはりあのカミュア=ヨシュというのは、こんな奇矯な人々にも面白いと評される人柄であるのだ。


「ま、あたしらもこんな目立つなりで旅をする身だから、野盗に襲われるなんてのもしょっちゅうだけどねェ。そんな折にも、このヒューイやサラはたいそう役に立ってくれるのさァ」


「ああ、彼らがいれば野盗なんてみんな逃げ出していきそうですもんね」


 それに、大男のドガと小男のザンもいる。この雄々しい獣たちに彼らの力まで加われば、それだけで野盗など退けられそうだ。


(護衛もなしに旅をするんだから、それぐらいの備えをするのは当然だよな)


 刀子投げを得意とする小男ザンが妙に殺伐とした雰囲気を有しているのも、これで何となく納得がいった。

 今のところ、俺にはそれで十分であった。


「それでは、そろそろおいとましますね。今日はわざわざご丁寧に案内までしてくださって、ありがとうございます」


「こちらこそ、だよォ。気が向いたら、またいつでも遊びに来ていただきたいもんだねェ。ヒューイとサラは、他にも色んな芸をお見せすることができるからさァ」


「うん! 絶対にまた来るね!」と元気に応じたのはリミ=ルウである。

 リミ=ルウはひとしきり幼き獣を愛でたのち、またヒューイの巨体に寄り添っていた。


「こちらも兄サンがたの屋台は楽しみにしてるからさァ。明日からも、美味しい食事をお願いいたしますよォ」


 そのように述べるピノの妖艶なる微笑みとともに、その日の来訪は無事に終わりを遂げることになった。

 次にこの天幕を訪れるのは3日後の夜、『暁の日』の商売を終えたのちのことである。


 太陽神の復活祭が、ついにその日から開催されるのだ。

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