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異世界料理道  作者: EDA
第八章 徒然なる日々
162/1675

⑬ルウの収穫祭(四)

2015.1/20 更新分 1/1

2015.2/18 7/7 誤字修正


*明日から第25章の書き溜め期間に入ります。更新再開の期日は活動報告で告知していきますので、しばしお待ちくださいませ。

「お待たせしました。こちらが俺の準備した本日の料理です」


 太陽が、西側の森に差しかかったころ。

 広場を取り囲む格好で設置された松明の火に照らされながら、闘技会の優勝者には祝福の晩餐が捧げられることになった。


 もちろんというか何というか――優勝者は、ドンダ=ルウである。


 けっきょくのところ、俺はドンダ=ルウが試合をする姿を1度として目にすることができなかったのだが。準決勝のミダ戦においては、体格でまさる相手の突進を真正面から受け止めて投げ飛ばすという貫禄の違いを見せつけて、決勝戦のダン=ルティム戦においても、余力のない相手に長期戦をもちかけることなく、豪腕でねじ伏せたらしい。


 その優勝者は、木材が組み合わされた小さなやぐら台の上で、いつもの通りに片膝あぐらで座していた。

 黒褐色の蓬髪には、最長老ジバ婆さんの捧げた祝福の草冠が載せられている。


 いつも通りの仏頂面であり、いつも通りの威圧感であったが、ガズラン=ルティム、ミダ、ダン=ルティムという豪傑たちを相手に3連勝を飾った直後であるのだ。その厳つい顔には汗が浮かび、ほんの少しだが肩や胸も波打っている。


「ふん……」と小さく鼻を鳴らし、ドンダ=ルウは木皿へと目を落とした。

 ルウの集落にあった中では1番大きな木皿に、本日の料理が盛りつけられている。


 ほかほかに温められたアリアとチャッチが敷きつめられ、真ん中に鎮座ましますは重量1キロの肉塊『ロースト・ギバ』だ。


「……どれほど奇をてらうかと思えば、案外まともな食事じゃねえか。少なくとも、外見はな」


「はい。お口に合えば、嬉しいです」


『ロースト・ギバ』は、スライスというよりもぶつ切りといったほうが良いぐらいの分厚さで切り分けられ、上から特製のソースが掛けられている。タウ油と果実酒をベースにして、アリアとミャームーのみじん切り、岩塩とピコの葉、それにローストしたギバ肉からこぼれた飴色の肉汁を配合した、現時点の俺にとっては最高の出来のソースである。


「よかったら、温かいうちにお召し上がりください。冷めても美味しいのがこの料理の特徴でもありますが、森辺の民は温かい料理のほうがお好みでしょう?」


「ふん」ともう1度鼻を鳴らしてから、ドンダ=ルウは立ち上がった。

 やぐらの周囲では、70名からの眷族たちが、宴の開始を待ちわびていたのだ。


「それでは、収穫の宴を開始する! ルウの眷族よ、森に感謝の念を捧げ、その恵みを己の血肉にするがいい!」


 おおッ――と勇ましい歓呼の声がそれに応え、人々も鉄串や、果実酒の土瓶を手に取った。

 それを見届けてから、ドンダ=ルウはどかりと腰を下ろし、無造作に木皿へと腕を伸ばす。


 やぐらの上には、俺とドンダ=ルウしかいない。

 ドンダ=ルウは『ロースト・ギバ』のひと塊に鉄串をぶすりと刺し、石でも噛み砕けそうな頑健なる白い歯で、それを噛みちぎった。


 ステーキほどは、固くない。

 だけど、柔らかすぎるということもないだろう。そのために、ロースではなくモモをチョイスしたのだ。


 ローストビーフとは異なり、中までしっかり火を通す必要のあるギバ肉であるが、肉がパサつく寸前に引き上げることができたので、ピンク色に蒸された肉はジューシーで、旨味も凝縮されている。


 そして、ほどよく脂が抜けてぷるぷるとした脂身と、後から少しだけ焼きなおしたキツネ色の皮が、食感と味にさらなる彩りを添えている。


 自慢のソースも量は控えめで、基本的には素材の味を活かしている心づもりである。

 入念にすりこんだ岩塩と、ピコの葉と、ところどころに埋まっているミャームー、それだけの下味でも、本来は十分すぎるほどであるのだ。


 いったん冷やすとまたしっかりと味が引き締まって抜群の美味さだが、出来立てのこの味だってそれに劣るものではない。


 この森辺にやってきて、およそ60日。

 ごく早い段階で身につけた技術と、つい最近身につけたばかりの技術を総動員させて、練り上げた料理である。


 お味のほうは――如何であろうか?


 まあ、ドンダ=ルウの口から、「美味い」などという言葉を聞けるとまでは期待していないが――


「……美味い」


「え?」


 俺は仰天して、顔をあげる。

 が、ドンダ=ルウは同じ顔つきのまま、『ロースト・ギバ』の2口目を荒っぽく咀嚼するばかりで、俺のほうを見ようとはしなかった。


 その目が、うろんげに足もとに向けられる。

 そこには、ルウの女衆が作りあげた野菜たっぷりのスープと、焼いたポイタンと、それに臓物料理の木皿も並べられていたのだ。


「おい、こっちの肉は何なんだ? 見たこともねえ形をした肉が混ざっているが、まさかギバ以外の肉を使ったんじゃねえだろうな?」


「あ、そっちはギバの臓物料理です。俺も昨日覚えたばかりの料理なんですが、なかなか面白い味だと思いますよ」


 ギバのハツ、レバーと、腎臓、それにぶつ切りのホルモンである。


「アイ=ファなんかは、この心臓がお気に召したようです。こいつは1番クセもないですし、食感も普通の肉に近いと思います」


「……ギバの心臓、か」


 ドンダ=ルウはまた無造作に鉄串を刺し、ハツの焼き肉を口に運んだ。

 青く燃える目がまぶたに隠され、その歯がゆっくりと肉を噛みしめる。


 そうしてギバのハツをも飲み下すと、ドンダ=ルウは胸もとに下げていた首飾りのひとつを外して、俺のほうに差し出してきた。


「ご苦労だった。これは代価だ」


「え? 代価?」


 そういえば、代価の話などはまったくしていなかった。

 家長会議やその後の騒ぎでは、ルウ家にさんざん世話になってしまっていたから、俺としてはその恩返しをするような感覚であったのだ。


「ありがとうございます。だけどこれでは、少しばかり代価が高すぎるのではないですか?」


 その首飾りには、およそ20本ほどの牙や角がぶら下がっていた。

 ギバ5頭分――白銅貨5枚以上の価値がある牙と角である。


「……貴様の腕は、そんなに安いのか?」


 ドンダ=ルウは俺の胸もとに首飾りを放り投げ、あとは無心に『ギバ・ロースト』を喰らい始めた。


 そして、苛立たしそうにまた俺のことをにらみつけてくる。


「それで、貴様はいつまでそこで俺の食っている姿を眺めているつもりだ? 仕事が終わったのなら、とっとと自分の腹を満たすがいい」


「は、はい。それでは、失礼します」


 そこはかとない満足感を胸に、俺はやぐらを下りることになった。

 とたんに、猟犬のように飛び出してきた人影におもいきり胸ぐらをつかまれてしまう。


「おい、アスタ! これはいったい、どういうことなんだ!?」


「び、びっくりしたなあ。どうしたんだよ、血相を変えて?」


 金褐色の頭をしていたので一瞬アイ=ファかと思ってしまったが、それはレイ家の若き家長ラウ=レイであった。


 水色の瞳が爛々と燃えて、至近距離から俺をにらみつけてくる。


「どうしたもこうしたもあるか! 俺は、お前の作った料理を食べたのだ!」


「ああ、そうなんだ? それならどうしてそんなに怒った顔をしてるんだよ? お口に合わなかったのかい?」


「そんなわけがあるか! 美味すぎて驚いたのだ! お前、家長会議では手を抜いていたのか!?」


 何だかさっぱりわけがわからなかった。

 だけどまあ、美味しさのあまり我を失うというのは、これまでにも何人か例のあったことだ、と納得しておくことにする。


「それは俺も気になったな。アスタよ、お前は家長会議の晩餐ではその腕前を隠していたのか? それとも、わずか半月ばかりでこれほど腕を上げたということなのかな?」


 そろそろ松明の火だけが目の頼りになってきた薄闇の向こうから、大柄な人影も近づいてくる。


 四角い輪郭に、朴訥とした面立ち。若者らしからぬ風格と、理想的なまでに鍛えあげられた巨躯――ちょっとひさびさに見る、それは三族長のひとりダリ=サウティだった。


「ああ、ダリ=サウティ。お怪我はすっかりよくなったようですね」


 ダリ=サウティは、ドンダ=ルウと連絡を密にするため、そして血抜きや解体の技術を学ぶために、ルティムの集落に身を寄せていたのである。


 最後に宿場町で会ったときは、カミュア=ヨシュと会談をした直後であったためずいぶん気が立っていた様子であったが、今宵の彼は持ち前の大らかさを回復させて、ゆったりと微笑んでいた。


「その節は迷惑をかけてしまったな。そちらも息災そうで何よりだ。……で、俺やレイの家長の疑問に答えてくれるつもりはあるか? 別にその腕前を隠されていたからといって俺たちが憤る筋合いはないのだが、理由だけは聞いておかないと、どうにも座りが悪いのでな」


「はあ。腕前を隠していた、ですか……?」


 料理の腕前が上がったというのは、つい先日にルウ本家の人々からもいただいたお言葉である。


 だけど、何だろう。ラウ=レイの取り乱し方を見ていると、どうもニュアンスが異なるように感じられてしまう。


「何をぎゃーぎゃー騒いでんだよ。アスタの料理はこれっぽっちしかないんだから、うかうかしてっと全部食べられちまうぞ?」


 と、大きな木皿を掲げたルド=ルウが、その上に載ったモモ肉のステーキをつまみながら近づいてきた。

 3キロ分の皮つき肉を使った厚切りのステーキである。蒸し焼きにしたアリアやチャッチともども、残りはすでに4分の1ていどだった。


「俺の分は残しておけ! まだ全然腹は満たされていない! ……で、どうなんだ、アスタ? お前はその料理の腕前を家長たちに披露するためにかまど番をあずかったのだろう? それなのに、お前は家長会議の場で力を出し惜しんだのか?」


「それは心外な言い草だなあ。俺が調理の手を抜くなんて絶対にありえないよ」


「それでは、わずか半月でそこまで腕前をあげたというのか? しかし俺は、ガズラン=ルティムの婚儀の宴でもお前の料理を食べている! あの宴から家長会議までは20日ばかりも日が空いていたのに、そこまでの上達は感じられなかったぞ?」


 ラウ=レイも、憤慨しているのではなく、ただわけがわからなくて混乱している、というご様子だった。

 しかし、それ以上にわけがわからないのは、俺のほうである。


 そんな俺たちの混乱と疑問は、ルド=ルウによってあっさりと解き明かされることになった。


「何だ、アスタの料理が美味すぎて驚いてんのか? そんなの別に、驚くような話じゃねーだろ、ラウ=レイ?」


「どうしてだ? お前にはその理由がわかるというのか、ルド=ルウよ?」


「あったり前じゃん。だって、家長会議で出された料理は、アスタが作ったわけじゃないんだろ? 俺はシン=ルウと干し肉をかじるばっかりで、その料理すら食べられなかったんだけどさ」


 すぐには、意味がわからなかった。

 だけどその言葉は、すみやかに腑に落ちていった。


「ああ――そういうことか」


「そうだよ。あの日はスン家の女衆に料理の作り方を覚えさせたかったから、アスタたちはなるべく手を出さないようにするとか言ってたじゃん。作り方は一緒でも、それでアスタと同じぐらい美味い料理が作れるわけはねーさ」


 それでも、血抜きをしていないギバの肉を焼くか煮込むかでしか食すことのなかった人々には、衝撃的な味であったはずだ。焼いたポイタンも、また然りである。

 選んだ料理も『ミャームー焼き』で、そこまで作る人間を選ぶ献立ではない。


 だけど、それでも――焼き加減やタレのからめ方で、肉の固さや仕上がりには差が出るだろう。指南役であった俺や女衆にしてみても、「焦げつかせないように」「生焼けにならないように」という低めのハードルでスンの女衆らに手ほどきをしていたのだから。


 しかし、何にせよ、武骨な男衆たるラウ=レイやダリ=サウティが、そのていどの差異を不審に思い、驚いてくれたというのは、光栄に思うべき事柄であるように感じられた。


「しかし――俺は宿場町でも、アスタの作った屋台の料理を食べさせられたぞ? あのときも、これほど美味いとは感じられなかった!」


 なおも食い下がるラウ=レイに、今度は俺が説明してみせる。


「あのときは、大人数のパテまで準備することができなかったから、みんな『ミャームー焼き』のほうを食べてもらっていたんだよね。あの味付けは、宿場町の人に合わせて少し濃い目に作ってあるんだよ。森辺の民にとっては、理想の味付けにはなってなかったと思うな」


「そうそう。それにルティムの祝宴の時だって、ルウの女衆が手伝ってたんだもんな。アスタが誰の手も借りないで、なおかつ森辺の民のためだけに作った料理を食べたのは、ラウ=レイにとっては今日が初めてだったってだけのこった」


 言いながら、ルド=ルウはチャッチを口の中に放りこんだ。


「ああ、美味いなあ! 肉も美味いけど、このチャッチも最高だよ! 俺、チャッチが好きだからなー」


 油断して、女の子みたいに可愛らしい笑顔になってしまっているルド=ルウである。


 ラウ=レイは難しい顔をして黙りこみ――

 そして、俺の胸ぐらをつかんだその腕を、横合いからひっつかむ者が現れた。


「お前はなぜアスタに無礼な振る舞いをしているのだ? 相応の理由がなければ私が相手になるぞ、レイ家の家長よ」


 アイ=ファである。

 ラウ=レイはいっそう難しげな顔になり、それでもようやく俺のTシャツを解放してくれた。


「べつだん諍いを起こしていたわけではない。そんなに目くじらを立てるな。……それとも、もうひとたび俺と力比べでもしてみるか、アイ=ファよ?」


「何べんやっても、結果は変わらぬ」


 冷たく怒った声で言い、アイ=ファはラウ=レイの腕を放り捨てた。

 ラウ=レイは、子どものように鼻の下をこする。


「何だかお前たちはずるいぞ、アスタにアイ=ファ! たったふたりしか家人がいないのに、ひとりは最高のかまど番で、ひとりはダン=ルティムをあそこまで追い込むほどの狩人だなんて、納得がいかん!」


「お前の得など、私の知ったことではない」


 アイ=ファは尊大な感じで腕を組み、横目でラウ=レイをにらみ返す。

 すると、すっかり静かになっていたダリ=サウティが低く笑い声をあげた。


「このように不穏な時期に収穫の宴とは、ドンダ=ルウも存外に呑気な男なのだなと思っていなくもなかったのだが、少なくとも俺にとっては有意な1日となったようだ。……せっかくトトスなどという便利なものも手に入ったのだから、グラフ=ザザにも足を運んでもらうべきだったかな、これは」


「え? グラフ=ザザがどうかしましたか?」


「ルウの力は、やはり秀でている。狩人らの力にも目を見張るものがあったが、それ以上に――このルウの眷族たちは、とても力にあふれているように、俺には感じられるのだ」


 そう言って、ダリ=サウティは視線を巡らせた。

 松明と簡易型のかまどの火に照らされて、人々は明るく笑っている。

 ルティムの祝宴においても垣間見ることのできた、実に楽しげな宴の様相だ。


 愛すべき家族たち、眷族たちとともに、美味い食事に舌鼓を打ち、果実酒をあおっている。それは確かに、異世界生まれの俺にとっては頭のくらくらするような力と熱気にあふれた情景でもあったが――これは、森辺のスタンダードではないのだろうか?


「ルウに次ぐ力を持つのは、ザザたち北の一族だろう。その次に力を持つのは、きっと俺たち南の一族だ。しかし――たかだか収穫の小宴で、俺たちがこれほどまでに幸福そうな笑顔を浮かべることはないと思う。ギバの肉と町から得る野菜は、俺たちにとって生きるための糧であったが、それは空気や水と同じようなもので、幸福感や喜びが得られるような存在ではなかったのだろう」


「はあ……」


「食事とは、生きるための喜びだ。その喜びが大きければ、生きようとする力も自然に大きくなる。そのように言っていたのはお前なのだろう、アスタよ? 俺はドンダ=ルウからそのように聞いていたぞ?」


「ド――ドンダ=ルウが、そのようなことを言っていたのですか?」


「ああ。今日という日だけで、俺はルウの家の強さを思い知らされた。……それと同時に、ファの家の強さも思い知らされてしまったな」


 そしてダリ=サウティは、その朴訥とした顔に太い笑みを浮かべた。


「城の連中との会談は、3日後だ。あの連中を相手どるのに、森辺の民は今まで以上の力を得て、なおかつその力を合わせる必要があるだろう。アスタ、アイ=ファ、これからもファの家が森辺の民として、同胞のために力を振り絞ってくれることを、俺は願う」


「は、はい」


「森辺の民として、それは当然のことだ」


 俺とアイ=ファの返事にうなずき、ダリ=サウティはきびすを返した。


「あとは、ルウの女衆の心づくしで腹を満たすことにしよう。それでは、息災にな」


 そうしてダリ=サウティが去っていくと、それと入れ違いでまた新たな人影が近づいてくる。

 今度は、複数だ。ララ=ルウと、シン=ルウと、そしてミダである。


「やっと見つけた! ルド、勝手にアスタの料理を持っていかないでよ! 探し回っちゃったじゃん!」


 先頭を歩いていたララ=ルウが兄に駆け寄り、その左耳をいやというほどつねりあげる。勇者の称号を得たルド=ルウといえども、大きな木皿を抱えた状態ではその攻撃を回避することはかなわなかった。


「いてーよ、馬鹿! だって、あのまま置いといたらそこのでかぶつに全部食べられそうだったじゃねーか!」


「あんただってミダに負けないぐらい食い意地が張ってるじゃん! いいから、よこしなってば!」


 ぎゃんぎゃんとわめきたてる兄妹を、ミダは子豚のように小さな目でじっと見つめる。


「……全部食べたりはしないから、ミダにもアスタの料理を食べさせてほしいんだよ……?」


 いつぞやのように暴れだしたりはせず、それどころかちょっとしょんぼりとした様子で頬肉を震わせながら、ミダはそうつぶやいた。


「わかったよー。残りはこれしかないんだから、大事に食えよ?」


「うん……大事に食べるんだよ……?」


「ちぇっ。……おい、ミダ、次にやりあうときは絶対に負けねーからな? お前も俺以外の相手に負けたりするんじゃねーぞ?」


「……うん……?」


 なんとも和やかな雰囲気だった。

 ルティムの婚儀の祝宴の際は、徹頭徹尾裏方に徹していたので、このように人々と喜びを共有し合うこともなかなかかなわなかったのだ。


 俺の作った料理はこの木皿に載っている分だけだが、人々はみんなミーア・レイ=ルウやレイナ=ルウたちの作った料理を口に運び、幸福そうに笑っている。普段はつつましく生きている森辺の民の、数ヶ月に1度だけ訪れる祝宴のひとときなのだ。


 少し離れた場所では、毛皮の敷物の上に座したジバ婆さんが、たくさんの眷族に囲まれている。両手にあばら肉を掲げて馬鹿笑いしている大きな人影は、絶対にダン=ルティムだ。その足もとで同じようなポージングをしているのは、もしかしたらリミ=ルウであろうか?


 さらに離れた場所では、長身の人影がふたつ、果実酒の土瓶を手に何やら語り合っている。あれはジザ=ルウとガズラン=ルティムかも知れない。


 みんな、おのおの宴を楽しんでいる。

 男衆も、女衆も、数は少ないが老人や子どもも――70名からのルウの眷族が、顔を火照らせて、肉をかじり、果実酒に酔い、森辺の生を謳歌しているのだ。


 ダリ=サウティの言う通り、城の人々との会談は3日後に迫っている、

 きっと、そんな時期だからこそ、ドンダ=ルウはあえてこの収穫の宴を敢行したのだろう。この生活を、この幸福を守りたい、その気持ちを再確認するために。


「アスタ、お前は何か腹に入れたのか?」


 と、アイ=ファが半眼でにらみつけてくる。


「いや。調理中につまみ食いはしたけどな」


「やっぱりか! そういうところはまったく成長していないな。だいたいお前は――」


 そう言いかけたアイ=ファの声が、ルド=ルウの楽しげな声にさえぎられた。


「あ、やっと起きたのかよ、ダルム兄。ほら、アスタの料理だぜ?」


 俺とアイ=ファは一瞬目を見交わしてから、ルド=ルウのほうを振り返った。

 弟の小柄な身体を手の甲で軽く押しのけつつ、ダルム=ルウが俺たちの前に立つ。


「ファの家のかまど番。貴様に、話がある」


 父親ゆずりの光の強い目が、射るように俺を見すえる。

 たちまちアイ=ファが声をあげかけたが、ダルム=ルウは機先を制するように、さらに言った。


「ファの家の家長とは話がついた。後は貴様だけだ、かまど番――いや、ファの家のアスタよ。誰にも邪魔されず、お前とだけ言葉を交わしたいのだ、俺は」


「アスタに害はなさぬと誓えるのか、ルウの次兄よ?」


 それでもアイ=ファが鋭い声で割り込むと、ダルム=ルウは低い声で「誓おう」と応じた。


「この約定を違えたら、腕でも足でもくれてやる。ルウ本家の次兄として、森辺の狩人として、ダルム=ルウはファの家のアスタに害はなさぬと、ここに誓う。証人は、今この言葉を聞いている全員だ」


「ちょっと! 何を言ってんのさ、ダルム兄!」


 ララ=ルウが、怒ったような声をあげる。

 ルド=ルウは不審げに眉をひそめており、シン=ルウは無表情。ミダは相変わらずの様子で、そしてラウ=レイは――


 ラウ=レイは、猟犬のような目つきでダルム=ルウの横顔をねめつけていた。


「お前たちには、何か確執でもあったのか? ――まあいい。何にせよ、誓いの言葉はこの耳でしかと聞かせてもらった。お前が約定を違えたら、この俺がお前の両腕を叩き斬ってやるぞ、ダルム=ルウよ」


「好きにしろ」と、ダルム=ルウは低い声で言い捨てる。


 アイ=ファはきつく唇を噛み、俺を見た。

 俺はそちらにうなずき返してから、ダルム=ルウの長身を見上げる。


「承知しました。どこで話します?」


「どこでもいい。邪魔さえ入らなければな」


 あくまでも無表情なダルム=ルウとともに、広場の外へと足を向ける。

 やがて到着したのは、家と家の間の薄暗がりであった。


 人々の喧騒も、松明の灯りも遠い。

 ダルム=ルウは、その暗がりに何者かが潜んでいないかを探るように視線を巡らせてから、あらためて俺のほうに向きなおった。


「ファの家のアスタよ。俺とアイ=ファが力比べの前に交わした約定の言葉を、貴様も聞いていたな?」


「はい。聞いていました」


「それで俺は、アイ=ファに敗れた。もはや俺にあいつを止める資格はない。……この先あいつを止めることができるのは、きっと貴様だけだろう」


「アイ=ファを、止める?」


 無表情のまま、ダルム=ルウの両目が青く燃えあがった。

 野生の狼を思わせる眼光である。


「俺には言葉を飾ることはできない。だから、思っていることをそのまま話す。……貴様には、アイ=ファを止めたいと願う気持ちはないのか? あいつが森に朽ちたとしても、貴様はのうのうと生きていくことができるのか、アスタ?」


「それは――アイ=ファに、狩人としての仕事をやめさせるべきだ、という意味ですか?」


「当たり前だ。それ以外にどのような意味がある?」


 それは、あまりにも――意外といえば意外に過ぎる言葉であった。


「ま、待ってください。ダルム=ルウだって、狩人として危険な仕事を担っている身じゃないですか? そのあなたが狩人の仕事を否定してしまうんですか?」


「あいつは、女衆だ。狩人になるべく生まれついた男衆とはわけが違う。当たり前のことをいちいち言わせるな」


「だけど――アイ=ファは、狩人として生きることに誇りを持っているんです。たまたま女衆に生まれついてしまっただけで、アイ=ファにはダルム=ルウたちと同じ狩人としての魂が――」


「そのような話はどうでもいい。俺は貴様の心情を問うているのだ、アスタよ」


 じゃりっと地面を踏み鳴らし、ダルム=ルウが1歩だけ近づいてきた。

 後ずさる意味はないだろう。ダルム=ルウに俺を害する気持ちがあれば、最初から逃げようのない間合いである。


「貴様はそのような運命に耐えられるのか? 明日にでも、あいつは森に朽ちてしまうのかもしれないのだぞ? それでもあいつは狩人だからだと、貴様はそのような言葉で納得できるのか?」


「それは――だけど……すべての狩人が若くして森に朽ちるわけではないでしょう? アイ=ファは女衆でも、ずばぬけた力を持っている狩人なんですから――」


「おためごかしだ。どんなに優れた狩人でも、ただ優れているというだけで生き永らえることはできん。現にあいつは、つい先日も重い手傷を負っていたではないか? その帰り道にギバと遭遇していれば、あいつは死んでいた」


 ぎらぎらと、凄まじい勢いで燃えさかる眼光が近づいてくる。

 それは――怒りと無念の炎であるように、俺には感じられた。


「しかもあいつは、危険な『贄狩り』などにも手を出している。そのような真似をして、いつまでも無事でいられるものか。答えろ、アスタよ。貴様はアイ=ファが明日森に朽ちてもかまわないと思っているのか? 貴様にとってのアイ=ファとは、しょせんそのていどの存在でしかないのか?」


「俺にとって、アイ=ファは誰よりも大事な存在です! だけど俺は――アイ=ファの生き方を否定したくないんです」


「それでアイ=ファを失うことになってもかまわないのか? 俺は――俺は、嫌だ!」


 ついに、ダルム=ルウの声も抑制を失った。

 右頬に刻まれた傷跡が、真っ赤に浮かびあがっていく。


「俺はアイ=ファを失いたくない! そのような運命に、俺は耐えられない! だから俺は、アイ=ファに女衆として生きてほしかったのだ! だけど俺は――俺ではもうアイ=ファを止めることはできないのだということを思い知らされてしまった」


「それは……」


「家長会議の夜も、俺はアイ=ファを守ることができなかった。そして今日も、俺はアイ=ファに敗れてしまった。俺にはもう何も口をはさむ資格はないし――アイ=ファを守り通す力もない。俺ではもう、駄目なのだ!」


 そしてダルム=ルウは、俺の胸ぐらをつかんできた。

 ラウ=レイよりも強い力で――無念に震える指先で。


「貴様に、アイ=ファを止めるつもりはないのか? たったひとりの家人でありながら――あのアイ=ファに家人と認められた人間でありながら、貴様にはアイ=ファを守ろうという気持ちはないのか?」


「守りたいとは思っています! だけど――」


 この気持ちを、どのような言葉であらわせばよいのだろう。

 アイ=ファに死んでほしくない。そんなのは、当たり前すぎる大前提だ。

 だけど、それでも、俺がアイ=ファの生き様を否定する気持ちになれないのは――


「――俺は、アイ=ファの気持ちや、考えや、尊厳も守りたいと思っています。アイ=ファが狩人として生きたいと願っているなら、その気持ちごと守ってやりたいと思っているんです」


 駄目だ。

 言葉にすると、何か大事な部分が逃げていってしまう。

 こんな言葉では、俺自身が納得できない。

 だからもちろん、ダルム=ルウもまったく納得した様子はなく、いっそう強い力で俺の胸もとを締めあげてきた。


「それでアイ=ファを失うことになっても、貴様には耐えられることができるのか?」


「耐えられないかもしれません。そのときは、一生後悔し続けることになるかもしれません。アイ=ファの気持ちを優先するなら、それを覚悟してつきあっていくしかないと思っていました」


 それは、間違った考えなのだろうか?


 ルウ家の女衆などは、俺などでは太刀打ちできぬような覚悟をもって、男衆を森に送り出しているように見えた。誰よりも強く家族のことを思いながら、それでも、いつ家族を失ってもおかしくはない苛烈な運命を受け入れ、ただひたすらに家族を信じ、その無事を願っているような――そんな風に、俺には見えたのだ。


 俺に足りないのは、その覚悟の量だと思っていた。

 だから俺も、彼女たちみたいに家族を――アイ=ファを信じぬくべきだと思っていた。


 それがそもそも間違っていたというのだろうか?


「……貴様には、力がある。このわずかな期間で、貴様はそれを証明してみせた。貴様が町で銅貨を稼げば、アイ=ファに狩人の仕事などさせずに済むのではないか?」


 ぎりぎりと食いしばった歯の間から、ダルム=ルウが底ごもる声をしぼりだす。


 この若者は、それほどに強い気持ちでアイ=ファの身を案じていたのかと、俺は打ちのめされることになった。


 だから俺は、揺らいでしまっているのだろうか。

 アイ=ファに相応しいのは――アイ=ファを苛烈な運命から救いだせるのは、自分ではなく、このような人間なのではないか、と――


(俺は……)


 俺は無言のまま、ダルム=ルウの引き歪んだ顔を見つめ続けることになった。


 そうして、どれぐらいの時間が過ぎたのか――

 やがてダルム=ルウは俺の胸もとから手を放し、疲弊しきった様子で顔を背けた。


「……アイ=ファが森に朽ちたときは、俺が貴様の生命を絶つ。この身にかえても、絶対にだ」


 最後にそれだけを言い捨てて、ダルム=ルウは立ち去っていった。

 それでも俺は、その場から1歩も動けずにいた。


 ダルム=ルウが暗がりを出るなり、木皿を掲げたほっそりとした人影がそちらに駆け寄ったようにも感じられたが――見間違いだったかもしれない。何となく、すべての感覚が虚ろになってしまっているような気がした。


 ほんの数メートルも足を進めれば、そこは光にあふれる温かな世界である。オレンジ色の炎や、人々の喧騒、祝宴の熱気と興奮が、そこには力強く渦巻いている。


 しかし、あの場所に戻る資格が、この俺などに存在するのか――俺にはわからなくなってしまっていた。


(俺は……アイ=ファの強さに甘えていただけなのか?)


 アイ=ファは狩人として卓越した力を持っている。

 なおかつ無駄に生命を散らしたりはしないと、アイ=ファは常々そのように主張していた。長く生きて、1頭でも多くのギバを狩るのが、狩人としての正しき道なのだ、と。


 そんなアイ=ファの言葉を信じ――結果として、俺は甘えていたのだろうか。


 アイ=ファが死んでしまうはずはない、と。

 そんな理不尽な運命がアイ=ファに訪れるわけはない、と。


 わからなかった。


 わからなかったが、しかし、俺は――


「……いつまでそのような場所にいるつもりなのだ、アスタよ?」


 俺は愕然と振り返る。

 この声を、俺が聞き間違えるはずはない。

 オレンジ色にかすむ宴の様相を背景に、アイ=ファが毅然と立ちはだかっていた。


「ど……どうしたんだ、アイ=ファ?」


「どうしたもへったくれもあるか。ルウの次兄が出てきたのに、お前だけがいつまでも出てこぬから、迎えに来てやったのだろうが」


 ふてくされたような面持ちで、アイ=ファがずかずかと接近してくる。

 俺は反射的に後ずさろうとしてしまい、その腕をアイ=ファに捕らえられることになった。


「なぜ逃げる? それにどうして、そのように悲壮な目つきをしているのだ? あの次兄ごときにとやかく言われてどうにかなるようなお前ではないはずだろうが?」


 言いながら、アイ=ファは怒った目つきで俺の姿を上から下まで検分する。たぶん、暴力の形跡などがないかチェックしているのだろう。


「……お前、俺たちの話を盗み聞きしていたわけじゃないんだよな?」


「カミュア=ヨシュではあるまいし、そのように恥知らずな真似をするものか。あまり無礼な口を叩くと痛い目に合わせるぞ?」


「……そうだよな。ごめん」


「本当にどうしたのだ? 次兄にではなく、私にふくむところでもあるのか?」


 アイ=ファはちょっとだけうつむき、いつもの調子で唇をとがらせた。

 他に人目がないものだから、ぞんぶんに感情を露呈しているのだろう。

 そんな仕草が、とてつもなく愛おしく、とてつもなく胸に刺さる。


「だったら私も、素直に頭を下げておく。だから、そのように悲しげな顔をするな、アスタよ」


「え? 別にお前に謝られる理由はないはずだけど……」


「そうなのか? ダン=ルティムに敗北を喫してしまったとき、私はお前に八つ当たりをしてしまったではないか?」


 そのようなことは、気にも留めていなかった。

 あんなのは、いつも通りの普段通りではないか。


「あのときは、私も悔しさを抑えきることができなかったのだ。しかし、頭を冷やしてみれば、あのダン=ルティムと――ドンダ=ルウにも匹敵する力を持つであろうダン=ルティムと、さまざまな制約に縛られた力比べとはいえ互角の勝負ができたのだから、それは誇りに思うべきだと考えなおすことができたのだ」


 そうしてアイ=ファは、ちょっと照れくさそうに微笑んだ。


「父ギルは、私を正しく導いてくれた。私はこれでもいっぱしの狩人なのだと、今まで以上に確信することができた。お前には無用の心配をかけてしまったが、私はあの力比べに参加したことを有意だと思っている」


「……そうか」


「何だ、お前は喜んでくれぬのか、アスタよ?」


 再び眉を曇らせて、アイ=ファがずいっと顔を近づけてきた。


「それにやっぱり、様子がおかしい。お前がそれほどに苦しげな目つきをするのは、滅多にないことだ。私に隠し事はするなと言い置いていたはずだぞ、アスタ?」


「……そうは言っても、なかなか話しにくい話ってのもあるんだよ」


 俺の返事に、アイ=ファはものすごく不満そうな顔をした。

 そして一言、「やだ」と言い放つ。

「嫌だ」ではなく「やだ」だ。

 そのわずかな語調の変化が、アイ=ファのごくたまに見せる幼さを現していた。


「私は狩人としての誇りを得た。お前はダリ=サウティやラウ=レイや、それにたぶんドンダ=ルウからも料理の腕前をあらためて認められた。このようにめでたい日に、お前が悲しげな目をしているのは、やだ」


「いや、そんなことを言われても……」


「やなものは、やなのだ」


 アイ=ファの指先が、俺の指先をぎゅうっとつかんでくる。


「何だかアスタの存在を遠く感じる。いや、遠いというよりは――まるで、どこかに消えてしまいそうな雰囲気だ」


 アイ=ファの面に切迫した表情が浮かんできて、いっそう俺の顔に寄せられてくる。


「以前にも言ったはずだ。お前が消えてなくなってしまうなんて、私は絶対に許さないぞ、アスタ」


「…………」


「お前はかけがえのない家人だ。お前がいなくては――私は、駄目なのだ」


 アイ=ファの吐息を、頬に感じる。

 甘い香りが、鼻腔をくすぐった。

 熱が、指先から伝わってくる。


「――不快にさせたら、すまん」


 小さな声でそう言い捨てるなり、アイ=ファは俺の指先を解放し、そして、正面から俺の身体を抱きすくめてきた。


「一生、私のそばにいてくれ。私も一生、お前のかたわらにあると誓う」


 背中に回されたアイ=ファの両腕が、砕けんばかりに俺の胴をしめつけてくる。

 同じ力で抱きすくめることはできなかったが――俺は、アイ=ファの背中にそっと腕を回した。


「俺もお前のそばにいたいよ。お前が許してくれるなら」


「何を言っているのだ。ともにありたいと願っているのは、私のほうだ」


 ひとつだけ、わかったことがある。

 俺はやっぱり、このままのアイ=ファが好きなのだ。


 狩人としての誇りと、意地と、そして子どもっぽい頼りなさと、偏屈さの裏側にある素直さと――何もかも、今のままのアイ=ファが好きなのである。


 アイ=ファを失いたくはない。

 できることなら、何ひとつ危険な真似などはしてほしくない。

 だけど、それ以上に――俺はアイ=ファに、変わってほしくなかったのだ。


 狩人ではない別の仕事に、アイ=ファが誇りや信念を捧げられるというのなら、それはもちろん心から祝福する。

 だけど、そうでないのなら――アイ=ファにとって、狩人として生きることが最高の喜びであり、最高の幸福であるというのなら、それを否定するのではなく、それを支え、守る人間でありたいのだ。


 現時点の俺に言いきれるのは、たったそれだけのことだった。


 たったそれだけの思いを胸に、ようやく俺はアイ=ファの身体を力いっぱい抱きすくめることができた。


 アイ=ファが「苦しい」と文句を言い始めたのは、それからおよそ15秒後のことだった。


 そうして青の月の27日――俺がこの世界にやってきて64日目の夜は、さまざまな人間の思いをその指先にからめとりつつ、しめやかに過ぎ去っていったのだった。

アスタの収支計算表

○3期目(青の月18~27日)


・売上合計:4314a

 (屋台:2794a 宿屋:1280a 干し肉:240a)

・諸経費合計:1750.2a

 (材料費:1320.2a 人件費:390a 場所代・屋台の貸出料:40a)

・純利益=4314-1750.2=2563.8a

 (ギバの角と牙およそ213頭分)

---------------------------

○前期までの繰越金:2920.493a


今期との合計=2920.493+2563.8=5484.293a

(ギバの角と牙およそ457頭分)

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[気になる点] ダルムくん、勝負を持ちかけて欲したものは「アイの身柄」なのに対して賭けたものはなんの価値もないダルムの気持ちである「アイを狩人として認める」というもの。 自分はリスクを冒さないのに相手…
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