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異世界料理道  作者: EDA
第九十三章 翠嵐の季節
1606/1695

新たな宿場⑦~帰還~

2025.3/23 更新分 1/1

・今回の更新はここまでです。更新再開まで少々お待ちください。

 翌日――俺は、ごわごわとした寝具の上で目を覚ますことになった。

 そして、得も言われぬ不安感に見舞われて、思わず両方の手の平を眼前にかざしてしまう。いつもそこに添えられている温もりが存在しなかったため、俺は大いに心臓を騒がせてしまったのだった。


(ああ、そうか……ここは、ファの家じゃなかったんだっけ)


 俺がすっぽり収まっているのは、四角い寝台の内である。

 言うまでもなく、ここは新たな宿場の寝所であった。場所は管理棟に併設された建物の二階で、二段の寝台がふた組準備されている。俺と寝所をともにしたのは、ルド=ルウとラウ=レイとダン=ルティムの三名であった。


 俺は寝台の下段に陣取っており、隣の下段ではダン=ルティムがすぴすぴと寝息をたてている。いかにも豪快ないびきをかきそうなダン=ルティムであるが、寝顔も寝息も赤ん坊のように愛くるしいのだ。ダン=ルティムのそんなさまを目にするのは、実にひさびさの話であった。


 俺はみんなを起こしてしまわないように気をつけながら、そろそろと寝台を出る。

 そして、壁に掛けていた胴衣と首飾りを装着して、寝所の外に出てみると――扉のすぐ脇の壁にもたれて、我が最愛なる家長殿が立ち尽くしていたのだった。


「目覚めたか」と朝の挨拶もそこそこに、アイ=ファはぐっと詰め寄ってくる。


「それで、悪夢には見舞われなかったのだな?」


「うん。ご覧の通り、夢も見ずにぐっすりだったよ。母なる森と父なる西方神に感謝しなくっちゃな」


 こういった出先では、俺とアイ=ファも寝所を分けることになる。そのタイミングで俺が悪夢に見舞われたりはしないかと、アイ=ファはずっと気に病んでいたのだ。そんなアイ=ファを安心させるために、俺はめいっぱいの笑顔を届けることにした。


 アイ=ファは小さく息をついてから、意味もなく俺の頭を小突いてくる。

 その一瞬の温もりが、俺を朝から幸せな心地にしてくれた。


「では、他の面々も起こすとするか。ようやく日も出てきたようだしな」


 アイ=ファの言う通り、こちらの通路はまだずいぶん薄暗く、格子のはまった窓からようやくか細い朝日が差し込んできた頃合いであった。


「アイ=ファはずいぶん早起きだったんだな。いったいいつから起きてたんだ?」


「……ほんの少し前だ」


 アイ=ファはもういっぺん俺の頭を小突いてから、隣の寝所の扉へと向かっていく。そのしなやかな後ろ姿が見えなくなるまで見送ってから、俺もくぐったばかりの扉を開くことにした。


 そうして他なる面々にも起きてもらったら、早々に帰り支度である。

 かまど番はこれから屋台の商売であるし、狩人たちも中天からはギバ狩りの仕事であるのだ。昨日休んだ分、今日も休むという人間はひとりもいないはずであった。


「まったく、せわしねーよなー。ま、俺たちは中天までひと眠りできるから、かまど番のほうが大変なんだろうけどよー」


 あくびを噛み殺しながら、ルド=ルウはそんな風に言っていた。

 しかし、ひとたび森に入ったならば、より過酷であるのは狩人たちのほうであるのだ。生命を賭してギバを追う狩人の苦労に比べれば、かまど番の負う苦労などは何ほどのことでもなかった。


 ただそれは苦労の大きさの話であり、仕事にかける熱情に関して負けるつもりはない。また、大きな苦労を負う狩人たちのために立派な晩餐を仕上げるというのも、かまど番の重要な仕事であるのだった。


(こういう目新しい仕事を受け持つと、かまど仕事の大切さを再確認させられるよな)


 それだけでも、この遠征に参加した甲斐はあったことだろう。

 そんな思いを胸に、俺は帰り支度を進めることになった。


 全員が支度を終えたならば、列を成して階下へと向かう。

 森辺の民が二十二名に、建築屋が四名だ。おやっさんたちはトトスの車で帰る身であるが、出発の刻限はこちらと同じく朝一番であった。


「おやっさんたちは、中天を少し過ぎたぐらいに帰りつくわけですよね。屋台でお待ちしていますので、道中はお気をつけて」


「ああ。でも、これから屋台の料理の準備をするんだから、アスタたちはひと苦労だよな」


 メイトンがそんな風に言ってくれたので、俺は「いえいえ」と笑顔を返す。


「下ごしらえは頼もしい同胞に任せていますので、俺の苦労なんてたかが知れています。みなさんこそ、昼からの仕事も頑張ってください」


「ああ。アスタたちのギバ料理を食ったら、百人力さ」


 そうして建物の外に出てみると、従士の少年がすっとんできた。


「お、おはようございます! ただいま車の準備をしておりますので、少々お待ちください! 森辺の方々は、ご自分のトトスをどうぞ!」


 トトスを預けているのは、管理棟をはさんだ隣の建物だ。

 俺たちが一丸となって、そちらに歩を進めていくと――向かいの建物の扉が開いて、複数の人影が現れた。


 向かいの建物は大食堂がある施設であり、そこから出てきたのはダンロと炊事係の面々であった。

 ただし、炊事係の全員が出てきたわけではない。もともと顔馴染みであった男性に、リーダー格である大柄な男性に、補佐役めいた小柄な男性の三名である。それらの面々が、小走りでこちらに近づいてきた。


「おはようございます。わざわざ見送りに来てくださったのですか?」


 俺のほうから挨拶をすると、ダンロが「ああ」と肩をすくめた。


「ただその前に、ちょっと時間をもらえるかい? こいつらが、アスタに挨拶をさせてもらいたいんだとよ」


「挨拶?」


 いちおう別れの挨拶は、昨日の内に済ませている。管理棟での食事を終えた後、大食堂まで出向いて六名の炊事係に挨拶をさせてもらったのだ。彼らも朝早くから仕事があるという話であったので、ここで再会できるとは想定していなかった。


 それに、リーダー格の男性と顔馴染みの男性は、ずいぶん神妙な面持ちである。平常通りの様子でにやにやと笑っているダンロおよび小柄な男性とは、実に好対照であった。


「……アスタに話があるというのなら、私も同席させていただこう」


 アイ=ファがそのように言いたてると、その腕にしがみついていたリミ=ルウがにぱっと笑った。


「それじゃあ、リミがギルルのおしたくをしてくるねー! アイ=ファたちの準備が遅れると、ジザ兄がぷんすかしちゃうかもだから!」


「うむ。よろしく頼む」


 アイ=ファは優しい眼差しで、リミ=ルウの赤茶けた髪を撫でる。リミ=ルウはいっそう嬉しそうに笑いながら、トトスの眠る建物へと駆けこんでいった。


 その場には宿場の最高責任者や駐屯部隊の指揮官なども居揃っていたので、俺たちは街路の中央まで移動する。

 しかし、神妙な顔をした両名がなかなか口を開こうとしないので、俺のほうから水を向けることにした。


「みなさん、お見送りまでありがとうございます。でも、何か他にもお話があるのでしょうか?」


「ああ、うん……慌ただしいところに押しかけちまって、申し訳なかったな。どうしても、他の連中には聞かれたくなかったんでよ」


 リーダー格の男性が、ちょっともじもじしながらそう言った。

 他の連中とは、この場にいない炊事係たちのことであろうか。それらの耳をはばかる話題など、俺にはまったく想像もつかなかった。


「アスタ、あんたはすげえよな。俺たちなんかはずぶの素人で、なんにも偉そうなことは言えねえけど……それでもやっぱり、すげえと思ったよ。さすがは、ジェノスで一番の料理人だってな」


 と、リーダー格の男性がようやく語り始めた。

 しかし、いかにも前口上といった内容である。俺もじっくり腰を据えて話をうかがうべく、「いえいえ」と応じてみせた。


「ジェノスには素晴らしい料理人が居揃っていますので、俺が試食会で優勝できたのは時の運もあったと思います。でも、そんな話までご存じだったんですね」


「そりゃあこいつが、自分のことみたいに自慢してたからよ」


 リーダー格の男性に指をさされて、顔馴染みの男性は気恥ずかしそうに微笑む。試食会が開催されていた時代は、彼もちょくちょくジェノスに戻っていたのだろう。


「まあ、昨日だって俺たちは、あんたの言う通りに動くだけだったけど……これで本当に、今日からもまともに働けるのかなぁ?」


「きっと大丈夫だと思いますよ。昨日お伝えしたことは、帳面で再確認することもできますしね」


「そうか……だけど……実際のところ、俺たちの手際ってのは、どんなもんだったんだ?」


 リーダー格の男性に真剣な眼差しを向けられて、俺は目をぱちくりとさせてしまった。


「みなさんの手際ですか。それは、自分の知っている方々と比較するしかありませんけど……数年前の宿屋の方々と同じぐらいの力量かなと感じていました」


「宿屋の連中と? そいつらは、素人じゃないんだろう?」


「はい。みなさんも宿屋の方々も、毎日たくさんの料理を手掛けておられますからね。ダレイムとかで家の食事の準備をしている方々よりは、宿屋の方々に近い印象でした」


「そうか……」とリーダー格の男性が口をつぐむと、今度は顔馴染みの男性が発言した。


「でも、宿屋っていっても色々でしょう? 俺の縄張りの宿屋なんてのは、そりゃあ粗末な食事だったし……その中で、アスタたちとご縁のあった《西風亭》だけは、抜群に上出来だったもんです」


「その《西風亭》も含めての話ですよ。数年前から技量が際立っているように感じたのは、ほんの数軒ですからね。宿屋のみなさんも、この数年で格段に腕を上げたということです」


 数年前から腕が立つという印象であったのは、《南の大樹亭》のナウディスや《玄翁亭》のネイルなどである。あとはのちのち知り合うことになった《ラムリアのとぐろ亭》のジーゼや《アロウのつぼみ亭》の厨番なども、目新しい食材にすぐさま適応していたという印象であった。


「そもそも腕が立つ方々というのは、独自の伝手でシムやジャガルの食材を手にしていたんです。他の方々はろくに調味料も手に入らなかったから、トゥラン伯爵家の騒ぎが収まるまでは腕を上げる余地もなかったんだろうと思います」


「……なるほど。俺たちは、そういう連中と同等ってことか。それなら、まだしも納得がいくよ」


「それでも、炊事係としての下地はできあがっているわけですからね。今では宿屋の方々も、のきなみ素晴らしい料理を出しているはずですよ。みなさんだって、その域を目指せるはずです」


 すると、リーダー格の男性が身を乗り出してきた。


「本当に、そう思うかい?」


「ええ。森辺の民は、虚言を罪としていますので。……みなさんは、何を心配されているのですか?」


 俺の問いかけに、またリーダー格の男性は黙り込んでしまう。

 すると、小柄な男性が苦笑を浮かべながら発言した。


「お前さんがたが口を濁すから、アスタの旦那に心配させちまってるじゃねえか。いつもの勢いで、言いたいことを言っちまえよ」


「まったくだな。初心な小娘じゃあるまいしよ」


 ダンロが陽気に笑いながら、俺に向きなおってきた。


「じゃ、俺がこいつの親分として語らせていただくよ。こいつはこの先も、厨番を続けていきたいって気持ちらしいんだ」


「え? 建築の仕事が再開されても、炊事係としての仕事を続けるということですか?」


「ああ。アスタのおかげで、美味いもんを作る喜びに目覚めちまったみたいだな」


 すると、小柄な男性もリーダー格の男性の脇腹を肘で小突いた。


「こちらさんも、ご同様だよ。だから、炊事係としての芽があるかどうか、あんたに確認させてもらいたかったわけだね」


「そ、そうだったんですか。それなら……見込みは、あると思いますよ」


 俺の言葉に、うつむいていた両名がおずおずと顔を上げた。


「……本当かい? その場しのぎで甘い言葉をかけられても、こっちは困っちまうんだが……」


「だから、虚言は罪なんですってば。……まず、炊事係としての下地ができあがっていることは、さっきもご説明した通りです。調理に向いていない人間はこの段階でふるいにかけられるはずですけれど、おふたりには十分な素養を感じました。だから、あとはもう、本人の心がけ次第だと思います」


「……心がけで、腕が上がるもんなのかい?」


「もちろんですよ。逆に、心がけがなっていなければ上達は望めません」


 俺は本心から、そのように告げることができた。


「たとえばですね、数年前までは森辺にまともな腕を持つかまど番はほとんど存在しなかったんです。みなさんに手ほどきをしたトゥール=ディンたちだって、数年前までは宿屋の方々を遥かに下回る力量だったんですよ」


「ええ? トゥール=ディンって娘さんも、試食会とかいうやつで優勝してるんだろう? そんな馬鹿な話があるかよ」


「でも、それが事実なんです。トゥール=ディンは十三歳ですが、十歳までは未熟なかまど番だったということですね。それが、森辺の民として正しく生きたいという情熱を原動力にして、ここまで頑張ってきたんですよ。トゥール=ディンだけじゃなく、森辺のかまど番の全員がそういう心持ちだったんです」


 呆気に取られる面々を前に、俺はそのように言いつのった。


「森辺のみんなは手ほどきを受ける環境が整っていたから、上達が早かったっていう面もあるんでしょう。でも、環境だったら、みなさんだって負けていません。毎日たくさんの料理を作りあげるっていうのは、何よりの修練ですからね。おまけに、指南書を頼ることもできるんですから、すごく恵まれています。だからあとは、心がけひとつだと思いますよ」


「そうか……森辺の人らは、たった三年であんな力量を身につけることができたのか……」


 リーダー格の男性はまだ呆然としていたが、顔馴染みの男性はずいぶん腑に落ちたようである。彼は傀儡の劇によって、森辺の民が辿ってきた軌跡をわきまえているのだ。森辺の民がどんな思いで、美味なる料理に情熱を傾けたか――それを理解していれば、俺の言葉もすみやかに伝わるはずであった。


「俺なんざが森辺のお人らを見習うなんて、恐れ多いにもほどがあるけど……でも、わかりやしたよ。うじうじ思い悩む前に、まずは力を尽くせってこってすね」


 すると、ダンロが笑いながら男性の肩を小突いた。


「だから俺も、そう言っただろうがよ? ま、行商人を目指すつもりがないんなら、炊事係で上等じゃねえか。せいぜい立派な炊事係を目指すこった」


「ああ。それでいっぱしの腕を身につけりゃあ、人足の仕事よりも稼げるかもしれねえからな。それを励みに、踏ん張るしかねえだろ」


 小柄な男性は、あくまで飄々としている。

 俺が彼の思惑を問い質そうとすると、それを察した様子で彼は語り始めた。


「お察しの通り、俺も便乗させていただこうって心づもりだよ。俺みたいに非力な人間には、人足よりもかまど仕事が向いてるんじゃないかって思いなおしたもんでね」


「そうですか。かまど仕事なら、鉄鍋を運ぶ腕力で事足りますしね」


「おうよ。ここで厨番としての力をつけりゃあ、もっと真っ当な場所で働けるかもしれねえからな」


 それを実現したのは、レビとラーズである。彼らは真っ当に生きたいという思いを原動力にして、今や《キミュスの尻尾亭》に欠かせない厨番にのしあがったのだった。


「そんなに思い詰めるぐらいの熱情をお持ちだったら、きっと成長を望めますよ。俺も影ながら、応援しています」


 俺がそのように伝えると、リーダー格の男性と顔馴染みの男性ははにかむように笑ってくれた。

 そして、ダンロが子分の背中を盛大にどやしつける。


「それじゃあ、決まりだな。俺は行商人で、お前さんは炊事係。それぞれ違う道で、大出世を目指すとしよう」


「へ、へい。俺なんかを誘ってくれたのに、期待を裏切っちまって申し訳ありやせん」


 顔馴染みの男性がたちまち恐縮すると、ダンロは「かまいやしねえさ」とひらひら手を振った。


「もともとお前さんは、行商なんて乗り気じゃなかったろ? お前さんは、土地にしっかり根を生やすのが似合ってるよ。……俺が行商から戻ったら、お前さんの料理で腹ごしらえをさせていただくからな。それまでに、せいぜい腕を上げてくれや」


 顔馴染みの男性はまた気恥ずかしそうに笑いながら、「へい」とうなずいた。

 すると、無言でこの場を見守っていたアイ=ファが、初めて口を開く。


「私も皆が望む道に進めるように、祈っておこう。そうそう相まみえる機会はないやもしれんが……皆、息災にな」


「ああ。時間を取らせちまって、申し訳なかったな。帰り道も、気をつけてくれ」


「宿場町に戻ったら、屋台のほうにも寄らせていただくよ。家長さんも、元気でな」


「み、みなさん、お達者で。みなさんの息災を、西方神に祈っておりやす」


「いつか俺も、あんたの屋台で手本の料理を食べさせていただくよ。他のみんなにも、よろしくな」


 はからずも、それがお別れの合図となった。

 俺は「みなさん、お元気で」と、精一杯の思いを込めて一礼する。

 そうしてアイ=ファとともにきびすを返すと、最後に「ありがとうな!」という声が追いかけてきた。


 俺は歩を止めないまま、笑顔で手を振ってみせる。

 ダンロたちは、みんな屈託のない笑顔だ。その姿を目に焼きつけてから、俺は正面に向きなおった。


 向かいの建物からは、支度を済ませたトトスがぞろぞろと姿を現しているさなかである。

 そちらに到着する前に、アイ=ファがこっそり呼びかけてきた。


「どちらかといえば、私はこの地におもむくことを喜ばしく思っていなかったのだが……自分の浅はかさを反省しなければならんな」


「そんなことはないよ。俺だって、こんなに有意義な遠征になるとは想像もしていなかったさ」


「うむ。お前はまた、正しい道を選んだのだ。……他者に大きな力を添えることがかなったお前を、誇らしく思っている」


 そう言って、アイ=ファはとても優しい眼差しで俺をねぎらってくれた。

 俺もまた、満たされた思いで「うん」とうなずいてみせる。


 昨日の夜、俺はおやっさんに今回の遠征が有意義であったと伝えていたが――一夜が明けて、その度合いが倍増してしまったのだ。

 こんなに嬉しい誤算というものは、そうそうないことだろう。俺の胸中に生じた温もりは、もはや熱いぐらいに熱を高めていた。


(俺もみんなに負けないように、頑張ろう)


 そして俺もいつの日か、行商人となったダンロを屋台で迎えることになるのだろうか。

 そんな行く末を想像すると、俺はいっそうの深い感慨に見舞われてならなかったのだった。

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― 新着の感想 ―
新しい土地と出会いのおかけでアスタ達は自分の道を再確認できたと感じました。そして身分や現状はどうであれ、皆さんが進むべきと思う道を開拓してる最中ですね。 続き楽しみです。
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