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異世界料理道  作者: EDA
第六十六章 再興の日々
1133/1681

ルウの三姉の煩悶②~意想外~

2021.12/12 更新分 1/2

 その日の日中にララ=ルウと語った話を、俺はひとつ余さずアイ=ファにも伝えることになった。

 ファの家において秘密を持つことは厳禁であったし、ララ=ルウとシン=ルウはアイ=ファにとっても大事な友であったし――そして何より、俺自身が自分の気持ちをアイ=ファに伝えておきたかったのだ。


 晩餐の刻限、すべての話を聞き終えたアイ=ファは、とても静かな表情で「そうか」と言った。


「それは確かに、アスタにしか相談しようのない話であろうな。この森辺において、そのような苦悩を抱えているのはお前ひとりであるはずだ」


「うん。アイ=ファへの想いがそのまま苦悩の重さになっちゃうんだから、これは大変な重圧だよ」


 俺がおどけた言葉を返すと、アイ=ファはやわらかく微笑みながら「馬鹿者」と言った。

 俺たちはもう、深刻に思い詰める時期は脱したのだ。

 いつかアイ=ファが、狩人としての仕事をやり終えたと思える日が到来したならば、婚儀をあげる――その約定からもたらされる希望と幸福感によって、俺は苦悩と無縁でいられるのだった。


「しかしララ=ルウは、これからようやく15歳となるのだ。15歳になってすぐさま婚儀をあげる人間もいなくはなかろうが……ルウ家などはそれほど婚儀を急がない気質であるし、心配はなかろう」


「うん。シーラ=ルウだって、婚儀をあげたのは19歳だもんな。仮にその年齢まで待つとしたら、4年間だ。ララ=ルウだったら4年もかからずに、気持ちを固められるんじゃないのかな」


「うむ。下手をすれば10年後かなどと言われているアスタに比べれば、シン=ルウの心労も軽かろう」


 そう言って、アイ=ファはじっと俺の顔を見つめてきた。


「しかし、いまだ15歳にもなっていないララ=ルウでは、不安に思うのも当然だ。私とて……お前を信じることができなければ、不安に押し潰されてしまおうからな」


「それは俺も同じことだよ。……まあ、アイ=ファがダルム=ルウを可愛いって言ったぐらいで、あたふたした姿を見せちゃったりもしたけどさ」


 アイ=ファはもういっぺん「馬鹿者」と言って、今度は俺の頭を優しく小突いてきた。


 そうしてファの家の夜は、とても穏やかに過ぎ去って――翌日である。

 青の月の22日で、ララ=ルウの生誕の日はもう3日後だ。

 ララ=ルウは、この日の内にシン=ルウに心情を打ち明けると言っていた。それでも何も問題は生じたりはしないと、俺はそのように信じて朝の仕事に取り組み、ルウの集落に向かったのだが――


 その場には、時ならぬ騒乱が巻き起こっていた。

 驚くほどの人数が寄り集まって、広場で歓声をあげていたのである。


 俺はこういった光景を、これまでに何度となく目にしている。

 これは、狩人の力比べを見守る人々の様相であるはずであった。


「い、いったいどうしたのでしょう? まるで収穫祭のような騒ぎであるようですが……」


 一緒に荷車を降りたトゥール=ディンも、不安げに広場の様相を見守っている。

 そうして俺たちが立ちすくんでいると、人垣の輪から外れたシュミラル=リリンがこちらに駆け寄ってきたのだった。


「アスタ、少々、お待ちください。もう間もなく、勝負、つくはずです」


「シュ、シュミラル=リリンまでいらしていたんですね。これはいったい、何の騒ぎなのでしょうか?」


「シン=ルウ、ディグド=ルウ、どちらが家長、相応しいか、力、比べているのです」


 それだけ言って、シュミラル=リリンは申し訳なさそうに一礼した。


「申し訳ありません。この勝負、見届けるべし、言われていますので、戻ります。説明、またのちほど」


 俺はシュミラル=リリンを追って、その人垣にまぎれこむことにした。

 その向こう側では、まぎれもなくシン=ルウとディグド=ルウが闘技の力比べを繰り広げている。


 ディグド=ルウはルウの血族でも屈指の狩人であり、前回の闘技の力比べでは勇士の座を授かっていた。その後、余興や修練の力比べでも、シン=ルウたちはなかなか勝てなかったのだと聞いている。


 しかしシン=ルウは、ディグド=ルウと互角の戦いを見せているようであった。

 ディグド=ルウは体格でまさっている上に、瞬発力というものが尋常でない。静から動への移り変わりが凄まじく、そのリズム感が独特であるようで、多くの狩人たちが敗北を喫してきたのである。


 そんなディグド=ルウを相手に、シン=ルウが互角の勝負を見せていた。

 どちらかというと小柄で細身の部類であるシン=ルウはその敏捷性を活かして、ディグド=ルウの猛攻を回避している。そして自分も隙あらば攻撃を仕掛けて、ディグド=ルウをぐらつかせていた。


 遠目にも、ディグド=ルウは古傷だらけの顔を勇猛なる笑みに歪めている。

 いっぽうシン=ルウは、若武者のような凛々しさであり――そしてどちらも、すでに全身が汗だくになっていた。


「よー、アスタたちも来ちまったか。その前に勝負をつけようって話だったのに、ずいぶん長引いちまったなー」


 と、視線は勝負の場に向けたまま、ルド=ルウがこちらに近づいてきた。


「ってことは、もう四半刻は経ってるはずだなー。ディグド=ルウは少しずつ動きが鈍ってきてるから、こいつはシン=ルウが勝っちまうかもしれねーぞ」


「ル、ルド=ルウ、これは何の騒ぎなんだい? シン=ルウとディグド=ルウは、何のために力比べをしているのさ?」


「だから、どっちが家長になるかを決める力比べだよ。……あー、そっか。アスタたちは、まだ話を聞いてなかったのか」


 あくまで視線は動かさないまま、ルド=ルウはそう言った。


「実はな、ルウ家は家を分けることになったんだよ」


「い、家を分ける?」


「ああ。血族に新しい氏を与えて、家を分けるんだ。ザザも血を分けてジーンの家を生んだって話だったろ? 森辺では家人が増えすぎると、そうやって家を分けるんだよ」


 森辺のそういった習わしについては、俺も聞き及んでいる。

 しかし、それでシン=ルウとディグド=ルウが力を比べているということは――


「そ、それじゃあこの力比べで勝ったほうが、新しい氏族の家長になるっていうことかい?」


「あー。本家に血が近い3つの分家に、新しい氏が与えられるんだけどよ。その中でも血が近いのはシン=ルウとディグド=ルウの家だから、ふたりのどっちかを本家の家長にすることにしたんだとよ」


 では――いずれにせよ、シン=ルウが新たな氏を授かることは、すでに確定しているのだ。

 さっぱり理解の追いついていない俺は、ひたすら困惑するばかりであった。


「ちょ、ちょっと待ってくれよ。それじゃあ、新しい氏を授かった人たちは――」


「待て。終わりそうだ」


 ディグド=ルウが、汗を散らしてシン=ルウに詰め寄った。

 まったく疲弊など感じさせない、旋風のごとき俊敏さである。

 その指先がシン=ルウの胸ぐらをひっつかみ、そのまま押し倒すかに見えたが――シン=ルウは死に物狂いで片足を踏まえ、相手の胸ぐらをつかみ返した。


 そうしてシン=ルウが身をひねり、相手の腰を自分の腰に乗せると、ディグド=ルウの長身がふわりと浮きあがった。

 ディグド=ルウはもがいたが、それをねじ伏せるようにして、シン=ルウが相手の身を地面に叩きつける。


 広場に熱風のごとき歓声がわきかえった。

 そしてそこに、ドンダ=ルウの重々しい声がかぶせられる。


「新たな眷族の家長は、シン=ルウに定められた! この決定に不服のある者は名乗り出るがいい!」


 名乗り出る者はなく、誰もがシン=ルウの勝利を祝福している。

 シン=ルウの手を借りて立ち上がったディグド=ルウは、いつも通りのふてぶてしい笑顔でシン=ルウを見下ろした。


「いまだに3回に2回は俺が勝つのに、ここぞという勝負で負けてしまったな。……しかしこれこそが、母なる森の思し召しだ。分家の家長ディグド=ルウは、シン=ルウを新たな本家の家長と見なし、その言葉に従おう」


「うむ。俺が若輩であることに変わりはないので、ディグド=ルウにも力を尽くしてもらいたく思う」


 歓声の隙間から、そんなふたりのやりとりが聞こえてきた。

 ルド=ルウは、はしゃいだ顔で手を叩いている。それを邪魔する申し訳なさを覚えつつ、俺はそれでも黙っていられなかった。


「ねえ、ルド=ルウ。新しい氏族になったら、住まいはどうなるんだい? これまで通り、同じ集落で過ごすのかな?」


「んー? それじゃあ、家を分ける意味がねーだろ。違う場所に狩り場を作って、家もその近くに移すんだよ」


「そ、そうなのかい? でも、サウティなんかはヴェラと同じ集落で過ごしてるし……」


「サウティも、いくつかの眷族の家を別の場所に移すかもとか言ってたろ。ま、それは飛蝗のせいだけどよ。……とにかく、今のルウ家の狩り場は手狭になってきたから、シン=ルウたちは新しい家と狩り場に移るはずだよ」


 俺は、二の句が告げなかった。

 脳裏に浮かぶのは、もちろんララ=ルウの顔である。


 そうして俺が、呆然と立ちすくんでいると――当のララ=ルウが、荷台を引いてこちらに近づいてきたのだった。


「力比べが終わったから、あたしたちも出発できるよ。待たせちゃってごめんね、アスタ」


「う、うん。あの、ララ=ルウ――」


「ごめん。今はあたしも、考えがまとまらないんだ」


 ララ=ルウはぎゅっと眉根を寄せて、すがるように俺を見つめてきた。


「屋台の商売が終わったら、また話を聞いてもらえる? その間に……あたしも、気持ちを落ち着かせるから」


「うん。わかったよ」


 俺は精一杯の思いを込めて、そんな風に答えるしかなかった。

 ララ=ルウは、涙がこぼれるのを懸命にこらえているようであった。


                   ◇


「家を分けようかって話は、けっこう前から出てたんだよなー。なんせルウ家は猟犬のおかげで魂を返す狩人も少なくなったし、ミダ=ルウだのジーダ家の連中だの、新しい家人をどっさり迎えることになったからよー」


 屋台の商売中、そんな話を聞かせてくれたのは、ルド=ルウであった。

 今日は飛蝗が出現して以来、2度目の休息の日であるそうなのだ。これまでも猟犬たちには休みを与えていたが、狩人たちは増殖したギバや狂暴化したムントの始末に追われていたのだという話であった。


「で、猟犬と家人が増えたおかげでばんばかギバを狩れるようになって、いっそう狩り場が手狭になっちまったわけだな。そんでもって、飛蝗を探すために狩り場じゃねー場所にまで足をのばすことになったろ? それで、新しい狩り場にちょうどいい場所を見つけられたらしいんだよ。そこを狩り場にするんなら、シン=ルウたちは北に歩いて四半刻ぐらいの場所に集落を開くことになるんじゃねーのかなー」


 歩いて四半刻なら、荷車で5分ていどの距離だ。

 しかし、実際の距離はあまり関係ない。問題は、新しい氏族の人々が別の場所に移り住むという事実であった。


「新しい氏族に選ばれたのは、シン=ルウの家とディグド=ルウの家と、あとは親父の親父の弟の家だってよー。親父の親父の弟なんて、大して血が近いわけでもねーけど、親父の妹も嫁入りしてたから選ばれたみてーだなー。ダルム兄なんかは逆に血が近すぎるから、こういうときにはルウに残されるのが習わしらしーぜ」


「そっか……シン=ルウの家の家人であるミダ=ルウも、新しい氏族に移ることになるわけだね?」


「あー、3つの家の家人は、まるまる移されるよ。それでもルウには本家と4つの分家が残されるから、十分以上だろ」


 とはいえ、そのうちの2つは2名しか家人のいないダルム=ルウ家と、4人しか家人のいないジーダ家であるわけだが――他の氏族に比べても、決して少ないほうではないのだろう。もともとルウ家は6つもの眷族を持ちながら、単独で40名以上の家人を抱える大氏族であったのだ。


「アスタは、浮かねー顔だなー。どうせ祝宴とかではルウの広場に集まるんだし、アスタにはあんまり関係ねーんじゃねーの?」


「うん、まあ、それはそうなんだけど……でも、家の場所も氏も変わるんだから、やっぱり大ごとだよね」


「そうそう、新しい氏ってのは、初代の本家の家長の名前がつけられるんだよなー。シン=ルウなんかはルウの名前を残して、シン・ルウ=シンになるわけだ。そんでもって、これからは女衆にしか『シン』って名前をつけられなくなっちまうんだよ。なんか、笑っちまうよなー」


 俺は、やっぱり笑えなかった。ルド=ルウの言葉を聞きながら仕事に勤しみつつ、頭の中はララ=ルウのことでいっぱいであったのだ。


「……もしかしてだけど、アスタはララのことを心配してんのかー?」


 と、ルド=ルウが横合いから俺の顔を覗き込んできた。


「なんかあいつ、ここ最近は難しい顔をしてたもんなー。生誕の日が目の前だから、いよいよ婚儀のことを考え始めたみてーだなー」


「うん。俺の口からは、なんとも言えないけど……」


「そういえば、ララは昨日、いきなりファの家に行ったんだって? それで何やかんや、アスタに相談したってわけかー」


 ルド=ルウは頭の後ろで手を組むお得意のポーズを取りながら、視線を上空にさまよわせた。


「んー……ひょっとしたら、親父もララのことがあったから、いきなりこんな話を持ちだしたのかもなー」


「え? それはどういう意味だい?」


「いや。飛蝗の騒ぎでいい狩り場を見つけて以来、眷族の家長連中とは家を分ける話を進めてたみたいだけどよー。まだムントの騒ぎも完全に収まってねーのに、いきなり新しい家長を決めさせるなんて、話が急だなーと思ってたんだよ」


 考え考え、ルド=ルウはそんな風に言いたてた。


「だって、新しい集落を切り開くには人手がいるんだから、次の休息の期間を待たないといけないんだぜー? 俺たちは黄の月に収穫祭をやったばっかなんだから、次の休息の期間なんてまだまだ先だろー? そんな急いで家を分ける話を進める必要はねーはずなんだよなー」


「なるほど。でも、そこにララ=ルウがどう絡んでくるんだい?」


「だから、シン=ルウに嫁入りを願うなら、違う場所で暮らす覚悟を固めろってことだよ。婚儀をあげた後で家を分けたら、ララは覚悟もへったくれもなく、くっついていくだけになっちまうからなー。だから、ララが15歳になる前に、家を分ける話だけは伝える必要があったってわけだ」


「覚悟か……それだけ聞いてると、ドンダ=ルウはララ=ルウがシン=ルウに嫁入りすることを反対しているように聞こえちゃうんだけど……」


「反対まではしてねーさ。でも、シン=ルウと俺たちは血が近いだろ? 何せ、親父同士が兄弟なんだからよ。普通、親同士が兄弟の相手とは婚儀を避けるもんなんだ。禁忌ってわけじゃなく、なるべく避けるべしってていどの習わしだけどよー」


「そうなのかい? でも、シーラ=ルウとダルム=ルウだってまったく同じ境遇だよね。何せ、ララ=ルウとシン=ルウの兄弟同士なんだからさ」


「だから、なおさらなんじゃね? 本家のふたりが同じ分家のふたりとそれぞれ婚儀をあげるなんて、それこそ聞かねー話だもんよ。それで親父も、ララに覚悟を示させようって思い立ったんじゃねーの?」


 そこでルド=ルウは、「にひひ」と白い歯をこぼした。


「ま、それでララが別の場所で暮らすようになったら、さびしがるのは親父のほうなんだけどなー。でも、家を分けるならシン=ルウとディグド=ルウの家は外せねーし、それでも自分は森辺の族長だからって、さんざん思い悩みながら家を分けることにしたんじゃねーのかなー」


「……そこで笑えるのが、ルド=ルウの強みだよね」


「おー? 俺のこと、馬鹿にしてんのかー?」


「いや、感心してるんだよ。ルド=ルウの心の頑丈さにさ」


 ルド=ルウがどれだけ家族や友人に情が厚いかは、俺だって存分にわきまえている。だからルド=ルウは決して薄情なわけではなく、すべての家族を思いやりながら笑い飛ばせるタフネスさを有しているということなのだろう。


 しかし、当のララ=ルウはどれほど思い悩んでいるのか。

 そしてシン=ルウもまた、どのような心情で新たな氏族になるべしというドンダ=ルウの言葉を聞いていたのか。

 それを思うと、俺は心が重くなってしかたがなかったのだった。


 そうして時間はのろのろと過ぎていき――ついに終業時間である。

 俺が後片付けを済ませていると、厳しく表情を引き締めたララ=ルウが身を寄せてきた。


「アスタ。今日の夜、ファの家に行ってもいい? ……シン=ルウと一緒に」


「シン=ルウと一緒に? こっちは別にかまわないけど……でも、それでどうするのかな?」


「シン=ルウと話したいけど、ひとりじゃ勇気が出ないんだよ。それに、他の家族には聞かせたくないし……」


 と、厳しい表情を懸命に保ちながら、ララ=ルウは頼りなげに瞳を曇らせた。


「何も口は出さなくていいから、ただアスタたちに見守ってもらいたいの。……ごめん。血族でもないのに、こんな風に甘えちゃって……」


「そんなの、全然かまわないよ。それで少しでもララ=ルウの力になれるなら、嬉しいぐらいさ」


「本当に? ……あ、でも、まずはアイ=ファの了承を得ないといけないよね」


「ああ、俺もつい了承しちゃったね。でも、ララ=ルウとシン=ルウのためだったら、アイ=ファも絶対に嫌とは言わないはずだよ」


 ララ=ルウは少しだけうつむいて、「ありがとう」とつぶやいた。

 そうして俺たちは、森辺の集落に帰還したのだった。


 ルウの集落に帰りついてみると、そこにはまだまだ熱気が渦巻いていた。狩りの仕事を休んだために、眷族の人々もその大半が居残って、シン=ルウたちに祝福の言葉を届けていたのである。


 新たな氏族に選ばれた家の人々が広場の真ん中に集められて、お祝いの言葉を授かっている格好である。きっと家を分けるというのは繁栄の証であり、おめでたいことであるのだ。それに、森辺においてはザザからジーンが生まれたのを最後に、数十年ばかりは新たな氏族も生まれていないという話であったのだった。


 過酷なモルガの森辺に移り住んで以来、人口の減少にともなって、氏は滅んでいくいっぽうであったのだ。

 だからこれは、まぎれもなく吉事なのである。

 それを心から祝福できるように――俺は、ララ=ルウとシン=ルウの問題が解決することを切に願っていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱりジェイ=シンの親父はこいつか
[良い点] ついにシン家誕生か!
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