祝宴の舞台裏(下)
2021.10/9 更新分 1/1
スフィラ=ザザたちがリーハイムやルウの血族らとしばし歓談を楽しんでいると、見慣れぬ若い貴族たちがわらわらと寄ってきた。どうやらいずれも剣技を磨いている貴公子であるらしく、彼らはゲオル=ザザとの交流を求めていた。スフィラ=ザザが身をつつしんでいる期間に、ゲオル=ザザはこういった者たちと縁を深めていたのだ。
「では俺は、しばしこやつらと酒を酌み交わすことにするか。スフィラたちは、どうする?」
「わたしは適当に広場を巡っていますので、また後で落ちあいましょう。じきにトゥール=ディンもこちらにやってくるでしょうしね」
ということで、スフィラ=ザザはリッドの女衆とレイリスだけをともなって、その場を離れることにした。あとはまだ2名ほど、執念深く後をついてくる貴婦人たちがいる。
そうして別なる料理の卓に到着すると、そちらには新たな貴婦人の群れが待ちかまえていた。
貴婦人ばかりでなく貴公子も入り混じっており、そのうちのひとりが「おお!」と大きな声をあげてくる。
「レイリス殿! ようやくお会いできたな! ずいぶんお美しい女性をお連れではないか!」
「デヴィアス殿、むやみに容姿を褒めそやすのは、森辺の習わしに背く行いですよ」
レイリスは苦笑しながら、その場にいる者たちを簡単に紹介してくれた。
デヴィアスなる男は、レイリスと同じような武官の礼服を纏っている。その強く明るく光る大きな目が、食い入るようにスフィラ=ザザを見つめてきた。
「なるほど、ゲオル=ザザ殿の姉君か! 言われてみれば、昨年の祝宴にてご挨拶をさせていただいた覚えがあるぞ!」
「昨年の祝宴? 闘技会でしょうか、舞踏会でしょうか?」
「むろん、闘技会だ! これだけお美しい女人に見覚えていただけないというのは、なんとも痛恨の思いだな!」
「ですから、デヴィアス殿、どうか森辺の習わしを……」
レイリスは申し訳なさそうな顔をしていたが、べつだん彼に責任のある話ではない。スフィラ=ザザはかまわずに、他の人々と交流を結ぶことにした。
が、その場で出くわした貴婦人たちは、デヴィアスよりも熱のこもった眼差しをスフィラ=ザザに向けてくる。そこに後をついてきた2名も加わって、スフィラ=ザザはよくわからない賞賛の渦に巻き込まれることになってしまった。
「スフィラ=ザザ様と仰るのですね。宴衣装が、とてもよくお似合いですわ」
「とても綺麗な髪……本当に、何も特別な手入れをしておりませんの?」
「城下町では肌を白く保つのが貴婦人のたしなみとされているのですけれど、スフィラ=ザザ様のようにお美しい姿を拝見してしまうと、褐色の肌に憧れてしまいますわ」
これではますます、舞踏会の際のアイ=ファのようである。
スフィラ=ザザが辟易していると、救いの手を差し伸べてくれたのは、やはりレイリスであった。
「さ、自己紹介が終わったのでしたら、こちらの料理もいただきましょう。ちょっと失礼いたしますよ」
レイリスの作ってくれた道を辿り、リッドの女衆とともに卓の上の料理を取り上げる。それは、ギバ・カツをポイタンの生地にはさんだ料理であった。
「あっ! アイ=ファ様とアスタ様よ!」
と、貴婦人のひとりが弾んだ声をあげる。
ほどなくして、その両名がこちらに近づいてきた。
「アスタ殿、ようやくご挨拶ができました。あらためまして、おめでとうございます」
「ありがとうございます。……あ、スフィラ=ザザもご一緒だったのですね」
アスタが無邪気な笑顔を向けてきたので、スフィラ=ザザも目礼を返してみせた。
そのかたわらにあるアイ=ファは、やはり光り輝くような美しさである。案の定、貴婦人たちは倍する勢いでアイ=ファに対する賞賛の言葉を並べ始めた。
「……アイ=ファというのは、本当に美しい女衆ですね」
スフィラ=ザザはレイリスにだけ聞こえるように潜めた声で、そんな風に言ってみせた。
レイリスは、困ったように微笑を浮かべる。
「本人に対してでなければ、賞賛することも許されるのでしょうか? それでしたら、同意いたします」
「ええ。アイ=ファはどうして、あれほどに美しいのか……最近は、ちょっと不思議に思えるほどであるのです」
「不思議に? 何が不思議であるのでしょう?」
「いえ。アイ=ファは見るたびに、美しさが増していくようですので……レイリスもわたしと同じように、アイ=ファとは一定の期間を置いて顔をあわせていたのでしょう? そういった思いに駆られたことはないのですか?」
「そうですね……」と、レイリスは思案顔になった。
「そのように言われてみると、確かにアイ=ファ殿という御方は、少しずつ印象が違ってきているように思います。それにまた、どのような場でお会いするかによっても印象が異なりますので、なかなか判断が難しいのですが……ただひとつ、思い当たることがあります」
「え? それは、どういったお話でしょう?」
「いえ、あくまでわたしの印象に過ぎないのですが……アイ=ファ殿は日を重ねるごとに、アスタ殿への情愛が深まっているのではないでしょうか?」
そう言って、レイリスは明るく微笑んだ。
「女性は恋をすると美しくなる、などという言葉が城下町にあるのですが。わたしがアイ=ファ殿に感じるのは、アスタ殿への深い情愛です。ともに聖域までおもむいた際などは、まるで姫君をお守りする騎士さながらでありましたし……今日などはアスタ殿がまたとない栄誉を授かることになり、アイ=ファ殿もひときわ幸福な心地となって……それが外面にも表れているのではないでしょうか?」
スフィラ=ザザはレイリスの言葉を噛みしめながら、あらためてアイ=ファのほうに視線を転じた。
貴婦人たちに取り囲まれながら、アイ=ファは常にアスタの存在を気づかっているように感じられる。それは確かに、力なき家人を守る狩人としての精悍さを保持しつつ――同時に、恋焦がれる男衆のそばに控える女衆としての甘やかさを漂せていた。
アイ=ファがアスタを見つめる眼差しは、とても優しい。
それはドムの若き夫妻に負けないぐらい、長年連れ添った伴侶を思わせる慈愛のようでもあり――そしてまた、いまだ婚儀もあげていない若い娘としての、瑞々しい思慕の情が同居しているように感じられた。
(そうか。アイ=ファがひときわ美しく見えるのは……こうしてアスタを見つめているときなんだ)
スフィラ=ザザは、何かがすとんと腑に落ちたような気がした。
アイ=ファはひたむきなまでの情愛を、アスタに傾けている。その心のありようがあまりに美しいために、外面までもが美しく見えるのではないかと――さしたる根拠もなく、そんな風に思えてしまったのだった。
「……ありがとうございます。レイリスのおかげで、疑問が解けたように思います」
スフィラ=ザザが笑顔を向けると、レイリスはいくぶん動揺した様子で身じろいだ。これまでには、まったく見せなかった挙動である。
「どうしました? わたしは何か、おかしなことでも言ってしまったでしょうか?」
「いえ、決してそのようなことはないのですが……」
そこで言葉を濁らせて、レイリスは口をつぐんでしまった。
そうしてしばらくその場で語らったのち、アスタとアイ=ファは別の卓に向かっていく。するとリッドの女衆が、スフィラ=ザザをおずおずと見上げてきた。
「あの、トゥール=ディンも自由な身となったのでしたら、お声をかけておきませんか?」
「そうですね。きっとゲオルと出くわすことになるでしょうけれど、そうしましょう」
スフィラ=ザザはその場の貴婦人や貴公子たちに別れを告げて、その場を離れることにした。
ようやく後をついてくる貴婦人もなくなって、レイリスと3人きりである。しかし何故だかレイリスは口数が少なくなっており、その分はリッドの女衆が楽しげに場をつないでくれた。
その後、トゥール=ディンやオディフィアたちと合流したのちも、レイリスの様子に変わりはない。表面上は如才なく振る舞いつつ、どこか物思いに沈んでいるような雰囲気であった。
「あの、レイリスはどこかお加減でも悪いのでしょうか?」
トゥール=ディンに対する祝福を思うさま遂げたのち、スフィラ=ザザはこっそりとそのように問い質すことになった。
レイリスは申し訳なさそうに微笑みつつ、「いえ」と首を横に振る。
「決してそういうわけではないのですが……あの、スフィラ=ザザ、少しだけ時間をいただくことはできませんでしょうか?」
「時間を? わたしたちは、もう一刻近くも行動をともにしているはずですが」
「はい。できればスフィラ=ザザとふたりきりで、お話をさせていただきたいのです。……決してかつての誓いをないがしろにするような内容でないということは、お約束いたします」
スフィラ=ザザはいくぶん迷ったが、最後には了承することにした。レイリスの真情を疑いたくはなかったし、突如として様子の変わった彼を放っておくこともできなかったのである。
スフィラ=ザザはリッドの女衆にだけひと声告げて、その場を離れることにした。
リッドの女衆も少しだけ不安そうな顔をしていたが、何も言わずに送り出してくれた。
「静かな場所で語らいたいので、露台まで出向きましょうか」
そう言って、レイリスはスフィラ=ザザをその場所まで案内してくれた。
露台とは、外に張り出した空間のことである。頭上には屋根が掛かっており、外との境には腰ぐらいの高さの柵が設けられている。室内とも室外とも言い難い、森辺の家屋には存在しない空間であった。
レイリスがそちらに足を踏み出そうとすると、意想外の者たちが現れる。
アスタとアイ=ファである。
その姿を見たスフィラ=ザザは、思わず息を詰まらせてしまった。
それほどに、アイ=ファが美しく見えてしまったのだ。
アイ=ファたちとはついさきほども言葉を交わしたばかりであるのに――この短い時間で、アイ=ファは見違えるほど美しく見えた。
そしてかたわらのアスタも、アイ=ファに負けないぐらい幸福そうな面持ちになっている。
人混みを離れて、ふたりきりでゆったりと語り合い――それでまた、情愛が深まったということなのだろうか。
レイリスに道を譲られたアスタは、少し気恥ずかしそうな顔をしながら「あ、どうも」と頭を下げ、アイ=ファとともにそそくさと立ち去ってしまった。
「……朝からご多忙な時間を過ごしていたアスタ殿らも、ようやく心を安らがせることがかなったのでしょうかね」
そんな風に語りながら、レイリスはスフィラ=ザザを露台という場所に導いてくれた。
それなりに広々とした空間であるが、他に人影は見当たらない。あちこちに明かりが灯されていたため、目の頼りに不自由はなかった。
「……申し訳ありません、スフィラ=ザザ。さきほどは、いくぶん心を乱してしまいました」
露台の奥にまで歩を進めて、柵のところにまで到着すると、レイリスはそのように語り始めた。
「心を乱すとは? レイリスは、急に様子が変わられたように思うのですが」
「はい。スフィラ=ザザが、思いも寄らぬほど屈託のない笑顔をお見せしてくれたので……わたしもついつい心を乱してしまったのです」
レイリスの様子が変わったのは、アスタやアイ=ファについて語らっていた際だ。
アイ=ファがどうしてあれほど美しく思えるのか、スフィラ=ザザはレイリスの言葉でその答えを得たような気持ちになり――それで、喜びの笑みをこぼしただけのことであった。
「ですが何も、かつての誓いが揺らいでしまったわけではありません。ただスフィラ=ザザは、まだわたしの知らない表情をお持ちであったのだと、そういった驚きにとらわれてしまい……それでつい、心を乱してしまったのです」
「わたしはそれまでも、たびたび笑みをこぼしていたように思うのですが……それと何か違いでもあったのでしょうか?」
「はい。どこか幼子を思わせるような、あどけない笑みであったのです。てらいのない、とても無防備な笑顔というか……普段のスフィラ=ザザとは、また異なる魅力であったように思います」
スフィラ=ザザは、また頬を熱くすることになってしまった。
「それはいくぶん、森辺の習わしに触れかねないようなお言葉であるように思います。レイリスは、また軽口を叩いておられるのでしょうか?」
「いえ。森辺で禁じられているのは、容姿を褒めそやすことでしょう? わたしがいま語ったのは、スフィラ=ザザの内面についてです。その内面を魅力的と語ることも、森辺においては禁忌なのでしょうか?」
「…………」
「ああ、すみません。本当に、悪気があってのことではないのです。どうか怒らずに、わたしの話を聞いていただけませんか?」
「話とは、なんでしょう? これ以上、語ることは残されていないように思うのですが」
「いえ。わたしは今日、何としてでもスフィラ=ザザにお伝えしたいお話があったのです」
レイリスの眼差しは穏やかであったが、同時にとても真剣であった。
しかし決してかつての誓いを破ることはないはずだと、スフィラ=ザザは気持ちを引き締める。
「ただ、なんとも取り止めのない話ですので、スフィラ=ザザには呆れられてしまうかもしれませんが……どうかそれでも、最後まで聞いていただけますでしょうか?」
「ええ、お聞きします。レイリスがそうまで思い詰めておられるのでしたら、それを聞き届けずに帰ることはできません」
「ありがとうございます」と、レイリスは微笑んだ。
かつてのスフィラ=ザザであれば、それだけで心臓をわしづかみにされそうな笑顔であった。
「わたしがこのような話を思いついたのは……アスタ殿とともに聖域まで出向いた際のことになります。そちらの顛末は、スフィラ=ザザものきなみご存じなのでしょうか?」
「ええ。族長筋の人間として、細部もらさず聞き届けたように思います」
「そうですか。わたしはあの日の別れ際、アスタ殿らとティアなる聖域の民とのやりとりで、大きく心を動かされてしまったのです」
スフィラ=ザザの姿を真っ直ぐ見つめながら、レイリスはそのように言葉を重ねた。
「外界の民と聖域の民は、友になることさえ許されません。ですが、いずれ大神アムスホルンが目覚めたならば、すべての民が同胞となることを許される……アスタ殿らはそういった希望を胸に生きていくのだと、涙されていたのですね」
「ええ、聞きました。あのアイ=ファまでもが子供のように泣いていたと聞き、わたしもずいぶん驚かされたものです。……アイ=ファたちは、ティアなる聖域の民とそこまで絆を深めていたのですね」
「はい。そしてわたしは、子供のように泣きじゃくるアスタ殿らの姿を見て、とても美しいと思い……そして、とても羨ましいように思えたのです」
「羨ましい?」
「はい。大神アムスホルンがいつ目覚めるかなど、誰にも知るよしはありません。それでもアスタ殿たちは、それが大いなる希望であると仰っていたのです。もしも自分たちの生あるうちにその願いがかなわずとも、自分の子や孫たちが同胞となれるのなら、それにまさる幸福はない、と……そうまで深く他者を愛し、そして強く生きていけるアスタ殿たちのことを、とても美しいと思い、とても羨ましく思ったのです」
そう言って、レイリスは何かを噛みしめるように微笑んだ。
「思えば……わたしがスフィラ=ザザへの想いを本当の意味で乗り越えることがかなったのは、あの日であったのかもしれません。アスタ殿らの強さと清廉さに胸を打たれて、自分を恥じることになったのです。そして、アスタ殿たちのように強い気持ちで、スフィラ=ザザと向き合いたい、と……わたしはそんな風に願うことになりました」
「そう……だったのですね」
「はい。それでわたしは、こうしてスフィラ=ザザと再会することがかないました。もしもあの日、アスタ殿らの姿を見ていなかったら……わたしはいまだスフィラ=ザザへの想いを断ち切ることができず、今日の祝宴からも逃げていたかもしれません」
これほどに誠実で精悍なレイリスが、自分のことなどでそうまで思い詰めることになったのだ。
スフィラ=ザザは、激しい痛みと誇らしさを同時に味わわされることになった。
「ほんの数回しかお会いしていないのに、わたしはそれほどにスフィラ=ザザを思慕することになってしまいました。あなたはそれほどに素晴らしい御方であるのです、スフィラ=ザザ」
「それは……あまりに過ぎた言葉であるように思うのですが……」
「いえ。少なくとも、わたしにとってはそうであるのです。ですがわたしは今の身分を捨てることはできませんし、あなたを城下町に招きたいとも思いません。わたしが愛したのは、森辺の民のスフィラ=ザザであるのですから……あなたが森辺を捨てて貴族に嫁入りすることなど、どうしても望むことができないのです」
とても真剣で、とても優しげな眼差しをしながら、レイリスはそう言った。
「ですがこの先は、世界もどのように移り変わっていくかわかりません。10年後か、20年後か、50年後か、100年後か……いつかは森辺と城下町との境も、もっと薄くなるように思うのです。そのときには、森辺の民と貴族が婚姻を結ぶことも、自然な行いと見なされるかもしれません。そのときに、自分の子や孫たちがスフィラ=ザザの子や孫たちと添い遂げることができたら、どれほど幸福なことかと……わたしも、そんな風に考えることができるようになりました」
「レイリス……」
「いえ、何も婚姻を結ぶまで至らなくともいいのです。ただ、婚姻を結べるぐらい対等な立場で、おたがいを慈しみ合うことができたら、それはきっと何にもまさる幸福でしょう。ザザ家とサトゥラス伯爵家が、いつかそのような絆を結べるように……今の時代に生きるわたしは、今の時代に相応しい形で、あなたがたと正しく絆を深めたく思います」
そう言って、レイリスは晴れやかに微笑んだ。
「スフィラ=ザザ、いつかあなたが婚儀をあげるときは、わたしを招待してくださいませんか? そして、わたしがいずれ婚儀をあげる際にも、あなたを招待したく思います」
「ええ……お約束します、レイリス。でも……」
と、スフィラ=ザザは心中に広がる気持ちに従って、微笑んだ。
「それにはまず、あなたより魅力的な男衆を探さなくてはならないのです。これがとても、簡単な話ではないのです」
「それは、わたしも同じことです。いったいどちらが先に、そのような幸運を手にすることができるのか……すべては西方神と森の思し召すままに、ですね」
燭台の瞬く薄明りの中で、スフィラ=ザザとレイリスは微笑み合った。
スフィラ=ザザの胸には、また大きな熱が宿されている。恋心とは異なるそれが、いったい如何なる感情であるのか――スフィラ=ザザにはやっぱり名前をつけることも難しかったが、それでもまったく困ることはなかった。
何にせよ、それはレイリスと出会うことのできた喜びに起因するのだ。
これだけ情動を揺さぶられながら、レイリスと婚儀をあげたいという気持ちは浮かばない。ただスフィラ=ザザは、レイリスに誰よりも幸福になってほしかった。それは血を分けた弟に対する思いに負けないぐらい、確固たる気持ちであったのだった。
(そして、いつの日か……)
いつの日か、自分の血族がレイリスの血族と結ばれることが許されるようになるならば――それは確かに、身が打ち震えるほど幸福なことなのかもしれなかった。