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さあ、ゲームを作ろうか

作者: 真田 貴弘

 初めての短編小説です。

 書き終わったら頭の中が真白にになりました。


「今週も残業休日出勤ご苦労さんでした、とっ」


 俺――│囲之下いのした 勇樹ゆうきはアパートにある自分の部屋の鍵を開け、

扉を開けて中に入る。


「ただいまー、つっても誰も居ないんだけどな。今年で俺も三十九歳。あー、俺もおっさん

だねぇ」


 今は丁度午後七時半。


 土曜日は本来、休日なのだが今日は休日出勤で残業は無かったが、ゲーム雑誌と夕

飯を帰宅途中で買いに寄り道して少し遅くなった。


 昨日が給料日だったので大奮発し、弁当屋で期間限定うな丼の肝吸い付きを買って来

た。


 薄暗い中、電気のスイッチを手探りで探し、照明を点ける。


 六畳一間、バス、トイレ、キッチン付きで家賃四万円のアパートのこのウサギ小屋のよう

な部屋が我が居城。


 部屋には他にVRMMO(仮想現実大規模多人数オンライン)ゲーム開発関係やグラフィ

ック・アートやミュージック関係の本、その関連のソフトの箱がひしめき合い詰め込まれた

棚。


 テレビとPCモニター二〇インチサイズを一台ずつと多目的用とサーバー用の計二台の

PC、VRMMO専用バイザー、白物家電の小型冷蔵庫と電子レンジが所狭しと置いてあ

る。


 俺はテレビを付け適当な番組にチャンネルを変え、買ってきたうな丼を食べながら肝吸

いを啜り、昨日開けたばかりの大容量のペットボトル入り緑茶を湯のみに注ぐ。


 食後の一服が終わればお楽しみの時間だ。

 

 明日は休日、仕事はお休み、溜まった洗濯物や食料の買い出しはあるがそれ以外は

自由の時間。


 誰の邪魔も入らない。


「さあ、ゲームを作ろうか」


 俺は大好きな趣味のVRMMOのゲーム製作に取り掛かる。


 タイトルは『カルナザル』。


 舞台はファンタジー。


 内容は、剣有り、銃(種類は少なめ)有り、魔法有り、ロボット有り、宇宙にも行ける空

飛ぶ船有り、何でも有りの世界観。


 自分が作りたい、遊びたいゲームを作ろうとしたらこうなった。


 製作に六年以上掛かってしまった。







 高校を卒業後、製造業関係の会社に就職。


 ゲーム専門学校にVRMMOの製作を学ぶ為、金を貯め会社辞めて入学した。


 辞めた会社は人件費を出し渋り、仕事の負担は俺にきた。


 お陰で四年後、体を壊し丁度お金も貯まったので引き止め追い縋る上司の腕を振り払

い会社を辞めてやった。


 その専門学校はVRMMOを一人でも製作出来るよう開発プログラム、グラフィック、ミュ

ージックを一手に教える学校だった。


 だが、入学したはいいが授業内容に追いつけず評価はいつもビリッケツ。


 評価が低い他の奴らはやる気を無くし、辞めていった。


 中には入学費を払ったら生活が成り立たなくなり辞めていった馬鹿もいた。


 でも俺は、他の奴らに馬鹿にされようが、蔑んだ目で見られようが、何とか授業に喰ら

い付き学校だけは卒業した。


 卒業した後はアルバイトしながら生活費やゲーム開発費を稼いだ。


 ゲーム製作関連の仕事に付きたかったので俺はとある大手ゲーム会社が主催するゲー

ムコンテストに自主開発したゲームを大会に応募した。


 ゲームタイトルは『虚空世界のコンティネント』。


 内容は第二次世界大戦時代の雰囲気の世界観で戦闘機がロボットに変形するアクショ

ンシューティング物だ。


 他には母艦となる空中母艦が出ってくる。


 しかもカスタマイズ可能の自分だけのロボット変形戦闘機や空中母艦が作れるのだ。


 自画自賛になるが、自分でも最高の出来だと自負していた。


 が、結果は落選。


 しょうが無い。


 落選は落選だ。


 次に頑張ればいいと自分に言い聞かせ、新たなゲーム製作に乗り出した。







 三ヶ月後、信じられない事件が起きた。


 何とコンテストで落選したはずの俺の製作したゲームがその会社から発売される事となった。


 しかも、製作者はその会社の有名なゲームクリエイター。


 ゲームタイトル、ゲーム内容そのままに。


 俺はすぐさま会社に抗議し訴えた。


 当初、弁護士は俺が制作した証拠である開発データや資料が手元にあるので勝てると

息巻いていたが三振スリーアウト。

 

 最高裁まで持ち込んだが結局、俺がゲーム会社からデータと資料を盗んで著作権を主

張し恐喝、ゲーム会社からお金を騙し取ろうとした事にされてしまった。


 俺は当然、無罪を主張したが誰も信じてはくれなかった。


 俺はマスコミに晒され、世間からは白い目で見られ、警察に窃盗、詐欺、恐喝で逮捕さ

れ、此方側の勢力であるはずの弁護士は掌を返して俺が罪を認めれば刑が軽くなるよと

耳障りの良い感じの言葉を紡ぎ、最後の味方であるべきはずの家族からも『お前なんて

生むんじゃ無かった!』等と罵られ絶縁された。


 最終的には開発データや資料は全て没収。


 結局、懲役三年の刑を喰らった。


 出された飯が母親が作ったモノより美味かったのが尚更涙を誘った。


 それでもゲームを作る事は止められず、刑務所の自由時間にはノートにゲームのアイデ

アを書きまくった。


 刑を終え行く宛のない俺は運が良い事に生活や就職等の支援活動機関に入ることが

出来た。


 其処から何とか頑張って就職しアパートを借りて現在に至る。







 俺が務所暮らしの三年間でVRMMOの環境が劇的に変わった。


 過去のVRMMOの世界は視覚、聴覚、触覚の再現しか出来なかったが、今や痛覚以外

の五感を再現できるように成り、VRMMO専用の開発ツールやライブラリが無料で配信さ

れて、誰でも手軽にVRMMMOの開発が容易に出来るような環境が整っていた。


 俺は会社で他の従業員が俺の事をコソコソ影で話をしているがそんな事は気にせずひ

たすら真面目に働いて金を稼いだ。


 三年間の務所暮らしで俺はゲーム開発会社に就職して仕事をするという夢を無くした。


 心がこれでもかという位に折れ、情熱を失った。


 しかし、ゲーム製作は止めなかった。


 好きなのだ。


 どうしようもなく大好きなのだ。


 こればかりは止められず、むしろ血潮が滾り、情熱の炎が燃え上がった。


 現実のどうすることも出来ないくだらない世界に絶望した分、尚更……。


 その為、俺は趣味としてVRMMOゲームを作り続けていた。


 自分の望む世界を創造する為に。


 その世界を手に入れる為に……。


 ついに今日、その成果が結実する。


 デバックが終わり、バックアップ作業カが完了したのだ。


 長年の苦労が遂に報われる時が来た。


 俺は明日の楽しみに作業終了後は直ぐに寝る。


 明日は早起きして用事は全て午前中に片付け、『カルナザル』にダイブするぞ!


 俺はワクワクしながら床に就いた。


 デバックの作業中、ライブラリのアップデートをする為にネットの回線を繋げてそのまま

抜くのを忘れて……。







 俺は自分の心に誓った通り、早朝から貯まった衣類を洗濯し、来週の必要な物の買い

出しをしながら飲食店で朝食を摂り、次いでに昼食と夕食の分を購入しておく。


 これで今日の用事が済んだから一日中、篭っていられるぞ!


 俺は軽い足取りで、アパートの自分の部屋に帰宅する。


 帰宅した俺は早速、バイザーを用意してサーバーに繋げる。


 VRMMOゲーム『カルナザル』で遊ぶのは俺一人だからネットに回線を繋げる必要は無い。


 だから直接サーバに繋げて起動すればいいだけだ。


 俺はドキドキしながらサーバーを立ち上げようとして……、


「あれっ!? サーバーに電源が入ってる! 昨日、確かちゃんと落としたはずなのに…

…。俺の勘違いだったか?」


 サーバーの電源を落としたつもりがどうやら切り忘れていたらしい。


 疲れが溜まってんのかな、俺。


 まあいい、とにかく『カルナザル』にダイブだ!


 俺はバイザーを被り、スイッチを入れベッドに横になる。


 アバターは昨日、『カルナザル』のバックアップ作業終了後に作っておいた。


 容姿、体格は十五歳の少年の姿だ。スキルは生産系と戦闘系を両立させている。


 勿論、アバターもバックアップ完了済みだ!


「さあ! 俺が作った、俺だけの世界! 存分に楽しもう!!」


 そして意識が『カルナザル』の世界に吸い込まれていった。







 俺がこのゲームに一番乗りの筈なのに……。


「やあ! こんにちは! このゲーム、面白いね! 君が作ったの?」


 何故か先客が居た。

 

 最初こそNPCだと思ったのだが、よくよく考えてみるとこんなNPCを作った覚えは俺には

無い。


 先客のアバターは灰色の髪でアイスブルーの瞳でショートカットの十四、十五歳位の少

女の姿、種族はエルフ。


「何だお前は!? このゲームのサーバーはネットに繋がらなないよう物理的に回線を

切っていたはずだぞ! どうやって侵入した!!」


「えっ! 回線なら繋がっていたよ。 ただ、昨日ネットサーフィンしていたら此処に辿り着

いたんだ。」


 俺はその言葉で考え込んだ。


 回線が繋がってた?


 そんなバカな!


 俺はいつもこのサーバーの回線は遮断……。


「はっ! しまった! 昨日、VRMMOのライブラリアップデートの後、回線抜くのを忘れて

た!」


「……君、間抜けだね。そんなんだからセキュリティが穴だらけなんだよ?」


 少女は巨大キノコの上に乗って飛び跳ねて遊んでいる。


「だとしてもだ! 普通にネットサーフィンしていたからってこのサーバーに侵入なんて出

来るか! ……さてはお前、クラッカーだな!」


 飛び跳ねて遊んでいるのを止め、少女は頬をプクーと膨らませ抗議の声を上げた。


「違うよ! 僕はハッカーだよ! クラッカーと一緒にしないでよ!」


「どっちも対して変わらんわ! いいからとにかく此処から出て行け!」


「ヤダよっ! 僕、 此処が気に入ったんだもん! 出て行かないよ!」


 少女は精霊魔法《飛翔羽》を使って何処かに飛んでいってしまった。


 くそっ! アイツ、何処からアクセスしてやがるんだ!


 俺はマスター権限を使ってアイツのアカウントからアクセス元を特定しようとした。


 が、何らかのジャミングを使っているのかアクセス元を特定できない。


 わかった事といえばアドレスの後ろの部分。


「このアドレスの末尾って外国のだぞ。しかもこの国って……」


 昨日、テレビのニュースで報道してたが今、国内事情がきな臭いR国と言う国だ。


「ちょっと待て。俺、翻訳エンジンなんて組み込んで無いぞ」


 とにかくアイツの後を追うぞ!


 俺はアイツの飛んで行った先に向かった。


 向かった先に居たアイツは天駆ける船――騎竜船の甲板の上で仁王立ちしている二足

歩行ロボット――竜人騎に乗っていた。


 竜人騎のタイプはオルトアイン。


 可変機構を備えた二足歩行ロボットだ。


「おい! お前、このゲーム内で勝手なことばかりするな! いつの間に竜人騎や騎竜船

のカスタマイズなんてしやがった! しかも、俺はこのゲームに翻訳エンジンなんて積ん

でないぞ! もしかして……」


「僕が作って組み込みました! えっへん!」


「えっへん! じゃあねーよ! 勝手に人のゲームを弄くるな!」


「だってそうしないと文字や言葉がわからなかったんだも~ん!」


「そりゃー俺しか遊ばんゲームだ! 俺がわかればいいんだよ!」


「それって楽しい?」


「えっ……」


 俺は少女のその言葉にドキッとした。


 この『カルナザル』の構想は、あの事件の前に思いついたものだ。


 まだ俺がゲーム会社に就職して自分の作ったゲームで他の人に遊んで貰いたい。


 その思いの残滓が残っているゲーム……。


「はぁ……、もういい勝手にしろ」


 俺はそのままログアウトした。







 あの後、俺はネット回線を抜く気になれず、電源も入っれっぱなしだ。


 仕事にも身が入らず暇な時間は、ぼーっとしている。


 あの少女の言葉が棘となって俺の胸に突き刺さったままだ。


 次の週の土曜日、俺は『カルナザル』にログインした。


 どうしても少女に聞きたかつた事があったから……。


 少女は一人ゲーム内で遊んでいた。


「……遅いよ、君。僕一人じゃあ寂しかったよ!」


 いきなり俺に苦情を言ったかと思うと、トテテテと走り寄って来て抱きついた。


「あのなあ、俺にだって都合があるの! 仕事しなきゃあ、おまんまの食い上げなの!」


 首を傾げ少女は訪ねてくる。


「へっ! ……君って実年齢、幾つなの?」


「今年で三十九歳」


「うわっ! 詐欺だ!!」


 少女は俺から体を離し、あからさまに顔を顰める。


「そもそもアバターというものはそういうものだ! 文句を言われる筋合いは無い!」


「それでも、若作りし過ぎだよ!」


「そう言うお前はどうなんだよ? ネカマじゃねぇのか?」


「僕は何一つ偽っていないよ!」


 無い胸を張って威張る少女。


「アドレスは隠してるけどな」


「あっ、見ようとしたね! エッチ!」


 胸を両手で隠し、片足を上げて膝を折る。


「不正に侵入した奴を調べるのは当たり前だ」


「ぶう~、ぶう~」


 避難の声を上げる少女。


「話が全然進まん……。で、結局お前、何処の誰だよ。 何でこのゲームに侵入したん

だ?」


「僕? 僕は……」


 要約すると、少女の名はソフィーナ。


 年齢は十四歳。


 R国の首都に住んでて、親はR国の金持ちのエライさんらしい。


 このゲームに侵入したのはただの偶然だそうな。


 目的はこのゲームで遊ぶ事。


 遊び相手が居なくてPCだけが唯一の遊び道具。


 それでPCを弄って遊んでいたらいつの間にやらハッカーになっていた。


 それもウィザード級の。


 此処までソフィーナの言う事を信じればの話だが。


 俺はソフィーナに一番聞きたかった事を聞いてみる。


「なあ、このゲーム面白いか?」


「うん? 面白いよ、とっても! でも……」


「でも?」


「一人じゃやっぱりつまんない!」


「そうか……」


「だからさあ……」


「ん?」


 ソフィーナは俺の腕の服を摘み、


「一緒に遊ぼうよ!」


「……」


「ダメ?」


 俺は溜息を一つ吐くと、


「暇な時なら相手してやるよ」


「ヤターーーッ!」


 ソフィーナは俺の周りをピョンピョン飛び跳ねる。


「じゃあ早速遊ぼう!」


「お、おい!? 腕を引っ張るな!」







 それから俺達はこのゲーム『カルナザル』で一緒に遊ぶようになった。


 ある時は竜人騎で巨獣と呼ぶ巨大生物を狩ったり。


「そっちに行ったよ~!」


「任せろ!」


 またある時には竜人騎同士で対戦したり。


「ずっる~い! 三体に分離変形するなんて!」


「ハッハッハッ! 俺のグラムエイト・カビネは無敵だ! これが性能差というものだよ!」


 そしてまたある時は騎竜船同士の対戦レースをしたり。


「ぐぬぬっ! ま、負けた!」


「ハッハッハッ! 勝負は性能で決まるものじゃないよ!」


 俺達二人は楽しい日々を過ごしていた。 そんなある日……。

 

 俺が会社で昼食を摂っていた時、テレビでニュース速報が流れた。


 R国の首都で内乱が勃発した。


 首都は市民や軍の暴動で混乱していた。


 建物も彼方此方破壊されていた。


 俺は会社を早退し、直ぐに帰宅した。


 俺は直ぐにPCの電源を入れ、ソフィーナとの連絡用アドレスを打ち込んでアクセスしよう

とした。


 が、『この回線は現在混み合っておりアクセスできません』とのメッセージが表示される

だけであった。


 時間を置いて何度もアクセスしようとしたが結果は同じ。


 次の日、俺はこの会社に就職して初めて無断欠勤した。







 R国で内乱が勃発したあの日から俺は『カルナザル』にログインしていない。


 R国の状況は政府と軍の対立の激化により日に日に酷くなる一方だった。


 今の俺が出来る事と言えばソフィーナの無事を祈る事だけだ。


 そんな暗澹たる気持ちで日々を過ごしていた矢先、警察から電話が掛かって来た。


 内容は、以前俺が起こしたとされる事件に付いて今一度証言してくれと言うものだった。


 俺はそんな気分ではなく、『疾うに終わった事だ! 俺にはもう関係ない!』と言って電

話を切ろうとした。


 あの事件は俺にとって忌まわしい出来事でしか無い。


 もう、思い出したくも無い!


 少しでもR国の情報を知りたくて、テレビで報道番組を掛けていた。


 と、そこで報道の内容が入れ替わり、あの忌まわしい大手ゲーム会社の事を報道しだし

た。


 報道内容は、大手ゲーム会社の裏の実態について現会社員、元会社員からの告発。


 それにネットで流れたそのゲーム会社の不正の証拠書類やメールの遣り取り等。


 ゲーム会社の、給料未払い、残業休日出勤手当未払い、上司のパワハラ、セクハラ行

為、それらが原因のうつ病や過労死。


 中でもゲーム会社が主催していたゲームコンテストで出品されたゲームについてだ。


 審査員が『これは売れる!』と思った作品は賞の選別から外される。


 そうして外されたそのゲームは会社の有名クリエイターが手がけたものとしてゲーム会

社から売りだされる。


 勿論、応募したゲーム製作者については大金を握らせ黙らせる。


 所がYと言う人物(多分、俺の事だ)の場合は事情を説明し金を握らせる段階で担当の

人間が金を着服し逃げた。


 会社側はそれについて俺が訴え出るまで気づかなかった。


 訴えられた会社は焦り、急いで俺の周りを崩していった。


 まず、Yが雇った弁護士を金で抱き込み、続いて警察、検察、裁判官、政治家を順次コ

ネと大金を使って取り込んだ。


 そして最後に弁護士が俺に罪を背負うよう大金を握らせそれで終わらせて方を付けるよ

うとした。


 が、抱き込んだYの弁護士がその大金に目が眩み金を着服、結局金はYに渡らずYは

犯行を全面否認したまま懲役刑が下された。


 後にゲーム会社側は弁護士にこの事を追求したが『Yに金を渡したが証言を翻した』と

言って誤魔化した。


 この弁護士、後でこの事をネタに金を強請る為、一連の遣り取りをボイスレコーダーに

録音していたらしい。


 ネットや報道でそれらの事件が話題となり、警察が重い腰を上げ関係者を捜査、尋問し

た時、物的証拠としてその弁護士からボイスレコーダーを押収した。


 そのボイスレコーダの録音内容から事件の全貌が明らかになったと報道番組は説明し

た。


 俺はそれを知り、警察に行く事を承諾した。







 その後、俺の罪は冤罪であり無罪である事が証明されたとメディアが一斉に報道し、

番組内で俺に対してニュースキャスター達が一様に謝罪した。


「それでも俺は許さないけどな!」


 この事件の首謀者達を警察が取り調べ、関係者を捜索、芋づる式に出るは出るは逮捕

者の山。


 中には大物議員や政治家も居た。


 この騒動で日本の政治が与野党入り乱れて大混乱になった。


「俺は知らんがな!」


 事件の発端となった大手ゲーム会社は被害者に莫大な慰謝料を払うこととなり、その

中には俺も入っている。


 ゲーム会社は資本と社会からの信頼を失い倒産した。


 当然、俺の元弁護士も俺に対して慰謝料を払うことになり、弁護士視覚を剥奪、務所行

きである。


「いい気味だ! 次いでにお金がガッポガッポでウハウハ~! ……知らない親戚、出て

こないだろうな?」


 嘗て俺に対して絶縁宣言した両親や兄弟、友人達は『自分達はお前の事を信じてい

た! 世間体も有り、お前の為にも態と絶縁した!』とわけのわからん理屈をこねて擦り

寄ってきた。


 狙いは多分、俺が手に入れた莫大な慰謝料だろう。


「嘘つけ! 本気で信じて無かったくせに! しかも、本気で絶縁したくせに! どうせ俺

が手に入れた慰謝料が目的だろう!」


「……」


 連絡してきた両親や兄弟、友人達にその言葉をぶつけたら皆一様に無言になり電話を

切った。


「図星かよ!? 一人くらい否定しろよ!!」


「はあ……。君って人望ないね」


 ソファーで寝転がり雑誌を読んでいたソフィーナは雑誌をたたんで俺の正面に座る。


 R国が内乱に陥る前にソフィーナは父親と共に国外へと脱出。


 この日本に亡命したのだ。


 しかも、住まいは俺のアパートの近く。


 ソフィーナが俺を訪ねて来た時は度肝を抜かれた。


 だって、アバターそのままの姿の美少女だったから。


「うるせぇ! それよりお前の事を心配した俺の時間を返せ!」


「へーぇ、僕の事、ちゃんと心配してくれてたんだ~?」


 ニヤニヤしながら俺の顔を見るソフィーナ。


「……それより日本語喋れるんだな。 いつの間に喋れるようになったんだ?」


「ああ~! 話逸らした! ……君に会ったあの日から勉強したんだよ!」


 ソフィーナは唇を尖らして返答する。


「なあ、もしかしてネットに流したあの証拠ってもしかしてお前が流したのか?」

 

「さあ? 何の事かな」


 惚けるソフィーナ。


 ソフィーナがネットに事件の証拠を流したのはまず間違いないだろう。


「……ありがとう、ソフィーナ」


「ん、何のことかわからないけど礼は受け取っておくよ。それと呼び名はソフィーでいいよ。

呼びにくいでしょ? 所で頼んでたシステム作ってくれた?」


「ああ、後は『カルザナル』に組み込んでデバックするだけだ」


「じゃあ、早くして! 早く、早く!」


「そう焦らすな! たくっ!」


 俺はソフィーのリクエストで『カルナザル』に色々手を加えて改良している。


 少しずつだがソフィーナのネットでの知り合いや口コミで『カルナザル』に遊びに来る人

数が増えて界が賑やかになって来た。


 そして俺は今日もゲームを弄る。


「さあ、ゲームを作ろうか」


Fin

 小説に登場する名前等は現在執筆中の別作品の小説に登場予定です。

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