第二十九話 体育祭準備⑧
『物語は得てしてなかなか進まないものだ。』
--トリブレイシオ--
第二十九話 体育祭準備⑧
日曜日の早朝、生徒会の面子は朝早くから、訓練場へとやってきていた。
本日、ついに迷路が完成したため、その確認などのためである。
四つある入り口から始まるこの迷路は、それぞれ大体同じ長さで作ってある。
もちろん行き止まりなどもある。
お互いが遭遇する事はないように作られているが、ゴールは同じだ。
というわけで、まずは実際に一度ゴールまで歩いてみることになった。ストップウォッチをもって地図を見ながらゴールまでの道のりを最短距離で歩く。
「最初に歩いたものから順にAコースBコースCコースDコースとすると、Bコースが少し長くて、A,Cコースは大体同じ、Dコースは少し短めですね。」
井内先輩がかかった時間をデータに取り、それを報告する。
「まぁ、それは罠の数を変えれば問題はないだろう。
さて、では、どんな罠を作るかだがこういうものが作りたいというのがあるやつはいるか?」
会長が皆に意見を問う。
よし、おれが考えたアイデアを言おう。
「ボタンを押すと一気に前方から水が流れてくるというのはどうでしょうか?
途中に坂道があったりするので、そこでやるというのも面白いと思います。」
「それは溺れる心配とかがあるんじゃないか?」
「量を考えれば大丈夫だと思います。」
「なるほど。
他にはあるか?」
「それでは、こういうのはどうでしょうか……。」
こうして、迷路の罠づくりの会議を行っていくのであった。
「えっと、大きなたらいが四つに、金具が、これとこれとこれとこれ。
ええっと、数はこんな感じかな?
で、後は後は……。」
迷宮の会議があらかた終わり、俺と莉奈先輩は必要な資材の買い出しにきていた。
場所はこないだも来たホームセンター。
莉奈先輩がリストを見ながら、おれが押しているカートの中にポイポイと商品を入れてくる。
にしても、この体育祭、予算はいくらあるのだろうか。
そんなことを心配したくなるが、きっと大丈夫なのだろう。
「ねぇ、秋水君。」
「はい、なんでしょうか。」
「アナウンスの練習とかは進んでる?」
「はい、最近はかなり滑舌が良くなったなと自分でも実感が持てます。」
「そっか~。
まぁ、本番まであと一週間もないわけだしね。」
「そうですね。
そういえば、ゲスト出演について考えていただけましたか?」
「う~ん、気が向いたら出てもいいっていう感じかな。」
商品を二つ持ち、『どっちがいいかな~。』と選びながら先輩が返してくる。
「是非出てください。
先輩は校内でも人気があるみたいですし、出たほうが盛り上がると思うんですよ。」
「そうかな~、そんなこともないと思うんだけど。」
「いえいえ、そんなことありますって。
ともかくできれば出てください。」
「そうね、時間が空いたら出るわ。」
そんな会話をしながら買い物を進めていくのであった。
「あっ、秋水くん。
こんにちは。」
「おっ、澪か。
今日は買い物なのか?」
「はい。
お母さんとお洋服を買いに来たんです。
今は、ここにはいないんですけどね。」
残念、一度挨拶しておきたかったんだけど。
ちなみに、澪は、真っ白なワンピースを身にまとい、清楚な感じのイメージを受ける服装だ。
「そっか~。
あっ、藤堂先輩。
こちらは俺と同じクラスの杉下澪です。
同じグループのメンバーなんです。」
「はじめまして、杉下さん。
私は、二年の藤堂莉奈よ。
生徒会で副会長をしているの。
よろしくね。」
「私は杉下澪です。
藤堂先輩の試合を拝見してから一度会ってみたいなと思ってたんです。
すごく美人な上に強いなんて尊敬します。」
「私なんてそんなたいしたことないわ。
あなたのほうがかわいらしくて素敵だと思うわよ。」
「そんなことないですよ。」
二人がそんな話をしている。
そして、
「そういえば、今年の夏の大会の前に、私の実家のある島で遊ぼうみたいな話があるんですけど、よかったら一緒に来ませんか?」
「場所はどこにあるのかしら。」
「山口なので行く途中なんです。
人数的には全然余裕がありますし、ほかの方も誘ってどうでしょうか。」
「そうねぇ、それじゃあお言葉に甘えて、遊びに行かせてもらおうかしら。」
「はい、わかりました。
日程なんかは後で連絡しますね。」
「わかったわ。
楽しみにしているわね。」
「はい、きっと楽しんでもらえるはずです。」
「そう、それじゃあ私たちは、ほかの人たちが待っているから行くわね。」
「はい、それではまた。」
こうして、澪と別れ、学校へと戻るのであった。
「買ってきました。」
「ご苦労様です。
それでは早速作成していくとしましょう。
とりあえず買ってきたものを全部こちらに出してください。」
「分かりました。」
そう言って示された場所に買ってきたものを置いていく。
「オッケー、オッケー、オッケー、オッケー……。」
先輩がリストと品物の数を一つ一つチェックしていく。
「はい、問題ないですね。
では、少しずつ準備を進めていくことにしましょう。」
「よし、それでは、現場のほうに移動だ。
早速作業を開始するぞ。
あまり時間は残っていないからできるだけ時間を無駄にするな。
これの他にもいろいろとやらなくてはいけないものがあるのだからな。」
会長の号令で迷路のほうへと移動していく。
「そうでした、莉奈。
明日の十時から自治体との最初の打ち合わせがあります。
向こうである程度の打ち合わせは終わっているようですので、とりあえずこちらの代表として北神くんとともに会議に参加してください。」
「分かった。
明日の十時ね。」
「はい、場所は第一会議室です。」
「こないだ会議をやったところ?」
「そうです。
暗証番号とカードキーです。
なくさないようにしてくださいね。」
「大丈夫よ。」
その後、夜に七時ごろまで、迷路内で作業を続けるのであった。
第二十九話end
前書きの通りですね。
ですが、言い訳をさせてもらうのならば、この作品はまだ、『第一章』なのです。
だから伏線とかいろいろ入れなくては行けなかったりで物語の進行が遅くなてしまうのは仕方のないことなのです。
(上手な人はそこもうまくやるもんだというのは禁句です。)
もしかしたら、もう一話投稿するかもしれません。




