第二十話 体育祭準備③
一部別視点が入ります。
第二十話 体育祭準備③
「放送係~こっちだこっち。」
木曜日の放課後、会議室の前で集合する。
「全員そろったか~?
よし、番号、一。」
「二。」
「三。」
「四。」
「五。」
「六。」
「七。」
「八。」
「九。」
「十。」
「十一。」
「十二。」
「うっし、全員そろったみたいだな。
それじゃあ、倉庫のほうに移動するぞ。」
機材のチェックをするために倉庫へと向かう途中、先輩が注意事項を伝える。
「今日は機材のチェックだ。
今日中にできる限りやってしまいたいが、まぁ、明日もあるのでな。
あせらず一つ一つ丁寧にチェックしていってくれ。」
「わかりました。」
「とりあえずまずはカメラからだ。
ほかの機材はその後にしてくれ、いいな?」
「はい。」
そんな話をしていると倉庫へ到着する。
「よし、ここだ。
鍵を開けるからちょっと待ってろ。
暗証番号は......えっと......。」
この倉庫には暗証番号とカードキーのふたつの鍵がついている。
この学園はそういう警備は割りと厳重で、倉庫などはほとんどが二つ以上の鍵が設置されている。
超能力は悪用すれば鍵開けなんて簡単にできてしまうので、そういうことがないように二つ以上つけることになっているそうだ。
そんな理由で、十桁もの暗証番号をもらったメモを見ながら打ち込み、ドアを開ける。
因にこの暗証番号は、許可をもらってから一定時間しか開かない一時的な番号だそうだ。
「よし、開いたぞ。
皆、まずは下にシートとかを敷いてくれ。
傷つけたりするのはできるだけ避けたいからな。」
係長に従い、下にシートを敷く。
「敷き終わったか?
うっし、じゃあ倉庫から出してるから半分こっちに来い。」
機材を一つ一つ、傷つけないように運んでいく。
かなり高価なものが多いから気をつけなくては。
そんな感じで大体四分の一を運び終えると、全員で機材のチェックを始める。
現在あるのはカメラやマイクなので、それがしっかり作動しているかや、壊れている箇所などはないかなどと確かめていく。
正直俺はこういう電子機器の操作は得意ではない。
我が家では、母と姉は強いものの、父親と兄、そして俺は全然だ。
まぁ、全く使えないって程ではないんだけど。
なので、ほとんど戦力にはならないだろうが、カメラが動いているかどうかぐらいは分かるので簡単にチェックできるものだけやっていく。
よし、これは大丈夫そうだな。
そんな感じでチェックの一日目は終わったのであった。
だいたい、七割ぐらいやり終えたのかな?
さてさて、本日は金曜日。
時刻は朝の六時である。
一人暮らしをしているので、いろいろと自分でやらなくてはいけないため、毎朝この時間に起きることにしているのだ。
今の季節はまだいいが、冬はつらい。
本当につらいものだ。
おそらく布団は人を誘惑する超能力を持っているに違いない。
そして、おそらく冬になるとその能力がつよくなるのだろう。
そしてその上位互換が、魔道具『炬燵』だ。
やつの能力には、俺も到底かなわない。
そんなことを考えながら布団でぬくぬくと丸まっている。
起きてすぐってなかなか動けないよな~。
がしかし、そんなことをしていると遅刻してしまうので、起きなくては。
俺は見事布団の誘惑を振り切って朝食をつくりに台所へと向かうことに成功するのであった。
「おや、メールが来てる。」
朝、学校へと向かう電車の中で、メールがきていることに気づく。
宛名は我が姉からだ。
『元気にしてる~(・_・;?
今日なんかは結構寒いから体調に気をつけないとね~。
そうそう、明日の夜にそっちに行くから。
できるだけ早くいきたかったんだけど時間がとれなかったの。
ごめんねf^_^;
優勝したことだし、ご馳走を持っていくから。
もちろんお姉ちゃんのおごりだよ~。
楽しみにしててね~。
姉より』
あっ、これはまずい。
メールとかに顔文字を使うのは機嫌が悪い証拠だ。
姉さんからのメールの場合、だいたい、顔文字のところには裏の意味があると思って間違いない。
なぜかはわからないのだが、機嫌がわるくなるとメールがこんな感じになるのだ。
顔文字なんかを多用して一見機嫌がよさそうに見えるのだけどそれは罠である。
少し対策を考えておかなくては。
アロマみたいなものでも焚いておこうか。
香りの中には気持ちを静める効果があるのもあるらしいしな。
~side霧華~
はぁ~。
携帯端末を手にため息をつく。
ここ最近仕事が急がし過ぎてつらいわ。
どこの誰かはわからないけど、日本海側で不法入国があって、見つけたときにはもうもぬけの殻。
潜水艦での進入だったから、どこかの国が手引きしたんじゃないかと思うんだけど、それを家のせいにされても困るのよね。
あの、おばかさんたちは一度締めてあげたいわ。
なぜ、そんな便利な能力を持っているのに外国からの侵入にきづかないんだって、日本海側の警備を一切やらせてもらえない状況でどうやって調べろというのよ。
だいたい、北神家の勢力拡大を嫌がってよく分からないボンボンを日本海側の担当に据えたのは誰なのかしら。
まぁ、そのボンボンは大物国会議員の息子なわけだし、ボンボンの責任にしたくないんでしょうけど。
だったらせめて、ボンボンの補佐に優秀なやつをつければいいのに、あのボンボンは自らに都合にいい馬鹿たちを引き上げて、そいつらに周囲を固めさせてるし。
こっちが協力を申し込むため、私の部下を使者を送っても、
「そんなものはいらんわい。
余所者が入ってきたらレベルが逆に下がるわ。
分かったらさっさと出て行け。
お前のような下っ端に話すことなんざ何もない。
もし、どうしても話したいというなら、お前の上官を連れてくるんだな。」
と言われたらしい。
部下に「どうしましょうか。」と聞かれたけれど、絶対にいきたくない。
何度か会ったことはあるけど、目つきはいやらしいし、態度は常に上から目線だし、もうどうしようもないわ。
そうそう、どうしようもないといえば、内の隊にも要るのよね。
こっちもボンボン。
家の隊の副長なんだけど、家で相当甘やかされてきたのか上官の私に対しても態度はでかいし、その割に仕事はできないし、あんなやつ首にしてしまえと思うのだけど、父親は大物だし、あのボンボンとも親戚関係で、なかなかできない。
無駄にプライドの高い愚か者ほど要らないやつはいないわ。
ともあれ、私は、上に北神家の代表として呼ばれることになった。
お父さんがいないから、私がいくというのはしょうがないとはいえ、今からの会議はほんと憂鬱だわ。
これで、おそらくは、潜水艇でこっちの接近を許したことの責任を家に押し付けるんでしょうね。
あ~あ、本当にいやになってきたわ。
そうだ、もうぜんぜん休みが無かったし、今週の土日に休みを取ろうかしら。
ちょうどしゅう君のお祝いもしてなかったしちょうどいいわね。
こうして、私は基地から離れ、軍の本部へと向かうことにするのであった。
結果は予想通りだった。
全責任は家にあるとか言って擦り付けてきました。
あそこにいた人たち全員暗殺してあげようかしら。
ああいう頭の固いお役人さんたちはいなくなっても困らないと思うのよね。
ほんとにやってしまおうかしら、そんなことを考えながらしゅう君にメールを打つ。
一応いくことを伝えておかないと、用事があったりしたら大変だからね。
『元気にしてる~(・_・;?
(私はどっかのボンボンなんかのせいで元気がないわ。)
今日なんかは結構寒いから体調に気をつけないとね~。
そうそう、明日の夜にそっちに行くから。
できるだけ早くいきたかったんだけど時間がとれなかったの。
ごめんねf^_^;
(どっかの馬鹿がやらかしたせいで、その尻拭いをしなきゃいけないのよ。ほんと何をやってくれるんだか。)
優勝したことだし、ご馳走を持っていくから。
もちろんお姉ちゃんのおごりだよ~。
楽しみにしててね~。
姉より』
さて、週末の休みのため、精一杯働くとしますか。
まずは侵入者の割り出しからかな。
はぁ~、早く休みがこないかな~。
第二十話end
さて、そろそろ物語が動き始めます。
まだまだではありますけどね。
今回はそのきっかけの部分だけです。




