第十四話 トーナメント戦最終日③
トーナメント戦最終日、ついに三つ目。
やっと、会長対副会長です。
第十四話 トーナメント戦最終日③
「お疲れ〜。」
「お疲れさまです。」
控え室に引き上げてくると、二人が既に戻っていた。
二人とも、なかなかにぼろぼろだ。
「お疲れさま。
なんとか勝てたみたいだね。
どんな感じだったの?」
「いや〜、敵がどちらも遠距離型だったみたいでさ。
ずっと引き打ちされてたんだよね。
こっちはどちらも遠距離攻撃が苦手だった所為で、ろくにダメージを与えられなくてさ、奥の手を使ってなんとか倒したって感じかな。」
「接近しかないと遠距離の相手を倒すのにあんなに苦労するんですね。
初めてこういう戦いをしたんでびっくりしました。」
「まぁな。
結構きついものだと思うぞ。
俺の場合は遠距離攻撃も得意だからあまりそういう経験はしたことないんだがな。」
「やっぱりあたしも遠距離の練習しなくちゃだめかな。
でも、いくら練習しても体からはなれれば離れるほど威力が弱まるし、制御もできなくなるんだよね。」
「私は能力が能力なんで遠距離攻撃は無理ですね。」
「まぁ、実戦だったら銃でも持っていれば多少は対処できるし、しばらくは短距離を鍛えた方がいいんじゃないかな。
あとは、近接攻撃が中心の上手な人の戦いを見て、まねするって言うところかな。
ちょうど、この後、会長と副会長の模擬戦があるし、それを参考にしてみたら?」
「そうね。
ちょっとそれを見てみるわ。」
「分かりました。
参考にしてみます。」
こうして俺たちは、少し休息を取った後、観客席へと向かうのであった。
「では、只今より、生徒会会長南原朱里と生徒会副会長藤堂莉奈との模擬戦を開始します。
双方位置に着いてください。」
その合図とともに二人が位置に着く。
二人の位置は模擬戦の時と同じ。
大体二百メートル前後と言ったところか。
「では、始めます。
試合開始。」
そのアナウンスとともに試合が始まる。
最初に動いたのはやはり、莉奈先輩だ。
ゆっくりと会長の方へ向かっていく。
少し、回りながら言っているのはおそらく、真っ正面からではなく奇襲のためであろう。
対する会長の方は試合開始の位置から一歩も動いてはいない。
ずっと目をつぶり、瞑想しているかのようだ。
そして、二人の距離が大体百メートルになった時、ついに会長が動いた。
莉奈先輩のいる方に向かって多数の炎弾が放物線を描いてとんでいく。
それを、まるで慌てた様子をみせず、自然に莉奈先輩はかわしていく。
「秋水くん、会長さんはどうやって副会長さんの位置を見破ったのでしょう?
音が立ったとかそういうわけでもないと思うんですけど......。」
「あぁ、炎系の上位能力者は熱探知ができるようになると聞いたことがある。
多分それを用いていたんだろうな。」
「そうなんですか?」
「あぁ、ある程度上位の炎系の能力者限定らしいがな。
まぁ、蛇みたいな感じなんだろう。」
「初めて知りました。
秋水くんは物知りですね。」
「ん?
そうでもないさ。
それにしても、莉奈先輩の方もなかなかのものだな。
あっさりと攻撃をかわしてるし。
まるで、来る攻撃を予知しているかのような感じだな。」
「そうですよね。
かわそうとしているような動きが見られないですし。
なんと言うか、流れるようにかわしていますよね。」
「そんだな。」
じっさい、ある程度距離があるため、攻撃頻度がそこまで高いとは言えないが、それでも、あの動きは然う然うできるものではない。
そうこうしているうちに、だんだんと距離が縮まってきた。
現在は大体五十メートルぐらいであろうか。
莉奈先輩は建物の陰に隠れるように少しずつ距離を縮めていく。
そして距離が大体三十メートルぐらいになったであろうか。
ついに会長が動いた。
莉奈先輩がいる方向に向かって足を一歩踏み出す。
するとそこから放射状に炎の波が地面を覆った。
「すごい攻撃範囲ですね。
あれをやられたら、自由に動くのが難しそうです。」
「だな。
さて、どう対処するのか。」
それに対して、莉奈先輩は建物の上へと飛んだのだが......。
「うわっ、強烈。
これってあれじゃない?
あたし達がもらったパンフレットに書いてあったのと同じわざでしょ。
実際見るとすごいわね、っていうかあれは躱せなくない?」
「確かに厳しいかもな。
その前のわざとの連携も流石だったし、これは勝負ありかな?」
事実、あそこから脱出するのは不可能だろうし、中はかなりヤバいはずだ。
そろそろ、戦闘不能のランプがつくはず......。
「えっ!!」
「嘘っ!!」
「何がおきたんだ?」
一瞬で火柱が弾ける。
中にいたのは......。
「無傷だと?」
片足をあげた先輩は全くの無傷。
汚れすらもついていない。
「何がおきたのでしょう?」
「あの体勢を見るに蹴りの風圧かなんかで吹き飛ばしたんじゃないの?」
「どんな身体能力だよ。
というか、これはすごいな。
本気で走ったらヤバいんじゃないの?」
「そんなにですか?」
「そりゃ、あの火柱を蹴りの風圧で消したとするのならば、相当だよね。」
「ああ。
まず、俺たちが目で追えるレベルでないことは確かだな。」
その言葉を言った瞬間、莉奈先輩の姿が消えた。
「えっ?
本当に消えましたよ。
どこに行ったのでしょう?」
「あたしは見えなかったわ。
秋水は捉えられた?」
「全く見えなかった。
おそらく会長も見えていないんじゃないのか?」
その言葉の通り、会長は周囲を見渡している。
完全に見失っているようだ。
その瞬間会長が吹き飛ぶ。
会長が立っていた場所には莉奈先輩が可憐に立っていた。
空中で一回転して着地を決めたようで、会長は莉奈先輩と向き合っている。
「秋水くん。
これを参考にって言ってましたけどレベルが高すぎて私では何の参考にもできません。
どうしたらいいでしょうか〜。」
「大丈夫よ、澪。
私も参考にできないから、このレベルは。」
「いや、というかガチで早すぎない?
多分会長も、後ろに来たその一瞬で感知できたから瞬時にダメージを減らせたんだろうけど普通だったらノックアウトだよね。」
「すごい早さですね、副会長さん。」
「しかも、あんだけの早さで動いて息切れすらしてないとかどういうことなのかしら?」
「確かにな。
全く息切れしてないし、おそらく、このスピードでかなりの時間動けると言うことなんだろう。」
「身体強化ってここまでの性能があるんですね。
すごいです。」
「いや、副会長がすごいだけなんじゃないかな。
あたしの知り合いにも同じ系統の能力を所持している人がいるけど、ここまでじゃなかったし。
身体強化系が全員このスピードだったらかなり怖いわよ。」
「もはや、ほとんど瞬間移動だもんな。
会長ここからどうするんだろうか?」
「分からないですね。」
そんなことを話しながら注目してみていると、会長は体の回りに火で壁のようなものを作った。
「なるほど、全方向を覆って攻撃させないようにって言うわけね。」
「でも、さっきみたいに消されちゃうんじゃないんですか?
それに外が見えないんじゃ......。」
「まぁ、たぶん、あの炎壁のある範囲に何かがはいると分かる様にしてるんじゃないかな。」
「そんなことができるんですか?」
「一応、自分の能力が作用している範囲にいるものを探知する技術みたいなものもあるしな。
まぁ、技術というよりは感覚みたいな感じなんだけど......。
う~ん、口で説明するのは少し難しいな。」
「へぇ~、そうなんですか。
私も練習すればできるようになるでしょうか?」
「う~ん、厳しいかもな。
能力上、範囲にかけるというよりは個にかけるような能力なわけだから、そのかけた個人がどういう状態でいるのかみたいなことは分かるようになると思うよ。」
「そうですか。」
そんな話をしていると、
「また消えました。」
「今度はどこに言ったのかしら?」
「あそこだ。」
莉奈先輩は先程いた建物の上に立っていた。
先程の移動の際に足元が砕けたのか、そのかけらをいくつか持っている。
「あれを投げるつもりなんでしょうか?」
「まぁ、それ以外の用途はないよね。」
「だろうな、あれで様子を見るつもりなんだろう。」
すると、やはり投げるつもりだったのであろう、石を軽く上に投げてから一気に打ち出した。
普通の拳銃の弾と同じぐらいの速さでこぶし大の石が飛んでいく。
あれは当たったら大怪我どころでは済まないのではないのだろうか。
そんなことを思うまもなく火の壁に当たるが、その壁に当たる直前に石が来る方向と正反対の方向、つまり、莉奈先輩に向かって炎の槍が数発放たれる。
当然その場所にはもう先輩はいないが、少し下向きにそれたのであろうか、建物の屋根の端っこが吹き飛ぶ。
すごい威力である。
「どちらの攻撃も、もし当たってしまったら死んでしまうのではないでしょうか?」
「死ぬでしょうね、おそらくどちらも対処されるの前提で放っているんじゃないかな。」
「ああ、そうだろうな。
が、これではどちらも決定打は与えられない。
すぐにどちらかが動き出すだろう。」
そういってから、三度ほど攻防がくり返されたであろうか、初めは、一発ずつだった攻撃が、二箇所、三箇所から放たれるも会長は、そのすべてに対応していた。
そして、四度目の攻防が終わったその刹那、終に会長が動いた。
第十四話end
フ、フハハハハ。
誰が今回で終わるといった。
というわけで、収まりきりませんでした。
もう少しまとめられる能力がほしい。
とはいえ、書いてみようかなと思い執筆し始めてまだ一週間程度。
きっとこれからうまくなるはずさ。
きっと。
な、なれるといいな~。
0時にもう一話投稿します。