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コンビニ抜けたら乙女ゲーの世界でした。

作者: 志成乃

友人のメールを見て私は人生の終わり、というものを感じてしまった。

人生の終わり、と言ってしまえば大袈裟に聞こえ、他人が聞いたら同情するか呆れるかのどちらかに分かれると思う。


私、影内 栞奈[かげうち かんな]は罰ゲームというモノをすることになりました。


罰ゲーム、皆さんもやったことがあると思う。

私は友人と賭けをやることになり、定期考査(簡単に言えばテストの事)の合計点数が高い者が低い者に罰ゲームを与える、という事に。

先程友人の家に定期考査の結果が郵送で届いたようだ、その結果を私に伝えたのがメールであり、私は撃沈したのだ。

友人1158点、私1157点、なんと1点差で負けてしまった……!!

これはつまり、私が罰ゲームをやるという訳で。

まさかこんなことが起こるなんて思いもせず、罰ゲームを受ける約束をしてしまったため携帯を放り投げたくなる気持ちになった。

メールには“近くのコンビニに10:00に待ってるから”と書かれてあった。

嫌な予感がして明日が来ないで欲しいと願っても、時間は普通に過ぎていった……泣いた。


翌日。


「ねぇ、本当にやるの?」

「約束したでしょー?罰ゲームやるって」

「た、確かにそうだけど。……よくこんな罰ゲーム考えたよね、あんた」

「知恵袋で協力して貰った」

「最悪だよ!最悪だよソレ!!」


自分で考えてよ!!と言った私に、友人が負けるのが悪いとニヤニヤして笑う。

私達の目の前にはコンビニがそびえ立っている。

今までお世話になったコンビニが、こうして敵になるなんて思わなかった。

……影内 栞奈、私は今から戦場に赴きます。

泣きながら、心の中で敬礼をした。


罰ゲーム内容“ルパンごっこ”。※ヤフったりググったりすれば簡単に出ます

ちょっと前、ルパンごっことは何か首を傾げる私に友人は自分が質問した知恵袋の画面を見せた。

本来ならばタバコなどが必要らしいが、未成年って事で没。

だから名前も知らない誰かから教えて貰ったルパンごっことは、少し違うルパンごっこをすることに。

内容は簡単だ、「ルパン!ルパンを見かけませんでしたか!?」これをコンビニ店員に言って「ルパンはどこだ!?ルパーン!!」とコンビニを出ていくだけ。

シチュエーションは栞奈に任せる、と言われた。


「本家よりはマシでしょ?」

「どちらにせよ恥ずかしいって事には変わりないよね」

「うん、そうだね」

「店員さんが可哀想だよね」

「大丈夫、その店員さん私のお姉ちゃんだからね。安心して、お姉ちゃんノリノリだから」

「用意周到!?」

「ノリの悪い店員も困るじゃない?あと皆さんはマネしないでね」

「そうだけど、って思った私がバカだったよ!あと誰に言ったのソレ!?」


自分はやらないから、と余裕をこいでる友人にイラッとした。

因みに私が勝ったら顔面クリームパイをやる予定だったのに。

いや、私がルパンごっこをやる破目[はめ]になるなら、“う●い棒買えませんごっこ”の方が良かったのかも。

……もう時すでに遅し、仕方ないやるか。


「じゃあ栞奈、健闘を祈る」

「逝ってきます」


はじめのいーっぽ、そんな気軽ではなく鉛でも入ってるんじゃないかと思われる足で、私はコンビニの自動ドアを潜り抜けたのだった。

そんな国境線越えるテンションで罰ゲーム受けられないよ……。

入って茶髪の店員と目が合い、友人のお姉ちゃんだってことを確認して適当にお菓子コーナーに入った。

せっかくだから、う●い棒でも買ってやろう。

友人はサラダ味が好きらしいが、ここは敢えてポタージュ味にしておこう。

その他諸々適当に手に持ち、レジへと持って行った。

客が私以外誰一人いないのが本当に助かった。

人数少ない時間帯を把握していたのかもしれない。


「栞奈ちゃんだよね?ごめんね妹がこんな事やらせて」


申し訳なさそうに友人のお姉さんが話しかけた。


「い、いえ……勝てる自信あったんですけどね、私……」

「あっ、その話……実を言うとね、妹の点数10点少なかったの」

「……へ?」


な、何を言ってるんだろ、何か聞いてはいけないような言葉が聞こえた気が……。


「つまり、栞奈ちゃんの点数の方が高かったのよ」


……知りたくなかったあああ!!

絶句、してしまった。

写真送って貰えばよかった!

そういう偽装は良くないよ結局勝ってたんじゃん!

そう思って入り口で待っている友人の顔を見る。

私に気付いた友人が、てへぺろ★みたいに舌を出した。

……後でコンビニ向かいの体育館借りてバスケでコテンパンにしてやろ。


「ほんとゴメンね。だから私協力する。例の言葉、小さくでいいから」

「は、はい……」


ゴクリと唾を飲む。

言え、言うんだ私……!!


「『る、ルパンを見ませんでしたか……?』」


おずおずと言葉を紡いだ私に、お姉さんは微笑んで言った。


「ルパンなら多分、先程店を出て行かれたと思いますよ」


勿論、この言葉は嘘だ。

ありがとうお姉さんんん……!!

会計を済ませたお姉さんから袋を貰い、頑張ってと声をかけて貰った。

……あとは友人あんただけだコンチクショー!!

私はダッシュで、そして大声で言ったのだ。


「『くそう!ルパンはどこだ!ルパーンッ!!』」


友人への鬱憤を晴らさせて……!!

……あれ。

バッとコンビニを出た私、そこで違和感を感じた。


「え、何、これ……」


目の前の光景、それに私はこれこそ人生の終わりを感じたのだ。

私の知ってるここの地域は、コンビニの向かいには体育館があったのに!

何だコレ、なんで目の前に学校らしきものが立ってるの!?


「(こっ、ここ何処おおおおおお!?)」


コンビニの袋が、カサッと乾いた音を立てて落ちた。

どうやらルパンは私の大切なものを盗んだみたいです……そう、私の居場所を。

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