表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

自由

作者: 也為 はな

信太郎は我慢の限界だった。

毎日のように上履きを隠され、給食には決まって消しゴムのカスが入っていた。

それが無駄だとわかるまで、必死に抵抗していた時期もあった。


大人は助けてくれない。

この三年間で信太郎が学んだ事の一つだ。


もちろん今日も上履きはごみ箱の中に入れられ、体操着は水浸し、机には死ねと書かれてあり、放課後クラスメイト三人に殴られた挙句金を盗られた。


「自由になりたいか」

どこからか声が聞こえた。

きっと空耳だろう。信太郎は早くその場から離れたかった。しかし殴られた痛みで身体が動かない。


「自由になりたいか」

また声が聞こえた。

なりたいに決まっているさ。

こんな世の中、みんな消えてしまえばいいんだ。

信太郎は心の中でそう呟いた。この時ようやく動けないのは痛みのせいではないことに気がついた。むしろ傷が少し治っているようにも見える。


「自由になりたいか」


「何でもいい。どうなってもいいから自由にしてくれ。」

そう言うと信太郎はゆっくりと立ち上がった。もう動けるようだ。




次の日もその次の日も信太郎の周りに変化はなかった。

あんな空耳を信じた方が馬鹿だった。

信じる者は馬鹿を見る。

これも三年間で学んだ事の一つに入るだろう。そんな事を考えながら体操着につけられた動物の糞を洗い流していた。


次の授業まであとどのくらいだろう。

時計を確認しようと廊下から教室の中を覗いた。




誰もいない。


次は体育だっただろうか。

いや違う。

防災訓練か?

信太郎は教室の中に入りグラウンドを見た。



誰もいない。


それどころか何の音も聞こえない。


廊下を歩く音。

生徒たちの話し声。



信太郎は上履きのまま外に出た。


誰もいない。

何も聞こえない。


そのまま家まで歩いた。

車も通らない。

餌をねだる野良ネコもいない。



これからは誰にも邪魔されずに自分の好きなことを好きなだけ出来る。

ずっと一人で。

僕は自由になったんだ。







三年後

信太郎は学校の屋上から飛び降りた。


「これでやっと自由だ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 悲しい(?)話ですけど、このての話は結構好きです(^-^) お気に入り登録します!! ぜひ私のとこにも遊びに来てくださいね〜
2013/01/09 17:49 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ