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第三話

更新がスゴク遅れてしまいました。課題が襲ってくる……。

「……大丈夫。あの類いのモノはこの建物には入れないからね。安心していいと思うよ」

緊張感のカケラも無い話し方だったが、それがトマリの自信をあらわしているようで、頼もしく感じる。……気のせいかもしれないが。

それでも、信じられない気持ちで窓の外を凝視するエイラ。

そして、次に彼女が発した言葉は、予想外のものだった。

「……クルーエルさんは、どうしてあれが視えるんですか? 今まで、誰にも視えなかったんですよ? なのにどうして視えるんですか!」

すでにエイラは疑惑の、いや、恐怖の眼差しでトマリを見つめている。

まるで人外のモノを見る目つきだ。

それに気付いたトマリは、きょとんとしてエイラを見つめ返す。

エイラは今、窓の外の異形(いぎょう)よりも、トマリに怯えていた。

そんなエイラにトマリは……、


――クスッ


笑った。

「……ぅげっ!? こいつ……客の前だってのに――馬鹿が」

苦々しく呟いたのはルナー。

「なっ、なに……!?」

エイラは突然のことにさっきまでとは違う恐怖に襲われた。

「……あぁ、そうか。ヒトとは違うって『恐い』ってコトなんだっけ」

言いながらもクスクスと楽しそうに笑う。心底。

ガラリと替わった雰囲気。のんびりと喋るのは変わってないと思ったが、とんでもなかった。

気怠い空気と話し方。どこか厭世的で、いつ窓から身を投げてもおかしくないくらいに正の感情が希薄だった。

「クルー、エル、さ……?」

怖い。何故だろう? あの人は笑っているのに。怒鳴られたワケでもないのに。何故?

「あーあ。ホント、久し振りすぎて忘れてたよ。ふっ、くくく……。怖がらせてゴメンね? バーンズさん。ヒトとは違うけどさ、こういう体質みたいなモンなんだよ」

「た、体質……?」

聞き返すと、トマリは感情に希薄なままニッコリと笑った。

「そ。変な体質だよね〜。ヒトよりちょっと丈夫でいろいろ鋭かったりするだけなんだけどね?」

安心させようと言っているのだろうか? でも、その言葉は逆に『自分はヒトではない』と告げられたようで……。

「………」

もはやはっきりした感情など分からずに、ただ混乱した眼でトマリを見つめるエイラ。


――はぁ………


混乱した空気に割り込むように聞こえたのは、ため息だった。見ると、ルナーが心底イヤそうに、仕方なさげに首を振っている。

「バーンズさん、今のこいつは正気じゃない。できれば忘れてくれると有り難いんだが……」

持ちかけてくるルナーに、エイラは一も二もなくうなずいた。

だんだん恐怖の感覚が麻痺していきそうだが、今のこのおかしな状況だけは忘れたかった。

首が痛そうだと思うくらいに必死で何度もうなずくエイラを見て、ルナーは苦笑した。

「よかった。ありがとう。……それと、」

一度言葉を切ると、今度はずっとまじめな顔で哀しそうに、かすれそうな声で言った。

「トマリのことは怖いだろうが、頼むから、もう、さっきみたいな目では見ないでくれ」

「………」

「ああして笑ってるから、傷付かないように見えるかもしれないが、やはり、ヒトと同じだから。いや……ヒト違うからこそ、かな。あいつの傷はほかより深く、治りにくい」

エイラは、ルナーの言葉が半分わかって、もう半分は理解できなかった。多分、その理解できない部分こそが大切なのに。

「できるだけ、普通に接してやってくれ。恐れるでも、労るでもなく、普通に」

語るルナーのは優しくて、とても優しくて。この人だけが彼の(そば)にいられるんだろう、と。エイラはそう感じていた。彼に必要なのはきっと、ヒトと違うというすべてを(ゆる)し、当たり前に普通に接してくれる誰かだから。

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