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幕間 〜ゼンマイ人形〜

 彼は、そう遠くない昔、自分のことをこう言った。〈壊れたゼンマイ仕掛けの人形〉と。

 曰く――


「動いてる間は、壊れでもしない限り生身より強く動き続けるように見える。でも、巻いたゼンマイはいつか終わるんだ。しかも、見た目は何も変わらないのに、その時が来たらぱたりと動きは止まる――命は尽きる。前触れもなく……」


「いつか命が消えるのは……それがいつなのか判らないのは、ヒトだって同じだ」


 私はそう反論した。しかし、彼は続けて言った。


「ヒトは、せいぜい八十年――持って百年かそこらだ。そして、成長して、老いていき……前兆を知る。ほとんどが、自然の告げる前兆を聞き、受け入れながら死んでいく……穏やかに。

 だが俺は違う。

 ヒトが及びもつかない年月を生きてきた。老いも、何もなく。

 俺のゼンマイは止まってるんだ。中途半端に巻かれたまま。

 動き出すには何かきっかけがいる。でも、それが何なのかは分からない。このまま生き続けるのかもしれないし、ある日いきなり動き出して前兆も何もなく終わりを迎えるかもしれない。

 ……壊れてるんだ。ゼンマイが止まったままの姿で、時間は俺だけを置いて進んでいく」


 無表情に淡々と、なんでもないことのように言う。


「ヒトと同じように生きたいのか?」


 私の言葉に、彼は不思議そうな顔をしてから、笑って首を振った。


「まさか。俺はヒトみたいに弱くはなりたくない。自分の生きたいように生きるには、力や、ヒトには無い力だって必要になる。それを失ってまで、他と同じモノになりたいとは思わないね」


 ダーティーな笑顔を見せて彼は言う。それを聞いて私は哀しくなった。完全に違う場所に生きる、まったく違う生き物のようで、消して埋まらない溝があるようで……。

 好きなように生きていきたいと言うクセに、その目はどこか厭世家のようでもあって……。


 哀しかったんだ……。



 なあ、今でもそう思ってる………?

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