02 - おじさん
僕は部屋の隅でうずくまっていた。
隣には大きな袋を持った小太りのおじさんが一緒に体育座りをしていた。
「…僕、今気持ちが暗いんだ」
「ミラーボール、いる?」
「3個ちょうだい」
「まいどあり」
お金…取るんだ。
僕はそう思いながら買った3個のミラーボールをゴロゴロと床に転がす。
「明るくなった?」
「わかんない…」
「ベツレヘムの星とポップコーン、どっちのが明るくなりそう?」
「…ポップコーンかな」
おじさんはカセットコンロを取り出し、フライパンに蓋をしてポップコーンを炒り始めた。
ポンポンと大きな音をたててポップコーンがはじける。
おじさんはそのポップコーンに軽く塩を振るとむしゃむしゃと食べ始めた。
「あれ? 僕の分は?」
「え?」
「…え?」
「あっ」
おじさんはハッとした顔をして、食べきった後に残った黄色く固いコーンを恥ずかしそうに差し出してきた。
僕はそれをもらって奥歯で砕いた。すごく固い。
「明るくなった?」
「…暗くなったかも」
「ああー」
おじさんは何かに納得したようにしきりに頷く。
…そういえばこのおじさん誰だろう。
「塩とコショウ、どっちのが好き?」
「えー、今はコショウの気分かな」
おじさんはそれを聞いて山盛りのコショウを僕の部屋の四隅に設置した。やめて欲しい。
しかも二つはでかいくしゃみで吹き飛ばしていた。本当にやめて欲しい。
「…ごめんね。おじさんそろそろ行かなきゃ」
「えっ?」
見ると、おじさんの体が半透明になっていた。
キラキラとしながら段々と全身が薄くなっていく。
「おじさんは三つお願いを叶える妖精さんだったんだ」
「え…」
「それじゃあ元気でね、バイバイ」
そう言うとおじさんは消えた。
僕は3個のミラーボールが転がりコショウまみれになった部屋を見て、なんとも言えない気持ちになった。
…ポップコーン買ってくるか。




