理由はいらないときもある
夜は暗く、空には星が輝いていた。
星はとても多く、涼しい風が吹いている。
「こんな暑い夏の朝に、停電だなんて……一日中料理しているのに!」
母の声が聞こえた。
モウリは小さな目を開けた。
星は消え、涼しかった風は熱い空気に変わっていた。
彼女は汗びっしょりで目を覚ました。
「アンマ、いつ停電したの?」
「夢の中では寒かったのに、起きたら暑いよ。どっちが本当なの?」
そう聞くと、アンマは言った。
「もう時間がないわ。病院に行かないと。早く準備して。」
モウリは7歳だった。
その日、二人は小児心理科医のもとへ向かっていた。モウリはとても内向的な子どもで、友だちはいなかった。
一人で静かに過ごすことが多かった。
父はとても真面目な働き者だった。
左官職人として働き、毎晩遅くに家へ帰ってきた。
口数は少なかったが、家族思いの優しい人だった。
母は専業主婦で、いつも人生に不満を抱えていた。
他の人と比べては、「もっと良い生活」を求めていた。
しかし、思い描いていた「一番」には、なかなか届かなかった。
モウリには、3歳年下の妹がいた。
小さくて愛らしく、モウリよりも要領がよく、賢い子だった。モウリと母、そして妹は、小児心理科医のもとへ向かっていた。
予約を入れてくれたのは、母の友人のタラだった。
「どのようなことで来られましたか?」
医師が尋ねると、母はすぐに答えた。
「この子はクラスメートと話さないんです。
友だちもいません。授業中も反応しないと、先生から言われまして……それで来ました。」
そう言いながら、母は続けた。
「それに南インドはどうしてこんなに暑いんでしょう。
道路にエアコンをつけるべきです。オートリキシャの中も本当に暑くて……」
医師は少し困ったように母を見てから、穏やかに言った。
「わかりました。では、少し検査をしてみましょう。」
「モウリ、こちらに座ってくれる?」
モウリは静かに席へ来た。
「絵を描くのは好きかな?」
「……うん。」
それは、小さな「はい」だった。
「じゃあ、好きなものを描いていいよ。」
モウリの顔が、少し明るくなった。
彼女は楽しそうに絵を描き始めた。
家、アイスクリーム、キャンディー。
色はピンクや赤。赤は、モウリの一番好きな色だった。
そして、花も描いた。
医師は言った。
「その花は、赤で塗るのかな?」
「いいえ。黄色にします。」
「どうして?」
モウリは少し考えてから、静かに答えた。
「理由はいりません。
世界のすべてのことに、理由が必要なわけじゃないから。」
医師は何も言わず、ただうなずいた。次は、形合わせのテストだった。
星、四角、長方形などのブロックを正しく並べる課題だ。
モウリにとって、それはとても難しかった。
最初の一つを、どこに置くべきか――
彼女は深く考え込んでいた。
「ゆっくりでいいよ、モウリ。考えて。」
その瞬間だった。
妹が前に出て、あっという間にパズルを完成させてしまった。
「わあ、すごいね。妹さんはとても早い。」
医師の言葉に、母はとても嬉しそうに笑った。
でも、モウリは――
何も言わず、ただ立っていた。
カモン、モウリ。
この章では、「違い」や「沈黙」が、必ずしも問題ではないことを描きました。
話さないこと、考えること、理由を持たない選択――
それらは弱さではなく、その人なりの在り方です。
モウリの静かな心が、少しでも読者の心に届いていたら嬉しいです。
ときには、理由はいらない。
ただ、そこにある気持ちを大切にしてもいいのだと思います。




