自由への逃走
世界が人工知能に支配され、人々は現実を忘れた世界。
僕と仲間たちは、この破壊された未来から逃げ、自由を取り戻そうとした。
世界は1970年7月25日に大きく変わった。この日、人類は初めて人工知能を世に示した。
最初、それはただの便利な道具にすぎなかった。有用で、安全なものだった。
しかし、わずか二か月後には、AIはすべての人間の日常生活に入り込んだ。人間よりも速く学び、疲れることなく働き、間違いも少なかった。
年を追うごとに、その力と必要性は増していった。
1980年までに、人工知能は多くの職業を置き換えた。教師、友人、本、そして他にも多くのものを。
1997年、人類はついに超知能とAGI――都市全体を管理できるシステムの誕生を宣言した。
監視カメラ、車、家、電話、店。電気で動くほぼすべてのものを。
こうして情報依存の時代が始まった。
すでに2歳から、親たちは子どもにさまざまなガジェットを与えるようになった。
子どもたちはほとんど外に出ず、友達と遊ばなくなった。
2024年までに、そうした子どもは世界全体で約80%に達した。
彼らの身体的健康は急速に悪化していった。脊椎の問題、2型糖尿病、高血圧、視力低下。
心理的な問題も現れた。幻覚、集中力と記憶力の低下、ガジェット依存。
2024年12月12日。イングランド。
僕の名前はカイン・アサノ。14歳だ。
両親と兄と一緒に、小さな村クラインに住み、高校に通っている。
簡単なことですら自分の頭を使わずAIに頼る連中を見ると、殴り倒して歯を全部叩き落とし、自分たちの無力さを無理やり飲み込ませたくなる。
今ですら、この国は人工知能に支配されている。
でも、僕が正す。
いつか必ずAIを完全に破壊し、自然に本来の美しさを取り戻させ、人々をガジェットから救う。
そうすれば、70年代以前の時代――親が子どもを愛し、一緒に過ごし、遊んでいたあの頃が戻ってくるはずだ。
そうだ、必ずやる。
過去に起きたあの出来事を二度と繰り返させないために。
僕は必ず妹を守り、人工知能に奪われた他の子どもたちの幸せも取り戻す。
僕が8歳だった2018年、学校から帰宅した。
「ただいま、ママ、パパ」
「おかえり」と母は答えた。
父は一言も話さなかった。
僕は近づいた。父は机に向かい、画面に前かがみになり、こちらを見ることすらなかった。
指が素早く動いていた。人工知能と会社の社長を解雇する相談をしていたのだ。
父は民間企業で働いていた。
ロボットは、違法な方法で社長を追い出す手助けをしていた。
どの書類を偽造し、どんな手順を踏むかを教えていた。
それは父にとって重要だった。
僕よりも重要だった。
僕は席に座り、昼食を食べ始めた。
そのとき、妹が部屋に駆け込んできた。
「パパ!」
嬉しそうに言った。
「一緒にご飯食べよう! パパのためにご飯作ったよ!」
父は突然立ち上がった。
「うるさい!」
拳が妹の顔を打った。
彼女は床に倒れた。
血が見えた。
僕は駆け寄ったが、父は僕の方を向き、胸を殴った。
僕は妹の隣に倒れた。
痛かった。
母を見た。何かしてくれることを願って。
母はそこに立っていた。
虚ろな目で僕たちを見つめ、黙っていた。
叫びも、涙も、動きもなかった。
画面は光り続けていた。
人工知能は次の命令を辛抱強く待っていた。
妹はまだ4歳だった。
泣きながら血を流していた。
涙と血が混ざり合っていた。
その瞬間、僕は彼らを心の底から憎み、二人とも殺したかった。
でも、僕はあまりにも弱かった。
あの日、僕は理解した。
技術が父を奪ったのだ。
そして母も。
僕が本で読んだ世界とは、あまりにも違う世界になってしまったことを。
それ以来、僕は自分に誓った。
必ず妹を守る、と。
その後、学校の授業中に一人の少年が入ってきた。
彼は自分を佐藤勇と名乗った。
彼も現代のガジェットとAIを憎んでいた。
翌日、僕たちは会った。話をした。
彼にも妹がいた。10歳だった。
彼は彼女を深く愛し、大切にしていた。
彼は自由を、過去の世紀を夢見ていた。
静けさと澄んだ空気の中で生きたいと願っていた。
彼は非常に頭が良く、有能で、現代ガジェットの危険性を理解していた。
彼の父親は、妻を殺した罪で処刑されていた。
勇は僕に提案した。
都市の外れへ逃げよう、と。
そこには制限がない。
現代のガジェットも、AIもない。
ただ自然の中で、静かに生きる。
翌日、僕たちは必要なものをすべて持ち、旅に出た。
勇が聞いた。
「その荷物のこと、両親には何て言った?」
「何も言ってない」
「何のためか、聞かれなかったのか?」
「いや。たぶん、僕が出ていくって分かってたんだと思う。だから止めなかった」
しばらく沈黙した後、勇が言った。
「現実が邪魔でしかない人間を、まだ画面から引き離せると思うか?」
「分からない。でも覚えておいてくれ、勇。
人はもう生きていない。接続されているだけだ」
そして翌日、街を出た直後、僕たちは軍に逮捕された。
首都で起きたテロ事件の容疑だった。
大規模コンサートへの爆弾設置を疑われた。
目隠しをされ、装甲車に放り込まれ、どこかへ連れて行かれた。
目隠しを外されたとき、鉄格子が見えた。
そこは刑務所だった。
僕がそれが人工知能の生成だと言った瞬間、男は僕を殴り始めた。
拳で殴り、爪を引き抜き、腕を折り、さまざまな方法で拷問した。
その間、僕の頭にあったのは妹のことだけだった。
「まだ小さい……何が起きたんだ?」
年齢的に拷問はされないはずだと、自分に言い聞かせた。
拷問は長く続いた。
一週間後に裁判だと言われた。
小さな部屋に一人だった。
他の人たちがどうなったかは分からなかった。
一週間は一年のように長かった。
法廷に連れて行かれた。
記者とジャーナリストで溢れていた。
席に座ると、勇と五人の成人が連れて来られた。
勇は一週間で激痩せし、目つきが完全に変わっていた。
彼は僕を見て言った。
「カイン、僕たちの妹はどこだ?」
泣いていた。
僕は「まだ小さいから大丈夫だ」と必死に慰ました。
そのとき気づいた。
彼が恐れていたのは死ではなく、妹を失うことだった。
裁判が始まった。
裁判官が手を振ると、背後の巨大スクリーンに映像が映し出された。
最初はメッセージのやり取りだった。
僕たちのアカウントから送信されたとされるもの。
会場の設計図、警備のタイミング、逃走ルート。
すべてに僕たちの名前と写真があった。
「これらのデータはクラウドから直接抽出されたものです」
「国家AIによって確認され、疑いの余地はありません」
次に監視カメラ映像。
テロの一週間前、僕たちが何度も会場付近を通っている様子。
スロー再生され、拡大され、赤枠で顔が強調された。
「ご覧の通り、下見を行っています」
次に医療診断書。
「被告人にはガジェット過剰使用による精神障害の兆候があります」
「幻覚、現実認識の歪み、攻撃性の増加」
初めて見る医師がうなずき、
「このような人物は非合理的かつ残虐な行動を取る可能性がある」と言った。
次は金融取引。
不明な口座への送金。
「これらはテロ準備に使われました」
僕には分かった。
食料、衣類、安価な道具。
それがここでは死刑宣告だった。
「すべての証拠は最上位AIによって確認されています。誤りはありません」
その瞬間、僕は理解した。
判決は裁判前に決まっていた。
そして世界中に公開された、AIが生成した極めてリアルな映像。
僕たちが爆弾を仕掛け、妹たちを投げ捨て、逃げる映像。
全身に鳥肌が立った。
寒気がして、泣いた。
妹たちは死んだという意味だった。
恐怖で涙が止まらなかった。
体が震え、激しい頭痛がした。
そのとき、勇が叫んだ。
「これは偽物だ!
妹たちは今も生きている!
六年間、本物のテロリストを捕まえられなかったくせに!
一週間前、都市でテロが起き、多くの人が死んだ!
お前たちのAIは何も気づけなかった!
AIを信じすぎたせいで、テロリストは成功し、逃げた!
検査を怠ったことを世界に言えなかった!
評判を守るため、AIは犯人を必要とした!
そして街を出た僕たちを選んだ!
五人の男を脅し、映像を捏造し、僕たちを狂人に仕立て上げた!」
裁判官が言った。
「連れてこい」
妹が車椅子で運ばれてきた。
左半身は焼け焦げ、左脚はなかった。
生きていたが、かろうじて息をしていた。
僕は動けなかった。声も出なかった。
「これが証拠です」
「爆弾設置後、彼らは妹たちを捨てて逃げた」
「爆発後、カインの妹は重体」
「勇の妹は死亡しました」
翌日、処刑が宣告された。
地下牢へ運ばれ、鍵をかけようとした瞬間、大地震が起きた。
看守たちは瓦礫に潰された。
脱出のチャンスだった。
だが勇は妹を探した。
見つけた。
地震で殺されていた。
勇は泣き叫び、怒りに震えた。
看守の武器を取った。
非常口から外へ出た。
裁判所の周囲は混乱していた。
本物のテロリストがここで再び攻撃していた。
僕たちは車を奪い、街を離れ、無人の森へ逃げた。
100キロ近く走り、到着した。
人のいない、深い森。
動物が多く、狩りをして生き延びなければならなかった。
勇のおかげで、拳銃でウサギを撃ち、捌き、焚き火で焼いて食べた。
夜だった。
車で眠った。
僕は眠れなかった。
涙が止まらなかった。
人生の目的を失った。
守れなかった。
そして、願いが生まれた。
すべてを正したい。
この世界を正すためなら、誰でも殺す覚悟だった。
そのために、僕は強くならなければならない。
この物語は、AIが支配する世界での少年たちの戦いを描いたものです。
読者の皆さんに楽しんでもらえれば幸いです。




