史上最大の兄弟喧嘩っ!~華麗異なるカレーBATTLE~
しいな ここみ様、主催の個人企画「華麗なる短編料理小説」の二皿目になります。
夏はカレーだっ!
灼熱のバトルだっ!
やたらと暑苦しいお話を書いてみたくて・・・こんなんが出来あがりました(笑)。
へい、お待ちっ!な二皿目でございます(誰も待ってない、ぐっすん)。
美味〇んぼがあるなら、ミスター〇っ子もどうですか(あんまり、味っ◯知らんけど、汗)?
灼熱の太陽が照りつける夏のある日。
開閉式ドーム、ヘイヘイスタジアムには、キッチン・コロッセウムが設置され、満員の観客たちから歓声があがっていた。
実況のジャストフィット横沢は、深呼吸をするとマイクを握りしめる。
「さあ、ついにやってまいりました。華麗なるカレーワールドカップ決勝戦っ!激戦を制した二人の猛者たちは、なんと小5の双子の兄弟っ!兄、狩衣太郎と弟、一郎の入場だっ!・・・解説には無類のカレー野郎、合田ヒロシさんをお招きしております。よろしくお願いします」
「カレー大好きっ!イエローマンったい!・・・です」
ヒロシはかつて一世を風靡した、自身の戦隊鉄板ネタを披露する。
「・・・はいはい」
と、冷めた口調のジャストフィット。
「ちょ、ワシが滑ったみたいじゃなか・・・」
焦るヒロシを、横沢はガン無視でアナウンスをはじめる。
「さあ、いよいよ世界の頂点を決める一戦がはじまりますっ!戦いのゴングがっ!心のエキゾーストが高鳴ります。あー興奮してきたっ!ジャストフィィィィィィットっ!アーレ キュイジーヌ(料理はじめっ!)」
激しい謎のコサックダンスのあとに、横沢は力強く、人さし指を突き出した。
「ウィー ムッシュ!」
の言葉とともに、兄弟は調理へととりかかる。
「おいっ!一郎」
「なんだ兄者?」
「この戦いで俺は証明してみせる。兄より優れた弟なぞ、存在せぬということをなっ!」
「ふん、兄者よ。今こそ、俺はあなたを越えてみせる。俺はカレー王になるっ!」
「笑止。貴様がカレー王ならば、俺こそ真のスーパーカレー人四だっ!」
「俺こそっ!カレもんマスターっ!」
「お前はもう負けているっ!」
「へのつっぱりはいらんですよっ!」
「兄者よ。今の俺を昔の俺とは思うなよ。地獄の淵より蘇りし、邪神降臨を背にし、不死鳥の力を宿した、この鬼の右手に勝るもどなどないっ!」
「世迷言を・・・生殺与奪の件を自分ではなく人に与えるな」
「兄者・・・お前もな。よかろう、我が全身全霊のカレー力でお前の覇道を止めてみせる」
「カレーフォース(力)と共にあらんことを」
「いざ尋常に勝負っ!」
「おーっと、どこかで聞いたような台詞を中二にもなっていない、下の毛も生えていない?いや、かろうじて生えているかもしれない、小5の二人がそれっぽい言葉を言い合いバチバチにやりあっている~どうですか、合田さん」
「小5でもボーボーかも〜」
「・・・続けて調理を見ていきましょう。おっと、先に動いたのは兄の太郎だ」
「・・・ほう、弟君の方が一郎なんですね」
「今?そこ?」
太郎は「カレーの〇子さま」のルウを取り出し、そのまま水とともに煮込みはじめる。
「具はどうした?」
身を乗り出すヒロシをよそに、
太郎はまんまのパイナップル、マンゴーをドーンと入れたった。
「これは、なんだ!」
「スイカ、いちご、いちじく、あけび、ドラゴンフルーツ、チェリモヤ、ドリアンもドーンして、まじぇまじぇ。これぞ俺の秘技っ!果物という食材をありのままに活かすっ!アルティメット・ナチュラル・天使がくれた果実のフード(究極自然食)っ!・・・見たかっ!どうだ弟よっ!」
「ふん」
「これでトドメだっ!かきまぜっ!極タイフーンっ!」
「おおっと、太郎選手っ、おたままじぇまじぇで、鍋の中でいろんなものが回る回る回ってるっ!渦巻く宇宙・・・高速、音速、神速っ、いや、まさしくっ!くるくる回る回転木馬だっ!」
一方、一郎は目を閉じ腕組みをしたまま、微動だにしない。
刻々と時間だけが過ぎて行く。
「制限時間は残り5分っ!どうした一郎君、万事休すかっ!」
微動だにしない一郎に、横沢は差し迫るタイムリミットを宣告する。
「いや、カレーは諦めたらそこで終わりです」
どっかで聞いたような台詞をさらりと吐くヒロシ。
一郎はカッと、目を見開く。
「今だっ!」
取り出したのは、レトルトカレー「L〇E」だった。
「おおっと、これは、まさかのLE〇だっ!・・・あああっ、禁断の辛さ30倍だとうっ!」
湯煎したパウチをハサミで切り、カレー皿にのった白米の上にかける。
そして取り出したのが、
「げえええええっ!」
解説席の二人が叫ぶ。
「そうだ。これが俺の隠し味っ!煉獄スパイシー・ザ・レインボーっ!」
一郎は、ガラムマサラ、ハバネロ、ジョロキア等、ありとあらゆる辛い香辛料を、たださえ地獄のカレーに容赦なくかけまくった。
「正気の沙汰ではない。辛さで目が開けられんぞ」
太郎は絶句する。
「何を兄者、今更っ!勝負事は時には非情も必要なのだっ!うわっ、はっはっはっはっはっはっ!」
高笑いする弟一郎。
「これ、尻もヤバいったい、火ぃ吹くバイ」
ヒロシは呟く。
ピィィィーッ!
無情にも試合終了のホイッスルがコロッセウムに響く。
「調理終了~!」
横沢は戦いの終了を宣言した。
こうして兄弟の戦いが幕を閉じたのだった。
「・・・ワシが審査でなくてよかった」
ヒロシは噛みしめるように、そう呟いた。
「さあ二人のカレーが完成しました。実食そして審査をするのは、元祖カレーKingのUOOHガンダーさんですっ!」
「実食!」
「まずは一郎君のデス・カレー~死のスパイスを添えて~です」
「・・・・・・」
UOOHガンダーのスプーンを持つ手が震える。
カレー皿からほのかにあがる湯気ですら、痛さでKingの視界を奪いとる。
一郎は不敵に笑う。
「カレーKingさんよぉ。無理して食べる必要はねぇよ。ギブして、ごめんなさいと負けを認めて、俺を勝者にすればいいだけのこと!」
小五とは思えないゲスの極みの発言。
「おっと、まさかの堂々たる脅迫宣言。審査員のストマックを破壊して、玉座に座ろうという荒業だっ!主旨をはき違えている~だが、それが小五っ!致し方無しなのかっ!」
横沢は煽る。
UOOHガンダーは涼しい顔で、
「なめるなよ・・・小僧」
と、一言。
「!」
「辛さが怖くて、カレーKingがつとまるかっ!」
UOOHガンダーはその代名詞、カレーは飲み物通り、一気に飲み干し・・・いや、食べた。
「ぐはっ、げげげげげっ!辛いかも〜、いや、辛い、辛いぞーっ!」
口から噴き出し、そして尻からも灼熱の炎。
ここぞとばかり、横沢が叫ぶ。
「ジャストフィィィィィィットっ!あんどファイヤーっ!」
「愉悦ッ!」
一郎は悪い笑みを浮かべた。
「猛烈に・・・辛いぞっ~!」
口と尻からファイヤー噴射が瞬く間に地球を一周駆け巡り、やがて円環の炎と繋がった。
「男は背中を見せちゃなんねぇ」
ガンダーはそのまま卒倒した。
身体がビクンビクンと跳ねる。
「ぶべっ!へベラっ!ゲボボボボーボっ!」
キングの帰還まで小一時間がかかった。
「さあ、中断はありましたが、改めて温め直した太郎君のカレー、アルティメット・ナチュラル・カレーを実食です」
太郎は固唾を飲み、両手を組んで祈りを捧げる。
ぷかりと浮かぶのは、溶けきれない、丸ごとパイナップルと葉っぱ、スイカの皮などなど。
「ふむ」
UOOHガンダーは意に返さず、食べ・・・飲み干した。
「ふむ」
もう一度、UOOHガンダーは言い頷く。
そしてカレーKingはおもむろに立ち上がった。
「この結果っ!」
会場の皆は固唾を飲んで、カレーKingの判定を待つ。
「カレーの勝利だっ!」
「なんだとっ!」
双子は激しく激高する。
「俺たちが作ったんだ!どちらかが勝者だろっ!」
「そうだっ!」
「だまらっしゃい!このケツの毛も生えてない青二才どもがっ!分からんのかっ!」
「なにをっ!」
「お前達が、カレーそのものに救われたという事に」
「はぁ?」
「本来、ゲロ辛、ゲロマズのお子様が作った料理が、偉大なるカレーによってかろうじて中和されたのだ・・・小僧たちカレーを侮辱するなよ、恥をしれぃっ!私カレーKing UOOHガンダーはここに宣言する。真の勝者はカレーであるとっ!これは揺るぎない事実であるっ!」
観客からはどよめきの声があがる。
「納得できんのう。兄者」
ふるふると震え怒る一郎。
「応よ。許すまじ。偽Kingを・・・」
同じく、憤怒の形相をみせる太郎。
「強行突破で・・・」
「潰すっ!」
太郎と一郎はトンファーとドスをどこからともなく取り出すと、結託してカレーKingへと襲いかかった。
「笑止っ!」
カレー王は両手を広げウェルカムする。
「なんだとっ!」
「だにぃっっ!」
驚く2人。
UOOHガンダーの身体がみるみる巨大化していく。
そうして6階建てビルジングぐらいの高さとなった(当社比・・・社ってどこ?なんやねん)。
「大人を舐めた、悪い子にお仕置きをせねばな」
ガンダーは指をポキポキと鳴らす。
「暴力反対っ!」
「否っ!」
兄弟はしおらしくなるが、
「これをSNSに拡散するぞ」
と脅迫。
「豹変するのも、餓鬼の特権ッ!」
横沢は叫び、
「それも良しっ!世間体が怖くてカレーを愛せるかっ!」
ガンダーは、満面の笑みを浮かべる。
「おおっとおぉ!UOOHガンダー選手、小学生に鉄拳制裁かっ!」
横沢は驚愕の表情でその一部始終を見た。
ぶんっ!と物凄い風を切る音と共に手刀を落とす。
ぴたっ!と動きが止まる。
「いや・・・違うっ!」
巨大UOOHガンダーはしゃがんで悪ガキに一言、
「大きくなれよ」
と言って、〇大ハンバーグとバーモン〇カレールウを手渡した。
「あわわわわ」
びびる小学生に、カレー王はサムアップ。
「ここからはじめよう」
と一言。
「これこそ慈悲・・・」
横沢は呆然と、その状況を見つめる。
「これがカレー愛ったい」
ヒロシは我慢が出来なくなり、カレー〇シを食らった。
感動の場面に直面し、滂沱と涙を流す観客。
「よくやった!感動した!」
思わず立ち上がって号泣するヒロシ。
「美しい、美しいっ!これがカレーの成せる業なのかっ!」
拳を震わせ、涙を拭った横沢は絶叫する。
「何と言う事でしょう!世界一はカレーとなりました。しかし、この子たちはどうやって勝ち進んだのか?深まる謎ですが、とにかく一件落着っ!そろそろ字数の兼ね合いもあるのでさようなら~」
暑苦しい?
ネタ的にも・・・?
だが、それでいい(笑)。