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婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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【新春特別更新】緊張感の正体、それは……

 アトラス王太子と初めて迎えた新年。


 ニューイヤーを迎えた瞬間は、お祝いの乾杯、花火や鐘の音が鳴り響き、「ああ、新しい年を迎えることができたわ……!」と感慨もひとしお。年越しのため、遅くまで起きていたので、翌日の午前中はのんびりだった。


 しかし午後になると……王族は大忙しとなる。


 なぜなら地方領から首都にやってきた貴族たちの年始の挨拶を受けることになるからだ。アトラス王太子の婚約者となった私も、当然、その挨拶の場に立ち会う。


 いわゆる三が日はそう言った挨拶やら会食やらで慌ただしく過ぎて行く。


 そんなバタバタがひと段落した昼下がりのこと。


「マリナ。明日から公務も通常稼働に戻ります。今日はホリデーシーズンの最後の休暇となりますが、王家では伝統的にこの日にしていることがあります」


 一体何だろうと思ったら、それはホリデーシーズンの休暇の最終日、王族は揃ってティータイムを過ごすのだという。その際、みんなで食べるのがパイ!


 そのパイはアーモンドクリームとカスタードクリームを混ざ合わせたフィリングが中に入っており、表面には太陽をモチーフにした渦巻き模様が描かれていた。そしてそのパイの中には毎年、幸運のアイテムが一つだけ入れられている。それを手にした者は、その一年、幸運に恵まれると言う。


 その話を聞いた私は前世記憶で「知っている!」と思い出す。


 フランスで毎年1月の公現祭エピファニーに合わせて食べるパイで、その名も『ガレット・デ・ロワ』。このパイもアーモンドクリームとカスタードクリームを混ざ合わせたフランジパーヌというクリームが特徴で、かつ陶器で作られた小型の人形『フェーヴ』が一つだけ入っているのだ。昔はそら豆が入っていたというが、私が前世で食べたパイでは陶器の人形だった。そしてフェーヴを引き当てた者は、紙で出来た王冠をプレゼントされ、王様(王妃様)として祝福される。さらにその一年は幸せに過ごせるというもの。


 まさにこれに似た習慣が、セントリア王国にもあったのだ!


「去年、幸運のアイテムを引き当てた人が翌年、このパイを用意する。そして今年はわたしがそのパイの担当」


 つまり昨年フェーヴのような幸運のアイテムを引き当てたのは、アトラス王太子だったわけだ。


「今回のパイではぜひマリナが幸せのアイテムを引き当てるようにと……強い願いを込めた」


 サラサラのホワイトブロンドの前髪を揺らし、アトラス王太子がブルートパーズの瞳をキラリと輝かせる。白のフロックコートに同色のズボンという、膨張色の難易度高めの衣装も見事にスリムに着こなしたアトラス王太子は、自身が今年のパイ作りの担当であるため、気合いが入っているようだ。約束のティータイムの時間の三十分も前に私を迎えに来て、王宮にある王族専用の喫茶室に向かった。


 早めに着いたので、国王陛下夫妻、王女が来るまではアトラス王太子とおしゃべりタイムとなったが……。


 アトラス王太子は珍しく、落ち着かない様子。


(どうしたのかしら? そんなにこのパイは重要なの? でもレニーに聞いたら「王族の新年のお楽しみ行事のようなもので、平民も真似をしていますが、特に公式行事ではないようですよ」とのことだったけど。アトラス王太子は随分真剣ね)


「おお、マリナ、アトラス。待たせたな」

「いえ、父上、定刻五分前です。問題ありません」


 アトラス王太子がキリッと答え、王女もやって来て、ティータイムがスタートなる。アーモンドが香るこのパイを食べる時は、いつもコーヒーと決まっているとのこと。メイドが芳醇な香りのコーヒーをカップに注いでくれる。そしてついにアトラス王太子肝いりの焼き立てパイが登場し、その表面の模様の美しさには、ため息しかない!


「では、カットします」

「!」


 美しい模様を披露するために運ばれたパイは、皆にお披露目された後、メイドが一度下げ、カットしてお皿にのせたものを一人一人に出すのかと思った。だがなんとアトラス王太子自らが、銀製のナイフを手にとり、パイのカットを始めたのだ!


(しかも五等分……というのは難易度が高い。そのせいもあるのかしら? アトラス王太子が額に汗をかきそうなぐらい、パイをカットする作業に集中しているわ……!)


 それを見守るのだから、国王夫妻も王女も無言で、アトラス王太子の手元を見てしまう。私もスカイブルーのドレスのスカートの上で手を合わせ、「上手く行きますように」と祈ることになる。


 だがアトラス王太子、そこはさすがに優秀で有能で勝負に強いだけあった。


 見事に均等な五等分にカットすることに成功したのだ……!


「おおお、素晴らしいぞ、アトラス!」

「見事ね、アトラス!」

「お兄様、すごいわ!」


 王家の皆さまが、絶賛する気持ちはよくわかる。私も「アトラス王太子殿下、立派です!」と負けじ(?)と声をあげてしまう。たかがパイのカットであるが、アトラス王太子が本気なら、私も本気で絶賛する!の一択しかない。


「これは父上、こちらが母上で……」


 既にカットは終わり、最大の難関は通過できたと思うのだけど、アトラス王太子はいまだ真摯な表情のままなので、私も神妙な表情になる。気付くと国王夫妻も王女もその眼差しは真剣そのもの。


(何故だかわからないけど、どうやらこのパイを食べる習慣は……厳粛に挑むものなのね。『ガレット・デ・ロワ』はお楽しみ的な新年の行事の一つだったようだけど……。ここでは違うのね)


 ピンと張りつめた緊張感の中、全員の前に切り分けられたパイが置かれた。


「では、いただきましょう」

「おお、そうだな」

「いただきます」


 厳かな雰囲気が続く中、パイを食べるのは……。


(何だか背筋が伸びるわ。これだと幸運のアイテムを引き当てたとしても「やったー!」なんて喜べないわよね)


 そう思いながら、まずはフォークで一口目を食べる。


「!」


 王家の皆さまが私をガン見している!

 しかも大変心配そうな、不安そうな表情をしているように思えてしまう。


(え、もしかしてまだ完全な王家の一員ではない私が、幸運のアイテムを引き当てたらどうしよう……とか思っています……?)


 正式な王族の一員になる前に引き当てるのは、伝統に反する――とかあるのかしら!?


 なんだか背中に汗が伝う中、二口目を口に運ぶ。


(うっ、やっぱり全員が私に注目している。どうしよう……。これで私が幸運のアイテムを引いてしまったら……)


 そうなったら誤魔化すために、そのアイテムを飲み込むしかない……?


 そんなことを考えながらの三口目を口に運ぼうとした時。


 フォークが違和感を探知した。


(うん? フォークが刺さらない……)


 そこで私はハッとしてサーッと顔を青ざめさせることになる。


(大変! 私、幸運のアイテムを引いてしまった!?)


 とても罰当たりなことをしてしまったと、手が震えてしまう。


「マリナ」


 アトラス王太子がとても深刻な表情で私の名を呼ぶので、もう冷水を浴びた気持ちになっている。


「す、すみません。申し訳ありません。新参者なのに、その、私……」


 泣きそうになる私をアトラス王太子がぎゅっと抱きしめる。


「よかった……! マリナが今年の幸せのアイテムを引き当てました!」

「おおお、それはよかった!」

「おめでとう、マリナ」

「お義姉様、おめでとうございます!」


 国王陛下夫妻と王女が立ち上がり、拍手をしてくれている。気付くと控えているメイドやバトラーも拍手をしているのではないですか!


 これには「???」となっていると、アトラス王太子が「マリナ、そのまま幸せのアイテムを取り出してください」と言いながら、抱きしめていた私を解放する。「えっ、取り出すの!?」と躊躇う気持ちが湧き上がるが、国王陛下夫妻と王女は「取り出しましょう」という感じで「うん、うん」と頷いている。


(……なんだろう。さっきまでの張り詰めた雰囲気から一転、みんな穏やかな表情。だ、大丈夫なのかしら? 私が幸運のアイテムを引いたこと、怒っていないの……?)


 半信半疑だったが、再度アトラス王太子から「どうぞ、取り出してください」と促されたので、おずおずとフォークを使い、フィリングを崩すと……。


「あっ……!」


 驚いた。

 本当に驚いてしまう。

 だって。

 パイから出てきたのは、大粒のダイヤと紫紺色の宝石があしらわれたゴールドの指輪だったのだ!


「マリナ。遅くなりましたが、これは婚約指輪です。マリナの瞳のような宝石を見つけるのに時間がかかりましたが、ようやく用意できました。そして今年一年の幸せも、マリナに贈ります」


 そう言うとアトラス王太子が私の指に指輪をつけてくれる。


 その瞬間、すべてを理解してしまう。


(アトラス王太子は、幸せのアイテム……婚約指輪を私が引き当てられるように、いろいろ調整していたのね! きっとパイを作る時にも立ち会い、指輪の位置を確認していた。カットもその時の記憶に従い、慎重に行った。そしてアトラス王太子が婚約指輪をこのパイと共に私に贈ろうとしていることを、国王陛下夫妻も王女も、使用人のみんなも知っていたのね……!)


 あの得も言われぬ緊張感の正体、それは「婚約指輪がマリナの元へ行きますように!」というみんなの祈りから生まれたものだった。


(そこまでみんなが協力してくれるなんて……!)


「ありがとうございます、アトラス王太子殿下! 見守っていただき、国王陛下、王妃殿下、王女殿下、ありがとうございました!」


 多くの人から祝福されて、私は幸せになれたのだと、みんなに感謝する気持ちでいっぱいになる。


 幸せのアイテムを手に入れた人が、一年間の幸せを得る――。


 だが今年一年、幸せになるのは私だけではない。


(最強の幸運を手に入れた私が、みんなのことも幸せにするわ!)


 そう心に誓い、素敵なサプライズをしてくれたアトラス王太子に感謝のハグをした。


本作で今年初めてとなった方

明けましておめでとうございます!

大好きな作品の新年更新ができて嬉しいです!

何よりお読みいただけたことに感謝です!!

書き手として読者様への感謝、恩返しは

書くことでしかできないと思うので

今年も頑張って書き続けます~☆彡

ということでページ下部のバナーから物語の海へダイブ!

2026年も読者様と一緒に

楽しい物語の旅を出来ますように♡

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