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婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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帝国祭(4)

 皇帝陛下のあの余裕を感じさせる笑みが気に掛かる。これはアトラス王太子に伝えた方がいいのかと思っていると、演説を始めるためのセレモニーがスタートしてしまう。


 華やかな音楽が流れ、そのまま帝国の国歌斉唱となる。広場には大勢の帝国民が集まっており、彼らが声を合わせて歌うのだ。それはかなり迫力があった。


 国歌斉唱が終わると、いよいよ皇帝陛下の演説だ。皇帝陛下とアトラス王太子がバルコニーに歩み出た。すると割れんばかりの拍手と歓声が起きる。


 皇帝陛下一人がさらに前へ進み、慣れた様子で手を振り、バルコニーの手すりを掴む。そしてもう一方の手を、歓声と拍手を宥めるように動かす。次第にざわめきが収まっていく。まさに静寂が訪れるそのタイミングで皇帝陛下が口を開く。


「今年の帝国祭は遂に最終日を迎え、世が皆に言葉を述べる時間となった。だが、余興はまだこれからだ! 警備の兵たちよ、矢を放て! 世の背後にいるはセントリア王国の王太子じゃ!」


 広場の周囲の建物のバルコニーや屋根には、狙撃専門の弓兵が多数配備されていた。皇帝陛下はその彼らに「アトラス王太子を攻撃せよ!」と命じたのだ!


 私のいる場所からも庁舎の屋根が見え、そこで矢をつがえる兵士の姿が見えている。


 国王陛下はアトラス王太子が攻撃の的にされると言っていたが、まさにそれが現実になりかけている。


 アトラス王太子は対策を講じると言っていたが……。


(今、アトラス王太子は何人の矢で狙われているの!? 本当に対策は出来ているの!?  どう考えても矢が一斉に放たれる気がする!)


 クウはハッとしてアトラス王太子にバルコニーから離れるように言っている。だが狙撃専門の弓兵は、多数配備されているのだ。


(バルコニーから離れるぐらいで間に合うの!?)


 その時、私は何か煌めくものが見えた。間違いなく、矢が放たれたのだと思う。


 そこはもう自分でも信じられない素早さで動いていた。


 無我夢中でアトラス王太子に抱きつき、床の上を転がる。


 その転がっている間にも、ビュンと言う音がいくつも聞こえた。そして直後にトントントンと矢が雨のように降ってくる音を聞くことになったのだ。


 これだけの矢が降り注げば、命中するかもしれない。でもそれは私にであって、アトラス王太子には貫通しないはず……!


(どうか彼には命中しませんように)


 恐怖で体が縮こまりつつ、アトラス王太子を庇おうと、抱きつく私の腕に力がこもったが。


 矢が刺さる気配はない。


 トントントンと続け様に聞こえた矢の雨の音が止み、私は恐る恐るで目を開け、バルコニーの方を見る。


 そこで目にした光景は、実にセンセーショナルだったと思う。


 無数に放たれた矢は、アトラス王太子を狙ったものではなかったようだ。その矢は見事に皇帝陛下の周辺に命中したようで、彼の周りには無数の矢が散乱している。


 一本たりとも皇帝陛下に命中していないことに、逆に鳥肌が立つ。敢えて命中させていない。でも狙えば全ての矢を、皇帝陛下に命中出来ると示しているようなものなのだから。


 これはどういうことかと思ったら……。


「アシュトン嬢、わたしを庇おうとするなんて!」


 アトラス王太子にぎゅっと抱きしめられ、もう驚きと嬉しいので、頭が真っ白になりそうになってしまう。だがアトラス王太子は「ありがとう」と短く言うと、素早く動き、気づけば彼も私も立ち上がっていた。


「面白いものを見せよう」


 アトラス王太子はそう言うと、クウに目配せして、バルコニーに出る。


「皇帝陛下、実に面白い方法でわたしを紹介くださり、ありがとうございます」


 余裕たっぷりで口元に笑みを浮かべるアトラス王太子に対し、皇帝陛下は顔面蒼白だ。


「デセダリア帝国の皆様、初めてお目にかかります。わたしはセントリア王国の王太子アトラス・ロイ・セントリアです」


 アトラス王太子は優雅にお辞儀をする。それは本当に月並みな言葉になるが、カッコイイ!


「今回、わたしは帝国に巣食う悪を排除するため、ここにいる。決して戦争をするためにここにいるわけではないことを、ご理解いただきたい」


 そこからアトラス王太子は帝国の膿の一つを明らかにする。


「帝国では徴兵制があるが、裕福な人間が賄賂で兵役逃れをすることを、皇帝陛下は黙認されている。皇帝陛下、そうであろう?」


 問われた皇帝陛下は顔色の悪いまま無言だ。すると──。


「東の要、ミトラス辺境伯、この強引な皇帝陛下をどう思う?」


 アトラス王太子がそのよく通る声で、バルコニー左手に合図を送る。その方角の屋根にいた弓兵は、東の辺境伯であるミトラス家の紋章が刺繍された旗と帝国の旗をはためかせたと思ったら……。


 帝国の国旗を放棄した!


 つまり帝国旗はおろされ、代わりに掲げられたのは……セントリア王国の国旗だった。


 広場にいた帝国民は何が起きているのかと目が点だったが、今の行動で理解した。東の辺境伯が皇帝陛下ではなく、セントリア王国を支持することを表明したと!


(そうなるとさっき矢の雨を降らせたのは、東の辺境伯の指示だったのね!)


 そう思うのと同時に。私はこの場にお祖父様がいると分かり、気持ちが昂る。


 帝国祭の時、東の辺境伯であるお祖父様は、例年国境の警備に就いていた。だがどうやら今年は帝都の警備の担当だったようだ。


(アトラス王太子はお祖父様が帝都に来ると知り、連絡をとったのね……!)


「さあ、皇帝陛下。東の辺境伯は、セントリア王国を支持してくれている。そして今、彼の弓兵は陛下を狙っているのだが。わたしの問いに答える気は?」

お読みいただきありがとうございます!

皆さんのエールを感じ、やる気がみなぎっています~

今日も増量更新頑張ります↑↑↑

まずは次話を20時頃公開予定です~

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