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婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中


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皇宮へ(3-5)

 強烈な刺激臭にむせるようにして目が覚める。

 これはこの世界でお馴染みの気つけ薬だ。


 秘密の通路で濁流に呑まれ、死を覚悟した。

 でも生きている……!

 生きてはいるが、様子がおかしい。


 まず目隠しをされているようで、目が開けられない。口に布をかまされているし、両手の自由が利かなかった。


(これは……どういう状況なの!?)


「マリナ・サラ・アシュトン。元公爵令嬢の君とこんなふうに再会できるなんて。驚いたよ」


 耳元で息がかかるように話し掛けられ、ゾワッと恐怖で鳥肌が立つ。


(この声を私は知っているわ。この声は……)


「マリナ。大変な目に遭ったね。リオンヌ侯爵に嫁ごうとして、ならず者の襲撃に遭ったのだろう? 着替えをさせたメイドに聞いたら、でもどこも怪我はなかったとか。それでも君は……もう乙女ではないのだろうね」


 私の元婚約者であり、皇家の一員であるベネディクト・ジョージ・デセダリアが話し掛けていると分かり、絶望的な気持ちになる。


(あの濁流から逃れることができたのに、まさかベネディクトの手に堕ちるなんて……!)


 そこで頭を回転させ、理解した。


 秘密の通路は皇宮から帝都へ脱出するために作られている。帝都から皇宮へ入り込む者は侵入者と見なされるのだ。


 ただ皇家の人間が同行しているなら話は別になる。理由があり、帝都から皇宮へ秘密の通路を使っている可能性もあると。


 そこであの歌だ。


 歌えるのは皇族教育を受けた者のみで、失敗すると左の通路は通過できない。よって真ん中の通路にいるのは皇家の一族しかいない前提となる。ゆえに歌を終え、あのドアノッカーのような鉄の輪を引っ張ることで、ギミックが作動する。


 左の通路の岩が動き、真ん中の通路では濁流が流れ込む。濁流は最速最短ルートで皇宮へ到達する。


(濁流のゴールは……庭園の噴水につながる水路だわ!)


 私一人、先に皇宮に至った。だがそんな私をベネディクトが見つけてしまった。


(おそらく私は彼の私室に連れていかれたのね)


 最悪だったが着替えをさせてもらったことは大きい。ずぶ濡れの専属皇宮騎士の隊服は重たいからだ。それに髪もある程度乾いていることに安堵する。


(ちょっと待って、ペンダントは!?)


 アトラス王太子にもらったペンダントをちゃんとつけているのか。首に集中し、そこに鎖の気配を感じ、胸の谷間にペンダントトップがあると分かり、安堵したのは束の間のこと。


 デコルテに布の気配はなく、胸の辺りがやたらとキツイ。


(必要以上に胸が盛られているような気がするわ! それに背中と胸の辺りの露出が多いのでは!?)


「マリナ。落ち着いたかな」


 どうやら気付け薬など片づけたようで、ベネディクトが話し掛けてきた。


 彼に対してはいろいろと言いたいことがある。

 手を拘束するのはやめて欲しいと。

 目隠しや口にかませている布をはずして欲しいと。


(そう、そうなのだ! 口に布をかませているのに、話し掛けるとはどういうことなのかしら!? これでは答えられるわけがなかった)


 懸命に声を出そうとして、もがくことで鼻息も荒くなる。すると……。


「マリナ……。いいね。すごく興奮するよ。多くの見知らぬ男たちに散々弄ばれたのだろうけど……君はこんなに際どいドレスを着ていても、穢れを知らぬ乙女のようだ」


 ベネディクトの言葉に、声を出そうとしていたが、それはやめることになった。


(さっきからベネディクトはやたら乙女がどうのこうのと言っているが。でっち上げの襲撃事件を事実と信じ、攫われた私が男たちの慰み者になったと思い込んでいる? しかもその勝手な妄想と、声を出そうとする私を見て、興奮していると……?)


 リオンヌ侯爵は変態だったが、ベネディクトも同類だった。


(というかヒロインの攻略対象が変態って……。これはもしかすると、人は見た目によらないという教訓を含んだゲームだったのかしら……)


「うううんっ!」

「この谷間に挟まっているペンダントは」


 ベネディクトが谷間に触れたと思ったが、それはアトラス王太子がくれたペンダントを気にしていると分かり、私は焦る。


「……うわあっ!」


 両足は自由になると分かったので、咄嗟に手が伸びてきた方向から推測し、思いっきり脚を振り上げた結果。それはベネディクトに直撃し、彼はベッドから転がり落ちたようだ。


「マリナ。そんなちょっと谷間に触れようとしたぐらいで、暴れなくても……ああ、そうか。目隠しをしていたから、驚いたのかな? 目隠しは外そうか。でも目隠しをした方が、感度は上がると思うよ」


 ベネディクトの言葉にはいろいろと思うところがある。まず「触れよう」ではなく、谷間に触れていた。しかも目隠しの有無に関係なく、ベネディクトが何かしたら私は暴れる。さらに感度がどうのとか、どうでもいい!


 それよりもこのままではこの盛りの付いたベネディクトに乙女を奪われてしまう。


(せっかく濁流から生き延びたのに! ベネディクトに何かされるなんて絶対に嫌よ!)


 だが手首を拘束され、目隠しされ、口に布をかまされたこの状況は、圧倒的に私に不利だった。


(一体、どうしたらいいの……!?)

お読みいただきありがとうございます!

次話は20時頃公開予定です~

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