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婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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皇宮へ(3)

「殿下、行き止まりです」


 目の前を歩く近衛騎士が歩みを止め、ついに進路を阻む岩の前に到着したことになる。


「一旦待機だ。岩が動いたら、すぐに進もう。アシュトン嬢が……サンが言っていた通り、岩が動くのは一時的な可能性が高い。行き遅れがないように」

「ならば殿下は前方へどうぞ。しんがりは自分に任せください」


 部下はそう言ってわたしが通れるよう、道を空けてくれる。


「分かった。そうしよう」


 決して広い通路ではない。天井は低いし、ランプの明かりだけでは薄暗かった。それでも縫うようにして進み、クウの後ろまで来ることが出来た、まさにその時だ。


 鳥肌が立つ様な歌声が聞こえてきた。


 アシュトン嬢が……マリナが歌っているとすぐに分かった。


「美しい歌声ですね」

「まるで女神が歌っているかのようだ」

「歌姫と言っていいレベルじゃないか」


 近衛騎士たちが賞賛するのも納得の美声。

 しかもマリナが言っていた通り、複雑な技巧を要するとよく分かるもの。


(これを間違いなく完璧に歌うのか)


 岩壁を通して響く声。

 彼女が歌うそのままで聞こえているわけではない。

 それでも美しいと感じていた。


 しかし。


 聞こえてくるメロディは終わりへと向かっている。

 この歌声が終わった時、マリナの身に何が起きるのか……。


 そっと触れた岩壁は堅く冷たかった。だがこの壁を隔てた向こうにマリナはいるのだ。彼女はたった一人、わたしたちのために、歌声を響かせている。


 全てが終わった時、秘めていた想いを伝えるつもりだった。まさかここでこんなふうに別離が訪れるなど、想像していない。


「殿下、どうされたのですか!?」


(こんな形で彼女と離れたくない!)


「どけ、わたしはアシュトン嬢を助け」


 そこで歌声が止んだ。


 血の気が引き、めまいがする。


 一方の他の者たちは一斉に拍手をしていた。

 すると――。


 ゴゴゴゴゴ……。


 鈍い音が響き渡る。

 ガクンと大きな揺れがして、その場にいた全員がバランスを崩した時。


「道が……前進できます!」


 クウの声に我に返る。

 私情を挟んではいけない。

 今は前進あるのみ!


「総員、進め。前進!」

「前進!」「前進!」「前進!」


 全員が無事、通過できた後。

 マリナが追い付いてくれないか。

 どうしてもその淡い期待をしてしまう。


 しかし再び地響きのような音が響き、ズシンという大きな音と振動で、道は岩により塞がれてしまった。


 わたしたちの後をマリナが追うことは……もうない。


 絶望的な気持ちになりそうになるが、自分の立場、ここにいる仲間のことを考えた。


「殿下」

「クウ……。大丈夫だ。進もう……」


 そこからはとにかくマリナが作ってくれたチャンスを逃すまいと、前へと進んだ。


 ◇


 岩に塞がれていた通路をマリナのおかげで無事通過できた後、いくつかのトラップがあった。だがそれも事前に聞いていたものばかり。問題なく突破し、そして――。


「これが皇宮の庭園、か」

「そうですね、殿下」


 黒味がかった赤や紫のダリアが咲く庭園は、厳格で厳粛な雰囲気に満ちている。敢えて苔むした石像を配置し、歴史を感じさせる演出をしているのだろう。


「目指すは皇帝陛下の寝室だ」

「はい。サンがしっかり教えてくれたので、場所については問題ないです」


 そこでクウがハッとした表情になり、素早く弓を手に取り、矢をつがえた。


 ビュンと勢いよく矢が放たれ、皇宮の警備兵の一人が倒れる。間髪をいれず、クウは残りの二人にも矢を放つ。全員命中、さすがカウイ島一の戦士だ。お見事に尽きた。


「あちらの茂みに隠しましょう」


 クウや他の騎士たちが倒れた警備兵を担ぎ上げた。矢には痺れ薬が塗られており、一切の身動きが一日はとれなくなる。勿論、声も出せない。


「殿下、片付きました。進みましょう」


 こんな感じで敵を倒しながら進み、遂に皇帝陛下の寝室のある通路へやって来た。寝室の扉の前には、二人の専属皇宮騎士が槍を手に直立不動で立っている。


 だが……。


 一人の専属皇宮騎士が持つ槍には碧い布が結わかれていた。一見すると、よくある飾りに思われるが違う。あの鮮やかな碧い色はセントリア王国の特産品の染料。敵対関係にある帝国では流通していない。


 ということは――。


 クウが口笛で鳥の鳴き声を真似た。

 槍に飾りのない専属皇宮騎士が、目線だけクウの口笛が聞こえた方向に向ける。そこで専属皇宮騎士に扮していた味方が動く。


 クウの口笛に気を取られた、隣にいる専属皇宮騎士の口を押さえ、喉にすばやく薬品を塗った針を刺す。警備兵を倒す時に使ったのと同じ、痺れ薬だ。


「殿下、お待ちしていました」


 ぐったりした専属皇宮騎士の体を支えながら、味方の専属皇宮騎士が笑顔になる。先に皇宮へ潜入していたセントリア王国の諜報員の一人だった。


「中へどうぞ」


 ゆっくりと寝室へ続く前室の扉が開けられた。


 薬が効いて動けない状態の専属皇宮騎士を引きずり、同行していた近衛騎士を一人残し、中へと入る。


「広いな……」


 思わずがわたしがそう呟きたくなる広さだった。

 帝国に入ってから、泊まる宿はどこも貧相。部屋もとても狭く、息苦しくなる空間ばかり。それを思うと、この前室は……。


 前室にはダイニングセット、ソファセット、本棚と書斎机まであった。彼自身が着用するのか、はたまたただの飾りか。磨き上げられた鎧兜一式も飾られている。至る所にゴールドが使われており、昼間に陽射しを受けたら、眩しくて目が開けられない部屋になりそうだ。


「殿下、踏み込みますか?」

「ああ、そうだな」


 ゆっくりと腰に帯びていた剣を抜いた。

お読みいただきありがとうございます!

続きが気になる展開かと思うので

もう1話今晩22時頃に更新します。

よかったらブックマや評価などで応援いただけると嬉しいです!

なお遅めの時間での公開となるため

体調や翌日の予定に合わせて

どうぞ無理なさらずにお楽しみくださいね。

また明日のお昼にお会いしましょう☆彡

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