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婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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皇宮へ(2)

「まさか、アシュトン嬢、君はこうなると分かっていて、同行を申し出たのか!?」


 私が帝都へ男装までして同行した理由の三つ。

 それには勿論、この秘密の通路の突破のため――が含まれていた。


「大義を成す時、小さな犠牲には目をつむるが必要がある。それは王族の一人であり、王太子である殿下なら分かっているはずです」

「アシュトン嬢、君は……」


 そこで言葉を切ったアトラス王太子はとんでもないことを言い出す。


「真ん中の道はわたしとアシュトン嬢で進む。他の者は左の道を進んで、進路を阻む岩の前で待機だ」

「殿下!」


 何が起きるか分からない。ならば私と同行し、いざとなったら助けようとアトラス王太子は考えてくれている。彼の優しさに思わず、その手を掴む。


「非常に難しい曲なんです。歌う時の音の反響。そこを間違えば、岩を排除できません。そこで歌うのは一人のみです。他の人間がいては正しく歌ったと判定されず、進路を塞ぐ岩は動かないでしょう」


 アトラス王太子の手が私の手に重なる。


「アシュトン嬢、君は……処刑されるかもしれない父君を救い出すため、帝都へ来たのではないのか!? 修道院にいる母君を助ける件はどうなった!? 兄君とだって、会いたいはず!」


 彼の手の温もりを感じ、胸に迫るものがあった。

 でもそれは呑み込み、笑顔で答える。


「歌い終わっても何も起きないかもしれません。そうなれば皆さんが進む左の道へ向かいます。ただ、何事にも『もしも』を想定するのは必要なこと。私が後を追わなかったら、不必要に待ったり、ましてや元来た道を戻り、真ん中の道へ向かうなんてしないでください。助け出そうなんて考えないでください。そもそもその岩、一度限りではないのですから。時間が経つと元の位置に戻るでしょう。つまり退路はなくなります。再び岩は進路を塞ぐ」

「アシュトン嬢」「殿下!」


 声が重なるが、レディファーストの文化なので、アトラス王太子は黙り込む。


「殿下、もしもの時は、私の代わりでお父様とお母様、そしてお兄様を必ず助けてください。そもそもは私のせいで、両親も兄も貶められたのですから……。そして両親には『私のせいでごめんなさい。これから家族三人で幸せになってください』と伝えて欲しいのです。できれば散り散りばらばらになった使用人たちにも助けの手を」


 言葉を続けられなかったのは、アトラス王太子に抱きしめられていたからだ。


 力強い腕の力、引き締まった胸板、そして……彼の香水の匂いを感じ、鼓動が速くなる。


「岩は爆弾で砕く」

「そんなことをしては崩落の危険もありますし、皇帝陛下に侵入を気づかれます」

「ならば秘密の通路は使わず、このまま挙兵して」

「殿下!」


 まさに断腸の想い。

 抱き寄せられたその胸に甘えたい気持ちになっている。


 だがそれはできない。

 彼の胸はレイラ姫のもの。


 ぐっと腕に力を込め、アトラス王太子から距離をとる。そして――。


「この日のために、国王陛下を始め、大勢が準備してきたのです。今さらここで作戦を変えるなんて、愚の骨頂。冷静になってください、殿下。皆の努力を無駄にしてはなりません」


 私がそう言ったところで、クウが遠慮がちに口を開く。


「殿下。予定していた時刻を過ぎています。……進みませんと、計画に支障が」


 クウの言葉にアトラス王太子のブルートパーズのような瞳に苦悩が浮かぶ。

 だがそれも一瞬のこと。

 彼はセントリア王国の王太子。

 未来の国王なのだ。

 自分がすべきことを理解している。

 何を切り捨て、何を得るべきなのかを。


「……分かった。進もう。クウ、先頭を任せた。皆、クウに続いてくれ」


 これには近衛騎士の一人が「殿下は!?」と尋ねる。


「しんがりをわたしが務める。異論は受け付けない」


 キッパリ言い切ると、皆、何も言えない。


「では、進みましょう」


 クウを先頭に、一人、また一人と左の道へと進んで行く。


 いよいよ残りはアトラス王太子となった時、彼は私の両手をとった。


「……本当は全てが終わってから、伝えるつもりだった」


 これには「?」となる。


「レイラ姫との婚約は解消する」

「え」

「わたしはアシュトン嬢、君にプロポーズするつもりだった」


 驚き、言葉が出ない私を、アトラス王太子は抱き寄せ――。


 額に感じる温かさ。

 彼の唇が触れている……額に口づけをされていた。


「アシュトン嬢とは話したいことが沢山ある。だからこれを最期とは言わないで欲しい。必ずもう一度、会うと約束してくれ」

「殿下……!」


 彼は首元から何かを取り出した。

 それはペンダントのようだ。


「わたしは王太子である身分を示すものを三つ身に着けている。これがその一つ。もし離れ離れになっても、これを示せば、セントリア王国で行けない場所はない。だから必ず、もう一度。再会を……」


 そう言うとアトラス王太子はゆっくりペンダントを私の首に掛けてくれた。


 サラサラのホワイトブロンドが小刻みに揺れていた。ブルートパーズの瞳が潤む。絞り出すような苦し気な声に、私の胸も張り裂けそうになる。


「殿下」


 遠慮がちに彼を呼ぶ近衛騎士の声が聞こえ、私は涙を呑み込んだ。


「ありがとうございます、アトラス王太子殿下。あまりにも衝撃的なことを言われたので、これでは気になって心残りです。続きをちゃんと聞かせてください」

「ああ、勿論だ」

お読みいただきありがとうございます!

次話は20時頃公開予定です~

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