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婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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皇宮へ(1)

「殿下、扉が開きました!」

「よし。クウ、先導を頼めるか?」

「勿論です!」

「サン、君はわたしの後ろに続け。そのほかの者はサンの背後を守り、万一の追っ手に備えろ」


 ついにこの日を迎えた。

 そう、帝国祭の最終日前日の夜中。

 私たちは動き出した。


 まずは秘密の通路を使い、皇宮へ向かう。


 既に水路のそばの広場にいた馬車の御者に扮した兵士たちは制圧している。


 たっぷりの睡眠薬で、目覚めた時はブレイクデーが終わった後だろう。そして今、秘密の通路へつながる扉が開かれ、階段を皆で下りきったところだった。


「サン、しばらくは一本道ということでいいのだな?」


 皇宮を守る騎士――専属皇宮騎士の隊服を着用したアトラス王太子が私に尋ねる。


「はい、殿下。一本道ではあるのですが、下ったり、階段を上ったり、曲がったりで、方向感覚が狂う仕掛けになっています。それはこの秘密の通路が、基本的に皇宮から外へ向かう設計になっているからです。もし外敵がこの秘密の通路に気が付き、侵入を試みた時。混乱させる目的があり、あえて経路が複雑になっています」


 そう答える私もまた、専属皇宮騎士の隊服を着ていた。先に潜入した諜報員が手配してくれた隊服を、この場にいる全員が着用している。


 ちなみに私以外のメンバーはここから先、本来の名前で呼ぶことになっていた。


 ただしアトラス王太子殿下では長いので、彼は「殿下」と呼ぶ。そしてアシュトンの名を伏せるのは、この名を聞いたら帝国の人間だと即反応する=攻撃する可能性があるからだ。


「一本道が終わると、三叉路に着くのだな。そこで進むべき道は左」


 アトラス王太子の問いに私は「はい。その通りです。まずは三叉路目指し、そこで一旦ブレイクしましょう」と提案する。


「分かった。ではここからは特段のことがなければ会話はなく、進む。何かあれば合図を送るように」


 こうして限られたランプの明かりの下で、狭く暗い通路を進む。


 外敵を拒むように複雑な一本道を歩いていくと、まるで迷宮(ラビリンス)に迷い込んだ気持ちになる。さらに時間の感覚も失われ、どれぐらい歩いたのかと不安になった時。


「出ました。ここが三叉路です」


 クウの声と共に、開けた場所にようやく出ることができた。


 開けてはいるが、地下であることには変わりがない。見上げると黒々とした岩肌の低い天井であり、床は天井と同じ。左右も岩肌で、圧迫感を覚える空間だった。


(閉所恐怖症というわけではないけれど、あの薄暗い狭い通路を延々と進むのは、想像よりもこたえるわ。もし一人だったら途中で心が折れたかもしれない……)


「全員、通路からは出たな。では左へ進もう」

「殿下、お待ちください」

「どうした、サン?」


 ここで私は深呼吸を一度だけして、努めて明るく伝える。


「左の道を進むと、行き止まりになっています」

「何……?」

「ですが道を塞ぐ岩をどけることは可能です」


 アトラス王太子は息を呑み、そして尋ねる。


「サン、なぜそんな重要な情報を先に言わなかったんだ?」

「申し訳ありません。その岩をどけることは皇家の人間しかできないからです」

「なんだと……!?」


 片眉をくいっとあげたアトラス王太子に私は説明を行う。


「この秘密の通路は皇家の一族が逃げるための通路です。帝都から皇宮へ向かうための通路ではありません。ゆえにこの三叉路で、ある仕掛けがあります。左の道は確かに皇宮へつながる道です。ですがその岩をどけるためには、皇家の人間が真ん中の道へ進み、歌う必要があります」

「歌う……?」


 アトラス王太子が怪訝そうにするのも仕方ないこと。


「はい。そのための歌を皇族教育で習います。何年も何年も練習を重ね、会得するもの。男性の皇族も歌うことができますが、それはキーを下げないと無理です。それだけ高い音域にまたがる歌。それらに加えて、音階の素早い昇降、トリル、ファルセット、ミックスボイスを一つのフレーズの中で行い、さらにそのフレーズが連続する。息継ぎのコントロールだけではなく、舌や唇の動きまで、調整が必要です」


 この難易度は、前世で言うなら『夜の女王のアリア』に匹敵するものだと思う。モーツアルトの『魔笛』に登場する難曲だ。


「この技巧を……今回の作戦までに身に着けるのは、無理でしょう。ですが私は皇族教育を経て、会得しています。よって私は一人で真ん中の道を進み、左の道を塞ぐ岩を排除しますので、皆さんは先へお進みください」

「待って欲しい、アシュトン嬢!」


 アトラス王太子は私をサンではなく、「アシュトン嬢」と呼び、落ち着きのない声で尋ねた。


「左の道の岩がなくなり、進むことができるようになったら、アシュトン嬢は……真ん中の道から戻り、左の道へ来るのだろう? 合流して、共に皇宮へ向かうのであろう?」


 大きく息を吸い、吐いて、私は笑顔で伝える


「このギミックは、外から皇宮へ向かう時のみ作動します。皇宮から外へ出る時、この仕掛けとは関係なく、脱出が可能です。歌い、岩が排除され、その後どうなるかは……それは分かりません。皇族教育でも『通常の使い道とは違うので、どうなるかは伝承されていません』となっているので」

お読みいただきありがとうございます!

オンタイムで読了の読者様

ゆっくりお休みくださいね~

次話は明日の12時半頃に公開予定です!

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