表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/80

37話

控室の扉が静かに開く。

中に入ってきたのは、対局を終えた結城牡丹だった。


「牡丹さん!!」

「お疲れ様!!」


小手指原高校将棋部の仲間たちが一斉に立ち上がり、歓声を上げる。

桜、百合、柚子、芽衣――皆が笑顔で出迎えた。


「すごかった! あの右四間飛車……完璧だった!」


柚子が飛びつかんばかりに手を振り、百合もニヤリと笑う。


「当然の結果ですわ」


牡丹は静かに微笑んだ。

心の底から湧き上がる達成感に、胸が熱くなる。


「これで、私たちが優勝ですね」


芽衣が、ほっとしたように言った。


「うん、私たちが県大会優勝よ!」


桜の声に、部屋中が拍手と歓声に包まれた。


その様子を見ながら、虎門先生がぽんと手を打った。


「よくやったな。お前たちがここまでやるとは……いや、想像以上だ」


福辺先生もにこやかに頷く。


「みんな、本当に頑張ったね」


そこに、控室のスピーカーからアナウンスが響いた。


『小手指原高校、浦和女学院高校は、表彰式のため大ホールに移動してください』


「さぁ、行こうか」


虎門先生の言葉に、皆も笑顔でうなずいた。


---


大ホールに着くと、スタッフの案内で、小手指原高校のメンバーは最前列の席に誘導された。

舞台の大きなスポットライトが輝いている。


ふと後ろを振り返ると、芽衣の祖父と、その隣にまーさんが座っているのが見えた。

二人は嬉しそうにこちらを見守っていた。


やがて、表彰式が始まる。


まずは同率三位――新座台高校と鴻巣北高校の部長たちが呼ばれた。

彼らは舞台に上がり、甲斐田節人七段から賞状を受け取り、それぞれ短くスピーチをする。


「来年こそは、もっと上を目指します」

「この悔しさを胸に、精進します」


シンプルだが、力強い言葉が会場に響いた。


次に、準優勝・浦和女学院が呼ばれる。

ステージには、御影ひなたとその監督が並んで立った。


賞状を受け取った御影ひなたは、静かに口を開く。


「この場を借りて、OGの先輩方に連覇を止めてしまったことを、心よりお詫び申し上げます」


凛とした声。だが、その表情には悔しさが滲んでいた。


続いて、監督がマイクを握る。

わざとらしく目元をぬぐい、声を震わせながら言った。


「すべて、私の指導力不足です……生徒たちは精一杯頑張りました……」


その様子に、客席の一般生徒や将棋部の保護者たちは感動し、もらい泣きする者もいる。


しかし、浦和女学院の将棋部の生徒たちからは、どこか微妙な空気が漂っていた。



そして、ついに――


「優勝校、小手指原高校、ステージにどうぞ!」


アナウンスが響く。


部員たちと虎門先生は立ち上がった。

福辺先生は一歩引いて、桜に言う。


「私はここで応援してるから、みんなで……」


だが、その言葉が終わる前に、柚子がにっこり笑って福辺先生の腕を引っ張った。


「先生も一緒に来てくださいっ!」


「あ、えっ……!」


半ば強引に引っ張られ、福辺先生もステージへ向かうことになった。


壇上に並んだのは、桜、芽衣、牡丹、百合、柚子、虎門先生、福辺先生。

ステージの照明が、彼らを温かく照らす。


甲斐田七段が賞状を、土門六段が県大会の優勝盾を手渡した。

その瞬間、土門の目線が福辺先生に向かい――ぴたりと止まった。


わずかに驚いた顔。

福辺はそれに気づき、そっと目を伏せた。


甲斐田七段も、土門六段の様子を見て福辺にちらりと視線を送り、何かを察したようだった。

だが、表彰式は粛々と進められた。


桜が代表してスピーチをする。


「このような素晴らしい場で、優勝することができ、大変光栄に思います。8月に行われる全国大会に向けて、これからも精進してまいります!」


堂々とした声に、会場から拍手が起きた。


続いて、虎門先生が前に出る。


「小手指原高校では、生徒の自主性を重んじています。顧問はできるだけ口出しをせず、彼らの成長を見守るよう心掛けています。今日の優勝は、すべて彼女たちの努力の賜物です」


そのスピーチを聞きながら、桜が小さな声で仲間たちに呟いた。


「……物は言いよう、だね」


肩を揺らして笑う百合と牡丹。

芽衣も、ふふっと小さく笑った。


---


表彰式が終わると、柚子が声を上げた。


「記念写真撮ろうよ!」


すぐにみんな賛成し、ステージ脇で集合する。


桜、芽衣、牡丹、百合、柚子、虎門先生、福辺先生、さらに芽衣の祖父、まーさん、土門六段、甲斐田七段――

全員が笑顔でカメラに収まった。


---


撮影が終わった後。


土門六段が、福辺先生に歩み寄り、真剣な顔で問いかけた。


「……なぜ、あなたが教師をしているんですか?」


福辺は答えずに、小さく笑みを浮かべ、そのまま踵を返した。

出口へと歩き去っていく。


その後ろ姿を、将棋部の皆が遠巻きに見守った。


(どういうこと……?)


芽衣は、胸に小さな疑問を抱きながら、その姿をじっと見つめた。


---


やがて、迎えのリムジンが到着する。


「さて、帰りましょうか」


牡丹の号令で、桜、芽衣、牡丹、百合、柚子、虎門先生、福辺先生はリムジンに乗り込んだ。


「今日は疲れたよね」


桜が後部座席で言う。


「祝勝会は後日にしようと思うんだけど、いいかな?」


「賛成!」

「それがいいですね」


皆が賛同し、リムジンはゆっくりと夜の街へ走り出した。


---


暗い部屋で、パソコンの画面が光っている。

誰かが、埼玉県大会の結果を確認していた。


優勝校、小手指原高校。

集合写真には、笑顔の人たちが映っている。


「小手指原高校か……」


重苦しい空気の中で、それを見つめる者が、憎々しげに呟いた。

対局の描写がワンパターンになりがちになってしまったため、全国大会の時には色々と少し見直すかもしれません。

ご容赦ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ