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14話

ふじみ野商業高校との予選最終戦。

芽依は静かに、対局室の中央にある盤の前に座っていた。


向かいに座るのは、黒髪のボブカットの女子生徒。真っ直ぐな背筋に鋭い眼差し。無表情ながらも、どこか自信に満ちた空気をまとっている。


先手は相手。初手、いきなり飛車を5筋へ。


(原始中飛車……?)


だが、そのまま中飛車に組むかと思いきや、銀を4八、6八と左右対称に上げていく。


(……無敵囲い? いや、これは……)


5六歩、さらに5五歩と、中央への進軍も止まらない。


(カニカニ銀……!)


蟹のように中央を挟むこの戦法は、奇抜だが破壊力がある。芸術学院が敗れたのも、秩父宮が翻弄されたのも、納得がいく。


それでも、芽依の表情は崩れない。


(知っていれば、崩せる。冷静にいこう)


芽依はいつものように棒銀を組み、相手の銀の進出タイミングを見極めながら受けに回る。中央突破に備えた構えを保ちつつ、次の手を思案する。


盤面は静かに、だが確実に動いていく。


ふと、隣の盤から声が聞こえた。

「参りました」

部長の対局相手だった。


(……部長、勝ったんだ)


安心する間もなく、今度は反対側の盤から静かに声が落ちる。

「……参りました」


牡丹の対局だった。


(牡丹先輩が負けた……!?)


つまり――残るは自分の対局のみ。これが勝敗を決する。


(私が勝てば、チームが勝つ。でも負ければ……)


芽依の指が、ほんのわずかに震える。だが――


(私は……自分のためだけじゃなく、みんなのために勝ちたい!)


盤上は終盤に差しかかっていた。相手は中央から強引に攻めてくる。だが芽依は、その無理攻めを冷静に捌き、玉を安全な場所へ誘導しながら反撃の形を作っていく。


見えた――詰みの筋。


桂馬、金、銀。駒を正確に使い、逃げ道を塞ぐ。


そして、最後の一手。


「……参りました」


対局相手が、静かに頭を下げた。

芽依もまた、ゆっくりと深く頭を下げる。


「ありがとうございました」


静かな対局室に、残るのは他の盤の駒音だけだった。


***


その直後、左右からドン、と大きな音がした。


「芽依ーっ!」

「よくやったわ!」


部長と牡丹が、左右から同時に抱きついてくる。


「ごめんね……わたくし、負けてしまって……でも、本当にありがとう。芽依が勝ってくれて、わたくし……すごく救われましたわ」


牡丹はくしゃくしゃの笑顔で、涙ぐんでいた。


芽依は一瞬きょとんとした後、照れくさそうに笑って言った。


「そんなの気にしないでください。私たち仲間じゃないですか」


***


対局室を出ると、すぐに柚子と百合が駆け寄ってくる。


「おおおお! 芽依ちゃん、勝ったんだね! すごーい!」


「カニカニ銀に対応できるなんて、やるじゃないか」


少し離れた場所で、虎門先生が缶コーヒー片手に笑っていた。


***


短い休憩のあと、予選を勝ち抜いた8校だけが、文化センターの大ホールに集められた。


壇上に主催者が立ち、決勝トーナメントの説明が始まる。


「まず、決勝トーナメントは1ヶ月後、6月中旬に開催されます。一回戦、準決勝、決勝はそれぞれ1日ずつに分けて実施いたします」


「ルールはポイント制です。

先鋒1ポイント、次鋒2ポイント、中堅3ポイント、副将4ポイント、大将5ポイント。

勝利した選手が、相手のポイントをすべて総取りする形式です」


「つまり、1局目に次鋒が中堅に勝てば、3ポイントがそのまま次鋒に加算され、結果として自校に5ポイントが入ることになります」


「全体のポイントは合計30。両校が15対15で並んだ場合は、延長戦を行います」


「延長戦では、各校が1人ずつ選出し、1局で勝敗を決します」


部員たちは、それぞれ真剣な表情で耳を傾けていた。


(決勝は、戦い方も変わるってことだ……)


***


その夜――。

牡丹の提案で、リムジンで高級寿司店へ。


店の前にリムジンが滑り込むと、部員たちは緊張気味に降りてくる。


「ここ、本当に入っていいの……?」


「大丈夫ですわ。わたくし、このお店の常連ですもの」


牡丹が笑顔で先導し、全員で席に着く。


ふと、虎門先生が生ビールを頼んでいるのを見て、柚子がすかさずツッコむ。


「ちょっと、先生まで奢りですか!?」


「おいおい、祝勝会だろ? 俺だって今日は機嫌がいいんだ」


「……でも、ここまで高級な寿司屋は、俺も初めてだな」

虎門先生がぼそっと呟いたのを、芽依は聞き逃さなかった。


全員のドリンクが揃うと、虎門先生が立ち上がる。


「じゃあ、改めて――決勝トーナメント進出、おめでとう! よく頑張ったな!」


グラスがカチンと鳴る音が響いた。


「先生、なんで乾杯仕切るの〜!」


柚子のツッコミに、笑いが起きた。


テーブルには、職人の技が光る寿司の数々。

芽依は一貫一貫、大事そうに味わっていた。


「こんなにおいしいお寿司、食べたの初めてです……」


「それは良かったわ。頑張ったご褒美よ」

牡丹が優しく笑った。


***


帰りもリムジン。


芽依は降り際に、運転手に深く頭を下げた。


「今日は本当に、ありがとうございました」


「気にしないで。私たち、仲間ですわよね?」

牡丹がイタズラっぽく微笑む。


リムジンが走り去るのを見送りながら、芽依は胸の奥にある感情を静かに抱きしめた。


(……あと、一ヶ月)


次は決勝トーナメント。ここから本当の戦いになる。

需要があるかは分かりませんが、ルールを書いておきます。

キャラクターが満遍なく対局できるようにルールを作ったつもりですが、ルールの不備等があったら適宜修正します。


・決勝トーナメントのルール

決勝トーナメント出場校は8校

トーナメントの組み合わせは当日、抽選で決まる。


先鋒 1pt

次鋒 2pt

中堅 3pt

副将 4pt

大将 5pt


勝った方が互いのポイントを総取り。

よってポイントの合計は30pt


決勝トーナメントでの高校同士の対局のオーダーは1〜5局まで両校が自由に決めることが出来る。


【例】

•1局目

A校 次鋒 vs B校 中堅 

→A高の次鋒の勝ちの場合、1局目の結果としてA高に5pt入る。


対戦校の保有ポイントが15ptずつになった場合は、メンバーから1人を選出して延長戦をすることし、その対局結果で勝利校が決まる。


【例】

•延長戦

A校 中堅 vs B校 大将

→A校の中堅が勝ちの場合、A校が勝利となる。


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