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第20話 くっころガチ勢、疑われる

「いやぁ、負けたねぇ」


ローレンスがしみじみと言った先ではゾーラの代表生たちが喜びを分かち合っていた。

たった今、ゾーラ代表生たちの勝利がコールされたところである。


「すまん。俺のせいだな」


「ジェラルトを責めるつもりなんて全く無いよ。君で勝てなかったんならどちらにせよ誰も勝てないさ」


ローレンスに真剣な顔をしながら言われてすごい罪悪感が湧いてくる。

まさかくっころを見るためにわざと負けましたなんて口が裂けても言えない。

他のクラスメイトたちにも申し訳ないのでいつかこっそり埋め合わせをするとしよう。


「はっはっは。まあ余とトムというお荷物がいながらよく戦ったほうではないか」


「は、はい。僕もそう思います……」


アンタのメンタル無敵か?

そのフォローの仕方はメンタル強すぎて逆にどう反応していいかわからない。

仮にも王族ならもっとプライドってものを持ったほうがいいんじゃ……

まあ恥もプライドも全部捨てるって言った俺が言えることじゃないかもしれないけど。


「……」


「どうした?シンシア王女」


シンシア王女がじーっとこちらを見つめてくる。

俺が負けたことを責めているのだろうか?

だとしたら甘んじて受け入れようじゃないか。

なんなら俺の評価を下げて嫌ってくれてもいいぜ?


「……ジェラルトさん。本当にフローラさんに勝てなかったんですか?」


「……まあそうだな。ウォルシュ嬢は強かった」


「どうしたシンシア。何か気になることでもあるのか?」


釈然としなさそうな様子のシンシア王女にヴィクター王子が尋ねる。

シンシア王女は口にしようか迷っていそうだったが意を決したのか一つ頷いた。


「では一つ質問させてください」


「答えられることだったらなんなりと」


「ジェラルトさんが負けた理由は本当に実力なんですか?まさかフローラさんに惚れて本気が出せなかったとかそういう理由ではありませんよね?」


「………え?」


質問の内容は予想の斜め上を来た。

ふざけて言ってるのかと思ったがシンシア王女の目はガチだ。

本気で俺がフローラに惚れていないかを疑っている。


「そんなわけないだろう?それはもう白熱した真剣勝負だったさ」


わざと負けるように力を抜いたのを真剣勝負と言って良いのかは甚だ疑問であるが。

うん、ていうかダメだね。

まあ嘘も方便って言うしフローラのくっころに惚れる可能性はあれどシンシア王女の質問には該当しないから問題なしだ。


「本当ですかね。私はあなたやフローラさんの実力を完全に把握できているわけではありませんがジェラルトさんの実力がフローラさんに大きく劣るようなことはないと断言できます。些か決着がつくのが早いような気がしまして」


うっ……鋭すぎる……

俺のくっころセンサーならぬシンシア王女の浮気センサーってか?

俺だってシンシア王女がずっと俺にくっころを見せてくれていたら永遠にラブコールを送っていたさ!

でもなんか勝手にくっころがどこかへ行っちゃうから仕方なく次のくっころを求めて尽力してるんだ!

ちょっとくらいはシンシア王女にも原因あるぞ!

………まあ仮にシンシア王女のくっころがあったとしても次なるくっころを求めない自信はないけども。


「まあ確かに僕もちょっと早いかなーとは思ったよ」


「は、はは……何を言うんだローレンス。戦の名門たるドレイク家の嫡男の俺が戦場と名のつく競技において手を抜くはずないだろう?」


「どうだかなぁ。君は面倒くさいとか案外そういう理由で簡単に手を抜いてもおかしくない人間だと思うけど?」


よくご存知のようで。

ドレイク家の誇りとか全然無いけどそんなノンタイムで否定することあります?

これでも一応ドレイク家の次期当主として領民たちや父からも認められてるんですけど?


「あ〜閉会式がもうすぐ始まるみたいだぞ?早く並びにいかなくてはな」


「話題をそらしたね」


「怪しいです」


「ジェラルトのことだ。どうせくだらんことでも考えていたのだろう?」


どうしてみんな疑う方向へ行くんだ!

そしてヴィクター王子!

くっころはどうでもいいことじゃないわ!

何事にも優先される人類の宝だぞ!


「なんのことだか。とにかく早く並ばなくては」


俺のその言葉で追撃を諦めたのかローレンスたちはやれやれとため息をつく。

かなり不服だがせっかく話題を切り上げられたのでこの際気にしないことにしよう。


閉会式は開催式のときと違い俺達は1−Sクラスで固まって望むことになる。

理由は知らんがまあ本来のクラスメイトたちだしこの終わり方は悪くない。


「えーそれでは。大演武会の閉会式をこれより行いたいと思います」


前世ではこのタイミングで礼があったけど生徒たちの中には貴族も多いのでこの世界では礼はしない。

そのままニール校長の話へと移行する。


「今年の大演武会も生徒たちの奮戦や熱気が伝わり──(中略)──今年も良き式典となったことと思います。私の話をこれで終わります」


生徒たちはみな行事の雰囲気に浮かされていて校長の話など聞いちゃいない。

それもそのはず、なぜならばこの後大演武会の結果発表が行われるのだ。

生徒たちにとっては校長の話よりも自分たちのクラスが何位なのかの方が重要なのである。


「それでは、結果発表へと移りたいと思います」


司会進行の言葉に生徒たちが沸く。

俺達もバラバラとはいえ大演武会に参加していたので順位には興味があった。


「それでは1年第3位から!3位は………β組です!」


「あら、私達ですね」


シンシア王女がいつも通りに呟く。

あまり嬉しそうな感じではない。

どうしてかを聞いてみるとお世話にはなったが勝ち負けにはあまりこだわっていなかったとのこと。

馬鹿王子の件もあったしクラスの居心地が悪かったのかと一瞬懸念したがその点は大丈夫らしい。


「第2位は……γ組です!」


「僕達だね。まあエセル殿の貢献が大きいかな」


ローレンスが苦笑しながら結果を見つめる。

個人戦でのこともあるし悔しさもあるだろうがいつも通りローレンスの表情は柔らかいままだった。


「最後に栄えある1位は………α組です!」


まあそうなるわな。

俺とフローラを同じ組にしてるんだから優勝くらいはしてもらわなくちゃ困る。

他のメンバーも頑張っていたし優勝出来たのはよかったな。


そのまま2年、3年と結果発表が続き、祭りはいよいよ終わりを迎えようとしていた。

心なしか夕焼けが少し寂しげに見える。


「それでは、校長先生の閉会宣言をもって、今年の大演武会を終えたいと思います。ニール校長先生よろしくお願いします」


「はい。ではゾーラ高等学校校長ニールの名において大演武会の閉会を──」


そこで言葉は途切れる。

黒い壁のようなものが俺達の目の前にそびえ立ったからだ。

反応する間もなく四方全てを黒い壁に囲まれた。


「……!?これは一体……!?」


「落ち着け。ただの設置型結界だ」


「設置型結界だって!?誰がいつの間に……!?」


ローレンスがヴィクター王子とシンシア王女をかばうような位置に素早く移動しながら驚く。

設置型結界とは効果が出るまでが遅い代わりに効果が強い罠として最も効果を発揮する結界だ。

中に入っているのは見事に生徒のみで先生たちを始めとした大人たちは全員結界の外だ。

狙いは明らかに生徒《俺達》ってわけだな。


「くくく……誰かって?こんな学生を殺して喜ぶ奴らなんて限られてるさ」


ああ、笑いが止まらない。

まさか本当に情報通りになるとはな。

俺の代になったら諜報隊の給料を更に上げてやろう。


「ジェラルト……?この事件の首謀者を知っているのか?」


「ああ、もちろんだ。こんなことをしでかしたのは……国際テロ組織『レジメント』だ」


さぁ……本当の祭りの時間はこれからだぞ……?

くっころのために上手くやってくれよ?テロリストども。

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