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外伝 最終章 皇位奪還【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】皇宮攻撃Ⅲ

幼い子供を監禁し殺害するという兵士の話を聞いたヴィルヘルムは子供を助ける事に。




中は意外にも広くどうやら集団で収容出来る牢だった。

しかし暗く静まり切った冷たい湿気を含んだ空気と地下水の水滴の漏れる音が異様に高く聞こえる。


ヴィルヘルムは周囲を目を凝らして何度も辺りを見渡すと、奥に渦くるように丸まった物体があるのが辛うじてわかった。  


「そこにいるの?」


その物体はビクッと震え、ゆっくりと動き出す。

 

その時にわずかな隙間から溢れる日差しが暗闇を照らす。


「えっ!!

 ディアナ?」 


ヴィルヘルムが目にいる人物を信じられないと言わんばかりの大きな声でその名を叫ぶ。


「殿下!」

フランシスが声を荒げる。


非衛生的な監獄で監禁されていたせいかその顔色は青白く疲れはてているディアナはヴィルヘルムの姿を見て安堵のため息を一つ吐く。

その吐息には疲れからくる疲労と安堵感が混ざり合い瞳は朧げにやや後ろめたさの宿るものへと変化していった。


「ごめんなさい。

 後方支援隊にいたのだけど。

 どうしてもお母様の事が心配で…。

 昔から親しかったロランに頼んで皇宮に入ったんだけど。

 キョロキョロ様子を伺ってたら…。

 警備兵に捕まって。

 殺されかけたんだけど。

 攻撃が始まって…ここに連れてこられたんだ」


俯きながらその声は震えているディアナを責める事などヴィルヘルムは出来ない。


ふっと諫める言葉を飲み込んで、ディアナの肩を抱いてふんわりと包み込む。

その全てを。


「とにかく無事でよかった」


ディアナの震える手がは恐る恐るそのヴィルヘルムの身体に触れた。

その緊張と怯えは当然といえば当然だとヴィルヘルムは思う。

あんなに戦場にはこないように後方支援を厳重に言いわたされていたにも関わらずこうして投獄されてヴィルヘルム手を煩わしたのだ。


怒られても仕方ない。

覚悟を決めてヴィルヘルムの顔を覗き見た。


ヴィルヘルムの表情はいつもの優しい微笑みをみせてくれる。

それだけで自分への労りを身に沁みて感じたからだ。


その腕は温かく慈愛で包み自分を守ってくれるという確信を感じずにはいられなかった。


「ごめんね。

 御免なさい殿下」


「いいんだディアナ。

 君が無事なら。

 そうだよなファビエンヌに会いたいよな」


母親に会いたい一心で命も厭わずにいたのだ。

危険だけという理由では後方にじっとしていろというだけでは駄目だったんだ。

ヴィルヘルムはディアナを守れないから自分がそう決断したのではないとすら思え自責の念に苛まれる。



「お母様に会いたかったの……」

涙目になりまがら、ヴィルヘルムの胸に顔を押しつけて背中をぎゅっと抱きしめる。


「うん。うん。

 大丈夫だ。

 僕が会わせるよ。

 御免ねディアナ!

 大丈夫だ。

 必ず君の母上を助けるよ」


ヴィルヘルムもディアナを大きな両手で大切な子供を包み込む様に優しく抱きしめる。


「お二人さん。

 感動的なご対面の所申し訳ないが。

 上から人の気配がする。

 すぐに隠れて!」


フランシスの忠告で二人は現実に引き戻される。


隠れるといっても牢と円形状の広いスペースだけの空間だ。

そんな場所はありそうにない。


フランシスはヴィルヘルムの方を向きながら人差し指を立て目線を上にむけて合図した。


天井には太く頑丈そうな梁が沢山通してあり高さもそれほどなく十分な隠れ場に思える。

ようは上がって隠れようと合図したのだ。


「了解」


ヴィルヘルムはそう言ってディアナをその背中に背負う。

ズシッと感じるその重みに絶対無事連れ帰ると固く誓うだった。


「しっかりつかまっていて」


ディアナは目を固く閉じて身体をギュッと強張らせヴィルヘルムにしがみついた。


ヴィルヘルムはいとも簡単に梁に両手をかけると、身体を小さくそして段々と大きく前後に振り子の様に揺らした。

そして勢いよく風を起こす。

身体が反転してあっという間に梁の上に足を掛けてよじ登ってしまった。


まったく殿下は…サルもびっくりだな。

フランシスは半笑いでその光景を見ながら、腰に結んでいた縄を梁に投げつけて固く結ぶなんなく梁の上へと移動する。


「さすが元海賊だね」


「殿下!」

この危機的状況にちゃらけられる余裕に思わずフランシスの声は高くなる。


廊下の外から荒々しい足音が鳴り響く。


ディアナは怯えながらもヴィルヘルムの身体にピタリと寄り添い息を殺しぎゅっと瞳を閉じていた。

ヴィルヘルムは音のする方へと視線を向けて一切の動きを止めて凝視する。

フランシスも緊張しながらも交戦をも見据えて隠し持っていた銃に手をかけている。


ガシャ!バンバン!

乱暴に扉を開け入って来た人物。

数名の兵士を連れて荒々しく牢屋に小走りでその前に立つ。


「逃げられたか?」


ヴィルヘルムにはその人物に心当たりがあった。

クロフォード公爵だ。

公爵は牢に入り辺りを見渡して膝を折ったかと思うと、濡れてじめじめした汚れた藁を手で何度か弄っては兵士を鋭い瞳では大声で叫んだ。


「まだ近くにいる。

 探せ!!」


「はっ!」

兵士はすぐさまその場を立ち去りクロフォード公爵だけが残った。


「くっそ!

 報告を受けて相手はファビエンヌの娘だとわかったが。

 遅かったか。

 なんとしても見つけ出し殺さなくは……」


これを聞いたヴィルヘルムは襲い来る恐怖でぞっとしたと同時に何故ディアナを殺さないといけないのか?

疑問に困惑していた。

ファビエンヌの娘だから殺す?

じゃあファビエンヌは前皇王の皇娘なのか?

どういう事だ?


ディアナはぎゅっとヴィルヘルムの身体にしがみつく、確かも死も覚悟しての潜入だったが母と再会せず死ぬなど絶対に嫌だった。


ヴィルヘルムは力の入ったディアナを安心させるようにぎゅっと強く抱きしめる。


しばらくクロフォード公爵は辺りを見渡しながら人の入った形跡を丹念に調べ始める。

床の足音、埃、塵様々な痕跡を。


すぐにこの場を立ち去る様子は微塵もない。


じっくりと重いの空気が狭い牢獄をさらに重くしていった。


その時だった。


遂にクロフォード公爵の登場にヴィルヘルム達は無事に皇宮を占拠する事は出来るのか?



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