外伝 最終章 皇位奪還 【愛と革命に生きるヴィルヘルム大公物語】 皇宮の秘密編
早朝から皇宮を攻撃する為、砲撃の準備を整えていた兵士達の背後に不気味な塊の影が突然現れた。
それは空を覆いつくす様にみるみるうちに広がる。
その正体は数えきれないほどの歩兵部隊、騎馬隊、弓矢隊にありとあらゆる武装した兵士の鉛の影だった。
そのうちの騎馬隊の1人が武器も持たずに砲撃隊長の元へ馬を走らせ何か丸めた紙を砲撃隊長に渡した。
酷く狼狽した隊長は駆け出し参謀室のフランシスを訪ね経緯を報告したのだった。
まだ2人は深い眠りについていた明け方それは突然破られた。
ドン!ドン!ダンタッ!!
廊下から激しく響く音で夢の世界から現実へと引き戻されたのだ。
「んっ!?」
ヴィルヘルムは眠気眼で上半身を起こして扉の方を見てみる。
ドンドンドン!!
なん?
けたたましいノックの音でリライディナが目覚める。
「何?」
ヴィルヘルムが扉越しに叫ぶ。
「ヴィルヘルム殿下!
フランシスっです。
早朝砲弾攻撃部隊が発射準備をしていたら!!
グランダリア公爵私軍が現れ!
今本陣の参謀室にいます。
皆招集済です。
早く!至急来てください両殿下!」
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「皇宮の砲撃作戦を至急中止ください。
殿下」
グランダリア公爵は鋭い顔つきで参謀室の一室で開口一番激しい口調でそう迫った。
ヴィルヘルムはさては勝ち目なしと見て交渉しにきたのか?と疑ってかかる。
私設軍といえど一派の軍を連れてきている。
こちらの要望を受け俺武器を全て放棄してはいたが。相手はフェレ最強と呼ばれた軍隊だ。
隙を見て戦闘開始するかもしれない。
油断は出来ない相手であるのは間違いない。
これは戦略かもしれない。
その考えがヴィルヘルムの脳裏をかすめる。
実の所グランダリア公爵が現れたと連絡を受け、すぐに皇宮砲撃の計画は中止を伝令していた。
それは単に決戦の火ぶたが切られたら最後、公爵と膝を突き合わせて話す機会がないのを避けたかったからだ。
「殿下。
私は皇宮の使者ではなく、両殿下の皇位奪還に賛同し一派の私軍を連れ馳せ参じたのでございます」
参謀室にはヴィルヘルムとリライディナと2人はフランシス、アレクサンドル、ルシファル、アンリエットはその言葉を疑うには十分すぎた。
皆ぎょっとしてお互いの顔を見合っては困惑しているようだった。
何故なら攻撃を止めろなどと進言するのか?と顔にアリアリと書かれていた。
グランディア公爵と子息であるランスブルグ伯爵はお互い顔を見合わせた後、ランスブルグ伯爵が話し始めた。
「父の言葉に驚きと不審感を持たれていると思います。
父は生一本な性格で、誤解されやすいのです。
私からご説明いたします。
皇宮の守備は鉄壁で元々城塞であった事もあり、死角がほぼ存在しません。
しかも地下水脈と外海と広がっている為に水と塩が枯渇しません。
更に水脈は一部外と繋がっている為に食料、武器は一定程度確保出来年単位で兵糧が可能です。
その道は上皇王と公爵しか知りえません。
何せ行かせた者をただちに殺害し経路を隠していくので。
何よりあの皇宮には秘密があります」
従兄弟のランスブルグ伯爵を話を聞いてたアレクサンドルは少年時代の伯父を思い出していた。
いつも皇国の未来の担い手になるようにと剣を指導してくれたり、貴族の義務や誇りについて熱っぽく語ってくれたものだった。
そう本来まっすぐな方だった。
そう心から思う。
「秘密?」
口裏を合わせた様にそろえて声が部屋に木霊する。
ただルシファルとアレクサンドルだけはあぁ~とそういえばという風な表情で天井を見つめている。
「フェレ皇国には皇宮にまつわる伝説があります。
皇宮が敵の手に陥落しようものなら皇宮内に住まう龍によってすべてを焼き尽くされるだろうと。
故に現上皇王陛下も高位貴族に目回ししてからクーデターを迅速に行い内戦になる事はありませんでし
た。」
「伝説?
初めて聞くな」
エルディア大陸を自由に往来するフランシスも聞いた事のない話だった。
「皇国内で口述によって伝わる話です」
ランスブルグ伯爵は嘘ではないと言わんばかりに真剣な顔をフランシスに答えた。
「伝説なだけで?」
ヴィルヘルムは現実主義者なので伝説という曖昧な物語にはまったく信憑性がないと思わずにいられない。
思わず口に出た。
「実は詳細はわかりかねますが。
ただ…。
皇宮の中心部地下深くになんだかの起爆装置があり。
もし稼働すればフェレ皇国内が火の海になり、その爆破で国は滅ぶだろうという事実は間違いないで
す。
しかも国だけではありません。
周辺諸国も巻き込まれる。
オルファンとて無事ではいれません。
私は皇宮の奥院の警備隊長も兼ねて皇王即位の際に地下に行った事があるのです。
内部の立ち寄りは許可されませんでしたが。
当時まだ少年だった皇王陛下がなにげに話してしまわれたのです。
「龍の伝説は誠だ。
あれが作動したら我が国は終わりだ。
この作動装置が起動しない事を願っている」
恐怖から口にださずにはいられなかったのでしょう。
そうおっしゃっておいででした。
間違いなく私は聞きました」
その瞳に偽りは見えないとヴィルヘルムは確信した。
「…それが事実ならまずいな。
皇宮を粗方爆破してから襲撃する手筈が。
練り直しだ」
息を吐きだす様にヴィルヘルムが告げた。
「ああ」
その場にいた全員が同意した。
皇宮の秘密が明らかになり、攻撃の計画が大きく変更せざるを得なかった。
どう攻撃するのか?




