外伝最終章 皇位奪還 愛と革命に生きる 序章 決戦の時【皇宮】
クリスティア商団の民衆への救援活動が評判になり、世論が皇女リライディナに注目が集まる。
民衆はリライディナ皇女支持へと舵を切り遂には各地で自然発生的にデモの行進が発生。
なんとか皇軍との交戦は避けられたが皇宮に激震が走る。
「大変です!
陛下!
上皇王陛下!」
廊下に響き渡る荒々しいグロフォード公爵の声が異変を物語っている。
バン!!
上皇宮殿の奥深くにある居住エリアにある上皇王の寝室の扉を荒っぽく開けた。
「レオポルト?
どうしたのですか?
あなたらしくないわ」
私室の扉を躊躇なく開けてみると上皇王の起きたばかりのしとげない姿で鏡台の前で朝の身支度をしている姿が目に飛び込んでくる。
「上皇王陛下……人払いを…」
グロフォード公爵は傍に控えていた侍女に視線を向けた。
良く知る侍女だったが敢えて公爵は固く口を閉じた。
「大丈夫ですよ。
この子は私であり、私はこの子であるの。
ファビエンヌ続けなさい」
上皇王はそう告げてその侍女に髪を櫛で梳かすように冷たく命令する。
「はい。上皇王陛下」
ファビエンヌは言われた通り、再び豊かな髪を櫛で梳かし始める。
「……陛下。
皇都の貴族居住特区エリア内に侵入しようと国民の一部が暴徒化しました。
集団で行進してひと悶着ございました。
もう少しの所で衝突事件になりかけ……。
偵察隊の報告によりますと、行進は中止され市民は帰宅したとの事です。
しかしまたすぐに騒ぎになるでしょう……。
いかがいたしましょう?
今軍は皇軍と我がグロフォード公爵家の私軍だけです。
大臣達や高位貴族の一部はすでに無許可で出国した者や領地に籠ったまま出てこない者も…」
「そう……そうね。」
一切の何の驚きも見せずに落ち着いた声で答えた。
「陛下。
今回の騒動は偽皇女を名乗るリライディナという女とクリスティア商団がデモを誘導したと。
これは国家転覆罪です」
「レオポルト…。
残念だけどね。
その女は正真正銘の皇女よ。
私が殺し損ねた2人の内の1人。
文化も持たない野蛮人の異国の女に父が産ませた正真正銘の皇女。
残念だけれどね。
父上の生ませた不良品のね。
はあ~………なんだか体調が悪いわ。
レオポルト。
後の事は貴方に任せたわ
でも念のため手は打っていたほうがいいわね。
ファビエンヌ頼みましたよ」
「はい。上皇王陛下」
ファビエンヌは顔色一つ変えず髪を梳かしながら答える。
「レオポルト。
私が再び病が悪化したと発表しなさい。
わざとこの宮殿を攻撃させるように。
自分達の愚かさを思い知るでしょう。
この皇宮は古六国の我が皇国フェレの宮殿の秘密を彼らは知らない。
生きてここから出られないでしょうね。
次の遷都は予定通り第二都市シャルンディに。
私はシャルンディに移動したと噂を流して。
奥殿に潜んでいます。
私はこの皇宮と共に生き共に死ぬ。
そのさだめ」
ファビエンヌは髪を梳かし終え壁際に控えやや二人と距離をとる。
「上皇王陛下の御為に全霊を尽くす所存でございますが。
事がこれは動乱の…」
グロフォード公爵は当然と言わんばかりに熱の籠る潤んだ瞳で上皇王を映し出す。
「何を狼狽える事があるのか?
忠臣にして、私の恋人、私の心の夫であり、私の皇王の父である貴方。
これが終われば全ては貴方と私の世界。
そんなに狼狽するなんて貴方らしくないわ。
私をこの国を生を賭けて守り続けてくれるのでしょ。
私は貴方を信じているわ」
そう甘い言葉で囁いてグロフォード公爵の背をその白い柔らかな腕を回し抱擁する。
「勿論です。
あぁ~マリアンネ。
私の全て。
貴方の為にこの命を捧げます」
「あぁ~レオポルト貴方だけが頼りです。
貴方がいてくれるから生きていられる。
この地位にも」
そう口では言いながら、公爵の見えない腕の中でにんまりと上皇王は意味ありげにその瞳に策略を潜ませたような微笑を湛えている。
その姿を冷めた視線を向ける侍女ファビエンヌ。
上皇王は思う。
そうこの男を最大限に利用する。
そう心に誓った日が昨日の事の様に蘇る。
夫とは父王に言われるままに婚姻し、愛情などはなかった。
彼は努力して寄り添う姿勢を見せたが、私は拒絶していた。
父とは形式的に敬意と尊敬の姿勢を見せる努力はしていたが、父の非情で虐待に近い幼少期のトラウマから内面では軽蔑と憎しみが支配していた。
幼い頃から後継候補の一人として、教育という名の虐待に近い扱いを受けてきた。
それを必死に受けいれたのはいずれ父王を押しのけて自分の力で皇位を奪うためだった。
その父の薦めた縁談などまさに鳥肌が立つくらいに嫌いだった。
しかも彼は結婚後、私を裏切る行為を平然としていたのだ。
決して許されない行為を。
私はその事実を知り、怒りは頂点に達し、見逃さずに王配を暗殺した夜。
その現場をグロフォード公爵に見られたのだ。
そして初めて肌を合わせて口封じした。
そうこの男を生涯利用しようと心に誓った夜でもあった。
その一度の夜で皇王を身ごもった。
勿論王配の子として後継として。
一方のグロフォード公爵は上皇王は幼い頃からの憧れの人だった。
切れ長の目元、整った顔立ち、それ以外最も人を惹きつけた。
自分にない炎の様に激しく時に仄かに揺れるその激情的な感情に捕らえられ執着してしまった。
もはや自分の命など上皇王の前ではどうでもよくなっていた。
「計画通り、私が陣頭指揮を執り反逆者を処刑します。
ご安心を陛下。いえマリアンネ」
騙し合いのその様子はまるで歌劇の一幕のようだ。
ファビエンヌはそう思い気付かれぬように軽くため息を吐いた。
上皇王はどう乗り切るのか?ヴィルヘルム達は皇宮をどう攻略するのか?
皇宮の秘密とは?




